勇者「俺が勇者になった理由は女の子にモテるためだ。文句あんのか」 その1
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 20:34:26.78 ID:36thv87Do
通路
勇者「にょほほほー!! あひゃひゃひゃひゃー!! 笑いがとまんねーなぁ!!」
兵士長「ご機嫌だな」
勇者「先輩!! そりゃご機嫌にもなるっすよぉ」
兵士長「お前にも恋人ができるか……。こりゃ、明日は雪でも降るな」
勇者「何をいってんすかぁ。俺の魅力に気が付いた女の子がようやく現れたってだけのことっすよ。むしろ遅すぎたぐらいっすわ」
兵士長「そうだな。お前みたいな馬鹿正直ないい奴は二人もいねえよ」
勇者「てれるぜ」
兵士長「でよぉ、姫のことだが……」
勇者「先輩。今は、今だけは仕事のことを忘れさせてくださいよぉ」
兵士長「だがな」
勇者「今宵の俺は野生児の保護者じゃなく、カッコいい男なんすよ」
兵士長「あいよ。もう行け」
勇者「うぃーっす!!! せんぱーい!! 今度、ダブルデートでもしましょーねー!!! 俺もちょー美人の嫁さんつれていくんでー!!!」ダダダッ
兵士長「はしゃいで転ぶんじゃねぇぞぉ。……すっかり舞い上がってるなぁ。ダイヤの原石を磨いてやったほうがずっといいと思うんだがなぁ、俺は」 



199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 20:41:51.80 ID:36thv87Do
ホテル スウィートホーム
勇者『……綺麗だ』
シスター『そうですね。夜景が綺麗です』
勇者『違うよ。君のことさ』
シスター『ゆ、勇者様……』
勇者『君の純潔は神にではなく、俺に捧げてくれ』
シスター『はいっ』
勇者「ーーおしっ。予行練習は完璧だ。あとは、本番のときに上手くできるかどうかだが……」
「勇者様……」コンコン
勇者「(キタッ!! 平常心……平常心……)」
勇者「あ、あいてぇーますよぉー!」
シスター「……」ガチャ
勇者「よ、ようこそぉ……!! こんにちは!!!」
シスター「はい」
勇者「(落ち着けぇ、俺……。深呼吸、深呼吸……)」



204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 20:47:37.19 ID:36thv87Do
勇者「スー……ハァー……スゥゥゥ……ハァァァ……」
シスター「綺麗ですね」
勇者「そうですね。夜景が綺麗です」
シスター「はい。本当に」
勇者「違うよ。君のことさ」
シスター「は?」
勇者「あ、いや……」
勇者「(くそぉ……!! くそぉ……!! うまくいかねえぇ!! だが!! 彼女はもう我が手の内!!! なにしたって大丈夫だぁ!!!)」
シスター「……こんな素敵な部屋を取ってくれてありがとうございます。私なんかのために」
勇者「な、何をいっているんですか。それより、シャワーをあびてきてはいかがですか?」
シスター「でも、あの、私はお話を……」
勇者「まずは今日一日の疲れと汚れを落としてくるのがいいかと」
シスター「そ、そうですか? 勇者様は?」
勇者「俺はもう準備万端ですから!!」
シスター「……で、では、お言葉に甘えて」 



205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 20:55:24.11 ID:36thv87Do
勇者「ここまでは恋愛マニュアル通りに事が進んでる……。あとは、タイミングだけだな」
勇者「押し倒すのは絶対にNGだから、優しく肩を抱いて……ベッドに座らせてから……」
シスター「ーーいいお湯でした」
勇者「おぉ!? さ、さっぱりしましたか?」
シスター「はい。あんなに広いお風呂は初めてです。ありがとうございます」
勇者「そうですかそうですか。喜んでもらえて俺も嬉しいです」グイッ
シスター「きゃっ!?」
勇者「……」
シスター「あ、あの……顔が近いです……」
勇者「君の純潔を……僕にくれぇ……」
シスター「な、何を言って……」
勇者「そして……もう結婚を前提に……はぁ……はぁ……」
シスター「あ、あの、待ってください!!!」
勇者「なんすか? 俺、俺、もう……!!」
シスター「貴方と私は……その……腹違いの兄妹なんですよ?」 



211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 21:05:49.42 ID:36thv87Do
勇者「……え?」
シスター「今日は……そのことで話を……」
勇者「……」
シスター「私の父と貴方のお父様は同じ人なんです……」
勇者「は?」
シスター「貴方が父の墓前にいつもいるので、おかしいなぁとは思っていたんです」
勇者「はぁ……そうなんすか?」
シスター「母から父がどのような人物なのかは聞いていたので、もしかしたらって思っていたんです」
シスター「色々な場所に淫らな関係をもった女性がいて、それで……何人もの子どもがいることも知っていました……」
勇者「あぁ、親父ならありえそうっすね」
シスター「母に子どもを産ませて責任を放棄し、私が生まれても一度も顔を見に来ることすらなかった父親を私は恨んでいました」
勇者「はぁ……」
シスター「でも居所を突き止めたときには、もう死んでいて……。私にとっては最後まで身勝手な人だった……」
シスター「私は父のことを何も知らないんです。どんな人だったのか、知りたくて私はこの町に住むことを決めました。そして……貴方を知ったんです……」
勇者「へぇー。そっすか。すごいっすね」 



212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 21:17:36.95 ID:36thv87Do
シスター「教えてくれますか? 私の父親がどんな人だったのか、どんなことをしていたのか知りたいんです。知った上で……」
勇者「うえで?」
シスター「バカヤローって墓の前で言いたいんです。そうでもしないと気がすまなくて」
勇者「ええと。まぁ、だらしない男だったのはしってるんすよね?」
シスター「はい。でも、それだけです。母も一夜限りの関係だったみたいで……。それ以上のことはわからなくて」
勇者「この町に来てから色々調べたんじゃないんすか?」
シスター「耳にするのは似たような話ばかりです。愛人が何人もいたとか、港の数だけ恋人がいるとか」
勇者「親父め、やりおる」
シスター「でも、勇者様……いえ、兄さんならきっと他のことも知っているんじゃないかって……。違う父の顔が分かるかなって……だって……」
シスター「父が本当に愛していた女性って、兄さんのお母様みたいですから」
勇者「な、なんで?」
シスター「父がこの町に住んでいて、最後に帰ってくる場所はここみたいでしたから」
勇者「それは親父が城の兵士だったからで」
シスター「この町に守りたい人がいるから、ずっとここで兵士をしていたのではないかと私は思っています」
勇者「ま、まぁ、確かに母さんはすげー美人で、色んな人に言い寄られてたみたいっすけどぉ……」 



214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 21:28:45.30 ID:36thv87Do
シスター「やっぱり!! どんな人だったんですか!? 教えてください!!」
勇者「ちょ、ちょっと待って!!」
シスター「な、なんですか?」
勇者「……君は親父のことを聞くためだけに、俺の誘いにのったってことか?」
シスター「はい。丁度いい機会でしたので」
勇者「それなら俺の部屋を訪ねてくれたらよかったのでは?」
シスター「勇者である兄さんはとても忙しいみたいでしたから、ご迷惑かなと……」
勇者「俺がホテルを予約する前に、父親のことで話があるとか言ってくれたらよかったのでは?」
シスター「兄さんに……可愛いって言われて……その、嬉しかったんですけど……」
勇者「なんすか」
シスター「あの場で妹ですって告白したら、もう会えなくなるような気がして……」
勇者「……確かに」
シスター「兄さんは私のこと……その……」
勇者「ええ。狙ってました。恋におちてすらいました。君は俺の純粋な気持ちを弄んだのかい?」
シスター「ご、ごめんなさい……そんなつもりは……。でも、こうでもしないと兄さんが逃げてしまいそうだったから……」 



217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 21:35:58.07 ID:36thv87Do
勇者「そうかぁ……そうなのかぁ……」
シスター「兄さん……」
勇者「……禁断の愛なんてのもいいかもしれないな」
シスター「え?」
勇者「同じ血は半分しか流れてない。多分、結婚しても大丈夫だよ」
シスター「だ、ダメです!! そんな兄妹でなんて……!!」
勇者「うるせぇぇ!!!」ガバッ!!!
シスター「きゃぁ!?」
勇者「俺は……俺は……この日を糧に……森にいって、狼の群れとも戦ったんだぁ……」
シスター「に、兄さん……」
勇者「今日、俺は……男になるって……きめてたんだぁ……!!!」
シスター「や、やめて……兄さん……」
勇者「ぐ……ぁ……」
シスター「ダメ……兄妹なんだから……こんなのダメ……」
勇者「ぐぁ……ぁぁぁ……ぁぁああああ……!!! うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」 



221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 21:46:28.08 ID:36thv87Do
シスター「兄さん……!」
勇者「そうだな!!! 血を分けた兄の誘いだ!!! よっぽどのことがなければ断ったりしねえよなぁ!!!!」
シスター「……うん」
勇者「アーッハッハッハッハ!!!! お前は最高の妹だぜぇ!!!!」
シスター「兄さん、あの……恋人とかにはなれないけど……あの、これからは一緒に住むぐらいはーー」
勇者「フフフハハハハハハハハ!!!!! なぁーんてこったぁぁぁ!!!! こんなに可愛い妹が俺にいたなんてぇ!!!」
勇者「おやじぃ!!! やってくれんじゃねえかぁ!!! 相変わらず、いい仕事してやがるぜぇ!!!! ハーッハッハッハッハッハ!!!!」
シスター「そんな……可愛いなんて……」モジモジ
勇者「俺は幸せものだなぁぁぁ!!!!」
シスター「私もまさか勇者様が兄だったなんて、嬉しいです。こんなに立派な兄がいたなんて母が知ったらきっと喜んでくれます」
勇者「だろうねぇ!! 吉報を手紙にしたためればいいさぁ!!!」
シスター「はいっ。そうします」
勇者「今日はここに泊まっていくといい。兄からのささやかなプレゼントだ」
シスター「え、でも、兄さんから父の話を……」
勇者「いやいやいや!! お前みたいな可愛い妹一晩も一緒とか理性がもたないよ。俺は宿舎に戻るから。金の心配はしなくていいよ。一泊分は払ってあるから。二泊目からは自腹な」 



