1:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 02:36:40.02 ID:RfeZiM0z0
まあテキトーに頼むわ 



2:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 02:38:01.06 ID:FmGpaXVn0
ksk 



5:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 02:39:59.33 ID:DBPwjHtc0
ksk 



6:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 02:40:42.11 ID:P63h9GP/0
頼むぜ 
ID:DBPwjHtc0 
7:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 02:41:27.29 ID:DBPwjHtc0
マジかよ踏むとは思わなかった 

人生…人生…か 
こんな落ちこぼれの俺の話だけど聞いてくれるか? 



8:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 02:42:21.22 ID:FmGpaXVn0
>>7 
期待してる、聞きたい 



13:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 02:47:28.93 ID:DBPwjHtc0
ありがとう、んじゃ慣れないけどやってみるわ。 

スペック 
現在底辺大学生男 
容姿は不細工だな 

今でこそどうしようもない俺なんだが 
俺は中学の時は成績が良かった 
田舎の中学だったんだが、その中で常にテストは3番以内に入っていた 



15:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 02:50:02.88 ID:DBPwjHtc0
俺は中学が大好きだ 
友達も、先生も、風土も、全てが大好きだった 
今で言ういじめとかとは到底無縁。 
思い出補正ってやつかもしれないな、でも好きだった 

中学の頃は「優等生」として扱われていたから 
教師の信頼も厚かったし、友達からも頼りにされてた 



16:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 02:53:14.96 ID:DBPwjHtc0
毎日がキラキラしていたな 
絵に描いた青春だったかもしれない 
ただブサメンだったから恋愛は上手くいかず失恋続き 
でも、人を好きになってフラれるってのも若気の至り。 
それすらも楽しかったことのように思える 

中3の受験期になると、俺は先生たちに県で一番の進学校への受験を薦められた 
ものすごく期待されていたし、俺もそれに応えたかった 
だから俺は進学校への受験を決意して、毎日頑張ったよ 



17:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 02:56:58.19 ID:DBPwjHtc0
そして俺は進学校に合格した 
学校の先生も友達も、みんな祝ってくれた 
「お前が◯◯高に行くなんてすごいな!!」 
「先生も嬉しい。おめでとう」 

まさか自分でも受かるとは思っていなかった 
〇〇高に行ってる、と言えばちょっとした自慢になるくらいなんだ 
それほどの快挙だった 
人生の頂点だったと思う。 



18:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 02:58:08.31 ID:DBPwjHtc0
でもこの高校への入学が 
俺の人生を大きく狂わせるきっかけだったんだ 
今でもどうしてここに行ったんだって後悔してる 
自分がいけないんだけど、もっと真剣に色々考えていれば…って今でも思う 



21:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 03:00:41.86 ID:DBPwjHtc0
高校内でも成績順にクラス分けがされていて 
入試の成績が良かった俺は一番いいクラスになってしまった 
最初こそ鼻が高かった 

「〇〇高で一番上のクラスよ」って自慢してまわったもんだ 
でも、俺の高校生活は徐々に崩れていくんだよね 



22:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 03:04:06.24 ID:DBPwjHtc0
まず、話の合う奴がいなかった 
そもそも運動部に所属している奴もほとんどおらず 
中学3年間運動部だった俺は愕然とした 
しかも学校の方針で部活にあまり力を入れていない 

勉強の方も、中学時代は塾に頼って自学習の習慣が全く無かった俺は 
あっという間に遅れをとっていった 



24:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 03:06:30.26 ID:DBPwjHtc0
高校一年のくせして周りはみな「勉強第一」「受験第一」 
遊びに誘っても誰ものってこない 
一緒に自転車を並べて帰る奴すらいない! 

5月を過ぎても友達と呼べる友達すらできず 
俺は高校生活の現実に絶望していた 



26:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 03:10:40.25 ID:DBPwjHtc0
おかしい、思い描いていた高校生活はこんなんじゃない 
恋愛フラグどころか、友達と呼べる奴すらできないなんて… 

そして魔の行事、中間試験がやってくるわけなんだが 
俺はなんとケツから二番目の成績をとるwww 
一番上のクラスの奴がほぼ最下位、この状況はよっぽどの事だったらしく 
職員室に呼び出されて教頭に小一時間説教された 



28:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 03:13:38.67 ID:DBPwjHtc0
この中間事件以来、先生たちも俺に対する態度が変わる 
「あいつはダメだ」「もうあいつはいいや」 
そんな心が透けて見えるようだった 

宿題を忘れてこようが何のお咎めもなくなり 
分からないことがあって授業後に質問しても異常に素っ気なく振舞われたり 
あれ、俺なんでここにいるんだろ?って気持ちが込み上げてきた 



31:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 03:17:04.61 ID:DBPwjHtc0
見てくれている人、ありがとう。続けるぜ 

子供心に「見放された」事がとてもショックだった 
教師と言えど大人、大人に必要とされない俺。 
よくテレビにいる「もっとがんばろうぜ!俺が見てやる!」 
なんて言う先生は一人ったりともいなかった 

「お前がやる気ないならそれでいいよ。他は優秀だから」 
そんな先生しかこの時はいなかった 



32:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 03:20:18.26 ID:DBPwjHtc0
それでもこの時はまだ挫けなかった 
プライドもあったし、かすかな希望に懸けていた 
俺だって勉強して、先生に認めてもらいたい、いい成績を取りたいって思ってた 

だから教室にいながらにして「ほぼいないもの」にされながらも 
必死で授業に食らいついたし、負けるもんかって気持ちだった 
正直苦しかった 



34:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 03:24:21.75 ID:DBPwjHtc0
相談する相手もいなかった 
高校には無論友達がいなかったし 
中学の友達には、見栄があって学校のことを相談できない 
連絡があっても「勉強とか余裕っしょ。高校楽しいぜ」みたいに嘘をついていたんだ 

そんな風に言うと中学の友達は「やっぱお前はすげえな~」 
とか言ってきて 
俺の中で見えない不安がどんどん積み重なっていった 



37:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 03:30:43.20 ID:DBPwjHtc0
俺は夏の期末試験に向けて必死に頑張った 
この時は一番辛い時期だったかもしれない 
新しい環境にも慣れきれてないのに 
毎日先が見えない勉強をずっとして… 

そして夏、期末試験が訪れる 
今度は真面目に頑張った 
きっと前回のようにはならないだろう、と自信を持って臨んだ 
もう晒し者にされるのは勘弁だったからね 



39:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 03:34:45.70 ID:DBPwjHtc0
結果から言うと、理系科目がほぼ赤点だった 
前回ほど悪くないにはしろ、クラスではぶっちぎりの最下位 
答案を返される時、周りの目が怖くて体がめっちゃ熱くなった 

また先生になんか言われる… 
と思ったが 
何もなし。まったく何も言われなかった 



41:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 03:38:11.87 ID:DBPwjHtc0
俺は怖くなった 
もう誰も何も言ってくれないんだ 
先生には俺は「クズ」に見えてるんだろうか 
クラスメートが俺が平均をとれなかった科目のことを「簡単だったよなー」と話している 

こんな状況が初めてで、もうどうしていいか分からなくなった 
「俺は実は馬鹿だったんじゃないのか?」 
そんなことを思い始めた 



43:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 03:42:14.12 ID:DBPwjHtc0
もう勉強なんていいわ、学校なんていい 
俺はきっと他にやりたいことがあるんだ 
そんな事を考えて逃避していたけど 
「やりたいこと」なんてまだ何も見つかってなくて 
期末試験のあと、俺は帰り道に一人で自転車に乗りながら泣いた 

惨めすぎて親にも何も言えなかった 
この高校に入った時、泣いて喜んでくれた親に 
学校がもう嫌だなんて、言えるはずがなかった 



47:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 03:46:57.96 ID:DBPwjHtc0
期末試験のあと、夏休みになった 
夏休み、やったーーーー!! 
と健全な高校生ではなるところだが 
課題の量が尋常ではなかった 

数学はいわゆるチャート式というものの問題が100近く 
英語が入試過去問の長文や文法の参考書…その他の科目もだ 

宿題はまだ良かった 
どうせ俺はやっていかなくても溜め息をつかれるだけだ 



48:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 03:50:35.43 ID:DBPwjHtc0
期末試験の成績が芳しくなかった俺には、補習が待っていた 
せっかくの夏休みだというのに 
暑い中自転車を走らせて学校に行かなくてはならない 

俺はそれが心底嫌だった 
夏休みのあいだくらい学校のことなんか忘れていたかった 
あの重々しい雰囲気の教室に行くのが嫌で仕方なかった 



51:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 03:55:07.89 ID:DBPwjHtc0
でもこの補習は俺にとっての大きな転機だった 

世間の同世代の学生は夏休みに浮かれる最中 
俺はブツブツ文句を言いながら自転車で学校に向かう 
駐輪場に自転車を止めると、いつもより静かな学校 
心なしか普段の重い雰囲気がなく、休日の学校はいいもんだって思えた 



54:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 04:02:59.57 ID:DBPwjHtc0
補習の教室に入ると、やけに和やかな雰囲気 
普段の授業と雲泥の差だった 
言ってみればここは「落ちこぼれ」の集まりなんだよな、と思うと気が楽だった 

最初こそ嫌で仕方なかった補習だったが 
寝ていたり、外の景色を眺めていても特に怒られない空気で 
この学校にもこういう一面はあるんだな~って思えて逆に嬉しかった 



56:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 04:07:35.52 ID:DBPwjHtc0
とは言え一番上のクラスから補習者が出てるということが恥ずかしくて 
なかなか他の人に話しかけられずにいた 

補習がひと通り終わって帰ろうと思って駐輪場にいると 
一人の男に話しかけられた 
補習中、俺の隣の席で終始PSPをやっていた奴だ 



58:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 04:13:15.62 ID:DBPwjHtc0
オードリー若林に似ている奴で、一見陰気そうな奴だった 
若林「今日隣だったよね~一人なん?一緒に昼飯でもどう?」 
俺「お、おっす…あ、一人だよ。どっか食べてく?」 

会話を交わすことができた 
高校に入って初めてだった、一緒にメシを食べて帰る 
そんなごく当たり前のことに誘われたことに感動した 



61:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 04:19:41.96 ID:DBPwjHtc0
そのまま二人で自転車を走らせて二人でコンビニに向かった 
初めて!誰かと自転車を並べて高校から下校した 

コンビニに着くと若林に色々質問された 
若林「どこ中から来たの?」 
俺「俺は◯◯中から!」 
若林「けっこう遠いの?」 
俺「自転車でギリギリかなぁ…」 

些細なやりとりが新鮮で仕方なかった 



63:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 04:27:19.54 ID:DBPwjHtc0
若林「俺は電車でさ。あとは駅から自転車で来てんだよね。」 
俺「あーけっこう遠いんだなー」 

会話は弾むが、この男なかなかひょうひょうとしていて 
こんな奴がこの高校にいた事に驚いた 
まあ、そりゃいてもおかしくないんだけどね。 

若林「最近なんか面白いゲームあった?」 
俺「いや…なんだろな…」 
と、勉強とは程遠い会話が続いた 



65:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 04:31:15.88 ID:DBPwjHtc0
感覚が麻痺していたんだろうか 
ごくありふれた高校生の会話だろうに 
それが出来ていることに感動した 

その日は、コンビニの駐車場でおにぎり食ったりカップ麺食べたりして別れた 
家に帰ってから気付いたんだけど 
この日若林が俺に「何組なの?」とクラスを尋ねてくることはなかった 
この高校にいる奴らなら、誰もが気にかけていることだろうに 



68:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 04:39:03.62 ID:DBPwjHtc0
俺はなんとなく気が楽になった 
ああいう奴もいるんだな、って思うと力み過ぎていた自分がアホらしくなった 

次の補習日、教室に行くと若林に声をかけられる 
若林「おーっす」 
俺「おいっす」 
若林は後ろの方の席でアドバンスをやっていた 



70:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 04:42:33.87 ID:DBPwjHtc0
俺「今更アドバンスかよw」 
若林「いやこれ、面白いからなw」 

若林のやっているゲームはロックマンエグゼ3だった(知らない人すまん) 
俺もそのゲームが大好きでやり込んだことがあるから一気にテンションが上がった 

俺「それ、エグゼ3?俺も超やったわww」 
若林「え?マジで?今度持ってこいよw」 
俺「おっしゃ今度対戦しようぜww」 



72:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 04:50:11.96 ID:DBPwjHtc0
若林は補習の最中もゲームをしており 
時折小声で俺に「なあここどうすりゃいいの?」と聞いてくる 
先生にばれそうになると咄嗟に隠して、ハラハラだったw 
「あぶねーよ…w」「すまんすまんw」とか言って楽しかった 

ゲームを通じて一気に打ち解けることができた 
帰りも、二人でエグゼの話題でめっちゃ盛り上がった 



75:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 04:54:30.55 ID:DBPwjHtc0
中学の時に感じた気持ちと一緒だと確信した 
楽しい、気楽、これが友達って呼べるもんだろう 

同じクラスの連中は取り憑かれたように成績のことばかり気にしてる 
他人を寄せ付けないオーラみたいのがある 
高校に来て初めての友人、それが若林だったんだ 



77:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 04:57:58.52 ID:DBPwjHtc0
俺はそれからよく若林とつるむようになる 
若林は俺の一つ下のクラス、通称「準クラ」だった 
そして俺が一番上のクラス 
皮肉にも「落ちこぼれコンビ」だった 

ただ若林は俺とは違い、最初から授業中にゲームしたりとやる気がなかったらしく 
その結果あっという間に浮いて成績も下降していったらしい 



80:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 05:09:09.45 ID:DBPwjHtc0
夏休みが終わって、学校が始まってからも俺たちはよく一緒にいた 
俺はと言えば、授業に出席はするものの勉強は完全放棄 
若林に出会って、ある種吹っ切れてしまったのだ 

先生の態度など知ったことか、勝手にしてくれ。 
クラスメートに対しても、こいつらがおかしいんだ、俺は一人じゃないって思ってた 
しかしこの時はまだ真面目に授業には出ていただけ良かったのだ 



85:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 05:17:23.40 ID:DBPwjHtc0
そんなこんなで俺は若林とテキトーに遊んで日々を過ごしていた 
放課後携帯ゲームの対戦したり 
テキトーにカラオケに行ってみたり 

平凡で楽しい毎日だった 
前より学校のプレッシャーもだいぶ減ったし 
とは言え田舎だったし、遊びのネタも尽きていた 
二人なのでいまいち何をするにしても盛り上がりに欠けちゃうんだよな 



87:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 05:21:26.10 ID:DBPwjHtc0
気付くとまわりの奴らがカーディガンを着たりマフラーを巻いたりしている 
あっという間に季節が巡って冬に差し掛かっていた 
冬休み前の、期末テストが控えていた 

期末テストは成績が悪いと長期休みの補習対象になってしまうので 
生徒はみな必死になって準備に励む 
もちろん、落ちこぼれである俺たちはそんな事どこ吹く風。 
テスト期間は早く帰れていいね~くらいのクズなテンションだった 



90:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 05:27:23.42 ID:DBPwjHtc0
もちろん俺と若林は補習。 
「冬休み学校行くのだるいけどこれは仕方ないか~」と諦めていた 
ただ若林は電車通いということもあって、結構嘆いていた 

俺は別に補習が嫌いではなかった 
あの雰囲気は悪くないし、もしかしたら仲間がいるかもしれない 
一番上のクラスなのに…とかそんな恥じらいみたいのはもうとっくに無くなってた 



94:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 05:43:28.37 ID:DBPwjHtc0
冬休みになる。 
楽しいことが沢山でウキウキの冬休みのはずが… 
補習だ。でもまあ、二回目ともなれば慣れたもんだ 

補習日の朝、下駄箱で若林に遭遇 
「おいっす」「だり~な~」などと言いながら二人で教室に向かう 
落ちこぼれと分かっていつつも真面目に補習には来ちゃうのが俺ららしい 



97:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 05:48:17.55 ID:DBPwjHtc0
教室のドアを開けるとすでに何人か人がいた 
ヒーターがきいておらずまだ寒くて、みんな厚着をしたまま席に座ってた 
教室の後ろの隅の席に、なんだか見慣れた顔がいた 

俺「あれ?あいつ…」 
若林「どした?」 
小太りで、少し異様な空気感を放っている 
紛れもなく同じクラスの礼二だった 



99:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 05:52:45.80 ID:DBPwjHtc0
太っていてハッキリとした顔立ちのそいつは中川家礼二にどことなく似ている 
でも、そこにいるのは明らかにおかしかった 

俺「いや、同じクラスの奴がいるんだけど…w」 
若林「え、マジで?お前だけじゃないのかよw」 

礼二は見た目は小太りでどんくさそうだけど 
頭は良い奴だった 
いつだかの試験で、現代文の最高点をとって先生に名指しで褒められていた 



102:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 05:57:25.98 ID:DBPwjHtc0
面白そうだったので俺はなんとなく礼二の隣に座ってみた 
そして俺の右横に若林 
先生が来て、ダラダラと補習が開始される 

教室の前の方では女子が甲高い声をあげ先生と馴れ合い 
隣の若林はマフラーに突っ伏して寝てしまっていた 
本当に補習なのか…と疑問を覚えつつ 
俺は隣の礼二が何か始めたのでコッソリと観察していた 



107:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 06:01:40.78 ID:DBPwjHtc0
礼二はスケッチブックともとれないペラペラの冊子を取り出した 
何かを一生懸命書いている様子だった 
気になったのでしばらく携帯をいじるふりをして見ていると 
それはどう見ても「漫画」だった 

あ…こいつ漫画描きたいのか… 
と瞬時に何かを理解できた気がした 



111:名も無き被検体774号+:2012/12/17(月) 06:05:22.45 ID:DBPwjHtc0
色んな考えが頭を巡った 
成績優秀であるはずの礼二がここにいる… 
そして今補習中に漫画を描いている 

こいつが今ここにいるのはもしかして… 
でもただ絵を描くのが趣味なだけかもしれない… 
礼二のことが凄く気になった 
これはもう、話しかけてみるしかない 
こいつは面白いやつなのかもしれない 



113:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/17(月) 06:09:02.30 ID:DBPwjHtc0
と、申し訳ないんですが今日は一旦ここで落ちますね 
一応、酉もつけておきます 

こんな時間まで付き合ってくれた人ありがとう 
続きは夜にでも書くよ 



136:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/17(月) 22:08:13.33 ID:DBPwjHtc0
補習が終わった後 
そそくさと教室を出ていこうとする礼二を引き止めるために肩をたたいた 

俺「中川、俺。同じクラスの…」 
礼二「あぁ、〇〇じゃん。分かってるよw」 
俺「お前、授業中に何描いてたんだ…?」 

若林は俺の隣で黙って見ていた 



139:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/17(月) 22:16:37.12 ID:DBPwjHtc0
礼二「なんのこと?」 
俺「いや、なんか描いてたよな?明らかに勉強はしてなかったろ」 
礼二「…お前には関係ないだろ…?」 

すると礼二はくるっと振り向いて廊下に小走りで出ていってしまった 

若林「行っちまったぞ」 
俺「追いかける…よな?」 
若林「え~…」 



141:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/17(月) 22:21:58.47 ID:DBPwjHtc0
廊下に出ると、礼二がタンタンタンと勢い良く階段を降りる音が鳴っていた 
ほぼ無人の校舎だから嫌なほど音が響く 

若林「あいつ足おせえなw」 
俺「どうせ駐輪場だろ、行こうぜ!」 

俺たちは謎なテンションで「いやっほ~!」とか言いながら階段を駆け下りた 
急げ急げ、とはしゃぎながら下駄箱に上履きを投げ入れて 
駐輪場に行くと礼二がちょうど自転車に乗るところだった 



143:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/17(月) 22:27:12.23 ID:DBPwjHtc0
俺「間一髪じゃん!待ってくれよ~」 
礼二「なんなんだよ…俺行くからな」 
走りだそうとする礼二の自転車の荷台を若林がつかんで止めた 

礼二「なになに?ちょっとさぁ…」 
俺「中川、お前漫画描いてんだろ?教えてくれよ」 
礼二「まあ少しだけどな…描いてるよ」 



145:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/17(月) 22:32:12.90 ID:DBPwjHtc0
俺「それってすげえじゃん!そんな人がこの高校にいるって思ってなかったんだよ」 
礼二「いや…まあ凄いなんてことはないんじゃね…」 
俺「将来の夢は漫画家だろ?夢があるってすごいじゃん!」 

そう言うと礼二の目つきが変わった。 
礼二「は…夢?そんなこと簡単に言うんじゃねえよ!」 
いきなり激昂したもんだから俺たちは焦った 



147:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/17(月) 22:37:52.41 ID:DBPwjHtc0
礼二「今日はじめて話して何も知らないくせによ…!」 
礼二「大体お前ら、周りに何て呼ばれてるか知ってんのか…!?」 

俺「いや、知らないけど…」 
礼二「知らないのかよ、気楽なもんだ…」 
若林「何て呼ばれてんの?」 

礼二「落ちこぼれセットって呼ばれてんだよ、お前ら」 



149:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/17(月) 22:40:55.82 ID:DBPwjHtc0
正直こう呼ばれてることはこの時初めて知った 
でも、だからどうという事は何もなかった 

俺「あ、そうなんだ」 
若林「面白いなそれw」 
礼二「何とも思わないのか…?」 

俺「別に、まあ本当のことだしねw」 
そう言うと礼二のさっきまでの勢いはなくなり 
段々と落ち着きを取り戻しているようだった 



154:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/17(月) 22:48:06.97 ID:DBPwjHtc0
礼二「なんか色々言っちゃって悪かったよ…」 
俺「いや、全然いいけど」 
礼二「ただ俺にはもう関わらないでくれ」 
そう言って礼二は自転車を出して帰って行った 

その後俺と若林は帰りながら、どうしたもんかと話し合った 
帰り道でいきなりせき止めて 
何も考えない事を言ってしまったのは俺の方だ 
もしかしたら、馬鹿にされたと思ったのかもしれない 



171:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/18(火) 01:01:02.30 ID:xudrSB3X0
ごめんちょっと離席してたわ 

そう思うと俺は礼二になんだか申し訳なくなって 
一言謝りたくなった 

次の補習日、教室に行くとやっぱり礼二は一番後ろの席に座っていた 
今日も漫画を描いてるのだろうか 
この前のことがあったので、なんだか話しかけられずにいた 



180:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/18(火) 01:18:08.76 ID:xudrSB3X0
若林も俺も教室にはいるもののまったくやる気はない 
寝てるかぼーっとしてるかゲームしてるかのどれかだ 
礼二を見ると一生懸命ペンを動かしていた 
夢中なようで、顔が必死だった 

補習が終わると、俺はゆっくり礼二の席に近づいた 
若林は席に座ったままだった 



182:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/18(火) 01:21:28.54 ID:xudrSB3X0
俺「な、中川」 
礼二「ん、何?」 
昨日の怒りが嘘のように穏やかな返答だった 

俺「昨日はこっちもさ、なんかいきなり変な事言って悪かったよ」 
礼二「あ、いや…あれはなんつーか俺も…」 
俺「お前一人か?俺たちと一緒に帰らねえ?」 
礼二「え…でもいいの?」 

後ろを見ると若林が笑っていた 



187:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/18(火) 01:26:34.57 ID:xudrSB3X0
俺「全然いいよ!」 
礼二「そっか…じゃあ帰るか?」 
若林「決まりだな」 
そう言って若林は俺達の背中を叩いて笑った 
安心したのか、礼二も照れくさそうに笑ってた 

三人で他愛もない事を話しながら駐輪場に向かった 
冬だったんだけどその日はとても天気が良くて、若干温かいくらいだった 



189:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/18(火) 01:32:43.67 ID:xudrSB3X0
近くのコンビニで冷たい飲み物やチキンなんかを買って 
食べながら三人で駅へと続く河原沿いの道を走ったんだ 
本当に気持ちの良い日で 
自転車こぎながら三人で、いい天気だなー!って騒いだよ 

駅の近くにある小さな公園の前で俺が止まって 
「ちょっと寄って行ってみね?w」 
とみんなを引き止めた 



190:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/18(火) 01:36:04.98 ID:xudrSB3X0
いい天気だというのに、人は親子一組しかいなくて 
公園は静まり返ってた 

俺が一番乗りで走りだして、ブランコに向かった 
俺「はい!ブランコ一番乗りーww」 
若林「くだらねーw」 
礼二も恥ずかしそうにしていたが、ブランコに加わってくれた 



193:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/18(火) 01:42:06.47 ID:xudrSB3X0
しばらく我を忘れてブランコで遊ぶ 
めっちゃ勢いつけて遊んだり、そこから靴飛ばしたり 
一通り遊んで笑い疲れた辺りで、礼二が話始めた 

礼二「あのさ、昨日のことなんだけど…」 
若林「お、どした?」 
俺も黙ってその様子を見ていた 

礼二「あのさ、あんな風に怒ってごめんな 
俺さ、本当は漫画が凄く好きなんだよ」 



195:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/18(火) 01:45:47.85 ID:xudrSB3X0
俺「そら補習中のお前見てれば分かるよww」 
礼二「こんなこと言うのあれなんだけどさ」 
俺と若林は黙って真剣に礼二の話を聞いてた 

礼二「俺は漫画家になりたいんだ」 
礼二の真剣な態度に、俺と若林は茶化すこともなくただ黙って聞いてた 



197:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/18(火) 01:50:27.02 ID:xudrSB3X0
礼二はゆっくりとだけど真剣に続けた 

礼二「あり得ないよな。正直、クソだよ俺。 
だって〇〇高だぜ俺ら?こんな話、誰が真剣に聞いてくれると思う?」 
確かに、あり得ない事だ。うちの高校で「大学進学」以外の進路など考えられない。 

礼二「先生も勝手に俺のことできる奴だと思ってるし、 
でも俺は本当は漫画が描きたいんだよ。」 



200:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/18(火) 01:56:30.36 ID:xudrSB3X0
礼二「親にも、先生にも、ましてや周りの奴らなんかには絶対相談できないだろ? 
勉強しないと授業だってどんどん遅れていくし… 
誰にも言い出せなくて、ずっと悩んでたんだよ…」 

俺「夢があるってのいいk…」 
若林「周りの目が怖い?」 
ここで、若林に遮られた 
礼二「それもある。うちの高校、あんな感じでしょ?」 



201:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/18(火) 02:02:53.63 ID:xudrSB3X0
すると若林の声色が変わった 
若林「やりたい事決まってる奴が、コソコソすんのはおかしいだろ! 
漫画家目指してるとか、そんなことはどうでもいいけどよ。 
やりたい事があるってのは俺はすげえと思うぞ、マジで。」 

若林「俺ら見てみろよ、毎日なんもやることねえw」 
俺「まあねww」 
若林「それで周りに落ちこぼれとか言われても、何も気にしてねえよ。 
俺らなんかもっと恥ずかしいだろ?ww」 



204:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/18(火) 02:11:26.93 ID:xudrSB3X0
若林「人生なんて人それぞれだろ。あの高校から漫画家目指して、何が悪いよ?」 
俺「俺もそう思うわ。なんつーか、俺らは応援するぜ」 
若林「応援なんて言ったら、なんか安っぽいんだけどなw」 

礼二「マジか…ありがとな…」 
そう言ったきり、礼二は涙目になって黙っていた 
そのあと、しばらく三人で黙ってブランコに乗ってた 
西日が強い時間で、影が大きく伸びてたのを覚えてるよ 



216:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/18(火) 02:28:47.42 ID:xudrSB3X0
夕方になった頃あたりで、俺らは公園を出て若林の使う駅へ向かった 
若林が別れる直前、礼二は俺らに向かって言った 

礼二「俺、絶対漫画家なるわ。絶対だ。もう決めた。」 
若林は笑って「ほどほどにな」と言って駅の駐輪場に消えていった 
その後、礼二と俺の二人で帰った 
道中好きな漫画の話で盛り上がった 

漫画の事を話す礼二はとても生き生きしていて 
普段クラスで見てきた礼二の顔とはまったく違った 



219:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/18(火) 02:34:09.98 ID:xudrSB3X0
こうして俺たち三人は出会った 
悔しいのは三人が繋がった場所が落ちこぼれの場所ってことだなw 
でもまあ俺たちにはぴったりだと思う 

礼二と若林は俺にとって大事な大事な友達で 
俺の人生を話す上で絶対抜けてはならない二人だよ 



223:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/18(火) 02:45:32.19 ID:xudrSB3X0
それから俺たちは三人はよくつるむようになった 
「落ちこぼれセット」から「落ちこぼれトリオ」になったわけだが 
そんなことはどうでも良かった 

冬休みが明けて、学校が始まる 
俺と礼二が仲良く話しているのを見て先生に言いがかりをつけられた事もあった 
成績が良かった礼二が半年でガクッと落ちたから 
俺のせいだと思われたんだろう 



227:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/18(火) 02:50:30.83 ID:xudrSB3X0
そんな事がある度に三人で 
「関係ねーーよwww」とか話しておかしかった 
落ちこぼれの俺たちだったけど 
三人で一緒にいれば何にでもなれる気がした 

学校なんて別にもう何も怖くないし 
周りになんと言われようと、俺たちは俺たちなんだって 
アホみたいに信じていた 



254:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/19(水) 00:01:59.77 ID:xudrSB3X0
高校一年の後半に差し掛かると俺らのクズさに拍車がかかった 
授業を度々サボるようになった 
と言っても無断欠席をしたりはしない、留年は怖い 

嫌な授業の時は消えたり、気持ちが乗らない時に勝手に早退したり 
授業をサボると、流石に先生にもよく怒られた 
当時の俺たちは「関係ねえだろ」って思ってたけど 
今思えばまわりの奴に本当迷惑だよな。 
クラスにこんな奴がいて、さぞウザかったと思うわ 



255:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/19(水) 00:06:44.06 ID:xudrSB3X0
でも俺達にはそれは辞められなかった 
うちの高校には絶好のサボりスポットが満載だったんだ 
まず1つ目が中庭。 
植木や校舎の視界上、良い感じに周りの死角になるんだ 

寒い日や午前中なんかはこの中庭に行く 
慌ただしい時間帯には色んな人の声や足音が聞こえるんだけど 
それを尻目に三人で中庭のベンチでダラダラするのが最高だった 



257:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/19(水) 00:11:33.97 ID:++chqLRB0
2つ目が図書室のベランダ。 
何故か図書室のベランダだけ無駄に広くて 
走ったり寝転んだりしても十分なくらいの広さがあった 

でもここは人目にもつきやすくて 
雨が降った日限定だった 
雨が降った日に行くと独特の空気感があって凄い良かった 



259:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/19(水) 00:15:11.60 ID:++chqLRB0
そして何と言っても一番なのが屋上な 
ベタかもしれないけどww 
当然立入禁止なんだけど、屋上の入り口に窓があって 
その窓が中から鍵を普通に開けられるんだよなw 

生徒を信用してのことなんだろうけどさ 
もちろん俺たちは、これを知ってから足繁く屋上に通ったよw 



261:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/19(水) 00:22:08.91 ID:++chqLRB0
初めて屋上に言った時の俺たちのテンションは異常だったなw 
どっかいいとこねえか?ってなって 
若林が「とりあえず上いこーぜw」って言って授業中に校舎をフラフラしててさ 
屋上に通じる窓が普通に開くのに気づいてなw 

若林「お前ら見ろこれwwwあくわwwww」 
礼二「これは行くしか無いってことだよなww」 
俺「すげえ!ww」 
3人ともめちゃくちゃテンション上がっちゃったよ 



262:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/19(水) 00:27:16.10 ID:++chqLRB0
凄くよく晴れた日だったんだけど、真冬だから寒い寒い 
もちろんコートは教室に置いてきてるからノーマル制服の状態で 
風がびゅんびゅん吹いてて「うわわわわ」ってガクガク震えた 

実は中学の時にはどうやっても屋上に行けなかった俺は 
それが人生初の学校の屋上だった 
もうその開放感は半端無かった 

周りに視界を遮るものが、なんもない 
それがもう本当に爽快で仕方なかったんだ 



265:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/19(水) 00:33:41.64 ID:++chqLRB0
俺「すげえなおい!俺実は学校の屋上とかに来るの初めてなんだよねww」 
礼二「俺もwwなんかすげえ得した気分だwww」 
若林「お前らマジかよぉ?w俺は中学の時はよく屋上行ってたぞw」 
そうすると若林がケラケラ笑い出した 

若林「お前らだせーなw」 
俺「お前の中学がおかしいんだろww」 
礼二「そうだよお前がおかしんだよww」 
三人とも意味も分からず笑いがこぼれてきて、完全にハイになってたw 



266:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/19(水) 00:40:25.80 ID:++chqLRB0
ここからさらによく分からないテンションタイムが発生する 
礼二がいきなり「せいやぁぁぁ!」と言って 
でんぐり返しのような前回り受け身のようなよく分からない動きを始めた 
普通の人より体格が大きいので、よりコミカルに見えた 

俺「なんだよそれwwww」 
礼二「お前もやってみwww」 

普通ならつっこむ所であるが、俺もわけも分からず 
「いやぁぁぁ!!」とか言いながらぐるぐる回り始める 



267:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/19(水) 00:47:39.99 ID:++chqLRB0
そうすると見ていた若林がツボにはまったらしく、大笑いしていた 
若林「wwwwwなんだよそれwwwふざけんなwww」 

俺と礼二ももう楽しくなっちゃって奇声を出しながら派手な動きを続ける 

若林「ムービー撮ってやるよww」 
と言われて俺と礼二が狂ったように「よいしょぉぉぉ!」 
とか言いながら前転を続ける様子を動画におさめられた 



268:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/19(水) 00:51:10.44 ID:++chqLRB0
見直すとその姿がなんとも滑稽で 
3人で「なんだこれwwww最高www」 
って言ってアホみたいに笑った 
本当にこーんなくだらない事で本気で笑えてたんだよな 

それ以来屋上は俺らの中で「何故か楽しくなっちゃう魔法の場所」として定着した 
サボりスポットの中でもダントツで好きだったし 
滅多なことでは誰にも見つからない 
本当に解放されてる気がする最高の場所だった 



271:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/19(水) 01:23:05.53 ID:++chqLRB0
めんどくさい授業になると 
礼二と二人で隣の教室に行ってドアから若林を呼ぶんだ 
そうすると若林はニヤッと笑って 
口パクで「行くか?」って言うんだよ 

それが可笑しくて仕方なくて 
いっつもこの瞬間がワクワクした 
俺たちには逃げ出せる場所がある、そんな風に思えた 



273:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/19(水) 01:42:49.88 ID:++chqLRB0
晴れた日に屋上に行かない手はない 
日常の中の非日常って感じで、俺らは大好きだった 

いつもやってた礼二の漫画談義がめっちゃ面白かった 
礼二がノートとペンをもってきてて 
どんなストーリーやキャラクタが面白いか聞いてきた 
それに対して俺たちはああでもないこうでもないって議論して 

三人でフェンスに寄りかかって 
「こんな奴がいたら面白い」「こんな学校があったら楽しいんじゃないか」 
とか言い合ってた 



274:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/19(水) 01:48:35.58 ID:++chqLRB0
そんなこんなで俺らの楽しくて快適なサボりライフは続いていたんだけど 
一年の終業式を直前に迎えたある日、とうとうそれはほころんだ 

いつものように授業をサボって屋上でダラダラしていた 
いつものように時間が過ぎて、いつものように教室に戻れると思っていた 
「お前ら何してんだ?」 
遠くの方で声が聞こえた 
俺は驚いて思わず「うおっ」って声を上げてしまった 



277:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/19(水) 01:54:30.92 ID:++chqLRB0
それはうちの高校でも特に厄介な生徒指導のKだった 
K「最近授業をサボる奴がいるからと見に来れば… 
おめえらだったのか」 
チッ、と若林が舌を鳴らした 

俺たちは思わず睨んでしまった、Kはまだ何も言っていない 
俺たちもガキだったんだ 

K「こんなとこでコソコソやってたんか、どうしようもねえ奴らだな」 
そう言うとKは黙って振り向いてドアと窓を閉めていった 



278:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/19(水) 01:58:48.20 ID:++chqLRB0
礼二「おい、中から鍵閉められたらまずいんじゃねえの?」 
思えばそうだった 
中から鍵をかけられるとこの屋上に閉じ込められる形になってしまう 

しかも授業は午前最後の時間だった 
弁当も教室に置いてきていたので、午後まで閉じ込められるのは非常にきつかった 



280:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/19(水) 02:00:43.62 ID:++chqLRB0
俺がとっさにドア付近の窓に近づいて 
俺「先生!ちょっと待って下さいよ!」 
と言ってみたが 

K「しばらくそこにいろよ」 
と言ってKは階段を降りていった 



281:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/19(水) 02:03:18.37 ID:++chqLRB0
礼二「行っちゃった?」 
俺「うん…あれいつ戻ってくるんだよ…」 

若林「わり、俺が舌打ちなんてしたからだわ」 
その場は一気にお通夜ムードになってしまった… 
かと思いきや 

案外のんきなもので 
「屋上に閉じ込められるとかウケるなwww」 
「トイレだけ我慢大会だなwww」 
とか言って案外状況を楽しんでいた 
さすが落ちこぼれの俺達だ 



283:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/19(水) 02:09:01.36 ID:++chqLRB0
でもこれで屋上は使えなくなるかなぁとか 
いやいやまだ使えるっしょ、とか気楽に話してた 

午後の最初の授業が終わった辺りで、Kは戻ってきた 
さすがの俺たちも空腹が限界に達していてやばかった 
授業には戻ることになるけどそれでもいいや、って思った 

K「おうお前ら生きてたか」 
俺「ええまあ…」 
若林「すいませんした」 
とっとと謝って戻ってしまおうと思った 



284:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/19(水) 02:12:27.79 ID:++chqLRB0
Kにはこっぴどく叱られると思っていたが 
俺たちが予想したのはまったく違うものだった 

K「あのよ、お前らが授業受けないとかそんなのは本当にどうでもいいんだけど。 
屋上には来るんじゃねえよ。これは規則だから、破られたら困るの」 
俺「はい…」 

K「分かったら出てけ。いいな。」 
三人「はい…」 
K「あ、それと。別に授業には戻らんでもいいから。勝手にしろよ。 
ただ屋上には来るな」 



291:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/19(水) 02:16:33.65 ID:++chqLRB0
俺「え?…とそれは…」 
K「どうせ授業出たってやることないんだろ?まあいいや好きにしろ」 
Kは半笑いで俺たちに向かって言った 

若林「は?」 
K「いいから。さっさと降りろ。俺も忙しいんだよ」 

促されるままに俺たちは屋上から続く階段を降りていった 
そしてKはそのまま俺たちなんてなかったかのように 
何も言わずに階段を駆け下りていった 



293:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/19(水) 02:21:27.40 ID:++chqLRB0
Kのこの態度は俺の心に深く突き刺さった 
礼二と若林がどうだったかは知らないが 
俺は正直、心のどこかで怒られることを期待していたのかもしれない 

