とんでもない彼女は強盗【第1部】
とんでもない彼女は強盗【第2部】
とんでもない彼女は強盗【第3部】
とんでもない彼女は強盗【第4部】
とんでもない彼女は強盗【第5部】

217 名前:1 ◆hxOL7r2r.Y :2008/04/16(水) 09:44:27.11 ID:MVM9NCzC0
【第六部 病院~そして俺の実家へ~】
俺は予約時に華の兄貴と嘘をついた。
精神科といった場所がどういう所か分からないが
俺も華と一緒に医者の話を聞こうと思っていたからだ。
もしかすると華と他人の俺にはプライバシーの観点から
立ち合わせてもらえない可能性を考えたからだ。
2日後・・・。病院の前。
華にもそのことを伝えておく。
「華。先生に俺のことを聞かれたら兄貴って言うんやで」
「ぅんぅん。」
「病院では俺のこと1って呼んだらあかんで!お兄ちゃんと呼べな」
「ぇ~~ぉにぃちゃん(笑)恥ずかしぃわぁ~」
「それに15歳も離れてんのにぉにぃちゃんって。。。ぁつかましぃで(笑)」
そう言うと華は俺と腕を組んできた。
「ぃこか?ぉにぃちゃん♪」
精神科・・・。俺でも少し緊張している。
華の不安はもっと大きなものだろう。
だからこそ、こうしておどけて不安をかき消そうとしているのかもしれない。
病院のドアをくぐった。
229 名前:1 ◆hxOL7r2r.Y :2008/04/16(水) 09:53:56.10 ID:MVM9NCzC0
案の定、華は保険証を手に入れることは出来なかった。
病院の待合室は非常に清潔感があり落ち着いた雰囲気だった。
俺は受付で華の兄だと伝えた。看護師から用紙を渡された。
華は用紙に必要事項を書き込み俺の横に来て座った。
二人で並んで座り診察を待つ。
華は無言だった。
15分くらい待たされたか・・・。
その時間はやけに長く感じた。
看護師が華を呼びにきた。
診察の番が回ってきた。俺も立ち上がろうとした。
すると看護師が
「まず華さんだけで先生と診察しましょうね」
「お兄さんは少しお待ち下さいね」
華の目にサッと不安の色が走る・・・。が仕方がない。
俺は華に
「いっておいで。待ってるから」そう言った。
華は不安気な表情を浮かべながらも看護師について診察室に入った。
なんとなくドナドナを思い出していた。



238 名前:1 ◆hxOL7r2r.Y :2008/04/16(水) 10:02:15.55 ID:MVM9NCzC0
俺は1人で診察が終わるのを待っていた。
長い・・・それにしても長い。
人の診察を待つのってこんなに時間を感じるものなのか?
30分が過ぎたころだと思う。
華の入った診察室から先ほどの看護師が出てきた。
「お兄さん。どうぞお入り下さい」
そう言われ看護師のあとに続いて診察室に入る。
想像と全く違った診察室に驚いた!
俺は風邪で訪れる時の内科のイメージを持っていたが。違う。
そこには白いベットも無機質な医療器具も無かった。
おしゃれなお宅のリビングをいった感じだ。
そこに華が医者と向き合ってポツンと座っていた。
華は俺の顔をみると安心した表情で
「1ぃぃ~~」と言った。
「お兄ちゃんと呼べ」と言ったことを華は完全に忘れていたみたいだ。



245 名前:1 ◆hxOL7r2r.Y :2008/04/16(水) 10:09:18.52 ID:MVM9NCzC0
「お兄さんどうぞ。華さんのお隣へ」
先生は上品に優しさを兼ね備えた感じの女性だった。
年は40代半ばくらいか。
「失礼します」
そういって俺は華の隣に腰掛ける。
先生は俺をジッと見つめる。もしかして・・・。
既に気づいているのか?
俺が兄貴では無いことを・・・。
医者はニコっと笑うと俺に質問してきた。
「お兄さんは独立なされているのですか?」
「はい。実家を出て華とは今別々で暮らしています」
「なるほど・・・」
医者は何か考えている様子だ。
俺と華を交互に見て医者は口を開いた。
「今華さんとお話させて頂きまして・・・かなり複雑な家庭環境とお聞きしました」