225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 21:57:17.56 ID:36thv87Do
シスター「兄さん、本当にいいんですか? ここ、高かったんですよね?」
勇者「良いっていってるだろ。お前だって広いお風呂に入れて嬉しいっていってたじゃないかぁ」
シスター「そうですけど……でも……兄さんに迷惑を……」
勇者「馬鹿野郎。妹が兄に気を遣うんじゃねえよ」
シスター「兄さん……」
勇者「また会いにくる。そのときたっぷりと話してやるよ。親父のことをさ」
シスター「はい。待っています」
勇者「それじゃ」
シスター「兄さん!」
勇者「なんだ?」
シスター「本当にありがとう。こんなにも綺麗な夜景を見せてくれ」
勇者「お前のほうが何倍も綺麗だよ」
シスター「や、やだ……もう……」
勇者「ふっ……。おやすみ」
シスター「おやすみ、兄さん」 



228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 22:06:11.22 ID:36thv87Do
城下町
勇者「うおぉぉぉぉぉぉお!!!!!!! うおぁぁああああああ!!!!!」
門兵「おい。こんな夜に何を騒いでいるんだ?」
勇者「だまぁぁれぇぇぇ!!!!」
門兵「な、なにかあったのか?」
勇者「うっ……こんな仕打ちあるかよぉ……!!! おれがなにしたっていうんだぁぁよぉ……!!!」
門兵「お、おい」
勇者「ひとなみにもてたいっておもうのが、そんなにつみなのかよぉ!!! なぁ!? 教えてくれよぉ!!!」グイッ
門兵「く、くるしぃ……!!」
勇者「うわぁぁああああああ!!!!!」
門兵「……」
兵士長「なんの騒ぎだ?」
門兵「あ。いえ、その……」
勇者「なんだよぉ……なんでもするからよぉ……おれに……しあわせをすこしだけ……かけらでもいいから……わけてくれよぉ……!!! あぁぁぁ……!!!!」
兵士長「こりゃ、ひでぇな。どんな振られかたしたんだ……」



230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 22:14:19.47 ID:36thv87Do
酒場
兵士長「ふぃー……。そうかぁ。あの糞野郎の娘だったのか」
勇者「ぐすっ……うぅ……ぅぅ……!!」
兵士長「今日は飲もう。な?」
勇者「せんぱい……嫁さんは……いいん、っすかぁ……?」
兵士長「バーカ。今日は嫁なんざ忘れたよ。気が済むまでのむぞぉ」
勇者「せんぱぁい……!!」
兵士長「ジャンジャン飲め。今日も奢ってやる」
勇者「あざすぅ……!! ーーすんませーん!!!!」
バニー「はぁーい」
勇者「君の心はおいくらですか?」
バニー「生ビールでいいですか?」
勇者「心に空いた穴を貴女の愛で埋めてください」
バニー「畏まりましたぁー。マスター、生おねがいしまーす」テテテッ
勇者「……よし! のむっすよ!! 今日はとことんのんでやるっす!!!」 



231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 22:25:49.19 ID:36thv87Do
勇者「女なんてぇーもうこりごりだぁー!! ちくしょー!!! 女なんてぜったいにもう信用しねぇー!!!」
兵士長「すっ……ぱぁー……」
勇者「おんななんて……おんなんてぇ……!! おれはぁー!! いっしょう、童貞でいい!!! 俺の純潔をクズどもになんぞ、渡してたまるかってんだぁ!!!」
兵士長「おぅ。言ってやれ言ってやれ」
勇者「童貞こそがぁ、俺の誇りっすよぉ。墓まで待っていくっす。きめましたっ!!」
兵士長「素晴らしいねぇ。それでこそ勇者だ」
勇者「ハーッハッハッハッハッハ!!! ヒャーッハッハッハッハッハ!!!! ナーッハッハッハッハッハ!!!! ハーッハッハ……ハァ……」
兵士長「おい、どしたぁ?」
勇者「……せんぱぁい。俺、なんでモテないんすかぁ? 勇者になったのもモテるためなんすよぉ……なのに……なんでっすかぁ……」
兵士長「諦めなけりゃあ、きっといい女がひょっこり現れるって」
勇者「ふんっ。聞き飽きたっすよ。その台詞」
兵士長「悪いな。可愛い後輩を慰めることもできねえ男で」
勇者「まったくっすぅ……。すんませーん!! 酒、おかわりぃー!!!」
バニー「はぁーい、ただいまぁー」
兵士長「(姫の話は明日だな、こりゃ)」 



232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 22:34:59.10 ID:36thv87Do
城下町
兵士長「本当に一人で戻れるか?」
勇者「よゆーっす。俺をだぁれだと、おもってんすかぁ? 天下無敵の勇者様っすよぉ? ひーっひっひっひ」
兵士長「姫が待ってんだろ。早く戻ってやりな」
勇者「ひめぇ!? へんっ。あんなクソガキなんてぇ、どぉーでもいいんすよぉ!!!」
兵士長「そういうなよ。お前のこと頼りにしてんだから」
勇者「あいつがもっとボインボインならやる気がでたんすけどねぇー」
兵士長「あと5年は様子みてやれよ」
勇者「おれは!! 今すぐ!! ほしいんです!! 彼女がぁ!! 嫁がぁ!! 伴侶がぁぁ!!!!」
兵士長「分かった分かった。もう休め」
勇者「今日は、あざしたぁ!!」
兵士長「はい。お疲れさん」
勇者「先輩!!! おれぇ!! まけねえっすからぁ!!!」
兵士長「おーぅ。しっかりやれ」
勇者「もうね!! 悟りましたからぁ!!! モテたいとか思わないっす!!!! うっひょぉぉ!!! イェーイ!!!! どっからでもかかってこいやぁぁ!!!」 



233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 22:41:27.28 ID:36thv87Do
勇者「あー……せかいがまわってるなぁ……。もっと歪めばいいんだぁよぉ。世界が歪めばよぉ、俺がモテモテになる世界に変わるかも……なぁ……」
勇者「ハハハハハハハ!!! 世界がひっくりかえったって、そんなことあるわけねぇええかぁ!!!!」
勇者「……かえろ」
「グルルルル……」
勇者「あん?」
狼「グルルル……!!」
勇者「なんだぁ、でけえ犬畜生だなぁぁ。やるかぁ! こいよぉ!! おらおら!!」
魔女「随分と酔っているようね」
勇者「お前……は……」
魔女「ふふ……。あの子はどこかしら?」
勇者「あぁん? いうわけねえだろぉ、ぶぁーか!!」
魔女「そんなこと言わないで」スリスリ
勇者「おっほぉ……なにすんだよぉ……?」
魔女「教えてくれたら、いいことしてあげるわよ?」
勇者「マジっすかぁ……? へへっ、どぉーしよっかなぁ……」 



234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 22:46:31.74 ID:36thv87Do
宿舎 勇者の部屋
狼少女「あぅ……あぅ……」ウトウト
勇者「おーい!! もどったぞぉい!!!」
狼少女「ぅあ!? 戻ったか!?」
勇者「おーぅ。いい子にしてたかぁ?」ナデナデ
狼少女「あい!」
魔女「ーーやっと会えたわ」
狼少女「え……」
魔女「さぁ、帰るわよ」
狼少女「あぅ……やだぁ……」
魔女「聞き分けのないこと言わないの。完全に薬の効果が消えているわね……」
狼少女「うあぁぁ……!!」
勇者「どしたぁ?」
狼少女「あ……ぅ……」ギュッ
勇者「んだよぉ……はなせよ……」 



235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 22:51:50.38 ID:36thv87Do
魔女「みんな待っているわよ」
狼少女「い、いや……!! いやぁ!!」
魔女「……」
狼少女「こいつについていく!! そう決めた!!」
魔女「ふんっ!!」パシンッ!!!
狼少女「あぅ!?」
勇者「あーらら……」
魔女「行くわよ」グイッ
狼少女「た、たすけ……」
勇者「……」
魔女「ありがとう、勇者様。もう二度と会うことはないわ」
勇者「おい、まてよぉ。いいことしてくれんだろぉ? ほら、脱いでくださいよぉ。ほれほれぇ」
魔女「……いけ」
狼「グルルルル……」
勇者「なんだぁ? 獣とヤレってかぁ!? そこまでおちぶれちゃいねえぞぉ。こらぁ!!」 



236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 22:57:21.87 ID:36thv87Do
魔女「さようなら」
狼少女「あぁ……!!」
狼「ガァァァウ!!!」
勇者「ーー邪魔だ、おらぁ!!!!」ドガァ!!!!
狼「ガッ……!?」
魔女「うそ……!? 素手で……!?」
勇者「いいことしてくれんだろぉ!? 俺は約束守ったのにぃ、そりゃあねえだろぉ!?」
狼「グルル……」
勇者「やらしてくれるんじゃねえのかよぉ!! 冗談じゃねえぞ!!! おらぁ!!! 女性不信になっちまうぞ!!! あぁぁ!! いいのかぁ!?」
魔女「(これ以上、騒がれたら……)」
「まーた勇者殿が騒いでるみたいだなぁ」
「一応、様子見にいくかぁ」
魔女「ちぃ……」
勇者「約束守る気ねえなら、そいつ置いてけぇ」
狼少女「たすけて……」 