先生からの当てつけ、そんなもの今に始まったわけではないが 
この日のKの俺たちに対する仕打ちを、俺は忘れることができない 
階段の踊り場で呆然と立ち尽くす俺達は 
本当に惨め以外のなんでもなかった 



299:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/19(水) 02:30:49.68 ID:++chqLRB0
悪いのは俺たちだ 
「ほら急げ!授業に戻れ!」という注意すらされない 
落ちこぼれだって言って、でも本当はどこかで間違ってるってことも分かってたんだと思う 
全部諦めたふりをして、諦めきれていないものがあるんじゃないかって 

俺たちはこの日そのまま帰った 
授業中の教室から荷物だけむしり取って 
三人で自転車に乗って帰った 

礼二と若林は話していたけど、俺だけがずっと黙っていた 



303:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/19(水) 02:43:08.38 ID:++chqLRB0
その後終業式を終えて 
俺たちの高校1年ライフは幕を閉じる 
今思えばけっこう濃い一年だったな、色々あったわ 
でも、高校2年の一年はもっと濃いんだよな 

春休みには、何故か補習がない 
これは俺らにとっては大助かりだった 
礼二の家か俺の家に集まって頻繁に遊んだ 
若林は遠いのもあったが、頑なに自分の家に人を呼ぼうとはしなかった 



309:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/19(水) 02:47:35.46 ID:++chqLRB0
とにかく俺たちはゲームの趣味が合った 
元々若林と俺もゲーム好きだったし、礼二もそういうことに詳しい 
三人で集まって狂ったようにドカポンとスマブラをやってた 

この春休みを利用して「クソゲー探訪」なるものも企画して 
各々クソだと思うゲームを持ち寄って 
クリアするまでやめられないというドMな耐久大会もやったりしたw 

馬鹿そのものだったけど、本当に楽しかったなぁ 



311:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/19(水) 02:52:05.22 ID:++chqLRB0
そして新年度が訪れる、4月だ 
2年になるとクラス替えがあり、文系と理系も分けられる 
俺と礼二は当然のごとく文系、そして文系のドンケツのクラスだった 
まあまあ予想通り、といったところだった 

若林だけは何故か理系を選択していた 
理系なんて色々大変なのになんで?と聞いても 
「まあどうせケツクラだし、理系でもいっかなと思ってw」 
とてきとうな事を抜かしていた 



313:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/19(水) 02:56:28.32 ID:++chqLRB0
そして初々しい新入生たちを見て、去年の自分を思い出した 
一年の春は必死だったなぁ…この中から俺のような落ちこぼれが出るんだろうか 
ともあれ、一番上のクラスから脱出して晴れて「ケツクラ」になれた 
その開放感は凄まじいものだった 

始業式当日から礼二と教室でハイタッチしたしなw 
「いえーい!念願のケツクラだぞ!」って 
まあ本当に嬉しかったんだけどな 



315:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/19(水) 03:03:04.06 ID:++chqLRB0
こうして落ちこぼれトリオは三人ともケツクラになって 
真の落ちこぼれになってしまったわけだけど 
そっちの方が気が楽で俺たちには好都合だった 

現に、ケツクラの雰囲気は今までのクラスとはかなり違っていた、と思う 
なんというか張り詰めたいやらしい緊張感というか、そういうのが無かった 

そして始業式から数日たった日、俺は律儀にも掃除に参加していた 
学校の掃除に参加するのなんて、ものすごく久しぶりなことだった 



316:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/19(水) 03:06:53.32 ID:++chqLRB0
場所は保健室 
保健室ってのはいいよな、学校でも異質な空間だと思う 
うちの高校の保健室は広くて、2つの組で保健室の掃除を行う 
片方がベッドや床など、もう一方が器具や水槽、外のベランダなど 

俺も久々の掃除ってこともあって揚々と作業に励んでたんだ 

「先輩?先輩じゃないですか?」 
と、俺を呼ぶ声が聞こえた 
だいぶ聞き覚えのある声だった 



321:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/19(水) 03:13:31.40 ID:++chqLRB0
振り向くと、小さな女の子が驚いた顔で俺を見ていた 
同じ中学の後輩のTだった 
部活が一緒だった(運動部なので男女違うが)こともあって 
割と仲の良い後輩だったんだ 

俺は凄く驚いた 
「T?Tじゃんか!」 
と一気にテンションが上がった 



324:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/19(水) 03:17:58.55 ID:++chqLRB0
まさか、うちの中学からこの高校に来る奴がいるとは思わなかった 
いるにはいるが、毎年は来ない 
それも見知った後輩のTだ、これは純粋に嬉しかった 

T「先輩がいるのは知ってたんですがwwまさかこんな所で会いますか?ww」 
俺「本当だよな!ってかTがここ来るなんて思ってなかったwwすごいなww」 
T「それは先輩もじゃないですかww先輩中学の時からすっごく頭良かったし!w」 

Tに自分が落ちこぼれであることなんて、絶対に言えない 



326:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/19(水) 03:22:36.30 ID:++chqLRB0
俺「いやいや…それは…w」 
後輩「私準クラ?になっちゃったんですよー…ついていけるか怖いです。」 
俺「凄いじゃんかぁ、頑張りな」 

どうしても見栄が出る、ここで「俺今年からケツクラwww」 
とはどうしても言えなかった 

後輩「あ、先輩!どうせならアドレス交換しときませんか?」 
Tがニコニコして携帯を取り出す 
俺「お、いいね!…あれ…携帯がねえぞ…」 
この時、俺はガチで携帯を教室のカバンに忘れていた 



356:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 00:20:28.67 ID:f1eAGm270
俺「あれ、マジでないや…ごめん…」 
T「えー先輩何言ってんですか…!私とアドレス交換するのそんな嫌ですか?w」 
俺「んなわけないじゃんwおっかしいな教室か?」 

本当に携帯を持ってないことに気づいて焦った 
せっかくの偶然とチャンスだと言うのに 



358:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 00:23:34.13 ID:f1eAGm270
俺「ちょっと抜けて教室今から行くわww」 
T「あ、それはダメですよ~w今掃除の時間なんですからw」 
真面目な子である 

俺「あ、そうかな…?」 
T「アドレスはまた機会があったらでいいですよ」 

そう言うとTはニコッと笑って自分の持ち場の方へと行ってしまった 
この時アドレス交換できていれば良かったんだが 



361:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 00:30:15.66 ID:f1eAGm270
そしてそのまま掃除は終わる 
持ち場の先生の元に2組が集合して報告会 
その日の反省点や要望を出し合う 

「おつかれさーっしたー」と号令をかけておしまいだ 
帰り際、Tが俺に笑って手を振ってくれた 
か、可愛い 
なんだか調子が狂ってしまうようだった 



362:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 00:35:36.96 ID:f1eAGm270
そして俺、この出来事を礼二と若林に伝えられず。 
わざわざ自分の中学から後輩が来たよ、って言うのもおかしいかなと思った 

俺は次の日の掃除の時間が楽しみだった 
驚きなことに、俺は高校一年のあいだ一人たりとも女友達がいなかったのだ 
クラスの女子と会話程度はしていたが 
だからこそTに会えるのが楽しみだった 



365:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 00:39:35.04 ID:f1eAGm270
でも次の日掃除場所の保健室に行くとTの姿はない 
同じ組の子に聞いてみる、「今日Tはどうしたの?」 
「あ、風邪で学校お休みですよー」 

え?なんてタイミングの悪いやつだ、T 
こちとらその日はバッチリ携帯を準備していったというのに… 
でもどうせ明日もあるし明日でいっかって思った 

が…その次の日もTは学校を休んだ 
浮かれていた自分がなんだか恥ずかしくなった 



367:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 00:43:32.44 ID:f1eAGm270
そのまま週が変わって掃除場所もチェンジなわけだ 
はい、Tに会える機会は損失しました 
少し落ち込んだけど、同じ学校にいる限りいつか会えるだろうと思っていた 

正直新しいケツクラになってからは 
クラスメイトともそれなりに仲良くできていて 
女友達も数人できていたんだ 

一年の頃のクラスだったらTとの事は凄まじく後悔しただろうけど 
ケツクラでは心に余裕があったんだ 



369:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 00:51:07.47 ID:f1eAGm270
しばらくして、俺と礼二と若林は三人で一緒に帰ろうとしていた 
下駄箱に上履きを投げ捨て、「どこ寄ってくよー?」とか言いながら 
いつも通りの帰宅風景だ 

すると正面玄関のはしっこでTがポツンと一人で立っていた 
Tは俺に気付くと笑って手を振った 
俺も笑ってそれに返した 

礼二と若林もこれに気付いたが、特に触れることもなく 
その日はそのまま帰った 



371:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 00:58:26.42 ID:f1eAGm270
その日は別に何とも思わなかった 
別に正面玄関に一人でいてもおかしくはないだろう 
誰かを待っていたのかもしれないし、そんなのはよくあることだ 

その次の日は、若林が用事があるとかで確か礼二と二人だったんだけど 
またTが正面玄関の端っこの傘立てに座って一人でいた 
そして、俺に気付くと笑って手を振った 
俺は多少驚きつつも、手を振り返した 



372:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 01:01:42.28 ID:f1eAGm270
礼二がこれに食いつく 
礼二「あの子昨日もあそこにいなかった?」 
俺「そうだね。誰か待ってんじゃないの?」 
礼二「そっか。知り合い?」 
俺「ああ、中学の後輩よ」 
礼二「あ、なるほど」 

と、この日も特に何も気に留めずこのまま帰宅 



374:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 01:07:37.71 ID:f1eAGm270
そして次の日の放課後、また俺と礼二と若林は三人で帰ろうとしていた 
すると、またTが正面玄関の端に立っている 
さすがにこれには俺もすこし驚いた 

そして俺に気付くとまた笑って手を振ってくる 
礼二「あの子今日もいんじゃんw」 
若林「何?昨日もいたの?ってか誰?」 
俺「俺の中学の後輩だよ」 



376:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 01:11:44.93 ID:f1eAGm270
若林「お前にあんな知り合いいんだなw」 
俺「ひっでーなそれ」 
礼二「昨日もいたよねww」 

若林「そうなのか、変わり者だなww」 
俺「そんなことないと思うんだけどなぁ…」 

Tは一体何をしてんだろう? 
この時の俺にはTはの行動がよく理解できなかった 
というより、誰かを待ってるだけだろう、と思ってた 



379:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 01:20:58.37 ID:f1eAGm270
それから数回、俺達が授業が終わって通常の時間に帰る時は 
Tが玄関にいて俺を見つけると笑って手を振ってくるという事があった 
早々にサボって帰る時や、放課後校舎で時間を潰してから帰った日にはいなかった 

それから何回かして、また帰り際に正面玄関にTがいた 
いつものように笑って手を振ってくるわけだが、若林が言い出す 

若林「またあの子いるな。なんなんだろうな一体。 
おい5、お前の後輩なんだろ?」 
俺「そうだけど」 
若林「お前、なんかあった?」 



383:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 01:25:11.50 ID:f1eAGm270
俺「あ…」 
帰りながら、俺は礼二と若林に先日の掃除の一件を話した 

礼二「なんだよそれずりーな!ww」 
若林「ってかもう、それ完全にお前じゃん」 
礼二「5のこと待ってたんじゃん、ふざけんなよ」 

俺「いや、まだ分かんなくね?w」 
若林「ってかお前それ早く言えよ。知ってたらもっと早くなんとかしたのに」 



385:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 01:32:53.16 ID:f1eAGm270
若林はこういうことに何故だか熱い男だ 

若林「ってかそれお前と話したくてあそこでずっと待ってたってことじゃん。 
どんだけいい子なんだよ。お前、しっかりしろよ」 
俺「本当に俺かー?」 

仲は良かったけど俺に好意を持つなんて考えられなかった 

若林「他の人待ってたら笑って手なんか振るか?」 
礼二「5見つけるとめっちゃ反応するもんねww」 



388:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 01:50:31.78 ID:f1eAGm270
若林「そうとなりゃ、お前明日一人で玄関でろ。 
俺ら靴持って教員昇降口から出っからww」 
俺「えー…なんか恥ずかしいんだけど」 

若林「バカ言え。あのままずっと待たせる気かよ」 
礼二「ちゃんと事後報告してくれよw」 
と言われて、そういう事になってしまった 



392:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 02:07:36.35 ID:f1eAGm270
次の日の放課後 
若林「俺ら先行って靴持ってくるからw」 
そう言って若林達は下駄箱から靴を持ってきた 

そして俺は促されるままに、一人で正面玄関に行った 
その日も、Tは正面玄関の端っこに立っていた 

俺が一人で外に出ようとすると 
T「先輩!」 
俺を呼ぶ声がした 



393:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 02:10:39.05 ID:f1eAGm270
T「今帰りですか?」 
俺「そうだよーTも?」 
T「私もですww」 

そう言うとTは笑いながら答えてくれた 
T「今日は一人なんですね」 
俺「そうだね…」 
会話がなかなか進まない 



399:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 02:14:51.13 ID:f1eAGm270
T「話すの掃除の時以来ですよねw」 
俺「そうだねーwあの時はビビったw」 

T「先輩、今日は携帯持ってますか?」 
俺「持ってるよww」 
T「あ、じゃあ良かったらアドレス交換しませんか? 
こんなところで申し訳ないんですけど…」 
俺「あ、全然いいよ!w」 

どうやら、Tは本当に俺を待っていたようだ 



404:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 02:21:26.35 ID:f1eAGm270
この時、本当に焦った 
まさか本当に俺とアドレス交換したかったって思わなかったから 
そう考えると、Tにすごく悪いことをしたような気になった 
若林の言ってたことがビンゴだったじゃないか 

T「なんか突然すいません…」 
俺「いや、全然いいってwアドレス交換しようって話してたしねw」 
T「ありがとうございます」 
Tは本当に嬉しそうににこにこ笑った 



407:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 02:29:46.83 ID:f1eAGm270
T「あ、じゃあ…私これで帰ります」 
俺「うん、気をつけてねw」 
T「さようならー」 
Tはそう言って笑って手を振って帰って行った 

その後俺は少し間をおいて外に出ると、後ろから背中をバシッと叩かれた 
俺「イテッ」 
礼二「お前wwww何やってんだよwww」 
俺「は?教員用の方から出てったんじゃねーの?」 

若林「わり、下駄箱の陰から見てたわw」 
俺「ふっざけんなよww」 



411:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 02:34:17.16 ID:f1eAGm270
その後いつものように三人で自転車を並べて帰るわけだが 
いつになくハイテンションモード 

礼二「お前さー!マジさー!一緒に帰れたんじゃねー?ww」 
俺「いきなりは困るだろwww」 

若林「いけたなーアレは。ってかあれもう完全に惚れてるじゃん」 
俺「いや分からんだろー…」 



413:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 02:39:59.93 ID:f1eAGm270
礼二「いいねーーー!!青春はさーー!!」 
河原沿いの道を自転車で走りながら礼二と若林は叫びだす 
若林「くそがーーーー!!!」 

馬鹿丸出しだったと思う 
でもそれを見てるのがおかしくって 
俺も一緒に大笑いしてしまった 



417:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 02:46:46.62 ID:f1eAGm270
その日早速Tからメールがあった 
確か「今日は本当にありがとうございます」みたいな内容だった 
本当に律儀な子だ 

メールをしてるうちに気付いたが、Tは俺の下駄箱の位置から 
俺がケツクラあるいはそのクラス帯である事はなんとなく分かっていたらしい 
でもそんなことは全然気にしていないようだし 
本当に俺は考えすぎだったんだな 



420:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 02:53:39.22 ID:f1eAGm270
Tからメールで、何か部活入ったほうがいいんですかね?みたいに聞かれたので 
部活に入ったほうが居場所は見つけやすいんだろうなぁと思った俺は 
とりあえず気になるところは見に行ったほうがいいよ、と伝えた 

若林と礼二に出会えたからいいものの、俺は部活やらなかった事を少し後悔してたし 
文化系の部活なら勉強とも両立しやすいだろうし 
Tなら大丈夫だろうけど新しい環境にすぐ溶け込めるようにしてあげたかった 



424:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 02:59:48.90 ID:f1eAGm270
すると、Tは軽音部に入ることに決めたらしい 
校内でギター背負ってる奴とかたまに見かけるし 
やる気のないうちの部活の中では貴重な、割とまともに活動してる部活だった 
あの小さなTが、ギターかかえてるところを想像するとなんか可笑しかった 

そしてTと俺との一件があってから、俺たち三人のサボり病がまたぶり返した 
4月最初はなんとかこらえていたが、徐々に耐え切れなくなったんだろう 



427:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 03:05:21.12 ID:f1eAGm270
あの一件以来、若林と礼二の中でTがアイドル扱いになっていた 
ずっと待っててくれる健気な天使、と若林が勝手に称し 
それに礼二も悪ノリしていた 

「最近どうなん?」「あれから進展ないの?」と 
しばらくそればっかりになった 
けっこうな頻度でメールは来るが、特に進展はなかった 

正直、俺はすごく複雑な気持ちで 
なんだかモヤモヤしてしまい、授業をよくサボるようになった 



429:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 03:16:38.05 ID:f1eAGm270
Tは本当に俺が好きなのか 
もし俺を好きでいてくれてるとして、俺はどうしたらいい? 
俺はTが好きなのか? 
この時、本当にモヤモヤ悩んだ 

何をそんなに悩む必要があったのか分からないんだけど 
目の前の状況を受け入れられなかったんだと思う 

それで頻繁に礼二と若林を連れ出して授業を放棄した 



431:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 03:30:43.75 ID:f1eAGm270
そんなこんなで、しばらく今までどおりの自堕落な生活を送っていた 
教室にいて寝てるか、中庭で時間を潰すか、帰るか 
反省せずにたまに屋上に行くこともあった 

やる気が起きず、教室でただ寝てるだけって時間も増えていった 

そんなこんなで6月くらいになった 
Tからのメールは相変わらず来ていて、どうやら軽音部はとても楽しい様子 
楽しく過ごせているみたいで良かった 



434:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 03:40:04.69 ID:f1eAGm270
その日俺は昼飯の量が少なくて、腹が減ったので午後最後の授業をサボって帰った 
礼二は熟睡していたので放置、若林もメールしたが返答なしだったので 
一人でこっそり教室を出て行った 

この日は運が悪かった 
授業中で生徒に会わないはずなのに 
一階の廊下でプリントを抱えたTとバッタリ会ってしまった 



436:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 03:45:09.01 ID:f1eAGm270
T「あ、先輩こんにちわーww」 
俺を見つけてTが笑顔で話しかけてくる 
俺はカバンをかついで完全に帰宅モード、どうするんだ? 
T「あれ、先輩帰るんですか…?」 

もう、どうとでもなれと思った 
俺「帰るよ。サボりってやつだねwwww」 

T「そうなんですか…でもそんな時もありますよね。 
気が乗らない時は無理しすぎちゃダメですもんね。」 
そう言って笑った 
どんだけなんだよ、君は 



438:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 03:49:07.21 ID:f1eAGm270
俺「そういうTは何してんの?」 
T「あ、先生に頼まれたのでwプリントコピーしてきましたw」 
雑用かよ、真面目過ぎる…と思った 

俺「手伝おうか?」 
T「私を手伝うくらいなら授業に出てください!w」 
Tはそう言ってまた笑った 



441:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 04:01:22.36 ID:f1eAGm270
俺も苦笑いしながら 
俺「そういえば、部活は楽しいみたいだね?」 
T「はい!すっごく楽しいです。楽器に慣れてくのも楽しいし、 
何より友達がみんな面白くてw」 

俺「それはなによりだねーw」 
T「先輩が部活入ったほうが良いって言ってくれたからです」 
T「ありがとうございます。」 
Tは笑顔でお礼を言ってそのまま階段を上って行った 



443:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 04:07:06.34 ID:f1eAGm270
ありがとうございます 
俺に向けられたその言葉の意味が分からなくて 
何度も何度も考え込んだ 
なんでこんな俺がTにお礼を言われてるんだろう、と思った 

何事も一生懸命で真面目に頑張っているT 
Tと話して、自分の空っぽさに気付いた 
俺は一体何をやってるんだ? 
帰り道で自転車に乗りながらずっとそんな事を考えてた 



446:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 04:17:09.68 ID:f1eAGm270
「変わりたい」そんな事は思わなかったけど 
変わろうともがいていたのかもしれない 
こんな落ちこぼれの自分をTが好きでいてくれるのが嫌だった 
なんというか、申し訳なかった 

それから夏休みまでの間は、極力授業を抜け出さないようにした 
それでも授業はほとんど寝てしまっていたし 
進歩なんてほとんどしていなかった 



448:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 04:25:40.15 ID:f1eAGm270
そして何も踏み出せないまま夏休みが近づいていた 
舞い上がった俺達は油断して終業式直前の日に 
授業をサボって中庭で炭酸ジュースで一杯やっていたw 

各々自販機で買った炭酸だ 
礼二「かーっ!やっぱ授業中に飲むコーラ最高だな!」 
若林「おまえそれやめろww」 
とか言って完全に油断して調子こいてたわけです 



450:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 04:33:59.87 ID:f1eAGm270
そこを偶然先生に見つかってしまう 
しかも運悪いことに、俺たちの担任の先生だった 

担任「お前ら何やってんだ?!授業中だぞー!?」 
急いで走って逃げた、後ろから「待ちなさい!!」と怒鳴られる 
それを尻目に俺らは一目散に校舎に戻って走った 

しかし逃げても俺と礼二はダメ 
そりゃそうだ、相手は担任なんだから 



452:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 04:38:16.63 ID:f1eAGm270
放課後担任に呼び出された 
結局若林も何故だかバレていて呼び出された 

こっぴどく叱られるかと思ったが半分もう愚痴だった 
「いい加減にしてくれんか?みんな真面目にやってんだぞ?風紀を乱すな。 
お前らは本当に不良だよ。」 

不良、と言われた事が笑えた 
こんな高校の、不良 
不良にもなりきれていない中途半端なもんだ 



453:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 04:41:57.79 ID:f1eAGm270
若林「俺たちが不良だってよ!!あほらしーなwwww」 
礼二「いえ~いww俺がヤンキーでーすwwww」 
俺「マジ可笑しかったなwwww」 

帰り道、三人で自転車に乗りながら相変わらずのテンションだった 
いくら俺が今の自分に悩んだところで 
三人でいると不思議と楽しくて、結局いつも通りになっちゃうんだよな 
三人で大笑いして、それが楽しいからいいんだとこの時は思ってた 



454:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/20(木) 04:50:38.28 ID:f1eAGm270
そんなこんなで担任に不良宣告を受けて 
俺たちは夏休みを迎えた 

もちろん補習があって学校に行かなくてはならない 
しかも今回は日程が分散していてなんだかめんどくさい 

それでも俺たちは夏休みが楽しみで仕方なかった 
この夏休みにやりたいことが沢山あったからだ 



477:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 00:13:52.42 ID:2diupWli0
この夏休みでやりたい事 
その第一が礼二の漫画の持ち込みだ 
とは言えこれは俺がやりたい事ではなく礼二のやりたい事だが 

それでも俺たちは礼二が漫画を描くことを凄く応援していたから 
礼二が漫画を持ち込みに行くのは他人事ではなかった 



478:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 00:16:40.13 ID:2diupWli0
俺たち三人でバカをやっている最中 
俺と若林は本当にただ毎日を浪費していたのに対し 
礼二はコツコツと毎日漫画を描いていたようだ 
それも、この夏に持ち込みに初挑戦する、と息巻いていたからだ 

礼二は基本賑やかで面白い奴なんだが 
時折弱音を吐くこともあった 
「漫画を一人で描くのは難しい」「気が滅入る」 



480:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 00:21:11.16 ID:2diupWli0
まったく絵心のない俺と若林は礼二の漫画制作を手伝えなかったが 
弱音を聞くことはできた 
礼二が真剣に語る時は、大抵悩んでいる時なんだ 
そんな時は俺らも親身になって話を聞いた 

やりたい事と現実の狭間で、礼二も不安を感じていたんだろうか 
それでも礼二は最後にはいつも「でもやっぱり漫画が好きなんだ」 
って笑顔で締めてくれる 
そこが礼二のいいところだった 



481:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 00:24:38.32 ID:2diupWli0
自分の好きな事を真剣に語る礼二を見て 
俺はいっつも言いようのない気持ちを抱いていた 
憧れのような、焦りのような… 
自分も礼二みたいに何かなすべき事が見つかるのかなって不安だった 

夏休みに入ってすぐくらいだったろうか 
礼二から俺と若林にやけにテンションの高いメールが届いた 



482:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 00:31:28.22 ID:2diupWli0
礼二の漫画が完成したことを伝えるメールだった 

その日俺たちは礼二の家に集合した 
礼二「やっとできたんだ…良かったら見てもらおうと思って」 
俺と若林はその出来立ての原稿とやらを恐る恐る眺めた 

俺たちは、礼二の描く漫画が好きだった 
さすがに雑誌に載ってるようなプロよりは絵はけっこう劣ると思うけど 
何より話が面白くて好きだった 
身内補正だったのかな、それでも好きだった 



484:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 00:38:23.79 ID:2diupWli0
俺「よく完成させたな、面白い」 
若林「俺も好きだよ」 
俺たちが軒並み褒めると、礼二も安心したのか 
「あ~まじか~~」と唸り声を上げた 
思わず全員でハイタッチを交わしてしまった 

礼二の夢が始まる気配がして、俺は本当に嬉しかった 
「あとは本番だ」と礼二は繰り返し俺らに語った 



486:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 00:41:38.31 ID:2diupWli0
その日の帰り道、若林が柄にもなく 
若林「あいつ、頑張ってるよな。俺も、何かしてえわ…」 
と俺に口をこぼしたのが妙に印象的だった 

普段、夢とかやりたい事なんて滅多に言わない若林だけに 
俺は珍しいこともあるもんだって驚いたんだ 
それだけ礼二の夢への前進は俺らにとって大きな事だったんだと思う 

その日からしばらくたって、礼二が東京に行くという日がやってくる 



489:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 00:47:31.28 ID:2diupWli0
前日、若林は俺の家に泊まって 
早朝、駅まで礼二の見送りに行った 
行くということは言っておらず、電車の時間だけ聞いていたので 
礼二はめっちゃ驚いていたw 

俺「おい、礼二!自信持って行けよーー!!」 
若林「お前ならいける!!びびんなよ!!」 
と言って俺らは礼二の肩やら頭をバシバシ叩いて励ました 



490:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 00:48:56.93 ID:2diupWli0
言葉足らずですまんwww 
この「礼二が東京に行く」ってのは漫画の持ち込みに行くってことなww 
転校とか引越しじゃないよ、間際らしくてすまんw 



492:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 00:53:56.55 ID:2diupWli0
礼二「分かってらw行ってくる」 
礼二は緊張していたのか、口数も少なく 
改札で俺たちに向かって深く頷いて電車に乗って行った 

若林「なんとか上手いこといくといいよな」 
俺「だね。あんだけ頑張って描いてきたんだし」 

俺たちも礼二から良い報告を聞けることを楽しみにしてた 
と、同時に漠然とした不安も当然あった 



494:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 01:00:15.57 ID:2diupWli0
礼二が帰ってくる電車の時間は夜だった 
俺たちはそれまでしばらく俺の家に戻ってダラダラしたり 
市民プールなんぞに行って涼をとったりしていた 

そんなこんなで夜になって、俺達は再び駅に行き 
礼二の到着を心待ちにしていた 



495:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 01:04:35.53 ID:2diupWli0
静かで人影まばらなホームに電車が着いて 
「これじゃね」と俺達が気づく 
が、その電車から礼二は降りて来ず 
一本、二本…と後続の電車からも降りてこない 

結局それからだいぶ待って、礼二が降りて来たのは 
予定より三本も遅い電車だった 



496:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 01:07:05.30 ID:2diupWli0
俺たちは礼二を見つけると 
「おつかれさーん」と手を振った 
が、礼二は反応しない 

俺たちの前まで来ると、顔も合わせず「ごめん」とだけ言って 
駅の出口から走って行ってしまった 




498:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 01:11:40.02 ID:2diupWli0
「礼二どうしたんだよ!!」と言っても 
声をかける間さえないまま礼二は走って行ってしまった 
俺たちも急いで駅の駐輪場の方へ走って追いかける 

駐輪場で自転車の鍵を開けている礼二を若林が捕まえる 
若林「おい!俺たちずっと待ってたのに黙って行っちゃうなんてあんまりじゃねえか」 
俺「何があった?」 



499:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 01:16:24.72 ID:2diupWli0
若林「そんなにダメだったのか…?」 
俺たちが何だか励ましムードみたいなものを発動した瞬間 
礼二はカバンから原稿が入った封筒を取り出した 

礼二「こんなのじゃ…無理なんだ…!」 
礼二はそう言ってその原稿をビリビリに破り捨てた 
突然の事に、俺も若林もあっけにとられた 
そして礼二はそのまま自転車に乗って行ってしまった 



500:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 01:22:58.28 ID:2diupWli0
若林「おい!俺はこれ拾ってくから、お前早く追いかけろ!」 
礼二は捨てられた原稿を集めながら俺に言った 
俺は促されるまま急いで自分の自転車に乗って礼二を追いかける 

立ち乗りで、全力で自転車を漕いだ 
前方に小さく見える礼二を必死で追いかけた 
すると、夕方降った雨のせいで路面が悪かったのか 
礼二は角で曲がりきれずに派手に転んだ 



501:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 01:27:06.10 ID:2diupWli0
礼二はそのまま道にうずくまった 
俺は焦ってすぐに自転車を止めて礼二に駆け寄る 
礼二「ぅぅ…いってえ……」 
俺「おい、大丈夫かよ…」 

礼二「くっそ…なんでだよ…なんでだよ…」 
礼二はそのまま下を向いて泣き始めた 
俺は泣き崩れる礼二にかける言葉が思いつかず 
そのまま黙って見ているしかなかった 



502:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 01:30:29.69 ID:2diupWli0
しばらくして、若林が俺らに追いついた 
若林「なんだこれ」 
俺「転んだ」 



504:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 01:36:17.45 ID:2diupWli0
若林「おい、礼二。お前これどういうつもりなんだよ」 
そう言って若林は雨水でぐしゃぐしゃになった原稿をヒラヒラさせた 
俺「礼二、いきなり逃げるなんてあんまりだぞ」 

礼二「ごめん…ただ、申し訳なくて…」 
礼二は泣き崩れた顔で必死に謝った 
礼二「あんなに二人とも楽しみにしてくれてたのに、自分情けなくなっちゃってさ」 



505:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 01:42:53.97 ID:2diupWli0
礼二「俺もう漫画描くのやめようかなぁ…向いてないんだよ」 

若林「たった一度の失敗でやめんのか?本当にやめんのか?」 
礼二「もういいんだ…漫画家なんてなれっこねえよ…」 

すると若林が拾った原稿を礼二につきつけた 
礼二「…は?」 
若林「書けよ、続き。俺は読みたいんだよ、その続きが」 



506:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 01:47:25.83 ID:2diupWli0
若林「漫画家になるのが難しいなんて、そんなのお前が一番分かってんじゃねえの?」 
礼二「ああ…」 
若林「漫画が好きなんだろ?」 
そう言うと礼二は黙って原稿を受け取って、泣きながら頷いた 
なんだか俺も泣きそうだった 

若林「忘れんなよ、読者一号は俺だからなw5は二番目なww」 
俺「は、なんでだよww」 



509:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 01:51:17.88 ID:2diupWli0
その日俺たち三人は、その場で泣き笑いしながら遅くまで話した 
めちゃくちゃに腹が減って帰りに三人で一緒にラーメンを食べて帰った 
その日に三人で食ったラーメンが信じられない程に美味くて 
いまだにこの時のラーメンを超えるラーメンに俺は出会っていない 

三人とも、なんというか凄い全力だった 
本気でぶつかり合えるっていいよなって実感した日だった 



515:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 02:51:57.40 ID:2diupWli0
戻りました 

この一件からしばらくたって 
長期休暇の定番とも言える補習がやってくる 
補習はしんどくて嫌だったのだが 
何故だか今回の補習は午後からだった 

教室や、自習室との解放の兼ね合いなのだろうか 
俺たちは朝遅くまで寝ていられることに狂喜したね 



516:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 03:07:51.59 ID:2diupWli0
でも午後開始だったので 
家から出る時間が一番熱くて仕方なかった 
毎回汗だくになって学校まで自転車をこいだ 
補習に行くっていうのにタオルと制汗スプレーを持っていくのが馬鹿らしかった 

補習何日目かの帰り、正面玄関で楽器を担いだ連中と出くわす 
軽音部のご一行のようだった 



518:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 03:18:53.15 ID:2diupWli0
あ~補習が午後だと部活やってる連中らと帰りがかぶるのか 
と気づいてなんだか恥ずかしい気持ちになった 

T「先輩、こんにちは!」 
Tが、俺に声をかけてきた 
若林と礼二も一緒だったので、Tはその二人にも笑って「こんにちは」と声をかけた 

若林「やべー!!」 
若林が急に声を上げた 



519:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 03:22:32.48 ID:2diupWli0
若林「おい、礼二のあれ、やばいんじゃねーか?」 
礼二「あ、そーだわwww」 
若林「ちょっと俺ら一旦教室戻るから、今日は先帰ってww」 

と言って若林と礼二はそそくさと正面玄関から引き返していった 
俺「あれって何!!?」 
と聞いてももう遅くて二人は一目散に階段を上って行った 



520:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 03:30:00.41 ID:2diupWli0
正直迫真の演技だった 
本当に何か忘れてて教室に戻ったかのように見えただろう、Tには 
俺「なんかあいつら、大変みたいね。」 
T「大丈夫なんですかね…?」 

俺「Tも、部活の人と一緒に帰らなくていいの?」 
T「大丈夫ですよ、同じ方向の子あんまりいないんですw」 



521:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 03:33:03.87 ID:2diupWli0
これはやられた!と思った 
もうこれは完全に二人で帰る流れじゃないか 
この時俺はTに大して色々複雑な気持ちだったから 
正直二人きりで帰るのが怖かった 

俺「じゃ、途中まで一緒に帰ろうか?w」 
T「はい、いいですよw」 
そう言うとTは頷いて笑った 



522:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 03:37:16.30 ID:2diupWli0
俺「そのギター、重そうだねw」 
T「あ、今ギターって言いました?これベースなんですよw」 
Tはその小さな体に重そうなベースを背負っていた 

T「間違えないでください!」 
そう言うとTは怒ったふりをした 
俺がごめんごめん、と言うと 
T「許しますww」 
って言って笑った 



524:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 03:43:09.90 ID:2diupWli0
俺が駐輪場の方に向かうとTが正門に向かっていった 
俺「あれ?自転車はどうしたの?」 
T「今日昼間親の車で来ちゃったので…」 
Tが申し訳無そうに言った 

俺「じゃあ迎え呼ぶのかい?」 
T「歩いて帰ろうかな、ってw」 
俺らの中学の方まで歩いたら一時間近くかかるんだが 
Tはそれを平然と言ってのけた 



525:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 03:48:02.25 ID:2diupWli0
俺も自転車を引いて歩いた 
自転車を挟んで、右隣をTがが歩いた 

T「先輩は今日は…」 
俺「あ、俺補習なんだよww恥ずかしいことに…w」 
T「あ、そうなんですかー?ちゃんと勉強しないとダメじゃないですかw」 
Tには俺がケツクラとか補習とか本当にどうでも良かったんだろう 



526:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 03:53:26.17 ID:2diupWli0
俺「Tは?部活楽しいの?」 
T「それはもう、楽しいですw」 
俺「楽器はベースなんだ。シブイねw」 
T「ベースかボーカルなんですよね」 

Tがマイクの前で歌ったりベースを弾いてるところを想像すると少しワクワクした 
T「でもボーカルの方が結構誘われるんですよねw」 
ああ、きっとまだベースはそんなに上手くないのかな? 
って思うとなんか微笑ましかった 



528:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 03:57:42.17 ID:2diupWli0
T「いつかライブもやるんで、その時は先輩来てくださいね」 
俺「うん、行くよー!」 

T「先輩は最近どんな感じですか?」 
そう聞かれたので、俺も負けじと 
渾身のケツクラエピソードやサボって怒られたエピソードを披露した 
Tは要所要所で「なんで?w」とか「どうしてそんなことをw」 
とかツッコミを入れながら笑ってくれた 



529:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 04:03:58.49 ID:2diupWli0
ふとTが急に真面目な顔になった 
T「先輩はいつも楽しそうです」 
俺「え?」 

T「たまに見かけるんです。先輩がまだ昼休みなのに帰ってたり、 
中庭でジュース飲んでサボってたり。」 
俺「知ってたんだww恥ずかしいなおいww」 
T「いつも友達と一緒に笑って楽しそうにしてますよね。」 



530:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 04:06:55.16 ID:2diupWli0
T「そういうのって、私は素敵だと思います」 
Tはそう言うと俺の方を見てにっこりと笑った 
俺「…かな?w」 

こっちを見て笑われたので、俺もなんだか照れてしまった 
Tは、俺のことを見ていたんだ… 
そう思うとTの俺への気持ちが、いよいよ確信を帯びてくる気がした 



531:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 04:10:59.97 ID:2diupWli0
その日の空はめちゃくちゃ真っ赤で 
Tが空を指さして「先輩見てください!空がめっちゃ綺麗ですよww」 
と言って俺の自転車のかごを揺らしてはしゃいでいたのを覚えてる 

二人で綺麗だねーって言って空を眺めて一緒に帰った 

それからしばらくして、無言が続くようになったので 
Tが疲れちゃったのかな、と俺は思った 



532:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 04:14:13.73 ID:2diupWli0
あんまり歩かせて疲れさせるのも悪いかな、と思った俺は 
俺「T、後ろ乗る?二人乗りして帰っちゃお」 
と誘ってみた 

けどTは思い切り首を横に振った 
T「やや、恥ずかしいです恥ずかしいです…!」 
と言ってもの凄く焦っていた 

Tが恥ずかしがって二人乗りを頑なに拒否するので 
俺たちは地元まで1時間かけて歩いて帰った 



533:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/21(金) 04:17:20.82 ID:2diupWli0
今思えば、とてつもなく幸せな時間だったというのに 
この時の俺は、この一日でだいぶ疲れてしまった 

女の子と一緒にいるのはすごく楽しいけど、疲れる 
何よりあの変にドキドキする感覚が、俺はなんだかむず痒かった 
そして、俺は今女の子と歩いてるぞ、と周りに優越感を持つような 
そんな感覚も嫌だった 

俺はまだまだ子供だったんだと思う 



582:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/23(日) 02:10:07.34 ID:GXKkqmTx0
次の補習の時 
礼二と若林に散々このことを茶化された 

若林「一緒に帰ったなら良かったじゃねえか」 
俺「別に…よくはねえだろ…」 

俺がこう言うと若林がなんとも不思議そうな顔をした 
若林「お前さぁ…何言ってんの?」 



584:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/23(日) 02:13:29.82 ID:GXKkqmTx0
若林「お前…Tちゃんの事どう思ってんの?」 
俺「いや…それは…」 
若林は、痛いところを突いてくる 