250 名前:1 ◆hxOL7r2r.Y :2008/04/16(水) 10:18:02.05 ID:MVM9NCzC0
俺は答える
「はい。その通りです」
医者は続ける
「そして華さんは自分の意思に反して人の物を・・・特にお金を盗んでしまう癖がある」
「その通りです」
華はじっと下を向いて動かない。
俺は業を煮やして聞いてみた
「華は・・・心の病なのでしょうか?」
医者は華をじっとみつめながら静かに答える。
「まだはっきりとした事は言えませんが・・・。
そうですね。心の病・・その可能性は非常に高いです」
華の体がビクンと反応した。
医者は続ける
「話を聞く限りでは・・・。華さんは愛情に恵まれていないと感じました。
それがストレスになっています・・・そして」
「失礼ですが華さんは経済的に非常に苦労をなされていますね?」
華は下を向いて答えない。
俺が変わりに「はい」と答える。



256 名前:1 ◆hxOL7r2r.Y :2008/04/16(水) 10:23:55.78 ID:MVM9NCzC0
医者は難しい顔で話す
「ストレスの捌け口が金銭欲を満たしたい・・・。その方向に出ていると思われます」
そうだったのか・・・。
俺は隣の華を見る。
ピクリとも動かない。
髪に隠れてその表情を読み取ることもできない。
俺は聞いた
「その窃盗癖は・・・治りますか・・・?」
医者は俺の目を真っ直ぐに見つめて答えた。
「この病は非常に治りにくいものです」
衝撃的な言葉だった。
目の前がクラっとした。
それまで無言だった華がすすり泣く・・・。



268 名前:1 ◆hxOL7r2r.Y :2008/04/16(水) 10:32:47.12 ID:MVM9NCzC0
医者が立ち上がる。
そっと華の横に立ち華の肩をさする・・・。
華の髪に隠れた顔からは涙がポロポロと流れ落ちる・・・。
「でもね。お兄さん・・・華ちゃん。よく聞いて下さいね」
「先ほども言いましたが華ちゃんには愛情という栄養が不足しています」
「そしてこの病は治りにくいかもしれませんが・・・治らないわけではないのですよ」
華の肩をさすりながら医者は続ける。
「お兄さん。できる限り華ちゃんのそばにいてあげて下さいね」
「そして・・時間を掛けてゆっくり愛情を感じさせてあげれば・・・・」
「華ちゃんの病は治りますよ」
華は泣いている
「ぅぅぅ・・・ぅぐ・・・」
その声を聞きながら華のこれまでの境遇を考えた。
どこの世界に愛情に満たされながら、リーマンを1人で襲撃する14歳の
女の子がいるのだろうか・・・?
それほど・・・それほど・・・華は愛情に飢えていたのだ。



278 名前:1 ◆hxOL7r2r.Y :2008/04/16(水) 10:41:00.88 ID:MVM9NCzC0
医者は華の手を握って華にこう伝えた。
「もし・・・お金を盗みたい気持ちになったら、その時はグッと我慢してね!」
「そしてすぐに先生に会いに来てくださいね」
華は涙をポロポロ流しながら
「ぅち・・わかった・・・」とだけ答えた。
そして医者は俺の目を見て言った。
「お兄さん。いつも華ちゃんのそばで愛情を注いであげて下さい。それがお薬ですよ」
恐らく・・・いや間違いなく。
この医者は俺が兄貴で無いことを確信しているであろう。
俺は華と手を繋いで病院を出た。
すっかり元気が無くなった華・・・。
俺は華が前に言っていたことを思いだした。
「ぅちぁんまり海にぃったことがなぃねん」
俺は華に声を掛けた
「海見に行こうか?」