237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 23:05:08.30 ID:36thv87Do
勇者「今は虫の居所が果てしなくわりぃんだ……。美人でも容赦しねえぞ……こらぁ……!!」
魔女「置いていけですって。誘拐しておいてよくいう」
勇者「誘拐だぁ? あんたこそ、こいつをどっかから攫ってきたんだろぉ……?」
魔女「……」
勇者「なんとかいえーー」
狼「ガァァァアウ!!!!」
勇者「なんだ犬畜生!!! 人間様に勝てるとおもってんのかぁぁぁ!!!!」
魔女「(今のうちね)」グイッ
狼少女「いや……いやぁ……!!」
魔女「くっ。仕方ない。ここで薬を……」
狼少女「ちゅうしゃ……いやぁー!!」
兵士「誰だ!!」
魔女「大人しくしなさい!!」
狼少女「ガルルルル……!!!!」
兵士「その子をどうするつもりだ!!」 



238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 23:11:43.80 ID:36thv87Do
魔女「ーーいい機会だわ。さぁ、行きなさい」
狼少女「……」
兵士「どうした? 早くこちらにーー」
狼少女「アァァァァウ!!!!!」
兵士「な……!?」
魔女「ふふ……。大人を圧倒できればそれでいい」
狼少女「ガァァァァウ!!!」
兵士「くっ……!! 勇者殿!!! 勇者どのー!!!」
勇者「なんっすかぁ!!!」
兵士「一体、これは……!!」
勇者「あぁ!? そいつが魔女っす!! つかまえろぉ!!!」
兵士「魔女……!! 敵襲ー!!! 魔女だぁー!!!」
魔女「(薬の効果のほどは見れた……。まだ捕まるわけにはいかないわ……)」
魔女「もういいわ!! 行くわよ!!」
狼少女「あい!!」 



240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 23:18:25.48 ID:36thv87Do
狼「ガァァァァウ!!!」
勇者「この……!!! どけおらぁ!!!」ドガッ!!!
狼「グルルル……!!」
勇者「魔女は!?」
兵士「町のほうへ逃げました!! 追います!!」
勇者「たのむっす」
勇者「(あれだけ怒ってたから取り戻しにくることは予想してたけど、結構早かったなぁ……。くそ、酒のむんじゃなかった……)」
狼「グルルル……」
勇者「まだやるかぁ?」
狼「……」
勇者「……なんだ?」
狼「……ガウっ」ダダダッ
勇者「あ、逃げた」
勇者「んじゃ、あとを追わせてもらうぞ」
勇者「うわぁぁああああ!!!!」ダダダッ 



242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 23:25:45.16 ID:36thv87Do
城下町
魔女「ふふふ……。よかったわぁ。取り戻せて」
狼少女「……」
魔女「貴女がいないと、寂しいもの」
兵士長「ーーどこいくんだ。こんな夜更けによぉ」
魔女「……ちっ」
兵士長「まさか、魔女から来てくれるとは思わなかったぜぇ。助かった」
魔女「通してもらえるかしら?」
狼少女「……」
兵士長「ふぃー……。姫を人質にするつもりか」
魔女「本当はしたくないのだけどね」
兵士長「くだらねえ脅しはやめろ。お前が姫を殺すのは勝手だ。それでも俺はお前を捕まえるぜ」
魔女「……捕まえる?」
兵士長「あんたを連れて来いって言われてんだよ」
魔女「そうなの……。てっきり、殺されるのかと思っていたけど、ふぅーん。そうなの……」 



243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 23:31:22.35 ID:36thv87Do
兵士長「なに?」
魔女「それって国王が私に会いたがっているってことよね」
兵士長「……」
魔女「ふふふ……。そう。なら、話が違ってくるわね」
兵士長「なんだと?」
狼「ガァァウ!!」
兵士長「おぉ!?」
勇者「にがさんぞぉぉ!!!」
兵士長「お前!!」
勇者「あ、先輩! ちっす!! なにしてんすかぁ?」
兵士長「てめぇがちゃんと戻れたかどうか確かめてこいって嫁に言われてな。そしたらお祭りが始まってやがったんだ」
勇者「できた嫁さんっすねぇー」
兵士長「てめぇこそ、なにしてやがる。姫を奪われてんじゃねえか!!」
勇者「酒が入ってなけりゃあ、こんなことはなかったっす!!」
兵士長「どーだかぁ。素面でもハニートラップに引っかかってたんじゃねえの?」 



244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 23:37:06.07 ID:36thv87Do
勇者「それは否定しないっすけど……」
兵士長「ったく、減給ものの失態だぞ」
勇者「……反省してるっす」
狼少女「アァ……ゥ……」
勇者「さぁ、魔女さん。返してもらいましょうか」
兵士長「残念だけどなぁ。姫はあんたよりも、勇者のほうが好きらしいぜ」
魔女「……新旧の勇者に追い詰められては逃げ場はないわね」
勇者「諦めたっすかぁ。素直じゃないっすか」
魔女「お手上げね。好きにするといいわ」
兵士長「……」
魔女「何?」
兵士長「いや。こっちにこい」
魔女「はいはい。あ、勇者様。この子のことよろしくね」
勇者「(なんだ……?)」
狼少女「アァ……ォ……ウ……」 



246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 23:42:55.18 ID:36thv87Do
勇者「おい、大丈夫か?」
狼少女「アァ……ウゥ……」
勇者「そうだ。薬を……」
狼少女「アァァ……ウゥゥ……」ギュッ
勇者「……」
狼少女「アァァ……ぁぁ……」
勇者「悪かったよ。守ってやれなくて」
狼少女「う、そ……つき……」
勇者「ごめん」
狼少女「あぅ……ゆる、さない……」
勇者「……すまん」
狼「……」
勇者「なんだ? 取り戻すつもりか? やれるもんなら……」
狼「……」タタタッ
勇者「……魔女といい狼といい。何がしたいんだか」



248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 23:48:22.20 ID:36thv87Do
城内 謁見の間
魔女「……」
王「おぉ……。でかしたぞ」
兵士長「いえ」
王「魔女よ。各地で起こっている事件に関わっているのは分かっている。弁明はあるか?」
魔女「ないわ。全部私がやったことだもの」
王「何のためにだ」
魔女「……知ってるくせに」
王「……」
兵士長「陛下、あの……」
王「地下牢に放り込んでおけ」
兵士長「はっ。こいっ」
魔女「痛くしないで欲しいわ」
兵士長「つべこべいうな」
魔女「はいはい」 



249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 23:56:35.32 ID:36thv87Do
宿舎 勇者の部屋
勇者「あーあ、部屋の中、滅茶苦茶だなぁ。ここまで滅茶苦茶だと片付ける気もおきねー」
狼少女「……」
勇者「んだよぉ。謝ってんだろぉ。もう二度とあんなことには……」
狼少女「……っ」ギュッ
勇者「怪我してるのか?」
狼少女「お前、どこか行くの禁止な」
勇者「……そうだな。もういかねえよ」
狼少女「本当か?」
勇者「ああ。もう行くところがなくなったしなぁ……。それより、どこかおかしいところはないか?」
狼少女「うー……?」
勇者「なんでもいい。どっか痛いとか、苦しいとか」
狼少女「ある。胸だ。胸が苦しい」
勇者「胸だぁ? どう苦しいんだ?」
狼少女「なんか、きゅーって締め付けられてる感じがするぞ! どうにかしろ!!」 



252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/24(木) 00:04:48.10 ID:W9YT+3P1o
勇者「よくわかんねえけど、痛み止め飲んどくか?」
狼少女「薬はいやだ。ちゅうしゃもいやだ」
勇者「我侭いうなよ。死にたいのか?」
狼少女「わかった! これ恋わずらいだ!! 多分そうだ!! あの本に書いてた!!」
勇者「はいはい。そんな相手いねえだろ、お前」
狼少女「あぇ? ちがうのか?」
兵士長「ーーよう、ご両人。仲いいねぇ。まるで恋人同士じゃねえのぉ」
勇者「先輩。魔女はどうなったっすか?」
兵士長「今は地下牢だ。それよりな……」
勇者「なんすか?」
兵士長「嫌な予感がするんだ。どうにも面倒なことになりそうだ」
勇者「はっきり言ってくださいよ」
兵士長「なぁ、姫。母親はいないって言ってたけど、それって死んだってことか? それともどこかに行ったのか?」
狼少女「母親はいない!」
兵士長「姫の生みの親はいるだろ? まだ生きてんじゃねえのか? 教えてくれねえか。大事なことなんだよ」 



253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/24(木) 00:17:39.81 ID:W9YT+3P1o
狼少女「いない!!」
勇者「まさか……お前……」
狼少女「私に母親なんていない!!」
兵士長「薬漬けにしてくるような奴を母親とは認めたくないってことでいいか?」
勇者「……魔女が母親なのか?」
狼少女「……」
兵士長「わざわざリスク背負ってまで取り戻しに来た理由がわかったな。歪んではいるがあれで娘を愛してるんだろうぜ」
勇者「実の娘に嫌われてるじゃないっすか」
兵士長「ハハッ。確かにな。じゃ、次の問題だ」
勇者「薬で父親は狼だと思い込まされていて、正気に戻れば『父親はよくわからない』でしたもんね」
兵士長「姫。父親が誰なのか知らないんだろ?」
狼少女「よくわからない」
勇者「先輩、心当たりでもあるんすか?」
兵士長「調べてみないとわからんが……。姫は本物の姫様かもしれねえな」
狼少女「あぅ?」 



254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/24(木) 00:24:55.41 ID:W9YT+3P1o
地下牢
王「……」
衛兵「国王陛下!! な、何故ここへ!?」
王「席を外してくれ」
衛兵「し、しかし……今ここには……」
王「命令だ」
衛兵「はっ! 失礼しました!!」
王「うむ……」
魔女「ーーふふ。明日まで待てなかったのかしら?」
王「……」
魔女「変わらないわね。せっかちな人」
王「会いたかったぞ」
魔女「どうして?」
王「お前を愛しているからに決まっている」
魔女「嬉しいわ。私もよ、アナタ。うふふふ……」 