若林「俺達があの子のこと可愛い、とか言うとお前嫌がるじゃん」 
俺「それは…」 
若林「好きなの?」 
俺のTへの気持ちは本当に何て言ったらいいか分からなかった 



585:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/23(日) 02:16:22.01 ID:GXKkqmTx0
俺「そりゃ好きか嫌いかって言ったら…好きな方には入るけど…」 
若林「けど…?」 
俺「Tは、俺なんかと一緒にならない方が良いというか…」 
この時、礼二は黙って聞いていた 

若林「なんだそれ」 
若林はひどく馬鹿にしたような顔だった 
若林「めっちゃ自分勝手な事言ってんのな」 



587:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/23(日) 02:21:20.37 ID:GXKkqmTx0
若林「強がってんじゃねえよ。お前はどう思ってんだよ」 
俺「だってTは俺なんかとじゃ…」 
若林「お前、絶対後悔するからな。よく考えろよ?」 
俺は何も言い返せなかった 

このあと、礼二も若林もTのことについては触れなくなった 
困ったら俺から言い出すし、人の恋愛にあまり口出ししたくなかったんだろう 
後々、若林の言った通りになっていくんだけどな… 



591:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/23(日) 02:26:41.89 ID:GXKkqmTx0
それからまた数回後の補習の時 
帰りの正面玄関で、Tが立って待っていた 
T「先輩一緒に帰りませんか?」 
今度は偶然じゃない、Tが待っていたんだ 

あの重そうなベースを背負って 
少し暗くなった正面玄関の端っこに立っていた 

若林と礼二も一緒だったのに、Tは意を決したかのように 
俺に向かって話しかけてきた 



594:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/23(日) 02:34:04.49 ID:GXKkqmTx0
まあ、この日が運命の日だったんだけどな 
後にも先にもずっと忘れない日だわ 

俺はその場で若林と礼二に「わり、先帰ってくれ」って頼んだ 
そうするとあいつらは黙って笑って「じゃあな」って言って帰った 
俺がTに「じゃ、一緒に帰ろっか」と言うと 
Tは笑って俺の方を見て「はい」って頷いてくれた 



596:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/23(日) 02:37:39.78 ID:GXKkqmTx0
その日は時間が少し遅かったのだろうか 
太陽はほとんど沈みかけてて 
空のふちはオレンジ色なんだけど、上の方は既に暗くなっていた 

駐輪場に行くまでのあいだ、 
Tがやたらとニコニコしていて、 
T「先輩とまた一緒に帰れて嬉しいですw」 
なんて言っていた 



598:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/23(日) 02:41:20.58 ID:GXKkqmTx0
俺も嬉しかったんだけど 
なんだか怖かったんだ俺は 
何が怖かったんだろう、こんなにいい子が自分の前にいることか 
はたまた自分に素直になれないチキンだったのか 

そのまま二人で並んで自転車に乗って 
地元の方に向かって走りだした 
走ってる間もTがずっとこっちをチラチラ見てくるので凄く緊張した 



599:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/23(日) 02:46:03.85 ID:GXKkqmTx0
帰り道の、いつも通る神社の前が異様に賑わっていた 
太鼓のような音や、人の賑わいの音に食べ物の匂い 
そしてチラホラ通り過ぎる不良の群れに、警察官 

Tが「先輩、縁日ですよ、縁日!」 
Tが嬉しそうに指をさして言った 
俺「本当だ、賑やかだと思ったら、お祭りなんだね。」 

T「少し寄って行きませんか?」 
Tが申し訳なさそうにはにかんで言った 
そんな風に言われたら、ダメとは絶対に言えない 



601:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/23(日) 02:53:22.85 ID:GXKkqmTx0
気が遠くなるほど自転車がとめてある(倒れている)駐輪場に自転車をとめて 
「先輩はやくはやくw」 
とTに急かされて縁日をやっている神社の方へと向かう 

出店の並ぶ道に出ると、色とりどりの灯りや人々で一杯だった 
さすがに俺もそれを目の前にしてワクワクした 
俺「なんかいいね、こういうのw」 
T「テンション上がりますよねw」 



602:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/23(日) 02:56:40.52 ID:GXKkqmTx0
ここは一つ先輩の甲斐性を見せてやろうと思った 
俺「何か食べたいものとかないの?おごるよw」 
T「え?本当ですかー!でも悪いですよ。」 

俺「いいのいいのw今日は特別w欲しいのあったら言ってよ」 
そう言うとTは「じゃあどうしよう…w」と言いながら 
目をキラキラさせて脇の出店をじっくり見回した 



604:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/23(日) 03:01:58.10 ID:GXKkqmTx0
T「綿飴が食べたいです」 
Tは恥ずかしそうにそう言った 

二人で綿飴屋さんの前に行った 
制服だったので、店のおっちゃんに 
「学校帰りかい?いいね~仲良しでw」と茶化されたw 

これには二人で笑ってしまった 
Tも「仲良しですもんねw」と言って笑っていた 



605:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/23(日) 03:07:34.71 ID:GXKkqmTx0
神社のわきの石段に二人で座って綿飴を食べた 

T「綿飴ってお祭りっぽくて大好きなんですw」 
俺「そうだよね~こういう時じゃないと食べれないもんね~」 
Tが綿飴の食べ方が下手くそだったので 
俺「お前下手だな~w口についてるぞww」 
と言うと 
T「先輩だって制服に綿ついてますよ?w」 
と二人で下らないやり取りをしてしまった 



606:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/23(日) 03:11:43.38 ID:GXKkqmTx0
わきの石段だったので 
少し離れた出店の群れの灯りがまぶしかった 
急にTが思い立ったように石段からぱっと降りた 
石段に座る俺を見上げるようにしてTが喋り始めた 

T「今日先輩と一緒に来れてすごい楽しかったですw」 
俺「俺も楽しかったよw」 
この雰囲気は、もしかして… 



607:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/23(日) 03:15:41.21 ID:GXKkqmTx0
T「私…先輩の事が、好きです。 
この学校に入って、先輩が居てくれて本当に嬉しかったです。」 
俺はTの言うことを黙って聞いていた 
ところどころ詰まりながらも、必死に伝えようとする気持ちが分かった 

T「私と、私と…付き合って下さい…」 
俺は自分の心臓が止まるんじゃないかって思うくらいドキドキしてるのが分かった 

俺「ありがとう… 俺はTは凄くいい子だと思う… でも…」 



608:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/23(日) 03:25:13.26 ID:GXKkqmTx0
俺「付き合うことはできないよ…ごめん。」 

そう言うと、Tは途端に涙目になって必死で笑顔を作った 
T「私じゃ、ダメですか…」 
俺「ごめんね…」 

もうほとんど泣きながら、でも必死に笑ってTは 
「なんか変な事言ってごめんなさい、せっかく楽しかったのに…」 
「私、今日は帰りますね」 
そう言って、俺の前から顔をおさえて走って行ってしまった 
俺は、一人になってしまった 



609:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/23(日) 03:29:16.24 ID:GXKkqmTx0
なんで、俺はこの時こんな事を言ってしまったのか? 
今でもずっとずっっと後悔してる 
全て、若林の言った通りになったんだ 
俺は、Tが好きだった、大好きだった 

でもこの時の俺はまだそれに気づいてなくて 
後々Tへの気持ちがぶり返してしまう時が来るんだけど 
それはその時が来たら、書きます 

今日はこのあたりで落ちようと思います 
続きはまた明日 



672:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/25(火) 01:40:23.59 ID:DYNEJ8Xb0

こんな俺が、Tを「ふった」その日から 
俺はとてつもなく無気力になった 
何をするにも、やる気が起きない 
どんなことも無意味に感じる 
何をしても面白くなかった 



676:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/25(火) 01:50:22.35 ID:DYNEJ8Xb0
若林にも礼二にも、散々言われた 
「お前何やってんだよ」 
「お前今後あんな子と一生付き合えないぞ?w」 

夏休みの途中だったというのに 
毎日悩んでばかり 
どうしてTをふってしまったのか、自分でも分からなかったんだよ 
Tは俺なんかと一緒じゃないほうがいいって? 
じゃあ俺は一体誰と一緒になるんだよ 

でも当時の俺にそんな考え方をする余裕はなかったんだよな 



678:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/25(火) 02:07:19.44 ID:DYNEJ8Xb0
夏が何もしないままどんどん過ぎてった 
Tのことは悩んだけど 
時間が過ぎていくにつれだんだん忘れていったよ 

Tとの一件、礼二の持ち込みの事件、そんなことがあって 
俺の高校二年の夏休みは終わった 
本当はもっともっとやりたいことがたくさんあったんだけど 
なかなか実行に移せなかった 
正直、後悔の多い夏休みだ 

できることなら、もう一度戻ってやり直したいくらいだよ、本当に 



680:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/25(火) 02:12:57.82 ID:DYNEJ8Xb0
でも正直、俺に彼女ができなくて良かったのかも、とも思える 
もしこの時俺がTと付き合っていたら 
礼二と若林とつるむのも終わっていたかもしれない 

俺がTと付き合わなかったので、夏休みが明けても 
俺たちは相変わらず3人で馬鹿なことをする毎日だった 
道の脇の水路に自転車突っ込んで遊んだり 
神社で野球してる小学生に乱入してみたり 
やることが無さ過ぎて中学生みたいなことばかりしてた 



682:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/25(火) 02:25:41.78 ID:DYNEJ8Xb0
そんな中、夏休みが明けてしばらくしてから礼二に異変が起き始めた 
しょっちゅうノートを持ち歩いては授業中も絵を描いていたのに 
俺たちの前で絵を描く素振りを見せなくなったんだ 

「最近漫画の調子はどう?」 
と聞いても曖昧に答えるばかりでハッキリとしない 
少し前までは自分から漫画の進み具合とか 
考えたキャラクターとか見せてきたくせに、 
これはどう考えもおかしかった 



685:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/25(火) 02:36:06.55 ID:DYNEJ8Xb0
これを若林に聞いても「そんな時もあるんだろ、もの作りって」 
と大して気にしていない様子だった 
ただ、俺とTの一件以来礼二はひたすら 
「俺も彼女が欲しいなー」と言ってたのでひっかかったのだ 

そして礼二のおかしな行動は更に加速した 
俺と若林とあまり一緒に帰らなくなったのだ 
今までは必ずと言っていいほど一緒に帰っていたのに 
礼二に何か起きてるんじゃないかって心配だった 



687:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/25(火) 02:43:55.26 ID:DYNEJ8Xb0
それから、ある日の放課後礼二が「今日は予定あるから先に帰っていいよ」 
と言ったので俺と若林は礼二をおいて先に帰った 
「あいつやっぱり最近付き合い悪いなー」とか言いつつ 
近所のコンビニに寄って立ち読みしたり結構時間を使ってから帰った 

それから若林が「欲しい漫画がある」と言って 
帰り道の本屋に寄ったんだ 



689:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/25(火) 02:47:51.24 ID:DYNEJ8Xb0
自転車を止めてすぐに若林がニヤニヤしながら俺に話しかけてきた 
若林「おい!これ見ろよw」 
そこには礼二の自転車があった 
あいつは自転車の後輪のカバーに変なシールを貼っていたので 
礼二の自転車だとすぐに分かったんだ 

俺「うわww誰かと一緒なのかな?」 
若林はガラス戸の入り口から店内をのぞきに行った 

若林「いたいたwwwレジにいたwwww」 
と言って急いで戻ってきた 



691:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/25(火) 02:50:48.96 ID:DYNEJ8Xb0
若林「女の子と一緒だったわwww 
つかやばい、隠れるぞwww」 
そう言って若林はすぐに自転車に乗った 

俺たちはそのまま来た道を戻って 
反対側の遠くの歩道から本屋を眺めるような体制をとった 



693:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/25(火) 02:56:43.93 ID:DYNEJ8Xb0
本屋の駐車場から自転車に乗った男女が出てきた 
礼二の奴、なかなか可愛い女の子と一緒だった 
俺「あの制服…××高かな?」 
若林「ああやっぱりそうなんだ。たまに見かけるもんな」 

相手の子は俺たちの高校の近所の高校の子だった 
礼二も女の子と一緒に帰る… 
正直この事実は俺にとってショックだった 



695:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/25(火) 03:02:29.99 ID:DYNEJ8Xb0
この帰り、俺は妙なテンションだった 
俺「そっか礼二…こういうことだったんだな…」 
若林「ま、俺ら高校生だぞ?好きな子の一人くらいできるだろ?w」 


俺「でもなんていうか…言ってほしかったな…」 
若林「そりゃ俺らの勝手な言い分だろ。言う必要もないしな」 
俺「でもさぁ…」 
若林「ま、そのうち耐えきれなくて向こうから言ってくるさw」 
俺はそんなもんなのか、と少々納得できなかった 



698:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/25(火) 03:06:21.64 ID:DYNEJ8Xb0
俺「でも、漫画描くのやめちゃうのかな」 
若林「ばかwやめるわけねーだろw 
恋ってのはまわりが見えなくなっちまうもんだろwそのうち元に戻るよw」 
俺「そんなもんか」 

若林「まあ、Tちゃんをふったお前にはいまいち分かんねーかもなw」 
俺「は?じゃあお前は分かるのかよ?w」 
若林「さあww」 
若林は俺の質問をはぐらかした 

正直俺も、この時恋ってのがどんなものなのか分からなかったし 
本当の恋ってどんな風になるんだろうってピンと来なかったんだ 



718:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/26(水) 02:47:35.05 ID:Sa9xggly0
それからの礼二はさらに行動が加速していった 
授業が終わるととっさに教室を出ていなくなる 
土日も大抵予定がある、と言って遊ばなくなった 
付き合いがどんどん悪くなっていった 

別に好きな子(あるいは彼女?)ができたのは全然いいが 
俺たちに黙ってこそこそされるのはあまりいい気がしなかった 
でも礼二は礼二なりに気を遣っていたのかもしれないな 



721:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/26(水) 02:50:46.13 ID:Sa9xggly0
ある日、授業をサボって抜けだして 
中庭に三人でいる時にとうとう若林が仕掛けたんだ 

若林「礼二、最近何か忙しいの?」 
礼二「い、いやぁ…まぁ…」 
若林「わり、実は俺たち見ちゃったんだよ」 
礼二「え?」 



722:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/26(水) 02:53:59.43 ID:Sa9xggly0
俺「??高の子と一緒にいたよね」 
礼二「え、なんで…?」 
不意をつかれたのか礼二はすごく驚いていた 

若林「いや、偶然なんだよ…本屋で見かけて」 
礼二「あぁ、そうだったのか…」 
すると礼二は下を向いてなんだかおとなしくなった 



723:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/26(水) 03:01:16.41 ID:Sa9xggly0
礼二「あれ、中学の同級生なんだ。 
なんかごめんな、隠すようなまねしちゃって…」 
若林「いや、別にいいよ。あえて言うことでもないしなw」 

礼二は申し訳なさそうに苦笑いしていた 
礼二「なんだか俺馬鹿みたいだな…なんか言い出せなくてさ」 
俺「いや、気にすんなよw 彼女なの?」 
礼二「うん、そうだねww」 

嬉しそうにはにかむ礼二を見て 
本当に好きなんだろうなって気持ちが伝わってきた 



724:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/26(水) 03:04:23.98 ID:Sa9xggly0
俺と若林はそれを聞いて 
「ふっざけんなよーw」「やるじゃねーかww」 
とか言ってふざけてバシバシ背中を叩いた 

若林「漫画は描いてんの?」 
礼二「いや…正直、微妙だ…」 
若林「そっか。まあペースがあるしそんな焦ることでもねえか。」 

俺は漫画を描かない礼二が心配で 
正直嫌な予感がしたのだけど、そんな事は言い出せなかった 



725:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/26(水) 03:07:48.40 ID:Sa9xggly0
正直ここで 
「漫画描かねえのかよ?そんなんでいいのか?」 
とか言っても、なんか彼女が出来たことへのひがみみたいになってしまうし 
俺は「良き友人」を演じるため本音を言えなかった 
「やったなーおめでとうーw」 
などと上辺だけの言葉を吐いてしまった 

俺は、漫画を描く礼二が好きだし 
漫画について熱く語っている礼二が好きなのに 
色ボケしたような礼二が、なんだか嫌だったんだ 



727:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/26(水) 03:19:54.93 ID:Sa9xggly0
俺たちの高校の前の道にある金木犀が咲いて 
なんだかいい感じの香りがし始めた頃 
礼二の様子がもっとおかしくなった 

学校を数日連続で休んだかと思うと 
学校に復帰してきても一日中机に突っ伏して一言も喋らない 
普段うるさい礼二がこの状況になるのは明らかにおかしい 
俺の嫌な予感が的中してしまったんだ 



728:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/26(水) 03:22:36.63 ID:Sa9xggly0
俺「おい、礼二、どした」 
礼二「……」 
俺「なんかあったか?」 
礼二「……」 
俺「そうだ、あれ描いてくれよ、エアギアのキャラ。俺あれ好きなんだ。」 
そう言うと礼二は顔を上げた 

礼二「漫画なんかなぁ…もう一生描かねえんだよ!」 
あまりのことに俺はただあっけにとられた 



730:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/26(水) 03:26:54.38 ID:Sa9xggly0
そう言うと次の授業が最後だというのに礼二は教室を出て帰ってしまった 
「あんま帰りすぎると留年するぞ…」 
俺はそんなことをつぶやいて必死に冷静になろうと思ったけど 
無理だった 礼二のやつ、また何かやらかしたのか? 