294 名前:1 ◆hxOL7r2r.Y :2008/04/16(水) 10:55:52.56 ID:MVM9NCzC0
電車に乗って大阪南港に向かった。
この広大な場所はいつきても閑散とした雰囲気がある。
いや。きっと人はたくさんいるのだろうが
広すぎてそう感じてしまうのだろう。
俺はこの場所が好きだった。
華と並んで岸壁に腰かける。
華は泣き疲れたのだろうか、頭を俺の肩に乗せてボーっと海を眺めている。
俺は考えていた
どうやって華に愛情を注げばいいのか・・・を



297 名前:1 ◆hxOL7r2r.Y :2008/04/16(水) 10:56:49.39 ID:MVM9NCzC0
そんなことを考えているとそっと華が喋り始めた。
「ぅち・・やっぱり精神病やったんやなぁ・・・」
「・・・・・・・・」
俺は言葉に詰まる。
「ぅちの病気は治らへんねんなぁ・・・大人になっても・・・お婆ちゃんになっても・・・」
「そんなことないで!先生も言うてたやろ?治りにくいけど時間掛けたら必ず治るって」
「ほんまに・・なぉるん・・・かな・・・??」
「治る。絶対治るで!華があの先生に会いたくなったら俺が連れていったるからな!」
「ぅち・・・ぅち・・・自分がこわぃねん・・・」
そう言って華は目に涙を溜める。
これは華の特徴の一つかもしれない。華は滅多なことでは大泣きしない。
まずは目に涙を溜めて堪えようとするのだ。
俺はそんな華を見る度にたまらない気持ちになっていた。
華の頭をそっとなでてあげる。
「思いっきり泣いてもええで?」
そういうと華はまるで子供みたいにワンワンと大泣きをしたのである。



307 名前:1 ◆hxOL7r2r.Y :2008/04/16(水) 11:08:26.76 ID:MVM9NCzC0
その日から俺は終始
どうすれば華が愛情に満たされるのかを考えた。
あの家ではダメだ。あの母親ではダメだ・・・。
華はまだ14歳。家族や家庭の温もりが必要な年の筈・・・。
俺はある考えに行き着いた。
華を俺の実家に連れて行こう。
1度家族の団欒というものを味あわせたらどうだろう?
俺は5人家族で育った。
まじめで仕事熱心な父親。料理好きの母親。
よくケンカもしたけど比較的仲の良かった兄貴2人。
俺は末っ子だった。
愛情たっぷりかどうかまでは分からなかったが
比較的普通の家庭で育ったとは思う。
しかし・・・。実家に華を連れていくには
それなりの段取りがある。
そう・・・華のことを家族に伝えなければならない。
華がまだ中学生であること。
華の家庭環境。
窃盗癖があること。
心の病であること。
そして鉄パイプで頭をカチ割られた出会い・・・。
親がこれを聞いて腰を抜かさないか?非常に不安であった。



322 名前:1 ◆hxOL7r2r.Y :2008/04/16(水) 11:22:29.83 ID:MVM9NCzC0
俺は先に華に聞いてみることにした。
14歳の子供が果たして29歳独身男の実家になど行きたいだろうか?
例の公園で華に聞いてみた。
すると・・・
「すごぃ!1の実家にぃけるのん??ぃきたぃ!!絶対ぃきたぃ!!」
意外なくらい喜んだ。
「1のぉっちゃんとぉばちゃんに気にぃられるよぅに。。ぉしゃれせなぁかんな!ぅんっ!」
まぁ程々のお洒落にしてくれた方が助かる。
はしゃぐ華を見て決意した。
うっしゃ!がんばって親に話してみますかっ!!
その夜、華を送って自宅に帰ると早速実家に電話をした。
父親が電話に出る。
「久しぶり~1やけど。元気にしてる??」
「おお~。1か。元気やぞ!どしたんや?電話なんか珍しい」
「うん・・・。実は次の休み女の子連れてそっち行きたいねん」
親父は少し驚いた様子だったが、それでも嬉しそうに
「分かった母さんに言うとく!ご馳走作ってもらっておく」
俺はこの父親の喜びを今からブチ壊すのか・・・。
そう思うと少し心が引けた。
「実は親父・・・。その子の事で少し話があるねん」