255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/24(木) 00:34:07.46 ID:W9YT+3P1o
宿舎 勇者の部屋
勇者「……」
狼少女「姫か。私、姫なのか」
勇者「まだわかんねえだろ。かもしれないってだけで」
狼少女「姫か! なんかかっこいいな!!」
勇者「そうか?」
狼少女「お前に命令できるか!?」
勇者「まぁ、できるな」
狼少女「よし! 私、姫になるぞ!! それでお前に命令する!!」
勇者「なんて命令する気だ?」
狼少女「私から離れるな!!」
勇者「すみません、その命令はきけません。姫、調子にのるのも大概にしろよ」
狼少女「ガルルルー!!!」ガブッ
勇者「やめろよ。汚いだろうが」
勇者「(姫か……。国王と妃の間に子どもがいたとは聞いたことないし……。だとしたら魔女は陛下の側室か何かだったってことになるか……?)」 



256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/24(木) 00:46:32.89 ID:W9YT+3P1o
翌朝 城内
兵士「隊長!!」
兵士長「すまんな。どうだった?」
兵士「公式記録ではないのですが、気になる文書を見つけました」
兵士長「そうか。やはり大臣クラスが隠していたか」
兵士「この事実を知っていたのは恐らく当時勇者であった……」
兵士長「わぁーってる。城下町の種馬だろ」
兵士「はい。彼は特命で魔女狩りを行っています」
兵士長「それはどういう理由でだ?」
兵士「姫君の奪還と妃を殺害した魔女を捕らえるためです」
兵士長「あの二人の間に子どもはできなかったからな。側室との間にできた赤子をそのまま姫にするしかなかったわけだ」
兵士「そういうことになりますね」
兵士長「糞野郎を殺したのはあの魔女だったか……」
兵士「おや? なんでしょうか、靄が……」
兵士長「んぅ? こりゃ霧か……? 城の中で霧なんて……」 



257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/24(木) 00:54:58.98 ID:W9YT+3P1o
宿舎 勇者の部屋
勇者「でへへへへ……ついに、おれも……ハーレムを完成させたぞぉぉ……」
狼少女「おい!! 起きろ!!」
勇者「あぁ……。うっせぇなぁ……もうすこしねかせろぉい……」
狼少女「お、き、ろー!!!」デーンッ
勇者「ごふっ!? なにしやがる!? のしかかってくるんじゃねえよ!!」
狼少女「霧!! 霧だ!!」
勇者「霧だぁ?」
狼少女「うぅぅー……!!」ギュゥゥ
勇者「……おい。これ半分持ってろ」
狼少女「これ……薬……」
勇者「自分がおかしくなったと思ったら飲め。気休めにはなる。わかったか?」
狼少女「あ、あい……。お前、どこいく?」
勇者「とりあえず陛下に会いにいってみるかぁ」
狼少女「か、かえってこいよ!! 約束だ!!!」 



258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/24(木) 01:02:01.16 ID:W9YT+3P1o
勇者「何言ってんだ。お前もこい」
狼少女「あぇ!?」
勇者「なんだよ? 嫌なのか?」
狼少女「だって……おかしくなって、お前傷つけるの……いやだ……」
勇者「俺を誰だと思ってんだ? お前みたいなガキに傷なんてつけられるわけないだろ?」
狼少女「バカにすんなー!!!」ガブッ
勇者「おーし、いくぞぉ」ガチャ
狼少女「あい!」
勇者「(うわぁ……。すげぇ、霧だな……。本当に霧ならいいけど……)」
衛兵「勇者殿。おはようございます」
勇者「うーっす。何か異常はないっすか?」
衛兵「見るからに異常でしょう。この濃霧ですし」
勇者「町で発生はしてないっすか?」
衛兵「ええ。城の敷地内だけみたいです」
勇者「それはそれは。作為的っすねぇ」 



259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/24(木) 01:07:18.89 ID:W9YT+3P1o
謁見の間
勇者「陛下!!」
狼少女「ガルルル……」
王「……勇者よ。どうした?」
勇者「この霧、原因は?」
王「何故、私に訊く?」
勇者「そりゃ……」
魔女「ーー不敬罪で死刑するわよ?」
勇者「お前……!!」
狼少女「あぅ……あぅ……」
魔女「その子を返してくれるなら、許してあげてもいいけどね」
勇者「……」
狼少女「うぅ……!!」ギュゥゥ
王「勇者よ。言うとおりにしてくれないか。その娘はとても大事な存在なのだ」
勇者「大事? 次期女王陛下だからですか?」 



260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/24(木) 01:21:11.40 ID:W9YT+3P1o
魔女「あら。知っていたの? お父さんから聞いたのかしら?」
勇者「(親父……?)」
王「その通りだ。その娘は私の血が通っている。ずっと、ずっと探していたのだ」
勇者「だから、魔女を探してたと?」
王「そうだ。そして今日、この日。全てが揃った。妻と娘が戻ってきたのだ」
勇者「陛下。貴女の隣にいるのは魔女なのですよ?」
王「知っている」
勇者「そいつが何をしようとしていたのかも知っているのですか!?」
王「無論だ。幻覚剤を用いて、国内を混乱させ、国を滅ぼそうとしていた」
勇者「な……!?」
王「動物は人間を見れば容赦なく牙を剥き、人間は人間を発作的に殺害する。そんな強力な薬だ」
王「こうして霧のように散布することで小さな町なら簡単に壊滅させることができる。画期的な兵器と言えよう」
勇者「陛下……何をいっているのですか……」
王「お前には分からんか? 愛した女がしたことだ。私はこれらを受け入れる。妻の兵器は世界を征服できるだけの力もあるしな」
勇者「本気でいってんすか?」 



261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/24(木) 01:33:23.30 ID:W9YT+3P1o
魔女「素敵よ。アナタ」ギュッ
王「ふふはははは……」
勇者「……っ」
狼少女「あぅ……」
王「勇者よ。さぁ、娘を渡してくれ。今まで世話をしてくれていたそうだな。ご苦労だった。お前には特別報酬をくれてやろう」
勇者「陛下!! 正気っすか!?」
王「私はな、この魔女に身も心を奪われている。前妻が死んだあのときからな」
勇者「それも魔女の仕業じゃないんすか?」
王「そう。この魔女が殺した。嫉妬に狂ってな」
勇者「頭おかしいっすよ」
王「それだけ私のことを想ってくれているということだ。ここまでされると考え方も変わる」
魔女「ごめんね。私、アナタが怒ってると思ってずっと逃げてたの」
王「私のほうこそ悪かったな。お前が腹を痛めて産んだ子を渡せと言ったばかりに傷つけてしまった。思慮が足りなかったよ」
魔女「いいのよぉ。私もずっとアナタのことを愛していたからこそ恨んでいたけど、こうして一緒になれるんですもの……。もう許してあげるっ」ギュッ
勇者「……」



263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/24(木) 01:45:07.41 ID:W9YT+3P1o
魔女「勇者様。そういうわけで、私の娘を返してください」
勇者「こいつに何するつもりっすか?」
魔女「なにって、その子は新しい兵隊なのよ」
勇者「兵隊……!?」
王「特別な薬を投与することで極限まで身体能力を発揮することができるそうでな。子どもであろうとも兵士を制圧できるという優れものだ」
勇者「あぁ、そうっすかぁ……。狼と一緒に行動させてたのは野生児っぽくみせるためとかか!!」
魔女「そうよ。そのほうが違和感ないでしょ? 奇声をあげたり、叫んだりしていても」
勇者「(ってことは、こいつは普通の女の子なんじゃないか……)」
狼少女「ぅ……あぅ……」
王「次期女王にして最高の兵士だ。それに姫自らが戦場に立てば士気もあがるというもの」
魔女「もう。そんなことにはならないでしょっ。私の幻覚剤があるんだしっ」
王「それもそうだな。でも、娘にも活躍の場がないとなぁ。可哀相だろう」
魔女「考えておくわっ。うふっ」
王「うむ。頼むぞ」
勇者「……っ」ピクッ 



264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/24(木) 01:54:25.50 ID:W9YT+3P1o
王「納得できたか、勇者よ。娘を置いてーー」
勇者「断る!!!」
王「……なんだと?」
勇者「断るっす!! この魔王!! よりにもよって俺の前で美人の魔女とイチャイチャしやがって!!! あーもう!! はらたつぅ!!!! 死ね!! 死ね!!」
王「勇者よ。お前はわが国の一兵士だ。勇者というのは称号にすぎんぞ。特別な権限などないし、ましては私に逆らうなど言語道断」
魔女「そうよ。勇者は国のため、王のために働く最強の兵士でしょう?」
勇者「国のため? 王のため? はんっ!! ちゃんちゃらおかしいっす!!!」
王「貴様……!!」
勇者「俺が勇者になった理由は女の子にモテるためだ。文句あんのか」
魔女「フフフ……。お父さんにそっくりねぇ」
王「ならば、どうあっても娘をよこさぬというんだな」
勇者「わたすかぁ!!! ぼけぇ!! 子ども欲しかったらもう一回つくれ!!」
魔女「そのつもりよ。ねー?」
王「こらこら。恥ずかしいだろう。はははははは」
勇者「うわぁぁぁあああ!!!! いい加減にしろぉ!!!!」 



266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/24(木) 02:02:11.13 ID:W9YT+3P1o
狼少女「だ、大丈夫か?」
勇者「行くぞ!! こんな国なんざこっちから願い下げだぁ!! あー!! やってらんねえ!! マジつまんねえ!!!」
狼少女「あぅ……でも……」
勇者「俺についてくるか、それとも魔女と魔王のところに残るか。ここで決めろ!!」
狼少女「そ、そんなのお前についていくに決まってる!!」
勇者「おーし!! いい子だぁ!! 初めてお前が可愛く思えるぞぉ」
狼少女「か、可愛いか!! 私、可愛いか!?」
勇者「おう。すんげー、可愛い」
狼少女「おぉー!!」
王「……お前の決意はわかった。だが、簡単にはいかんぞ?」
勇者「ふんだっ。止められるもんなら……とめてみろ!!!」ダダダッ
狼少女「わぁぁー」タタタッ
勇者「こんな町にもう未練なんざねぇ!!!」
王「ーー反逆者が逃げたぞ!!! 捕らえなくてもよい!! 殺せ!!! ただし娘には傷一つつけるなぁ!!!」
魔女「馬鹿な男。ホント、救いようがないほどに」 