俺一人じゃどうにもならない 
放課後、若林のところに行こう 
すぐにそう考えた 




732:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/26(水) 03:30:47.29 ID:Sa9xggly0
若林「どーせふられたんだろ。」 
若林に事情を話すと笑ってすぐにそう答えた 

若林「想定内のことだろw」 
俺「でも漫画を描かないって凄い剣幕だったんだけど。」 
若林「それがなぁ…なんで漫画を描かない、になるんだ?」 

俺「行ってみる?」 
若林「それしかないか…手間のかかる奴だなマジで」 
俺たちはその帰り、礼二の家に行ってみることにした 



733:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/26(水) 03:37:01.43 ID:Sa9xggly0
俺たちは急いで自転車をこいで礼二の家を目指した 
だが、礼二の家に着いても誰もおらず 
肝心の礼二がまだ帰っていなかった 

若林「あいつどっかで寄り道してやがんな。」 
俺「どうする?」 
礼二の家の前にも金木犀が植わっていて 
俺たちはその前に自転車を止めて、時間を潰してみることにした 



734:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/26(水) 03:40:53.85 ID:Sa9xggly0
金木犀の花をむしり取ったり携帯をいじったりして時間を潰したが 
一向に礼二が帰ってくる気配がない 

俺たちがただその場で時間を潰して2時間弱くらい礼二を待った頃 
夕方6時になってチャイムが鳴って 
「さすがにもう帰るか」ってなった時だった 

自転車に乗った礼二が目の前に現れて 
「なんで?なんでいるんだよお前ら…」 
と俺達に向かって言った 



735:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/26(水) 03:44:05.56 ID:Sa9xggly0
若林「ようw遅かったじゃねーか。」 
俺「お前が心配だから来てやったんだよ」 

すると礼二は涙目になって「ふざけんな…」と言いながら自転車を倒して 
服の袖で顔を隠して泣き始めた 

若林「何があったんだよ?ふられたか?」 
俺「話せよ。聞いてやるぞ」 



736:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/26(水) 03:48:57.54 ID:Sa9xggly0
礼二「ふられたんだ…彼女に…」 
そう話し始めた礼二は、夕焼けの濃い光を浴びて一層悲しそうに見えた 

俺「なんで?仲良かったんじゃないの…?」 
礼二「俺、ずっと漫画描いてること秘密にしてたんだ。 
彼女は俺が進学校で、めっちゃ勉強頑張ってると思ってた」 

若林「それで?」 
礼二「本当の事、話したんだ。本気で漫画になるのが夢だって。 
大学行かずに高校出て漫画家目指すって。」 



737:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/26(水) 03:52:24.89 ID:Sa9xggly0
礼二「最初こそ、彼女も笑って応援してくれてたんだ。 
でも、俺が本当に本気だって分かってくるうちに言われたんだ」 
若林「なんて?」 

礼二「○○高に行ってそんな事言ってるなんて馬鹿みたいって。 
そんであっという間にフラれた。」 
俺「ああ…」 
俺はなんて言ったらいいか分からなかった 

礼二「もう、漫画なんて二度と描かねえよ。 
やっぱり普通じゃねえんだこんな事。」 
若林「なんだって?」 



738:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/26(水) 03:57:50.58 ID:Sa9xggly0
若林の様子が変わったことにすぐ気づいた 
若林「お前、女にフラれたくらいで漫画描くのやめるのか?」 
礼二「フラれたくらいって!お前に俺の気持ちが分かるのかよ?」 

若林「知るかそんなもん!!お前何いってんだよこの野郎!!」 
礼二「なんだてめえ!!知ったような口きくんじゃねえ!!」 
その場で取っ組み合いのケンカになってしまった 

もう日も沈みかけてて、あたりは暗くなっていたので 
誰も止めにも来ない 
俺は必死になって二人を止めた 



739:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/26(水) 04:02:24.00 ID:Sa9xggly0
若林「そんな事でやめちまうのか!!お前の夢はそんなもんか!!」 
礼二「うるせえよ!どうしようが俺の勝手だろうが!!!」 
もみくちゃになりながら俺は二人の間に入って必死に止めた 

しばらく口論が続いたあと、礼二が言った 
礼二「大体夢、夢って、お前には何も夢がねえくせに!!」 
これを言われて若林がピタっと言い返すのをやめた 

礼二もこれにはしまった、と思ったのか 
「あ…」としゃべるのをやめた 



740:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/26(水) 04:06:35.79 ID:Sa9xggly0
若林はすごく小さな声で言った 
若林「俺に何もねえから…お前を応援してるんだよ」 
俺はこんなに寂しそうにしゃべる若林を初めて見た 
いつもひょうひょうとしていてテキトー、そんな若林とは程遠かった 

若林「でもやっぱり、大きなお世話だったか。」 
若林は「ごめんな」とこぼしてそのまま自転車に乗って行ってしまった 

すると礼二も黙って下を向いたまま家の中に入ってしまった 



741:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/26(水) 04:09:48.76 ID:Sa9xggly0
俺は一人、取り残されてしまった 
もうだいぶ暗くなっていて、若林も見失ってしまった 
俺は礼二の家に向かって「明日絶対学校来いよ!!」と言って 
その場を後にした 

三人でつるむようになってから、ここまで大きなケンカは初めてだった 
何も言えずにただ仲裁していた俺 
仲直りできるのか不安な反面、本音でぶつかれる礼二と若林が 
少しうらやましいとも思っていた 



742:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/26(水) 04:11:10.21 ID:Sa9xggly0
すいません今日はここで落ちます 
今日も遅い時間までありがとうございました 
続きは明日書きます、早めに来れるといいな 

あと少しで終わると思います 



776:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/28(金) 01:59:00.43 ID:ioxVtwrr0
その若林と礼二が盛大にケンカをした次の日 
礼二は学校には来たものの、俺ともほとんど喋らなかった 
放課後、「5、ごめんな俺先に帰る」 
と言って申し訳なさそうに帰ってしまった 

俺はその後若林のクラスまで行った 
俺「なあ若林、礼二先に帰っちゃったぞ」 
若林「そっか。」 
若林はなんとなく寂しそうな顔で言った 



777:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/28(金) 02:07:38.61 ID:ioxVtwrr0
どんな事があろうと大抵三人で一緒にいた俺たち 
俺はもしこのままバラバラになったらどうしようと不安だった 

若林「そうだな、お前グローブ家にあるか?」 
俺「グローブ?まあ一個くらいならあるんじゃねえかな」 
若林「よっしゃ、明日それ学校に持ってこいよ」 
俺にはこの時若林が何を考えているのか分からなかった 



778:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/28(金) 02:11:25.82 ID:ioxVtwrr0
若林は中学時代野球部だった 
顔に似合わず野球が好きなスポーツ少年だったらしい 

若林「だからさ、面と向かって話すのは少しアレだろ」 
俺「まあそうだよな」 
若林「笑うなよ?野球すんだよ、礼二と」 
俺「は?」 



779:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/28(金) 02:14:37.22 ID:ioxVtwrr0
若林「明日なら、ちょうどよさそうだな」 
俺「待って待って。それマジで言ってんのか?」 
若林「マジだけど。駅前のあの公園、あそこでいいだろ」 

俺は唖然とした 
たまにわけの分からん事を言い出す奴だけど 
この時は本当に驚いた 



781:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/28(金) 02:19:35.35 ID:ioxVtwrr0
若林「ちょうどお前らと野球したいと思ってたしな」 
とヘラヘラして言う 
本当に憎めない奴だよ 

俺は次の日、自分の家から引っ張りだしてきたグローブを持って学校へ行った 
放課後、そそくさと帰ろうとする礼二を引っ張り止め 
強引に一緒に帰ろうと誘った 

若林は先に駅前の公園に向かっていた 



782:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/28(金) 02:22:42.36 ID:ioxVtwrr0
よく晴れている日で、西日がまぶしかった 
礼二と二人で自転車に乗って学校を出た 

俺「礼二、久々に駅前の公園寄って帰らないか?」 
礼二「いいけど。寄って何するんだよ…?」 
俺「まあとにかく行ってみよーぜ」 
上手いこと礼二をあの公園に誘導することができた 



786:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/28(金) 04:01:08.36 ID:ioxVtwrr0
公園に着くと、若林が俺たちを見つけて笑っていた 
若林「よ、来たか。」 
ニコニコとしてとてもごきげんなように見えた 

礼二「なんで、若林が…」 
困惑する礼二に向かって 
俺は持ってきたグローブをカバンから出して礼二に投げた 

礼二「は?なんだよ、これ…」 
俺「いいからさ」 
俺も若林につられて何だかニヤニヤしてしまった 



787:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/28(金) 04:06:08.33 ID:ioxVtwrr0
若林「キャッチボールすんだよ、いいか?」 
そう言って若林は持っていたボールを礼二に向かって軽く投げた 
礼二も黙って、若林にボールを投げ返す 

礼二と若林の間をボールが何往復もするうちに 
若林が投げるのと同時に喋り始めた 
若林「あのさ」 
礼二「どうした?」 



788:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/28(金) 04:09:41.87 ID:ioxVtwrr0
若林「お前だって、色々辛いんだよな」 
礼二「うん」 
若林「なんか、勢いで色々言いすぎちまった。ごめん。」 

若林がそう言うと、礼二はボールをキャッチしてから大きく深呼吸した 
礼二「今、見せたいもんがあるんだよ」 
そう言って礼二はグローブを手から外して、かばんを取りに行った 



789:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/28(金) 04:12:09.51 ID:ioxVtwrr0
礼二「若林も、5も来いよ」 
礼二は真面目な顔をして俺たちを手招きした 
俺「一体なんだ?w」 

礼二「これだ」 
礼二はカバンのクリアファイルから原稿用紙を一枚取り出した 
そこには一人の少年の絵が描かれていた 

若林「お前、これ…」 
礼二「うん」 



790:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/28(金) 04:16:15.87 ID:ioxVtwrr0
礼二「新しく描く漫画の主人公考えたんだ。これ、どう思う?」 
俺「お前…もう漫画は描かないって…」 
礼二「色々考えたんだ。でもやっぱり、漫画描きたくてしょうがないんだよw」 

そう言われて、俺と若林はあからさまに見合ってニヤニヤしてしまった 
若林「いいんじゃねーか、俺は好きだけどよ。もう少し個性が欲しくねーか?」 
礼二「まじかwよっしゃもっと練ってみるぜw」 
不思議と俺たち三人は笑って話していた 



791:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/28(金) 04:20:40.36 ID:ioxVtwrr0
いつのまにかブランコに三人で座って 
久々に三人でずっと漫画談義をしてた 
すっかり夕暮れの時間帯で、公園がどんどん夕焼けに染まる中で 
俺は三人でいられる事がどんなに楽しいことか痛感した 

やっぱり俺は夢を語る礼二が好きで 
それを見て楽しそうに話す若林が好きだった 
いつまでもこんな時間が続いたらいいのにって 
そんなベタな事をこの時本当に思ったんだよ 



792:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/28(金) 04:24:15.30 ID:ioxVtwrr0
礼二だって人間だし、失恋して何もやる気が無くなることだってある 
それを見て思いっきりキレた若林も同じだ 
そしてその二人の間をなんとなく繋ぐ俺… 

この一件で俺たち三人はまた今までとは違う 
より一層親密な仲になったんだと思う 



793:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/28(金) 04:30:34.79 ID:ioxVtwrr0
この出来事があったのが秋のこと 
それから俺達は修学旅行へ行ったり色々とあったけど 
毎日楽しくそれなりに過ごしていた 
何もかもが普通だった 

授業もけっこうサボるがそれなりに出席はして 
成績は相変わらず相当悪いものだったけど 
学校には順調に毎日通って楽しくやっていたんだ 



794:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/28(金) 04:41:22.60 ID:ioxVtwrr0
冬休みに入った頃 
忘れかけていたTから突然メールがあった 
「年明けに吹奏楽の演奏会と合同で軽音部のライブがあります。 
良かったら見に来てみてくださいね。」 

というものだった 
そういえば、Tはライブをする時は見に来てくださいって言ってた 
俺はこの時忘れかけていたものを突然思い出したような気持ちになった 



796:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/28(金) 04:44:22.27 ID:ioxVtwrr0
正直、最初はあまり乗り気ではなかった 
音楽はそこまで好きじゃないし 
吹奏楽の定演なんて俺がいっても浮くだけだ 

でも、せっかくTがメールまでしてくれて誘ってくれたから 
どうせ暇でやることないんだし見に行ってみようと思った 
Tがどんな風に軽音部でやっているのか見てみたい 
そんな好奇心だった 

でも、この軽い気持ちが良くなかった 



797:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/28(金) 04:52:02.82 ID:ioxVtwrr0
一人で行って友達がいない奴だと思われたくなかったので 
俺は嫌がる若林を強引に連れて行った 
この時礼二は何故か寝込んでいて来なかったんだと思うw 

高校近くの市民ホール的な場所で 
吹奏楽と軽音の合同演奏会が行われていた 
駐車場も沢山の車でうまっていて 

中に入るとホールは思ってたよりも大きくて 
人も保護者やら他校の生徒やらで随分とうまっていた 



798:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/28(金) 04:55:42.89 ID:ioxVtwrr0
入り口でパンフレットをもらって若林と一緒にしげしげと眺めた 
プログラムは吹奏楽→軽音の順番だった 

若林「俺こんなん初めてだぞwなんかすごいもんだなw」 
俺「思ってたよりかなり本気だよね…なんかすごいわ…」 
ホールの中はなんというか厳かな雰囲気に包まれていて 
ステージは照明が強く当たっていて凄くまぶしく見えた 

とても高校生の演奏会には思えなかった 
なんかプロが出てきてもおかしくないような雰囲気に思えた 



799:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/28(金) 04:58:43.77 ID:ioxVtwrr0
若林「お前の愛しのTのちゃんはいつだよ?w」 
俺「なんだよそれwさーいつだろうな…」 
なんて話してるうちに吹奏楽の演奏が始まった 

ステージ上に楽器を持った一団が現れると 
場内は凄まじい拍手に包まれた 
俺は驚いて思わずまわりをキョロキョロ見渡してしまった 
若林に「ばか、きょろきょろすんな」って注意されたのがしゃくだったw 



800:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/28(金) 05:01:54.80 ID:ioxVtwrr0
吹奏楽の演奏が始まって、俺は唖然とした 
正直、高校生ごときの演奏が…となめていたのだけど 
初めて生でブラスバンドというものの演奏を聴いて 
俺はめっちゃ感動したんだ 

音の束が俺の腹に突き刺さってくるような不思議な感じだ 
ステージ上で光を浴びて演奏してる人たちが 
いつも学校で一緒にいる連中に思えなかった 

俺も若林もただ「すげ…」とか「うわ…」とかつぶやくだけだった 



801:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/28(金) 05:04:34.19 ID:ioxVtwrr0
吹奏楽の演奏が終わって 
軽い休憩時間になっても、俺達はあっけにとられてた 
「なにか打ち込むってのは凄いことだわ…」 
二人でそんな事を大真面目に話してた 

Tも頑張ってるんだろうか 
軽音の演奏になってTが出てくるのが 
怖いような楽しみなような、なんとも言えない気持ちになった 



819:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/28(金) 18:48:41.95 ID:ioxVtwrr0
休憩時間にホールの中が明るくなって 
俺たちは後ろの席のほうで何もすることなく座っていた 
沢山の人が座ったり立ったりを繰り返していて、場内は慌ただしかった 

「先輩!」 
声のする方を見ると、通路の方でTがピョンピョン跳ねて手を振っていた 
T「来てくれたんですか!」 
俺「来たよー!」 



821:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/28(金) 18:54:05.84 ID:ioxVtwrr0
T「私もうすぐなんです…緊張します」 
俺「頑張ってね~楽しくやればいいよーw」 
俺がそう言うとTは笑って頷いて、ホールの外へ駆けていった 
Tのその姿がとても微笑ましく思えた 

若林「可愛いもんだなw」 
俺「そうだね」 
若林「…なんでふったの?」 
俺は若林のその質問に黙るだけで、答えられなかった 



824:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/28(金) 19:10:17.52 ID:ioxVtwrr0
軽音部の仲間に囲まれて楽しそうに話しているTが 
なんだか遠くに行ってしまったように感じた 

そしてホールが暗転し、軽音部のライブが始まる 
どうやら1,2年生のライブから始まるようだ 
いくつかのバンドの演奏が終わってから 
とうとうその時がきた 



825:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/28(金) 19:25:55.10 ID:ioxVtwrr0
照明が照りつけるステージの真ん中にTのバンドが現れた 
Tはボーカルのようで、緊張した様子で真ん中のマイクの前に立った 
ホールの前の方では友達だろうか、数人の人だかりがTに熱心に手を振ってた 

大勢の人が見つめるステージの真ん中にTが立っている 
あの小さなTが、いつもの様子とは違う真剣な顔だった 



827:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/28(金) 19:40:04.00 ID:ioxVtwrr0
Tたちのバンドの演奏が始まる 
「車輪の唄」だった 
もちろん、俺もよく知っていた歌だ 
真ん中に立つ小さなTが歌い出す 

「錆びついた車輪…」初めて聴くTの歌声だった 
恥ずかしい話、俺はこの時まで「女子の歌声」を聴いた事がなかった 
それも今聴いているのはよく知っているTの熱唱だ 

Tが歌い出した瞬間、俺は鳥肌が立った 



830:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/28(金) 19:49:22.33 ID:ioxVtwrr0
この時のTが歌った5分間は、今でも本当によく覚えてる 
とても楽しそうに懸命に歌うTの姿が、俺の目に焼き付いて離れない 
俺のTのイメージは、真面目で優しくておとなしい、そんな感じの子だ 

それが、目の前にいるTはどうだろうか 
とても楽しそうに情熱的に、大声を出して歌を歌っている 
熱い、本当に熱かった 

バンドが凄く好き好きでたまらない、Tのそんな気持ちが伝わってくるようだった 



832:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/28(金) 19:56:46.01 ID:ioxVtwrr0
演奏が終わってTが笑顔で「ありがとうございました!」 
と言った瞬間場内から割れんばかりの拍手が溢れた 
俺も無意識のうちに思い切り拍手をしていた 

すごい、すごすぎる、あれが本当にTか? 
俺は演奏が終わった後もドキドキが収まらなかった 

「Tはどこだ?Tはどこに行った?」 
俺は溢れる気持ちが抑えきれなくなり 
そのまま若林と二人でホールを出て、Tを探しに行った 



867:5 ◆UZlMbTFLBs :2012/12/28(金) 22:33:37.95 ID:ioxVtwrr0
このスレッドは落としてもらってけっこうです。 
いつか続き書きますね 
期待してた人には申し訳ないわ 

みんなまたな 



1:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 00:30:55.53 ID:PcfU24xR0
前スレ >>5が自分の人生語るってよ 

お久しぶりです 前スレ見ていてくれた人ありがとう! 
前スレの>>832の続きから書いていきます 



2:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 00:34:29.71 ID:PcfU24xR0
ってか覚えてくれてる人いないよな… 
でもまあ、ぼちぼち書いていこうと思います 

完結だけさせちゃおうと思ってるんで 



4:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 00:39:37.70 ID:PcfU24xR0
必死だった。何か自分の中で小さく収まっていたものが大きく羽ばたいたかのような 
とにかく、猛烈に「Tに会いたい」という気持ちが込み上げた 
Tに会って、話したい 
すごく良かったよ、すごく素敵だったよ、と伝えたかった。 

でも、見つからない。 
ホール中を駆けまわっても、軽音部が溜まってる所を見ても、見つからない。 
Tどこだ、会いたい、ただそう思った 
この時、俺は本当にTのことが好きになったんだと思う 
本当に、きっかけなんて何処にあるか分からない 



7:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 00:56:33.88 ID:PcfU24xR0
この時俺は本当に必死だったんだと思う 
演奏会が終わって、関係者が出てくるまで出口で待とうって決めた 
早く帰りたがる若林を強引に引き止めて、外が暗くなるまでTを待った 

吹奏楽の部員、軽音部っぽい人たち 
段々とそれっぽい人たちは出てくるのだが 
待っても待ってもなかなかTは出て来なかった 
1月の夕暮れ時だ 
外で待つのは寒くて辛かったな… 



8:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 01:06:46.18 ID:PcfU24xR0
しばらくすると、Tがホールの出口から出てきた 
俺らは出口の脇にいたから、遠くから声をかけようとした 

でも、Tは男と2人でいた 
男と、向い合って手を握って何かを話している 

俺「あれ…?あそこにいるのTだよな…」 
若林「うん…Tちゃんじゃないの?」 
俺、猛烈に焦る 



9:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 01:11:00.75 ID:PcfU24xR0
そして、その男と手を繋いで2人で歩き出した 
あれ?一体どういう事なんだろう 

俺はもうただただ呆然とした 
何が起きてるんだ?もう訳が分からなくなって、走ってすぐにTを追いかけた 
気まずいとかKYとか言ってられない、声をかけずにいられなかった 

俺「T、お疲れー」 
たまらず、2人が歩く後ろから声をかけた 



11:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 01:17:58.21 ID:PcfU24xR0
T「先輩?」 
Tは不意をつかれたようにくるっと後ろを向いた 

俺「いきなりごめんね…今日の演奏、本当に良かったよ」 
T「いえいえ…今日はわざわざ見に来てくれて、嬉しかったです」 
その間、隣の男は黙って俺の方を見ていた でもニコニコしてた 

話さなくても、その雰囲気で全てが伝わってくる気がした 
ああ、ここは俺がいていい場所じゃない 

俺「またいつか、演奏会あったら教えてね」 
T「はい、もちろんですwそれじゃ、先輩も気をつけて帰ってください」 
隣にいた男も笑って俺に会釈して、2人はそのまま歩いていってしまった 