327 名前:1 ◆hxOL7r2r.Y :2008/04/16(水) 11:27:24.80 ID:MVM9NCzC0
俺は華の事を包み隠さず父親に話した。
14歳であること。
窃盗癖があること。
母親や弟のこと。
病院に行ったこと。
そして・・・鉄パイプで殴られたこと。
全てを矢継ぎ早に話した。
あとは父親の度量に委ねる。
父親はさすがに最初のテンションは消えていた。
でも黙って俺の話を最後まで聞いてくれた。
そして親父は言った。
「分かった母さんには話しておく。とりあえず1度連れてきなさい」
YESともNOともとれない反応だった。



351 名前:1 ◆hxOL7r2r.Y :2008/04/16(水) 11:45:05.32 ID:MVM9NCzC0
次の土曜日。
俺は華と実家に帰ることにした。
華とは駅で待ち合わせ。
お洒落すると張り切っていたが果たしてどんな格好をしてくるのか?
駅で待っていた華は・・・。
グレーのワンピースに黒のブーツ。
華のスカート姿は初めて見た。
それは小さなお嬢様だった。
俺は華に声を掛ける
「そんな服持ってたんや!?」
華は不安そうに俺の顔を見る?
「変かなぁ~ぅち・・??」
俺は首を振って答える
「めっちゃ可愛いよ。今までの華の中で1番可愛いわ」
その言葉で華のテンションは上がりまくった。
「ほんまぁ~♪めっちゃぅれしぃわぁ♪♪」
「やっぱり1のぉっちゃんとぉばちゃんにぁぅんやから
マジメなカッコせなぁかんと思ったねん~」
そう言って恥ずかしそうにハニカム華は本当に可愛かった。



374 名前:1 ◆hxOL7r2r.Y :2008/04/16(水) 11:55:50.73 ID:MVM9NCzC0
俺の実家までは電車で2時間。
途中2度の乗り換えがある。
華は終始ご機嫌だった。
「1とこんなに電車乗ったことなぃなぁ~!なんか旅行みたぃで楽しぃなぁ♪」
しかし実家の駅が近づくにつれさすがの華も緊張してきたようだ。
「ぅわ・・・。めっちゃ緊張するぅ。1のぉっちゃんとぉばちゃん
ぅちのこと気に入ってくれるかなぁ~」
子供の華にとって今回の件は婚約者の紹介だと認識しているのだろうか??
そんな華が可愛かったのでまぁ良い。
とうとう実家に到着した。
家の玄関を開けようとしたら華に止められた。
「1・・・ちょっと待って。心の準備する・・・」
そう言って深呼吸する華。
俺は華の心の準備が出来るまで待った。
「ぇぇで。心の準備・・・できた」
さて・・・。両親が華を見てどんな反応をするのか??
それは俺にも分からない。
いざっ!!実家の玄関を開けた!!



389 名前:1 ◆hxOL7r2r.Y :2008/04/16(水) 12:04:02.05 ID:MVM9NCzC0
「たばいま~帰ったで~」
俺は玄関でそう言った。
靴を脱ぐ俺。
華はカチカチになってまるで人形のように動かない。
相当緊張している様子だ・・・。
奥から母親の声がする「おかえり~」
そう言いながら母親が走ってきた。
華は俺の母親を見て必死に挨拶をしようとした。
もしかして家で練習をしていたかもしれない・・・・。
「ぅち・・ぅち・・華です。」
華はやっとこさそう言った。
これが華なりの最大限丁寧な挨拶なのだ。
ちなみに華の敬語「です」はこの時初めて聞いた。
俺の母親はそんな華を見てニコッっと微笑むと
「華ちゃんいらっしゃい。さぁどうぞ上がってね」
そういって華の荷物を持ってあげた。