267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/24(木) 02:07:47.70 ID:W9YT+3P1o
兵士「勇者殿が反逆者……!?」
兵士長「なーにしやがった、あのやろぉ。先走りやがって」
勇者「ーーげぇ!? 先輩!?」
狼少女「あぇ!?」
兵士長「馬鹿野郎。国に喧嘩なんざ売りやがって」
勇者「先輩でも容赦はしないっすよ」
兵士長「……」シャキン
勇者「……」
兵士長「はぁぁあああ!!!」
勇者「こんのぉ!!!」
狼少女「わぁぁぁー!!!」ダダダッ
兵士長「なに!?」
狼少女「ガァァァァウ!!!!」ドガッ!!!!
兵士長「ぐぁ……!?」
勇者「ナイス!! 今のうちだ!!」 



268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/24(木) 02:12:24.77 ID:W9YT+3P1o
城下町
「にがすなぁー!! 捕まえろー!!」
狼少女「きてるぞ!! どこいく!?」
勇者「……こっちだ!!」
狼少女「あい!」タタタッ
勇者「ええい!! 遅い!! 抱きかかえるぞ!! いいな!?」ヒョイッ
狼少女「おぉー!」
勇者「いくぞ!! しっかり捕まってろ!!」
狼少女「あいっ」ギュゥゥゥ
勇者「くるしい!! だきつきすぎ!!」
狼少女「すまん」
「向こうだ!! 追えー!!」
勇者「早くいかねえと……!! この時間ならもう戻ってるだろ……!!」
狼少女「どこいく?」
勇者「教会に決まってるだろ!! 面倒な奴がいるんだ!!」 



269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/24(木) 02:16:52.00 ID:W9YT+3P1o
教会
神父「ホテルのほうどうでしたか?」
シスター「とてもよかったです。兄さ……勇者様にお礼をいわなければなりません」
神父「そうですか。はっはっは」
勇者「ーーおし!! いた!!」
シスター「兄さん? ど、どうかしたのですか?」
勇者「行くぞ!!」
シスター「え? ど、どこへ!?」
勇者「黙ってついてこい!! 神父さん、すんませんが今日限りでこいつシスターやめるんで!!」
神父「……勇者様」
勇者「こいつをこの町に残してはおけなくなったんす。ホント、すんません」
神父「早く行ってください。上手くごまかしておきますから」
勇者「あざっす!!!」
狼少女「ガルルルル……」
シスター「な、なにがなんだか……」オロオロ 



270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/24(木) 02:21:10.31 ID:W9YT+3P1o
傭兵所
受付嬢「何か外が騒がしくないですか?」
戦士「なにかあったのかしらぁ? やだわぁ」
勇者「ーーうぃーっす!!!」
受付嬢「きゃ!?」
狼少女「うぃーっす」
受付嬢「い、いらっしゃいませ……」
勇者「前に紹介してもらった戦士の人は!? いるっすか!?」
受付嬢「そ、そちらに」
勇者「おぉ!? よかったぁ!!」
戦士「あらぁ! 勇者様ぁ! どうかしのぉん?」
勇者「あんた、俺のためならなんでもするっていったっすよね!?」
戦士「いったわよぉん。うふっ」
勇者「俺のために命かけてくれっす!!」
戦士「よろこんでかけちゃうわぁ!!」 



271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/24(木) 02:25:48.20 ID:W9YT+3P1o
城下町
戦士「勇者様の妹さんを守ればいいのね?」
勇者「頼むっす!」
戦士「りょうかぁーい。よろしくね。うっふん」
シスター「は、はい」
狼少女「おい!! 前、前!」
勇者「分かってる!!」
門兵「とまれぇ!!」
勇者「どけぇ!!」
戦士「おどきになってぇん!!」ドドドドッ
門兵「げぇ!?」
戦士「じゃないとキスしちゃうわよぉん」
門兵「お前!! モテないからってついに目覚めたか……!!!」
勇者「んなわけあるかぁー!!!」ドガッ!!!
狼少女「わぁぁー!」 



272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/24(木) 02:32:14.84 ID:W9YT+3P1o
門兵「まてぇぇ!!」
兵士長「……やめろ」
門兵「し、しかし!!」
兵士長「あれでも王国一の兵士だぞ。勝てるわけねえだろ」
門兵「これから、どうなるのですか……」
兵士長「わかんねえが、アイツが戻ってくるまでの間、この町を守らなきゃいけないのは確かだ」
門兵「それは……どういう……」
兵士長「何があっても平常心でいろ」
門兵「は、はい」
兵士長「(頼むぜ……。勇者様)」
兵士「隊長!」
兵士長「どうした?」
兵士「陛下が会見を行うと」
兵士長「内容は?」
兵士「不明です。ですが、早急に発表したいことがあるということですが……」 



273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/24(木) 02:39:02.48 ID:W9YT+3P1o
街道
勇者「追っての気配はないか」
戦士「逃げて来ちゃったけど、これからどうするわけぇ?」
勇者「あんまり考えてないっす」
戦士「えぇー? こまっちゃうぅわぁ」
勇者「はぁーあ……結局、俺は誰とも結ばれることなく朽ち果てていくんだろうなぁ……」
シスター「あの、兄さん?」
狼少女「ガルルル……!!!」
勇者「威嚇するな」ペシッ
狼少女「いてっ」
勇者「で、なんだ?」
シスター「あの、この前聞いた結婚を約束したという女性を頼るわけにはいかないんですか? ご迷惑かもしれませんが、宿がないのでは……」
勇者「はっ!! そうだ!! まだ俺には希望が残っているじゃあないかぁ!!! おい!! お前はやっぱり、最高の妹だなぁ!! 妹にしておくには惜しい!!!」ギュッ
シスター「え、そんな……はずかしい……」
狼少女「ガルルルル……!!!」 



274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/24(木) 02:46:54.08 ID:W9YT+3P1o
東の町
勇者「こっちだ! こっち!! いそげー!!」
シスター「はいっ」
狼少女「うぅー……」
戦士「でも勇者様ぁ? その人、ちゃんと待っててくれてるわけ?」
勇者「あの人は引っ込み思案でありましたし、色々とあって結婚とか考えられないはずです。無論、恋人を作ることもできていないはずっす」
戦士「そうなの?」
勇者「ええ。間違いなく」
シスター「私の姉さんになる人ならきちんとご挨拶しておかないといけませんね」
勇者「そうだぞぉ。失礼のないようにな」
シスター「は、はい」
町娘「ふぅ……」
勇者「お! いたいた! よかった、元気そーー」
隊長「何をしているんだ。俺がやるから君は休んでいてくれ」
町娘「そう? でも、体を動かしてないと色々考えちゃうから……」 



275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/24(木) 02:53:09.77 ID:W9YT+3P1o
戦士「あら? 男いるじゃない。しかも、イイ男ぉ」
勇者「……」
シスター「えーと……」
隊長「無理はするな。君に何かあったら……俺は……」
町娘「でも、いいのかしら……。あんなことがあったのに、私たち……」
隊長「罪は償う。でも、今だけは……」ギュッ
町娘「あっ……もう……」
隊長「愛している」
町娘「私もよ」
勇者「……」
狼少女「ざんねんだったなぁー」
シスター「あの、兄さん。本当に結婚の約束をしたのですか?」
戦士「いいわねぇ。あたしもあんなふうに恋がしたぁーい」
勇者「……ふ、ふふ。彼女に笑顔が戻っている。それだけで十分だ。満足だよ。さぁ、行こう。俺たちを受け入れてくれる場所は他にもあるさ。少なくともここに居たくはないんだ、俺」 



276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/24(木) 02:58:23.80 ID:W9YT+3P1o
農村 馬小屋
勇者「ロープはこんなもんでいいか」グイッ
馬「ヒヒーン」
勇者「さぁ、死のう。こんな腐れきった世界にララバイするんだ……」
勇者「世界中にいる既婚者、恋人持ちを恨みつつ、死んでやるぅ……」
狼少女「なにしてる?」
勇者「よぉくみとけ。これが男の散り方だぁい!!」
狼少女「うぁー……」グイッグイッ
勇者「なんだよ。邪魔すんなよぉ」
狼少女「はらへった。なんかくわせろ」
勇者「……はいはい。行くか」
狼少女「あい」
勇者「メシ食ってから死んでも遅くないよなぁ」
狼少女「ない」
勇者「おーし。死ぬ前の腹ごしらえといこうじゃないかぁ……!! めちゃくちゃ食って死んでやる!! 死んでやるぞぉ!! おぉぉー!!!」 



288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 16:58:27.02 ID:lKr1mxGno
民家
シスター「食事の用意ができました」
戦士「あらぁ、ありがとう。美味しそうじゃないのぉ」
シスター「お口に合えばいいんですけど……」
戦士「いただきまぁーすぅ」
シスター「兄さんもどうぞ」
勇者「……」モグモグ
シスター「ど、どうですか?」
勇者「……なんでお前が妹なんだ。この世界は狂ってるぜ。さっさとララバイしてー」
シスター「(ララバイ……? 子守唄歌って欲しいのかな)」
狼少女「……」
シスター「美味しい?」
狼少女「べ、べつに普通だ!! 普通!!」
シスター「そ、そう? ごめんね。それにしてもこんな場所を快く貸してくれるなんて兄さんってやっぱり勇者なんですね……」
戦士「そうねぇ。まぁ、村民も少なくなってて空き家が増えてるってのもあるんじゃない? あたしとしてはぁ、勇者様と二人きりになれる愛の巣がほしかったけどぉ。うふふ」
狼少女「こんなの普通だ!! はむっ……はむっ……!!!」
勇者「最後の晩餐に相応しいなぁ!! おかわりぃ!!!」 