どんどん小さくなっていく2人 とてもむなしかった 



12:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 01:28:49.66 ID:PcfU24xR0
俺が呆然と立ち尽くしていると、後ろから若林 
若林「ふられたか」 
俺「ふらてねーよ…」 

若林「ま…どんまい。こうなるのは分かってた事だな」 
俺「そうだね」 
若林「あの男、俺らとタメの理系の神ちゃんだな」 
俺「神ちゃん?」 



13:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 01:32:17.03 ID:PcfU24xR0
若林「ま、知らねーよな。良い奴だぞ、明るくて人気もんだな」 
俺「そうなんだ…」 
俺があからさまに落ち込んでたので、しばらく若林も黙る 

そのまま2人で駐輪場へ行って、自転車に乗っていつもの駅への道を走る 
もうすっかり真っ暗だった 
若林「これからどうすんの」 
俺「何を」 
若林「何って、Tちゃんだろ」 



14:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 01:39:11.11 ID:PcfU24xR0
俺「正直言っていい?」 
若林「いいよ」 
俺「俺、今日行かなきゃ良かった」 
若林「誘ったのはお前だけどな…」 
若林が笑う 

俺「俺、Tの事好きだって分かったんだよ」 
若林「まあ、気持ちは分かるけどな。俺もあのステージ見てたし」 
若林「今更どうしようもないんだけどな…」 
そして、再び俺が黙ってあからさまに落ち込む 



15:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 01:47:16.56 ID:PcfU24xR0
若林「ラーメンでも食って帰ろうぜ」 
話題に困ったのか、若林はラーメンを提案 そのまま2人でラーメン屋へ 
この時、若林に言われたことは本当に印象的だった 

「ちゃんとTちゃんと向き合わなかったお前が悪い」 
「Tちゃんがお前にフラれた時は今のお前よりずっと悲しかったはずだ」 
「仕方ない」 

その全てが正論で、もっともすぎて何も反論できなかった 
ただ、若林と話せた事は大きかった 
その日、俺は家に帰ってからひたすら泣いた 



17:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 02:18:05.12 ID:PcfU24xR0
この一件以来、俺はTへの気持ちを引きずり続けた 
Tの事を、本当に好きになってしまった 
冬休みが終わって学校が始まっても、ずっと腑抜けだった 

礼二と失恋同盟という悲しい同盟を組んだ 
そしてそれを見ると若林は 
「俺は絶対入らないようにしよっと…」 
と言うのが定番だった 

辛いことも三人一緒にいれば笑いになる 
それだけが本当に俺の救いだったように思う 



19:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 02:36:50.05 ID:PcfU24xR0
その後Tとメールして「実は彼氏できちゃったんです」 
という報告を受けさらにダメージを受け 
それから、春までは特に変わった事もなく 
辛い想いと共に俺の高校2年ライフは幕を閉じた 

年度が変わって4月になれば、いよいよ高校3年生 
もう、今までのようにヘラヘラもしていられない 
今までひたすら向こう見ずに暮らしてきた俺達も、色々考えださなければならない時期に入る 



20:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 02:49:20.48 ID:PcfU24xR0
新入生の一年生が入学してきて、学校内は再び活気あふれる 
2年前に自分が入学した時の事が、もう遠い昔のように感じられた 
クラス分けも、もちろんケツクラ。 
俺と礼二は文系の、若林は理系のケツクラだった 

3年になってからも、帰り道でたまにTが例の彼氏と一緒に帰る所を目撃して 
それを見る度に吐きそうになるくらい辛くなった 

時間はあっという間に過ぎた 
というより、1,2年の頃のエネルギーと無鉄砲さが凄まじかっただけだろうか 
時たま、高校に来てから初めてTと会った時の事を思い出して 
死にたくなる時がある以外、元気に普通に過ごした 



22:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 02:56:29.24 ID:PcfU24xR0
進路就職ガイダンス 
進路希望調査、志望校の決定 
模試、模試、模試… 
そんな字面の行事が俺たちを取り巻いた 

高校3年生という立場の一学期はあっという間に消えた 
気づけば夏休みに入っていて、流石の俺達も前のようなテンションで遊べなくなっていた 
一緒にいても 
「進路どうしよっか」 
という話題になることが増えていた 



23:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 03:05:36.63 ID:PcfU24xR0
周りが自分の目標、進路をしっかりと見据え勉強に打ち込む中 
俺達は今までのツケがまわって、何も出来ずにいた 
そりゃ、散々サボって授業すらまともに受けなかった落ちこぼれの三人組だったしね 

夏は受験の天王山、なんてどこ吹く風… 
毎日三人で集まって遊ぶか、家でアイス食ってゲームしてるのがいいとこの夏休み 
でもみんなどこか落ち着かなかったんだと思う 
若林は特に「まずいよなぁ…」って心配してることが増えた 



24:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 03:20:55.27 ID:PcfU24xR0
そんなある日、若林から珍しい誘いが来た 
「俺の家に来てみないか」 
今まで、頑なに自分の家に呼ぶことを拒んできた若林 
一体、何があるんだろうか 

若林の家は、俺と礼二の家の最寄り駅から電車で数駅 
少し遠いところにある 
だから今まで行けなくても不思議ではなかった 
ただ、若林が家の事を全然話さないことには違和感があったんだ 



25:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 03:26:41.57 ID:PcfU24xR0
後日、俺と礼二は電車に乗って若林の家に向かった 
お互い、電車に乗って出かけるなんて慣れないことだったので何だか違和感。 
駅に降りると、若林がへらへらして待っていた 

若林「おう、よく来たなw」 
礼二「ここの駅降りたの初めてだわww」 
若林「ま、こっからは遠くないよ。少し歩くくらいだ」 

若林の最寄り駅はけっこう田舎で、駅の周りもこれといって栄えていなかった 



26:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 03:31:27.30 ID:PcfU24xR0
駅チカのコンビニでみんなでパピコを買って、食べながら歩く 
歩きながら、ふと若林が口を開いた 

若林「ずっと言ってなかったけどさ」 
俺「なに?」 
若林「俺の親、医者なんだわ」 

俺と礼二はしばらく言葉が出ない 
礼二「マジ…?」 
若林「俺さ、医学部目指そうと思って」 



27:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 03:35:51.21 ID:PcfU24xR0
若林の口から次々ととんでもない言葉が出てくるので俺は動揺を隠せなかった 
俺「今からか…?」 
若林「はは、笑えるだろ?」 

俺と礼二は何も言えなかった 
というより、驚いて何も言えなかったんだと思う 

そうして歩いていると、若林の家に着いた 
三階建てくらいの、立派な家だった 俺と礼二は2人で 
「すごい家だな…」って言ってたと思う 



28:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 03:39:41.18 ID:PcfU24xR0
若林「ま、入れよ」 
そう若林に促されて、家の中に入った 
若林がただいまー、と言うと親父さんらしき人の声がした 

俺「親父さんが医者…?」 
若林「そうだよ」 
そんな会話をしながら、2階にある若林の部屋に向かう 
家の中もかなり綺麗で広くて、お医者さんの家だな…って感じがした 



29:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 03:46:10.50 ID:PcfU24xR0
若林の部屋には、野球雑誌が転がってて部屋の隅にはグローブも会った 
壁には沢山の野球選手のポスターが貼られていた 

若林「前にも言ったけどさ」 
若林が真剣な顔になって話し始め 
若林「俺野球大好きでさ、中学の時はめっちゃ部活頑張ってた」 

俺と礼二は、黙って聞く 
若林「俺は、高校野球にずっと憧れてたんだ」 



30:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 03:52:24.68 ID:PcfU24xR0
若林「野球やってれば、誰だって憧れるだろ?w毎日一生懸命練習して、甲子園なんか目指しちゃったりとかさ…」 
俺「わかるぞ、部活は楽しいよな」 

若林「自慢じゃないけどさ、本当はもっと野球の強い高校に行きたかった」 
若林「でも、将来の事もあるからさ…親に強く言われて俺はこの高校に入ったんだ」 

若林「ほら、めっちゃ緩いけどうちにも野球部はあるだろ?wだから部活くらいできると思ってたんだ」 



31:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 04:00:20.77 ID:PcfU24xR0
若林「でも違ったんだわ。うちの親は、俺が部活に入ることを許さなかった」 
若林「将来は必ず医学部だぞ、ってさ。だったら部活なんてやってられないだろって」 

礼二「ああ…そういう事か…」 
若林「少しだけ期待してた自分がアホらしくなったな。だからやけくそになって、全部放棄してやったんだ」 
若林「それが、一年の最初の頃の話だ」 

若林「野球部に入ることもなく、勉強もせずただひたすら反抗して過ごしてた頃に…」 
若林「5に会ったってわけだ。」 



32:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 04:04:53.28 ID:PcfU24xR0
若林「それから礼二にも会って、毎日3人で馬鹿してさぁ… 本当良かったよな」 
若林「で、この前久しぶりに親父とちゃんと話し合ってさ…」 

若林「俺、また今から真面目に医学部目指すことにしたんだ」 
若林「何年かかるか分からんけどねw」 
ここまで話して、若林がやっと笑いをこぼした 

若林「これを決めたなら、やっぱりお前らには黙っておけないなって思って」 



33:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 04:10:34.51 ID:PcfU24xR0
俺「話してくれてありがとな。なんつーか応援するし、俺も頑張るわ」 
礼二「お、俺も。お互い頑張ろうぜ」 

俺達がそう言うと若林は笑った 
若林「お前らならそう言ってくれると思ってたぜw」 

なんというか、衝撃の事実だった 
若林のテキトーな印象の裏に、こんなものを背負っているとは思ってもいなかった 



34:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 04:19:10.12 ID:PcfU24xR0
若林が礼二の好きな事を追いかける所に惹かれていたのも、 
礼二が漫画を捨てようとした時にあそこまで激怒したのにも、納得ができた 

若林も高校に来てから、様々な葛藤や矛盾と戦ってたんだろうな 
そして、それを俺たちになかなか言い出せなかったのも辛かったんだろう 

しかし、若林も医学部受験となると 
俺ももう自堕落な生活は送っていられない 



35:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 04:24:35.52 ID:PcfU24xR0
若林は医学部受験を目指して努力を始める 
礼二も漫画家目指してめっちゃ頑張ってる 
だから、俺も頑張ろう…!! 

それからの夏休みは、若林も急に勉強熱心になり 
俺も家に篭もってとりあえず学校の課題をやっつける事に熱中した 

夏休み明け一発目の進路希望調査に、地元の国立大学を書いてやった 
それを見て、担任がひどく驚いてたのを覚えてる 



44:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 21:40:51.54 ID:PcfU24xR0
3年の秋になってから俺は完全なる受験生に変わってた 
しかし、今までロスしてきた分は到底取り戻せなかった 
模試を受けても志望校の判定は大体E、良くてもD 

勉強しても勉強しても、一向に結果に反映されない 
この頃になると、若林も塾に通いだしてなかなか三人で一緒にいられる時間は減っていった 
正直、挫けそうだった 



45:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 21:45:22.98 ID:PcfU24xR0
若林も自分のことで手一杯だし、勉強の事に関しては礼二にもなかなか相談できない 
今までのツケがまわって自業自得だったのもあるし、俺は一人で悩んだ 
今更一丁前に勉強を始めた所で、やっぱり無駄なんだろうか… 

しかも俺は極度の緊張しいで、模試の日の朝などはいつも体調を壊した 
プレッシャーとかに凄く弱かったんだ 
こんなんで受験に臨めるのかと、不安になった 



46:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 21:50:27.06 ID:PcfU24xR0
特に俺は英語が苦手で、英語のO先生のところへしょっちゅう質問に行った 
このO先生が凄くいい人で、いつも俺のことを気にかけてくれていた 

勉強や受験の悩みを、いつもO先生にぶつけた 
この時、O先生に会えたのは大きかった 

「気楽に行こうぜ。気楽にやろう」 
それがO先生の口癖だった 
「やる気あんのか」「もっと勉強しろ」という先生ばかりの中で、俺はO先生のそのスタンスに惹かれた 



47:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 21:56:11.99 ID:PcfU24xR0
そしてあっという間に受験一色の秋・冬は過ぎてセンター試験を迎えた 
前日に、若林と礼二の三人で学校近くの神社に行って円陣を組んだ 
ちなみに、礼二はセンターは受けるが無関係なので、応援である 

俺はセンター試験の当日に時計を忘れるというファインプレーを見せた 
なんとかO先生の腕時計を借りてしのいだが 

結果は惨敗だった 
腕時計の動揺で腹を壊し、一日目がしんだ 
二日目も同様に散々たる結果で、国立に挑むにはどう見ても無謀な点数を叩き出す 



48:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 22:02:09.35 ID:PcfU24xR0
若林も俺と同じく絶望的な点数をとった 
結果、俺も若林ももう一年コースを選択した 浪人だ 
礼二は漫画を描くということで、卒業後はフリーターになった 
上京するためのお金を貯めるんだそうだ 

俺達全員、流浪者になってしまったんだw 

そして、3月に入ってすぐ、卒業式を迎えた 



49:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 22:11:32.04 ID:PcfU24xR0
前期の結果もまだ出ていない上、後期に懸けてる奴もいる 
卒業式を迎える3年生は、みんな心ここにあらずと言った感じだ 

それに比べて俺たち3人はもう自分の進路が確定したも同然だったので、のんきなもんだった 
式が終わると、俺達は待ち合わせて屋上に行った 
泣きながら抱き合ったり、先生と握手したりする人がいる中、俺たち3人は屋上に向かった 

屋上の入り口には厳重にカラーコーンみたいのが置かれて「立入り厳禁」と書かれていた 



50:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 22:16:46.53 ID:PcfU24xR0
それを乗り越えて、屋上に出る 
三人ともどこかしんみりとした雰囲気だった 

若林「あーあ…今日で最後か…」 
晴れていたとはいえ、3月でまだまだ寒さが残る屋上 
俺たち三人は体を丸くしながら景色を眺めた 
若林「俺らしょっちゅうここ来てたよな…」 

この周りに遮るものが何もない開放感を味わえるのも、その日が最後だった 



51:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 22:21:30.42 ID:PcfU24xR0
俺「明日から、学校に来ないって思うと、ほんとなぁ…」 
礼二「でもさ」 
若林「ん?」 

礼二「楽しかったよな」 
若林「そうだな」 
三人ともなんだかセンチメンタルな感じになって、今にも泣きそうって雰囲気だった 

そんな時、俺の携帯に一通のメールが来た 



52:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 22:25:46.38 ID:PcfU24xR0
Tからだった 
「先輩まだ学校にいますか?下駄箱で待っています」 
というような内容だった 

若林「どうした?」 
俺「いや、Tが来てほしいって…」 
若林「いってこいよw終わったらメールしろ」 
礼二は黙って笑って頷いていた 

屋上が名残惜しかったが、俺は2人をおいて下駄箱を目指した 



53:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 22:31:57.21 ID:PcfU24xR0
下駄箱に着く。そこには、花束を持って待っているTがいた 
T「先輩、卒業おめでとうございます…」 
俺「ありがとう…」 

顔を赤くして涙目になったTが俺に花束をくれた 
T「先輩…卒業してからも、頑張ってください…」 
言葉に詰まりながら、必死に話しかけてきた 

この時、自分が初めて「卒業する」という事を実感して涙腺が壊れた 
Tの前で涙をボロボロ流して「頑張るね、ありがとう…」と繰り返した 



54:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 22:35:04.87 ID:PcfU24xR0
ああ、俺の高校三年間は終わったんだ 
若林と礼二に会って毎日馬鹿して大笑いしたことや 
Tと一緒に夏祭りに行ったことや、失恋してしまったこと 
そして最後には真面目に勉強もしてみちゃったり 

嫌だ嫌だと言っていた高校だったが、こんなにも色々あった 
俺はこの高校が好きだった 
そう気づいて、もうボロボロ泣けた 



55:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 22:40:06.35 ID:PcfU24xR0
最後職員室でO先生に、「来たくなったらいつでも帰ってきな」と言われた 
ああそうなんだ、ここは俺の母校 
それは現実的なものでもあり、思い出という俺の心の中に残るものでもある 
最近は、それを痛感してる 

そして、その後は若林と礼二と三人で自転車を並べて帰った 
そうやって三人で学校から帰るのも、この日が最後だった 

今思えば、何気なく一緒に帰ったりするのも、本当にあの3年間だけなんだよな 
特別な行事だけじゃなくて、こういうなんでもない日常も、本当に大切なものだったんだよ 




57:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 22:46:11.87 ID:PcfU24xR0
若林「卒業しても俺たちは変わらねーよ」 
俺「そだね」 
礼二「みんな地元に残るしな。いつだって会えるぞ」 
変わってゆくものに、変わらないもの 
自分たちは一生変わらないだろうって思ってたよな、この時は 

あと補足だけどw 
Tが花束をくれた事は嬉しかったが、この時もTは彼氏と続いてた 
それゆえに、特に何も期待もできなかったんだよなぁ… 



58:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 23:06:53.84 ID:PcfU24xR0
高校卒業 
この大きなイベントが終わって、灰色の浪人生活がスタートする 

俺と若林は、駅前の予備校に通うことにした 
浪人生活、それは本当に辛抱の毎日だ 
毎日勉強に勉強… 
ちょっとでも遊んだり息抜きしても、「勉強しないとなぁ…」 
という感覚に常に襲われる 

正直、浪人して少し後悔した部分もあったよ 



59:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 23:28:39.53 ID:PcfU24xR0
それでも必死に勉強した 
もう、俺に残されてる事は勉強することしかなかったんだから 
幸い、若林も同じ予備校で頻繁に会うこともできたしね 

一緒に昼飯食べたり、息抜きしたり 
浪人しても俺と若林がいつも一緒にいたよ 
でもやっぱり浪人生だからか、お互いどこか余裕はなかったけど… 



60:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 23:32:17.00 ID:PcfU24xR0
俺の通ってた予備校は塾も併設しているところだったので、 
頻繁にTの姿も目撃した 
相変わらず彼氏とも順調に続いていたようで、俺はその報告を受ける度に胃痛がした 

Tの志望校はとある旧帝大だった 
やっぱり真面目に勉強してるだけあって、少々俺とは次元が違ったようだ 
すっかり落ちぶれたこんな先輩(恐らくTより遥かにアホ)にも 
優しく接してくれるTは本当にいい子だったよな、マジで… 



61:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/05(火) 23:38:08.57 ID:PcfU24xR0
ちょっとでも気を抜いたらあっという間に泥沼いきな気がしたので 
俺は必死に現実に食らいついた 
笑顔で同級生と話すTを見る度に辛くなったけど、そんなのは関係ない 

とにかく大学に受かって、そこからまた新しい生活がスタートする、そう信じた 
時には高校の時のO先生ともメシを食べに行ったりして、勉強や恋の悩みを打ち明けた 

ちなみに、O先生は生粋のオッサンだ 
メシに行くと、いつも子供と奥さんの自慢しかしないパパ系オッサンだ 
「5と早く酒が飲みたい」それが口癖だった 
それも含めて俺は、早く大学に行きたかった 



65:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 01:05:32.95 ID:h4RbRsB70
そんな風にして俺の浪人の一年は過ぎ 
センター試験も、高校の引率で来てたO先生に会ったりしてリラックスできて 
受験は成功した 

俺は、地元の国公立大学に通うことになった 
若林は、医学部に落ちた 
私立で2,3受かっていたが、医学部一本ってことで再び浪人 

今年受験だったTからも連絡が来る 



66:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 01:10:17.89 ID:h4RbRsB70
合格発表の後に、Tから電話が来た 
T「先輩、どうでしたか?」 
俺「俺、地元大学に受かったよ!Tは?」 
T「おめでとうございます…!私も、〇〇大(旧帝)受かってました…!」 