396 名前:1 ◆hxOL7r2r.Y :2008/04/16(水) 12:11:32.15 ID:MVM9NCzC0
リビングに入ると母親は紅茶を出してくれた。
そして母親が華に話掛ける。
「華ちゃん小さくて可愛いね~。」
華はなんと答えていいのか分からず
モジモジしている。
そんな華を見て母親は話続ける。
「おばちゃん男しか子供おれんかったから
華ちゃんみたいな女の子が欲しかったんよ」
華は
「ほ・・・ほんまですか・・??」
と言いながらも顔を真っ赤にしている。
そういえば父親がいない
「親父は?今日休みやろ?」
母親に聞いてみる
「なんか休日出勤らしいわ。6時には帰るみたいやで」
ふ~ん。そうなのか。
父親と母親。
対面を一気に済ませられなかった華を少し気の毒に思った。
華はまた緊張しなければならないのだ。



453 名前:1 ◆hxOL7r2r.Y :2008/04/16(水) 13:08:27.58 ID:MVM9NCzC0
それにしても・・・。
こんなに緊張している華を見るのは初めてだ。
俺の頭を鉄パイプで割った華。
それがまるで借りてきた猫状態。
今日のタメに一生懸命お洒落して
ワンピースを着て張り切っていた華が今は恥ずかしそうに
下を向いてモジモジしている。
なんかそんな華がとても可愛く思えた。
「あ~。そやそや。おばちゃんなぁ。
華ちゃんのタメにケーキ焼いておいたんよ。食べてくれる??」
緊張する華に母親が言った。



456 名前:1 ◆hxOL7r2r.Y :2008/04/16(水) 13:09:19.33 ID:MVM9NCzC0
華は驚いた顔で母親の顔を見つめた。
「ぇ・・ケーキ・・・??ぅちのために・・??」
「そうそうちょっと待っててなぁ」
そう言って母親は台所に消える。
「ぅちのためにかぁ・・。」
華が嬉しそうにそう呟いたのを聞き逃さなかった。
母親がケーキを持ってきた。
俺には特別珍しいものではない。
しかし華は目をキラキラさせてそのケーキを見つめる。
「ケーキってほんまに家で作れるんゃ~」
母親が切り分けたケーキを食べる華
「ぉぃしぃ。ぉばちゃんのケーキはコンビニのヤツより全然ぉぃしぃ」
まぁ。華なりの褒め言葉なのだろう。



481 名前:1 ◆hxOL7r2r.Y :2008/04/16(水) 13:19:29.14 ID:MVM9NCzC0
きっと華の母親は親は子供にケーキなど焼いたことは無いのだろう。
そんな華が少し可愛そうに思える。
14歳の女の子といえば母親と台所に立って
料理を覚えたり、お菓子を作ったりするものじゃないのか?(よく分からないが)
母親は華の反応に気をよくし
「華ちゃん。お皿貸してみて。もう1個いれたげるから」
華も少し緊張が解けたのか
「ぅん♪ぁりがとぅ!ぉばちゃん」などと言っている。
ケーキを食べ終わると俺は自室に華を連れていった。
さすがにリビングで母親とずっといたら華も疲れるであろう。
俺の部屋は高校まで使用していた当時のままであった。
両親が独身の俺のため「いつ戻ってもいいように」と
時々掃除をしてくれている。
リビングを出る時母親が華に
「おばちゃんおいしい晩ご飯作るからね!食べていってね」と声を掛ける。
「ぅん♪ぉばちゃんぁりがとぅ」
華はちゃんとお礼が言える子なのだ。
敬語は使えないけれど・・・。