289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 17:08:56.21 ID:lKr1mxGno
シスター「食材を分けてくれましたし、あとで改めてお礼を言っておかないと……。ーーはい、兄さん。どうぞ」
勇者「ありがとぉ!! うまい! うまいっす!!」
狼少女「おかわり!!」
シスター「ありがとう。はい、どうぞ」
狼少女「普通だ!! こんなの別に普通だからな!!!」
戦士「さてと、これからどうするわけぇ? ここに来るまでに勇者様の事情はわかったけどぉ」
シスター「町に帰るんですよね?」
勇者「帰る? なんで?」
シスター「なんでって……。兄さんが言っていた魔女と国王陛下の計画は止めないと戦争になるんじゃ……」
勇者「戦争になんてならねぇっすよぉ。魔女が薬ばら撒いて同士討ちさせるだけなんだから」
戦士「なったとしても戦うのはこの娘みたいにヤク中の人間でしょう? 兵隊を使う必要なんてないもんねぇ」
シスター「そ、そんな人の道から外れたような行いを許すわけには……!!」
勇者「そぉーっすねぇ」
シスター「兄さん。町の人やお城にいる人たちのために戦ってください。私もできることがあるならなんでもします」
勇者「いやだ」
シスター「……え? に、兄さん?」
勇者「ぜんっぜん、モテないし!! 人を助けたって感謝されるだけで、女の子は俺に優しくしてくれない!!! こんな世界なんて大嫌いだ!! けっ!」 



290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 17:24:54.99 ID:lKr1mxGno
シスター「兄さん!!」
勇者「勇者になってから俺は4人の美女と出会ったんだ!! あぁ!! どの人も俺の嫁に申し分ないほどの美女だったさぁ!!!」
シスター「な、何をいっているのですか!?」
戦士「まぁまぁ、聞きましょうよ」
狼少女「おかわり!!」
勇者「一人目はとある村に住む、素朴な女性だった!! 動物を慈しむ心をもった優しくて可愛くて清楚な美人だったんだ!!!」
勇者「だからぁ!! だから俺はぁ!!! がんばったんだ!!! 暴れ馬に轢かれようが!! 蹴られようが!!! 狼に噛まれようが!!! 戦ったんだ!!!」
勇者「でもなぁ、その女性はカッコよくて頭もよくて優しくてしかも医者という出来た男と婚約していたんだってさぁ。ハーッハッハッハ!!! じゃあ、俺ががんばったのはなんだったの!?」
シスター「兄さん……」
勇者「その次は事件が解決できれば結婚しようと約束をした女性だった。少し陰があってもその美貌は正しく完璧な人だったんだぁ!!!」
勇者「だから俺はぁ!!! 狼に襲われようが!! 狂った町民に襲われようが!! みんなを救うために!! もう一度医者に頭を下げて救ったんだぁ!!!」
勇者「でも、その人は今、幸福に満たされていたね? お前も見ただろう?」
シスター「う、うん」
勇者「そう。だから、この話はこれで終わりなんだ。わかるな?」
勇者「で、3人目はお前だ!!! 結果のほどはいわずもがな!!! 容姿端麗でしかも料理ができる!! 家庭的な妹がいたことに感謝してるよ!!!! マジでぇ!!!!」
シスター「ごめんなさい……」
狼少女「おかわりぃ!!!」 



291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 17:35:03.24 ID:lKr1mxGno
戦士「4人目は? もしかして、あたし?」
勇者「魔女だよぉ!!!」
シスター「魔女って兄さんにとっては敵では……」
勇者「敵だよ!! でもあんなにも美人だ!! 酔っていた所為もあるけど誘ってきたときはいけるかも!!って思ったんだぁ!!!」
勇者「でも、結局は自分の娘を利用する、ただのクズだったぁ!!!」
勇者「もー!!! いやだぁぁ!!!! こんなのぉ!!! こんなのぉ!!!!」
シスター「……」
狼少女「おかわりぃ」グイッグイッ
シスター「あ、うん。ちょっと待ってて」
狼少女「あい」
勇者「こんな荒廃した世界に救う価値がどこにある!? あるんですか!? 誰か!! 教えてくださいよぉ!!!」
戦士「そうよ。女なんてみんな酷いのよ。男の気持ちは女の心をもった男にしかわからないわぁ」
勇者「ああ、いいこと言うっすね。その通りかもしれないっす」
戦士「さっすが、勇者様。分かる人でうれしいわぁ」
勇者「魔女にほの字の魔王も!!! 勝手にやってくれってんだ!! 世界をめちゃくちゃにしてくれたほうが俺にとっては好都合でぇい!!!」
狼少女「うぁー……。よしよし」ナデナデ
勇者「同情なんていらねえんだよぉ!!! うわぁぁぁぁ!!!!」 



292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 17:43:34.70 ID:lKr1mxGno
勇者「うぅぅ……うぉぉぉ……ぉぉぉ……!!」
狼少女「あぅぅ……」
シスター「はい。どうぞ」
狼少女「あざす。ーーおい、お前。おい」
勇者「ぐすっ……なんだよぉ……?」
狼少女「あーん、しろ。これ、ちょっとなら食っていいぞ」
勇者「うぅ……ぅぅ……」
狼少女「あーんっ」
勇者「いらないっ」プイッ
狼少女「あぅ……」
勇者「そうだ! 馬小屋に行こう!! ハーッハッハッハッハ!!! 俺のことを愛してくれるのは馬だけだぁ!!! アハハハハハ!!!」
狼少女「はむっ……」
戦士「あららぁ。色んな女に手痛い仕打ちを受けてきたのね。可哀相。あたしが身も心も慰めてあげたいっ」
シスター「兄さんは本気、なんでしょうか?」
戦士「さぁ。あたし、勇者様のことよくわからないし、ただの傭兵だもの。言われたことをするだけよ」
シスター「言われたことですか」
戦士「そう。だからあたしの今の仕事は、貴女を守ることなの」 



293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 17:50:02.10 ID:lKr1mxGno
馬小屋
勇者「ロープはこんなもんか」グイッ
馬「バヒン」ペロペロ
勇者「……」
馬「……」ブルルッ
勇者「(そういえば、こいつメスなんだよなぁ……。このまま泣き寝入りで死んじゃうより、一度くらい……経験しておいてもいいよなぁ……)」
馬「ヒヒーン」ペロペロ
勇者「なぁ、最後の思い出にお前のこと抱いていいか?」
馬「……」
勇者「もう、俺にはお前しかいないんだ」ギュッ
馬「……」ペロペロ
勇者「いいんだな? ありがとう。優しいな、お前は……」
勇者「シャワーは浴びてこなくていいな。お前のその臭い、割と好きなんだ」
勇者「こっちの準備もできてるぜ……?」スルッ
医者「勇者様、こちらにいるとーー」ガチャ 



296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 18:03:27.96 ID:lKr1mxGno
医者「あのですね……」
勇者「……ちょっと気が動転してて……その、そんな趣味はないんす。ホントに……」
医者「いえ。そのままだと病気になりますし、動物に対する虐待にもなるので……」
勇者「このことは誰にも言わないでください。特にあの妹には言わないでください。俺、どうかしてたんす。女の子にモテなさすぎて、頭がバカになってただけなんす」
医者「他言はしませんよ。英雄は色を好むと言いますが。ここまでだと敬服する限りです」
勇者「うっ……うぅぅ……。もう、おれ……だめっすぅ……もう……こんな自分がいやになるっすぅ……」
医者「そんなことより、勇者様。検査のほうはされなくてもいいですか?」
勇者「けんさぁ……?」
医者「城のほうで濃霧が発生したのですよね? それはあの連続殺人事件があった町で発生したものでは」
勇者「そうでしょうねぇ……。あんたの薬、貰っていてよかったっす」
医者「城下町の人々のために大量の薬も必要になりますね。私の呼びかけて複数の医師も協力してくれることになっています」
勇者「そうっすかぁ……。あ……そうだ……」
医者「なにかありましたか?」
勇者「あの野生児の健康診断お願いするっす。魔女に変な薬注射されちゃって……」
医者「なんですって? 分かりました。早速、始めます」 



297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 18:11:43.42 ID:lKr1mxGno
勇者「ルールールー……ルールルールルー……」
馬「……」スリスリ
勇者「悪いな。変なことしようとして。そうだよな。俺のことを愛してくれている相手だからこそ、無理やりするなんてあっちゃいけない」
勇者「相手を大事にしないと、いけないよな……。すまない……」ギュッ
馬「ヒヒーン……」
勇者「え? なんだ?」
馬「……」
勇者「……そんなにして欲しいのか?」
馬「……」ペロペロ
勇者「そうか。お前がそこまでいうなら、仕方ない」スルッ
馬「……」ブルルッ
勇者「まずはお前の舌でーー」
シスター「兄さん、あのー。あの子が注射嫌がって暴れてるから……あっ」
勇者「……」
シスター「……すみません。勇者様。おやすみなさい」 



298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 18:18:05.04 ID:lKr1mxGno
民家
狼少女「ガルルルー!!!! ちゅうしゃ、やだー!!!」
医者「しかしだね……」
狼少女「絶対にいやだぁ!!!! それ以上近づいたら、噛み付くぞ!! いいのか!?」
医者「困ったな……」
シスター「はぁ……」
戦士「勇者様はどうしたのぉ?」
シスター「私が悪いんです。兄さんがあんなことになったのは……きっと……」
戦士「どゆこと?」
医者「勇者様にも頼まれているから、大人しく……」
狼少女「こっちくんなぁ!! ガルルルル……!!! がおー!!!」
勇者「……ぉーぃ……」
シスター「兄さん……!?」
狼少女「お前!! たすけろぉー!!!」
勇者「きちんと検査を受けろ。お前にもしものことがあったら困るだろぉ」 