やっぱり、Tは凄いな… 
でも、〇〇大に行くとなると、Tは地元を出て引っ越すことになる 



68:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 01:16:30.72 ID:h4RbRsB70
国公立に行くことが決まって、やっと親にも報告できる… 
なんて安心したもの束の間だったわ 

Tが地元を出て行ってしまう事は俺にとって一大事だった 
とは言え、Tは彼氏がいるし、もうどうしたら良いかまったく分からなかった 
大学に受かって、浮かれるどころではなかった 

そんな中、3月の中旬過ぎた頃だろうか 
俺の大学合格祝いで、若林と礼二の3人で温泉に行ったんだよ 



69:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 01:19:15.06 ID:h4RbRsB70
3人でぬる~い露天風呂に入りながら色々と話したんだ 
なんでだろうな、風呂とかって一緒に入ると腹を割って色々話しちまうよな 

俺「Tがさ…」 
若林「あ、あの子どうなったんだ」 
俺「〇〇大だってさ…」 
礼二「うわ、すげえなwww」 

若林「ってことは引っ越すって事なんじゃねーの?」 
俺「そうなんだよな……」 



71:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 01:27:42.02 ID:h4RbRsB70
俺「なあ、どうしたらいい?」 
若林、礼二「諦めればいい」 

俺「いや…え……」 
若林「だって、お前の話だともうあの子2年以上彼氏いるじゃん」 
礼二「さすがに気持ち切り替えろよ」 

この2人の言ってることがもっともすぎて死にたかった 



72:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 01:42:45.54 ID:h4RbRsB70
若林「お前大学行くんだし、そろそろTちゃんから卒業しろよ」 
俺「でも、きっかけとかないと、なかなかな…」 
礼二「気持ちはわかるわ…」 
若林「いやもう彼氏いるんだけどなw」 
すっかり談笑の雰囲気 

若林「お前はもちろん、Tちゃんの卒業式を見に行ったりはしてないよな?」 
俺「してないけど?」 
若林「あー分かったわ。お前Tちゃんが引っ越す日に見送ってやれ」 
俺「うん?」 
若林「それで今生の別れってことでw」 
礼二「ひでーww」 



74:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 01:46:52.48 ID:h4RbRsB70
ちなみに、Tの彼氏は俺らより一年早く大学に行って県外なので 
Tを見送ることは現実的にできそうだった 

それを話すと、若林も礼二も賛成した 
Tを見送って気持ちに区切りをつけ、俺も新しい大学生活で新しい人を見つける 
このプランは、なかなか悪くないものに思えた 



75:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 01:51:35.85 ID:h4RbRsB70
温泉から帰った次の日、さっそくTにメールで聞いてみた 
「引越しはいつ?」 
「3月の◯日ですね~」 
「車?電車?」 
「◯時◯分(昼間くらい)の電車で行きますね」 

メールは滞り無くできた 
これで、特に何もなければ当日、駅にTを見送りに行くことになる 



76:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 01:56:53.57 ID:h4RbRsB70
Tの引越し日の前日、俺は朝から家に若林を呼んでいた 
大学に行くこともあり、いらなくなった参考書たちを若林にあげようとしていたのだ 
あれはいる、これはいらないとか2人でワイワイやっていたら、突然メールが来た 

それはTからだった 
「ごめんなさい先輩」 
俺「何のことだ?」 
若林「なんだそれ。とりあえずすぐ返信しろよ」 



77:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 02:03:09.98 ID:h4RbRsB70
俺「どうしたの?…っと」 
「本当は今日が引越しで…今もう駅にいるんです」 
俺、唖然 

すぐにメールを若林に見せる 
若林も目を丸くした 
そしてすぐに勢い良く部屋から飛び出した 

若林「何してんだ!?行くぞ!!」 




79:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 02:08:15.24 ID:h4RbRsB70
俺たちは家の前に止めてあったチャリに夢中でまたがった 

若林「お、おい!時間、時間あるのかよ!?」 
俺「元々の時間だとすると、もう20分もないよ…」 
若林「だーマジかっ」 

俺たちは駅への道を必死にこいだ 
本当に必死だった 
これを逃したら、Tにもう会えない?そんな感覚が頭をよぎっていた 



80:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 02:12:12.35 ID:h4RbRsB70
街路樹や車が、俺の目の前をビュンビュン過ぎてった 
火事場の馬鹿力だろうか、この時の俺の自転車の速度は半端なかったに違いない。 
そして、後ろをついてくる若林も 
本当にめちゃくちゃな速さだったと思う 

ドラマの一瞬かと感じるくらいの真剣さだった 
間に合え、間に合え、って本当に泣きそうなくらい必死だった 
無茶して事故ったっていい、死んでもTに会いたかった 



83:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 02:20:30.19 ID:h4RbRsB70
駅に着くと、俺たちは自転車を駐輪場にぶち込んで、全速で走った。 
もう、時計を見る余裕すらなかった 

改札までの階段を無心で登った 
切符売り場で急いで入場券を買う 
すぐさま、改札へ。入場券を突っ込んで改札を抜ける 

何番線だ!?分からない、きょろきょろする。 
若林が後ろ側で叫ぶ 
「バカ!こっちだぁ!!早くしろっ!!」 



86:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 02:26:42.87 ID:h4RbRsB70
2番線へと続く灰色の階段を無我夢中で降りる 
ホームに電車が進入する轟音が聞こえる 

階段を降りて、ホームの奥に見つけた 
すぐに分かった Tだ。 
ちょうど電車に乗るところだ 

俺「T…!!T…!!」 
俺は息を切らしながら必死に呼んだ 



87:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 02:30:21.94 ID:h4RbRsB70
Tはもの凄く驚いたようだった 
T「なんで…先輩…」 
俺「間に合ったのか…」 
俺はその場で膝に手をついて息を切らした 

T「最後に先輩に会っちゃうと…絶対に寂しくなるから…ごめんなさい…」 
そう言ってTは目の前でボロボロ涙をこぼした 
俺「いいんだよ、その気持ちもわかる…」 
俺はゼエゼエ言いながらTをなだめた 



88:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 02:37:02.59 ID:h4RbRsB70
俺「本当は花束でも持ってくるつもりだったのになぁ…」 
T「ふふ…何言ってるんです」 
Tは泣きながら少し笑った 

俺「T、大学に言っても元気でね。バイバイ。」 
Tに、伝えたかったことを言えた。 
このバイバイが、俺の中でいくつもの意味がある「バイバイ」だったのだか。 

Tは涙を拭いてにこっと笑って見せた。あの笑顔だ。 
T「先輩、ありがとう。」 
そう言ってTは電車に乗って行った 

俺は、この時のTの笑顔を今でもハッキリと覚えてる 
まぶしいというか何というか、人が輝く瞬間って、こういう事を言うんだろうなぁと今でも思う 
そんなとびきりの笑顔だった 



93:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 02:44:06.77 ID:h4RbRsB70
帰り際、若林に 
「やるじゃねーか。」 
と褒められたあと 
「付き合ってやったんだからジュースくらい奢れよ…」 
とごねられた 

こうして、俺は想い続けたTから、卒業した 
4月からの大学という新生活に、胸を踊らせることにしたんだ 



94:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 02:50:05.78 ID:h4RbRsB70
ここからの話は、早いぞ 
俺は大学のなんか必要以上にギラギラしたノリが苦手だった 
「マジ〇〇っしょ?ちょーやばくね?」「あの子マジ可愛くね?やばくね?」 
そんな会話にうんざりした俺は、マッタリとした地味なサークルを模索した 

なんの興味もなかったが、何個かあった軽音サークルの一つに所属した 
(なぜ軽音だったのか、もしかしたらまだTの幻影を追い求めてたのかもしれない) 



95:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 03:02:24.31 ID:h4RbRsB70
それから、大学での毎日はなかなか楽しくて 
高校の頃みたいにエネルギッシュではないものの、マッタリと順調な日々。 

夏ごろに、若林から「予備校で好きな子ができたw」 
とか言って毎日のように相談を受けたなw 
まったく、浪人生だってのにのんきな奴だ 
でも、若林が誰かの事を「好き」なんて言うと思ってもいなかったから、面白かったなw 

ま、相手も浪人生だったっぽくてあっさりフラレていたけどw 
その後から取り付かれたように勉強してたみたいだ 



96:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 03:07:28.16 ID:h4RbRsB70
そして一年はあっという間に過ぎ、3月がやってきた 
若林は2浪の末、県外の国立医学部に見事合格した 
元々の頭も良かったんだろうな、すごい奴だよ 

そして礼二もだ。 
お金もかなり貯まって、東京で漫画のアシだかをやるとかで、上京することに決めた 
この3月で、とうとう俺たち3人がバラバラになる時が来た 



98:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 03:11:57.64 ID:h4RbRsB70
3月、若林と礼二が地元を出て行く前に、三人で飲んだ。 
若林がずっと受験で忙しかったので、3人でお酒を飲むのは初めてのことだった。 

俺「こうやって、三人で酒を呑むのが夢だったよな」 
礼二「なんかいいね、こういうの」 
若林「将来の夢でも語るか?w」 

見知った三人、気心知れた三人、落ちこぼれだった三人 
俺たち三人はなんなんだろう? 



99:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 03:14:44.92 ID:h4RbRsB70
礼二「俺は漫画家になるぞー!!」 
俺「いいねw」 
若林「じゃあ俺は、立派な医者になるわ。」 
俺「うんうん」 
礼二「5は?」 

俺の夢って、なんなんだろう とっさにこんな言葉が出た 
俺「30年後も、この3人で飲むことかな?」 
若林「おお…」 



100:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 03:17:24.04 ID:h4RbRsB70
それは本心だった 
別に、みんながみんな、大層な夢があるわけじゃない。 
この3人で、10年後も、30年後も、笑ってバカ言いながらお酒を飲むこと 
それが俺の夢だった 

礼二「いいねえそういうの。」 
若林「礼二、お前無理して死ぬんじゃねえぞwww」 
礼二「うっせwwww」 
ああそうだ、こういうやり取りを、いくつになっても、オッサンになっても爺さんになっても、やっていたい。 



101:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 03:21:30.99 ID:h4RbRsB70
「いい医者になれよ」 
「イケてる漫画家になれよ」 
「5も…幸せにな」 

そう言って俺たちは別れた。 
みんな、別々の道を歩き出す、それぞれの人生が始まる 
それがきっと、大人になるってことなんだろう 




103:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 03:27:27.63 ID:h4RbRsB70
そして、俺は大学2年に 
若林は地方の国立医学部へ 
礼二は漫画家目指して東京に出て行った 

そして、俺の平凡な大学ライフは続いた 
大学3年になった時、後輩の女の子と付き合ったが 
一個したの男の後輩に寝取られるという事件が発生して 
寝込んだりもしたが、それ以外は平凡な大学生活だった 



104:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 03:32:05.81 ID:h4RbRsB70
大学4年の6月には就職先も決まった 
塾講師だ 
結構志望度が高い職種だっただけに、嬉しかったよ 

内定も出たことだし、毎日気楽に遊んだり飲んだり 
そんな大学4年ライフを満喫していた 

ちなみに、あれ以来礼二は一度も地元に帰って来ず、 
若林も一回帰ってきたきりだった 
三人でもう一度会いたいなぁ…Tは今何してるかなぁ… 
そんな事を思い返してる日々だったんだ 



105:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 03:35:19.15 ID:h4RbRsB70
そしたら暮れの12月にさ、たまたまこのスレを見つけたじゃない 
軽い気持ちで書き込んだら、まさかの俺が>>5を踏んじゃって 
自分の人生を振り返る事になっただろ? 

そしたらさ、もう懐かしくなっちゃって 
色んな事が頭をよぎったよな 
ああ、俺の人生、俺の今までの人生ってどんなんだったろう?ってさ 



107:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 03:39:44.61 ID:h4RbRsB70
俺、このスレに書き込んでたら 
もうTの事懐かしくなっちゃってさ、フェイスブックを介して連絡とったんだ 
そしたら、12月の終わりに地元に帰るって言われてさ 

未だに彼氏と続いてるみたいだから、さすがにクリスマスはダメだったんだけどね 
12月の終わりに、本当に久しぶりにTに会ってきたんだよ 
Tももう大学4年生だし、進路とか就職先とかどうなってんのか、凄い気になった。 



108:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 03:47:18.63 ID:h4RbRsB70
久々に会ったTはなんだか垢抜けちゃっててさ 
びっくりしたよ、でも笑顔が可愛くて、そこには昔の面影が残ってた 
遠くから俺の方見て手を振るのね、昔からの関係性ってやっぱり変わんないのかな 
そこが相変わらず可愛いよまったく… 

そのへんのカフェに入って話したんだ 
T「先輩、塾の先生ですかっ」 
T「っぽいですねぇw先輩だったらいい感じですねw」 
俺「そうかなw」 

俺「Tは?どんな感じ?」 
T「私は〇〇社です(大手出版社)」 
俺「え、マジで…」 
Tは、やっぱりすごかった 



109:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 03:52:08.61 ID:h4RbRsB70
Tの話によると、高校の頃から付き合ってる「神ちゃん」と未だに続いてるらしく 
恐らく、将来的には結婚もするだろう、とのこと 

いや、正直悲しいけど、それでいい 
Tは東京で、彼氏と幸せになるんだろう 
俺は地元で、俺の幸せを見つければいいんだから 

とにかく、久々にTと話せて良かった 
もしかしたら会わないほうが良かったかもだけど、 
ある意味「どうにもならない現実」を知れて良かったなとw 



110:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 03:59:04.42 ID:h4RbRsB70
そして、3月…ついこないだの事だね 
若林と礼二が帰ってきた、地元に。 
本当に久々に3人で飲んで、本当に楽しかった 

俺「めっちゃ会いたかったわww」 
若林「3人揃うのは、久々だよなぁ…」 
礼二「やっぱり地元は最高だわwww」 

俺「みんなどうなん?w」 
若林「勉強マジ大変だわ…医者になるのは楽ねえな…w」 
礼二「俺は最近、やっと担当が着いたわww」 
やっぱり3人揃うと、話にめっちゃ花が咲く 



111:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 04:02:06.17 ID:h4RbRsB70
「あの時の事覚えてるか?w」 
「自転車あそこの川に突っ込んで…」 
「礼二がめっちゃ泣いた日なwwww」 
とか、懐かしい話が、腐るほど出てくるんだ 
笑いに笑って、もう一生分くらい笑ったんじゃねえかって思った 

そんでまた、ふと「夢」の話になったんだ 
若林「前に3人で飲んだ時も、夢について語ったよなw」 
俺「あーあったあった」 



112:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 04:04:50.15 ID:h4RbRsB70
礼二「俺は漫画家になるぞwwちょっとずつだけど、近づいてる」 
若林「いい医者になれたらいいわw」 
若林「…で、お前は」 

俺「30年後も、この3人で飲みたい」 
礼二、若林「出た出たそれなwwwwww」 
そんな感じで、3人で大爆笑してた 



113:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 04:08:07.35 ID:h4RbRsB70
ああ、やっぱり、いつ会っても何年経っても変わらない 
俺たちは、俺たちなんだ 

そして、俺の夢は10年後も、30年後も 
ずっとずっとこの3人で酒のんで一緒に笑っていたい 

俺の人生を振り返った時、自分の何も無さに、少し落ち込んだ。 
けど、俺にとっての人生の原点はあの高校にあって、思い出の中にずっとある 
そして、若林と礼二に会えた事は今に繋がってる 



114:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 04:13:59.94 ID:h4RbRsB70
やっぱり、人生は夢や目標がある奴の方が輝いて見えるし 
俺自身、そういう人を羨ましくも思う 

若林や礼二、Tを見ていると、自分の薄っぺらさに気づいて凹んだりもする 
けど、それ以上に俺には大切な親友がいたから、良かったんだと思う 
誰しもが立派な目標や夢を持ってるわけじゃないだろ? 

親友とか、何気ないそういう事に夢を見出してもいいと思うんだ 
俺にとっては夢以上に親友の存在の方が大きかった ま、言い過ぎかもしれないけどw 



115:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 04:17:05.96 ID:h4RbRsB70
それにこんな俺でも、来月から好きな仕事も始まるわけで 
心機一転、そこから新しい夢とか見つかるかもしれない 
もしかしたらもっと辛くなるかもしれない 

それは分からないけど、やってみなきゃ始まらない 
とにかく自分のやってみたいようにやってみようと思うんだ 

これから、自分がどんな大人になっていくかは分からないけどさ 
またいつか、30年後にでも、若林と礼二と飲む時が来るんだから 
その時に、笑って話せるようにさ 



116:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 04:18:24.66 ID:h4RbRsB70
これで、俺の人生語りは終わりです。 
長い間付き合ってくれて本当にありがとね 
最後まで言えてよかったよ… 

こんなオチですまんねw 
まあ、>>5の冒険はこれからも続く…ってな感じでw 



117:名も無き被検体774号+:2013/03/06(水) 04:20:05.11 ID:2SJMn84J0
>>116 
おつ!! 
めっちゃ良かったな 
なんというか、友は大事やねー 



118:名も無き被検体774号+:2013/03/06(水) 04:21:09.72 ID:PZyX7ea90
お疲れさん!! 
新たな人生がこれからも続いていくんだね。 



119:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 04:22:23.14 ID:h4RbRsB70
あと、まだ最後に言わなければならない事があります… 



120:5 ◆UZlMbTFLBs :2013/03/06(水) 04:25:00.25 ID:h4RbRsB70
このスレに書かれたことは全て創作です 
釣りでした、ごめんなさい。。 



123:名も無き被検体774号+:2013/03/06(水) 04:26:43.97 ID:PZyX7ea90
>>120 
まさか釣りってアンタ、 
この人じゃないだろね? 
https://twitter.com/Tomizawa_2ch



125:5 ◆WiJOfOqXmc :2013/03/06(水) 04:30:03.22 ID:h4RbRsB70
>>123 
よく分かりましたね… 
そうです、自分です。 
一応、トリップもそのトリップにしておきます 



126:名も無き被検体774号+:2013/03/06(水) 04:31:47.16 ID:PZyX7ea90
>>125 
こりゃ、たまげた… 
「ゲーセン」の作者さんだったか 
個人的には、今回のこの話はゲーセンよりもリアルに感情移入しちゃったぞこのやろー 

ゲーセンで出会った不思議な子の話
http://2chgood.ldblog.jp/archives/1267262.html
30歳からの青春を謳歌した話
http://2chgood.ldblog.jp/archives/5379539.html
変わる決心をした
http://2chgood.ldblog.jp/archives/1448932.html



128:名も無き被検体774号+:2013/03/06(水) 04:34:54.48 ID:N4PLP2G+0
>>126 
「ゲーセン」のって、アレも釣りだったの!??!? 



129:5 ◆WiJOfOqXmc :2013/03/06(水) 04:36:21.16 ID:h4RbRsB70
>>128 
そうですね… 
ちょっと前に釣りだったと、暴露しました… 
自分が書いた創作です、ごめんなさい 



130:名も無き被検体774号+:2013/03/06(水) 04:38:16.15 ID:N4PLP2G+0
>>129 
びっくりっすよ! 
でもリアルタイムで暴露されてうれしいです。 
お前小説書けよ。この野郎!!!wwwww 



131:名も無き被検体774号+:2013/03/06(水) 04:59:03.10 ID:aH17Fi4x0
うわーお!! 
してやられた、、 
でもめっちゃ良い話だし悪い気はしないわwww 






ゲーセンで出会った不思議な子の話 [ 富澤南 ]
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魔裟斗
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2010-03-05