491 名前:1 ◆hxOL7r2r.Y :2008/04/16(水) 13:27:19.15 ID:MVM9NCzC0
「1のぉばちゃん優しぃなぁ♪」
「ぅちのことちぃさくて可愛いってぃぅてくれたで♪ぅれしぃなぁ~♪」
華はご機嫌の様子だ。
俺のスーファミを発見して嬉しそうに「FーZERO」をやっている。
さて・・・。
母親は当然父親から聞いていただろう。
華の素性を
それでもあのもてなしを華にした。
それは母親が少なくとも華の素性に対し嫌悪感を抱くことがなかった証だ。
俺は自分の母親の器のでかさに感謝した。
あとは・・・。父親だな。
父親は役所勤めで少々堅物なところがある。
一言で言えば「マジメ」なのだ。
その父親が華にどういう態度で接するのか??
これは俺にも未知であった。



521 名前:1 ◆hxOL7r2r.Y :2008/04/16(水) 13:38:35.34 ID:MVM9NCzC0
夜6時。部屋で華と桃鉄をしていると1階から物音がした。
「ただいま~」
父親の声だ!帰ってきた!
すっかりリラックスしていた華の表情も引き締まる。
再び緊張した様子だ。
俺と華はリビングへと向かった。
華が俺の後を付いてくる。
リビングに入ると父親はネクタイを緩めていた。
俺は父親に
「おかえり」と声を掛ける。
父親は俺に気づき
「おお1!ただいま~」と返事をする。
そして父親の目線は俺の後ろにいた華を捕らえる。
さて・・・。華はうまく自己紹介できるのか?
「ぅち・・ぅち・・華です・・」
母親の時と同じ挨拶だった。
しかも今回の声は消え入りそうな声。
やはり父親がいない華には男親はさらに緊張すのであろうか?



548 名前:1 ◆hxOL7r2r.Y :2008/04/16(水) 13:47:09.28 ID:MVM9NCzC0
父親は華をジッっと見つめて口を開いた。
「こんばんわ。華ちゃん。よく来てくれたねぇ~」
親父・・・。
華もホッっと緊張が解けた顔をする。
父親は
「小さくて可愛いなぁ~。華ちゃんは」
と母親と同じことを言っている。
恥ずかしそうにする華・・・。
父親は
「1と華ちゃん15分後に隣の洋間においで」
と言った。
はて・・なんだろう??
15分後洋間に行くと着替えた父親がいた。
そして「華ちゃん。そこに座り」と華をソファーに座らせると
嬉しそうにマカダミアンナッツの箱を出してきた。
父親は
「もうすぐ晩ご飯やからなぁ。母さんに見つかるとうるさいからここでチョコ食べ」
と言って華に勧めた。



600 名前:1 ◆hxOL7r2r.Y :2008/04/16(水) 13:59:01.29 ID:MVM9NCzC0
華はチョコを一個摘むと口に入れた。
「ぅち。こんなおいしいチョコレートはじめて食べたわぁ」
確かにマカダミアンナッツは旨い!
親父はそんな華を嬉しそうに見つめながら
「そうか。おいしいか?いっぱい食べてええんやで」
と華に勧める。
父親・・・そして母親・・・。
この2人が華に接す態度。
なぜ偏見を持たないのだろう?
普通は偏見の目で華を見るだろう・・・当然と思う。
しかし父親も母親もできる限る華もてなそうとしてくれている。
両親は女の子が欲しかったとこぼしていた事がある。
俺を産むとき正直女の子を期待していたそうだ。
だが残念?ながら俺が産まれ両親はとうとう女の子の親になる
事ができなかった。
そんな両親にとって華は
「もし女の子がいればこんな事がしてみたかった」と思わせる存在なのだろうか?
それとも・・・自分の息子が連れてきた彼女を
必死に理解しようとしているのだろうか?
答えは解らないが自分の親の器の大きさはヒシヒシと感じることができた。