299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 18:20:58.62 ID:lKr1mxGno
狼少女「こまる、のか?」
勇者「困るよ」
狼少女「ちゅうしゃ、しないと、お前が困るのか?」
勇者「そうだぁ」
狼少女「……してもいいけど、傍にいろ。それが条件だ」ギュッ
勇者「わかった。おねがいするっす」
医者「助かります。それでは……」
狼少女「うぅぅ……」
医者「いくよー」
狼少女「アァァウ!!」ガブッ
勇者「……」
戦士「勇者様ぁ? どうしたのぉ。元気ないけどぉ」
勇者「……」
シスター「あの……」
勇者「いいんだ。軽蔑してくれ。そのほうがすっきりする」 



300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 18:28:20.84 ID:lKr1mxGno
医者「ーーでは、失礼します」
狼少女「うぁぁ……いたかった……」
勇者「そうか。では、これで」
狼少女「どこいく?」
勇者「今は、一人にしてくれ」
狼少女「あい」
戦士「どこで寝るの? 添い寝してもいい?」
勇者「今日はすんません」
戦士「今日はってことは、明日ならいいのね!? あはぁーん。あたし、かんげきぃー」
勇者「……寝よう」
シスター「兄さん……」
勇者「兄だと思う必要はない。こんな男と血が繋がっているなんて、吐き気がするだろ?」
シスター「いえ、確かにびっくりしちゃったんですけど……」
勇者「お前と俺はもう兄妹じゃないよ。お前には兄なんていなかった。そうだろ? 強く、生きてくれ……」
シスター「あ……兄さん……」 



301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 18:41:05.67 ID:lKr1mxGno
牧場
勇者「ふっ……。女の子たちにモテないばかりか、実の妹にまで嫌われる始末……」
勇者「家族の女の子とも仲良くなれないとは……」
勇者「苦労して勇者になっても報われないんだなぁ……。俺の人生、無駄が多すぎる……」
勇者「このまま旅に出るのもいいな。そして仙人にでもなれば煩悩を捨てられるかもしれないし」
勇者「うしっ。そうしよう、そうしよう。決めたぞ。勇者から仙人になるんだ。俺は。きっとその先に素晴らしい世界が待ってるはず」
勇者「こんな穢れだらけの俗世にいちゃ、俺はダメになる。山にこもって修行しよう。うん」
シスター「ーー兄さん」
勇者「……君のような可愛い妹はしらないんだ。どっか行ってくれ」
シスター「兄さん、戻ってきてください」
勇者「俺はたった今決心したんだ。仙人になるってな。邪魔しないでくれ。煩悩退散!! 煩悩退散!!!」
シスター「私、帰りたいんです」
勇者「え?」
シスター「まだまだ父に文句を言いたいんです。だから……」
勇者「空に向かって言えばいい。ほら、あの全然輝いてない星を親父だと思って、レッツトライ」 



303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 18:51:56.53 ID:lKr1mxGno
シスター「……兄さんがして欲しいこと、私がしてあげても……いいですよ?」
勇者「な、なに……!?」
シスター「兄さん……」
勇者「で、でも、お前……嫌がってたじゃないか……」
シスター「私、兄さんの力になりたいから……」
勇者「……」
勇者「(いいのか……? 相手は妹だぞ……? いいのか……?)」
勇者「(折角、向こうから誘ってきてるんだ。いいじゃないか。何を拒むことがある。男を見せろ俺)」
勇者「(ダメだ!! 相手は妹だぞ!! そんなことあってはならない!! だが、俺から迫ったわけじゃないからセーフ!!!)」
勇者「……いいんだな?」
シスター「ここで、する?」
勇者「どこでも構わないさ」
シスター「兄さん……それじゃあ……」
勇者「ああ……」
勇者「(妹でもいいじゃないか。妹だって女だ。結婚できなくても一緒に住めるわけだし、こうして愛し合っているなら……!!)」 



304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 18:57:21.42 ID:lKr1mxGno
シスター「あ、このベンチがいいかも。ここでしようよ」
勇者「ああ。しかし、お前がこんなスケベな妹だったとは。血は争えないな」
シスター「はい。きて」
勇者「……」
シスター「どうしたの? はやくきて」
勇者「……ダメだ!!!」
シスター「え?」
勇者「ダメだ!! やっぱりだめだぁ!!!」
シスター「に、兄さん?」
勇者「妹を抱くなんて、俺にはできねぇぇよぉぉぉお!!!!!」
シスター「あの、膝枕してあげようと思っていたんだけど」
勇者「……ひざまくら?」
シスター「うん。ほら、兄さん、子守唄歌って欲しいんだよね?」
勇者「……」
シスター「ララバイしてーって言ってたから……。ち、違うの?」 



305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 19:03:44.33 ID:lKr1mxGno
シスター「ら~らら~ら~らら~ら~」ナデナデ
勇者「(妹に膝枕してもらって……子守唄か……。なにしてんだろうな……俺……)」
シスター「兄さん、これでよかった?」
勇者「俺はね。ララバイとバイバイをかけていたわけでね」
シスター「違う歌がいい?」
勇者「もういいです」
シスター「……私のお母さんはまだ生きてるの」
勇者「……」
シスター「だから、このまま魔女が世界を征服するなんて……私は嫌なの……」
勇者「そうか」
シスター「兄さんにとっては血も繋がってない赤の他人だけど……私にとってはただ一人の親だから……」
勇者「……」
シスター「守って……ください……」
勇者「……妹の頼みじゃ、断れないなぁ。こんなことまでしてもらってるし」
シスター「兄さん……。うれしいっ」ギュッ 



308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 19:13:08.13 ID:lKr1mxGno
勇者「ありがと。なんか懐かしかった。母さんによくこうしてもらっていた気がする」
シスター「兄さんのお母さんって……」
勇者「実はいうと、俺が小さなときに病気で死んじゃってな。よく覚えてないんだ」
シスター「それって……」
勇者「なんだよ?」
シスター「あ、ううん」
勇者「そうだ。親父のこと知りたいんだよな。ええとだなぁ」
シスター「いいよ。今は、話さないで」
勇者「どうして?」
シスター「平和になってから聞きたい」
勇者「今でいいだろ?」
シスター「ううん。あとでいい。だから、兄さん。絶対に戻ってきてね」
勇者「俺は死なないって」
シスター「約束して」
勇者「わかった。約束する。魔女を倒して、お前に親父のことを話す。これでいいな?」 



309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 19:17:39.00 ID:lKr1mxGno
シスター「うんっ」ギュッ
勇者「(妹じゃなきゃ、キスできてるんだろうなー……)」
狼少女「おい!! なにしてる!?」
勇者「おう。元気か?」
狼少女「ガゥー!!!」ガブッ
勇者「なんだよ、お前。鬱陶しいな」
シスター「ダメだよ、噛み付いちゃ」
狼少女「ガルルルル……!!!」
シスター「私、どうして嫌われてるの……?」
勇者「気にするな。俺にもよくわかんないから」
狼少女「お前、この女のこと好きなのか!?」
勇者「好きというか、妹だからなぁ……」
シスター「(そういうことか……)」
狼少女「むぅー……」
勇者「とりあえず戻るか。もう寝よう」 



310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 19:26:14.61 ID:lKr1mxGno
民家
戦士「あらぁ、お帰りぃ」
勇者「寝る前に今後のことを話すっす」
狼少女「あいっ」
勇者「明日から仲間をかき集める」
シスター「な、仲間ですか?」
勇者「ああ。俺たちの戦力じゃどうしたって町中で捕らえられて終わりだからな」
戦士「そうかもねぇ。実質、あたしと勇者様だけだしぃ」
勇者「そういうことです。なので、手を貸してくれそうな奴に声をかけてくるっす」
シスター「どこにいるのですか?」
勇者「まぁまぁ。仲間は俺に任せてくれ。考えがあるから」
戦士「任せちゃっていいのぉ?」
勇者「もちろんっすよ。では、寝ましょう」
戦士「はぁーい。勇者さまぁ。こっちにきてぇーん」
狼少女「ガルルルル!!!」 



311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 19:32:15.00 ID:lKr1mxGno
戦士「なによぉ!」
狼少女「がう! がうっ!!」
勇者「よし。俺の貞操をそのまま死守するんだ」
戦士「やだぁ、ひどぉーい。あたし、そんなことしないのにぃ」
シスター「私と一緒に向こうの部屋にいこ、ね?」
狼少女「ガルルルル……!!」
シスター「やっぱり、ダメ?」
勇者「俺はもう寝るぞ。お疲れー」
狼少女「あいっ」ギュッ
戦士「んもぉ! もういいわ!! 明日はあたしとねるんだからねっ!!」
狼少女「いーっだ!」
戦士「んまぁ!! かわいくない子!!」
シスター「兄さんのこと、よろしくね?」
狼少女「まかせろっ!」
勇者「すぅ……すぅ……おっぱ……ぃ……もみてぇ……よぉ……」 



312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 20:02:37.56 ID:lKr1mxGno
翌朝
狼少女「がぉー……がぉー……」
勇者「……行くか」
狼少女「すぅー……すぅ……」ギュゥゥ
勇者「はなせよ」グイッ
狼少女「うぁ……? おはよ」
勇者「おはよう。まだ寝ていていいぞ」
狼少女「……どこいく?」
勇者「おつかいだよ」
狼少女「私もいく」
勇者「危ないからダメだ」
狼少女「大丈夫!!」
勇者「でもなぁ……」
狼少女「つれてけ!!!」ドガッ
勇者「いってぇ!? なんにすんだこらぁ!? さっさと顔洗って来い!!!」 