638 名前:1 ◆hxOL7r2r.Y :2008/04/16(水) 14:11:16.47 ID:MVM9NCzC0
4人で夕食を囲んだ。
サラスパにから揚げ、コロッケにグラタン、味噌汁にご飯。
母親も気合を入れてたのだうが洋食ばっかりである。
母親なりに中学生の好みを考慮したのか?
「ぅわ~♪めっちゃぉいしそぅ」
「華ちゃんいっぱい食べてね」
母はそう言って華の小皿にから揚げとコロッケを乗せてあげる。
俺と父親は久しぶりの晩酌だ。
「華。先食べや!」
俺がそういと華はコロッケを一口かじって
「しまった!!」と言う顔をした。
コロッケを小皿に戻し一旦箸を置くと、恥ずかしそうに
「・・・ぃただき・・・ます・・・」
と言った。
華の家庭ではきっと「いただきます」なんて言葉は使わないのであろう・・・。
それを見た母親は
「はい!どうぞっ!」と笑顔を見せた。



677 名前:1 ◆hxOL7r2r.Y :2008/04/16(水) 14:22:39.25 ID:MVM9NCzC0
華は全てのおかずを食べる度に
「ぉぃしぃ。ぉぃしぃ」と言った。
そんな華を見て俺の両親も目を細めていた。
夕食が終わって実家を出る。
玄関先まで見送ってくれた両親は
「華ちゃん。またいつでも遊びにきてな!」
そう声を掛けた。
華は精一杯の感謝の気持ちを込めて
「ぉっちゃん・・・ぉばちゃん・・・。ぁりがとぉ!!」
と言った。
両親はニコニコして俺と華を見送ってくれた。
帰りの電車・・・。
華は興奮が冷めやらない様子だ。
「1のぉばちゃんのケーキぉぃしかったなぁ~。ぉっちゃんも優しかったなぁ~」
と嬉しそうに話した。
そのうち余程疲れていたのか俺の肩に頭を乗せ眠る体勢に入る。
華は呟く
「ぁんなに優しいぉ父さんとぉ母さん・・・華も欲しかったわ・・・」
「華も1もの家にぅまれたかったわ・・・」
そう言って華は眠った。



706 名前:1 ◆hxOL7r2r.Y :2008/04/16(水) 14:30:41.68 ID:MVM9NCzC0
翌日の夜父親から電話が掛かってきた。
「昨日はありがとう。華も喜んでやわ」
「そうか。ちゃんと華ちゃん送ってあげたか?」
「うん。送った」
「そうか・・・」
沈黙が流れる・・・。
「親父・・・華はどうやった?」
俺は聞いてみた。聞かねばならない事だった。
「・・・・・・・・・うん」
父親は慎重に言葉を選んでいる様子だった。



717 名前:1 ◆hxOL7r2r.Y :2008/04/16(水) 14:36:22.46 ID:MVM9NCzC0
「可愛くて、素直で、いい子やと・・・思う」
父親はそう答えた。
しかし・・・。歯切れが悪いのは丸解りである。
「思うけど・・・なに?」
俺は聞いてみた。
父親は言う
「華ちゃんはええ子や・・・。しかしお前に華ちゃんの人生を背負えるか?」
そうか・・・。親父は華を1人の人間をして認識しようとしている。
息子の彼女として迎え入れる覚悟をしようとしている。
しかし・・・しかし。父親が気にしているのは
他でもない。その息子の覚悟なのだ。



726 名前:1 ◆hxOL7r2r.Y :2008/04/16(水) 14:41:36.27 ID:MVM9NCzC0
「お前にその覚悟・・・あるんか?」
俺は・・・俺は・・・。
恐らく覚悟をしていたと思う。
この時には・・・。
「覚悟はしてる・・・」
俺はそう答えた。
華の事を・・・心から愛していた。
父親は
「そうか分かった。今度また華ちゃんと遊びに来なさい」
そう言って電話を切った。
俺は心の中で「親父ありがとう・・・」
そう呟いた。
第六部終わり!!

とんでもない彼女は強盗【最終章】