313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 20:12:01.05 ID:lKr1mxGno
狼少女「うぅー。つめたいぃ……」パチャパチャ
勇者「いい天気になりそうだな」
狼少女「あらった!!」
勇者「早く拭け」ゴシゴシ
狼少女「おぉう」
勇者「本当に姫様かよ、お前。品性のかけらもねえな」
医者「勇者様。こんなに朝早くからどうしたのですか」
勇者「すんません。ご迷惑ばかりかけて」
医者「いえ。そんなのはいいのですが」
勇者「こいつに異常はあったっすか?」ポンポンッ
狼少女「あぅ」
医者「その……耳を貸してください……」
勇者「……なんすか?」
医者「……」
狼少女「なんだ? 私もききたいぞ」 



314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 20:29:52.35 ID:lKr1mxGno
医者「詳しく検査をしたわけではないので、正確なことはまだなんともいえないのですが……」
勇者「……」
医者「薬の影響で成長障害が起こっている可能性があります」
勇者「それって……」
医者「今すぐ治療を始めなければ、彼女の体はあのままかと。第二次性徴を迎えることもないでしょう」
勇者「よ、よくわかんないっすけど、結論としてはどうなるんすか?」
医者「一生、あの姿のままです」
勇者「……」
狼少女「うぁ?」
勇者「治療しなけりゃ死ぬんすか?」
医者「成長を妨げるほどの強い薬を投与されているわけですからあの小さな体には相当な負担のはずです。少なくとも治療を行わず、これ以上薬を投与されることがあれば……」
医者「命の保障はできません」
勇者「(そうだ。どうして考えなかった。あの体で兵士を圧倒するだけ力を出していて体が壊れないわけがない……)」
狼少女「むぅ。こっちみんな!」
勇者「(ここまで来て死なせちゃ夢見が悪いよなぁ……。守るって約束もしちゃったし、俺がしっかりしないと)」 



315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 20:43:52.52 ID:lKr1mxGno
医者「勇者様。医師の手配はできますが……」
勇者「その話は魔女を倒したあとでしましょう」
医者「勇者様、いいのですか?」
勇者「元凶を討たないと同じことの繰り返しになるっすよ」
医者「……それもそうですね」
勇者「問題は魔女の出す霧の影響がどれだけあるかっすけど」
医者「この薬で抑えられたらいいのですが……」
勇者「もっと貰っていいっすか?」
医者「え? それは構いませんが、今からどちらへ?」
勇者「魔女の被害者を仲間にしようかと思って」
医者「被害者?」
勇者「んじゃ、行ってくるっす。おーい、待たせたなぁ。いくぞぉ」
狼少女「あーい! 女を待たせる男はモテないぞ!」
勇者「どこで見たんだよ」
狼少女「あの本に書いてた!! 恋愛マニュアル!!」 



318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 20:50:45.86 ID:lKr1mxGno
狼の森
狼少女「おぉぉ……!!」
勇者「怖いなら戻ってもいいぞ?」
狼少女「な、なにする!?」
勇者「多分いるはずなんだ。あのとき魔女がつれていた狼は一匹だけだったし、その一匹も町の外へ行ったからな」
狼少女「うぅぅ……」ギュッ
勇者「行くか?」
狼少女「……いくっ!」
勇者「よぉし。行くぞ!」
狼少女「あぁう……」
勇者「(裏切った仲間にあうのは、まぁ怖いよなぁ)」
狼少女「なぁなぁ」
勇者「どうした?」
狼少女「だ、だっこしてくれ。私になんかあったら、こ、困るんだろ?」
勇者「畏まりました、姫様」ヒョイッ 



319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 20:57:42.27 ID:lKr1mxGno
狼少女「……」ギュゥゥ
勇者「いるかな……。いてくれないと出鼻をくじかれることになるけど」
狼少女「……なぁ」
勇者「どうした?」
狼少女「あのときも、こんな感じだったな……」
勇者「あのときって? この森に俺が初めてきたときか?」
狼少女「ちがう。変な人間がたくさんいる町で、お前と出会ったときだ」
勇者「ああ。お前が俺を掴んで離そうとしないから、無理やり肩に担いだんだったな」
狼少女「お前はあのときも、守ってくれたな!」
勇者「守った?」
狼少女「あいっ」
勇者「守ったって……」
「グルルルル……」
狼少女「で、でたっ」ギュッ
勇者「ラッキー。いてくれたか」 



320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 21:03:55.39 ID:lKr1mxGno
「ガルルルル……!!」
「グルルル……!!」
勇者「(頭数が少ないな……。もっといて欲しかったけど……)」
狼少女「あ、あれ! あれあれ!!」ペシペシ
勇者「なんだよ」
狼「……」
勇者「よう。会いたかったぜ」
狼「グルルル……!!」
狼少女「あぅぅ……」
勇者「やるきかぁ!? こっちにはお前の娘がいるんだぜ!?」
狼少女「多分、父親じゃない!!」
狼「グルル……」
勇者「ほら、ちょっと頭撫でてきてやったらどうだ?」
狼少女「ぁえ!? かまれるぞ!! 絶対!!」
勇者「なぁーに言ってんだよ。お前は仲間だと思ってたんだろ? なら、こいつらも同じじゃないのか?」 



321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 21:07:26.66 ID:lKr1mxGno
狼少女「でもぉ……」
勇者「行ってやれよ」
狼少女「か、かまない?」
勇者「お前以上に噛み付いてくるやつはいねえだろ」
狼少女「……」
狼「……」
狼少女「あ……ぅ……」
狼「クゥーン……」
狼少女「あっ……。えと……ごめんなさい……」ギュッ
狼「クゥーン……」
狼少女「ごめんなさい……」
勇者「……お前らはどうするつもりだぁ!?」
「ガルルル……」
「……」
勇者「来るならこいよぉ!! おらおらぁ!!」 



322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 21:14:13.43 ID:lKr1mxGno
勇者「この薬を飲ませて……」
狼「ガルルルル……!!!」
勇者「飲めよ!!」グイッ
狼「ガァァ……!」
狼少女「がんばれ! がんばれ!」
勇者「おーし。こんなもんだろう」
狼「ガッ……ウゥゥ……」
勇者「で、俺に……いや、こいつを助けるために一緒にきてくれないか?」
狼「……」
勇者「いいのか!? よーし、たすかるぅ。狼畜生にしては良いやつだな!」ナデナデ
狼「……ガウッ」ガブッ
勇者「噛むなよ。甘噛みでもいてぇよ」
狼「ガウッ」
勇者「分かったのか?」
狼少女「これから仲間も一緒か!! うれしいな!!」キャッキャッ 



323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 21:21:19.69 ID:lKr1mxGno
勇者「おし、んじゃ、そろそろ行くか」
狼少女「どこいく!?」
狼「ガウッ」
勇者「戦力の補充はまだ終わっちゃいねえよ」
狼少女「そうなのか!?」
勇者「しかも次は確実だ。というか俺のお願いを断れるわけがない!!」
狼少女「よし! じゃあ、いくぞ! しゅっぱーつ!!」ペシペシ
狼「オォォォン!!」
勇者「お前、そいつに乗っていく気か?」
狼少女「あいっ!」
狼「ガウッ」ダダダダッ
勇者「待てよ!!」
狼少女「お前も早くこい!! 置いていくぞー!!」
狼「ガァァウ」ダダダッ
勇者「てめぇ……!! さっきまで俺に抱かれてたくせに!!! このビッチがぁぁ!!!」ダダダッ 



324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 21:30:34.48 ID:lKr1mxGno
農村
シスター「兄さん、どこまで行ったのでしょうか」
戦士「すぐに帰ってくるわよぉ。心配性ねぇ」
シスター「心配はしますよ。大切な家族ですから」
戦士「あんた、お兄さん一筋なの? 男は?」
シスター「わ、私は修道女ですよ!? そ、そのようなふしだらなことは……」
戦士「照れちゃって。可愛いわねぇ。てことはあんた処女ね」
シスター「うぅ……」モジモジ
村長「うぅむ……これは、一大事だ……」
農夫「勇者様の言ってた事はやっぱり本当だったんだなぁ……。信じたくなかったけどよぉ」
村長「この村に勇者様を遣わせてくれた国王様が魔女と……」
シスター「どうかしたのですか?」
村長「農村から城下町へ移り住んでいた者から今朝手紙が届いてな。三日前、国王様と魔女が正式に結婚したらしい」
戦士「祝福されてるわけ?」
村長「町民の殆どは不安がっているようだが、手紙を読み限りでは城の兵士たちは賛同しているようだな……」 



325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 21:43:01.42 ID:lKr1mxGno
シスター「それって……」
戦士「薬で操られてるんじゃないの?」
医者「ーーだとすると、殆どの兵士は正気を失っている可能性もありますね」
戦士「あらぁ。どうして?」
医者「魔女が使っているのは興奮剤、幻覚剤の一種ですからね」
戦士「王様の傍にいるのは魔女なんかじゃなく、普通の女ってことなのね」
医者「ええ。恐らく」
シスター「な、なら! 貴方の薬で……!!」
医者「私もできるなら早く治療を行いたいですが簡単には……」
村娘「た、大変!! おじいちゃん!!」
村長「どうした?」
村娘「こ、この村に兵隊が向かってきてるの!!」
村長「なんだと!?」
医者「まさか……」
戦士「……」 



326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 21:51:22.60 ID:lKr1mxGno
兵士長「……」
兵士「隊長……」
兵士長「言うな」
兵士「……」
戦士「はぁーい。良い男たちぃ。ピクニックにでもいくのかしらぁ?」
兵士長「お前は勇者と共にいた者だな」
戦士「(5人か。少数精鋭ね。まぁ、村を焼くには十分な人数だけど)」
兵士長「勇者を出してもらおうか」
戦士「どうしてぇ?」
兵士長「国王陛下の命令だ」
戦士「勇者狩りってわけぇ? 狙いは勇者様にくっついてるガキンチョのほうじゃないのぉ?」
兵士長「出してもろうか」
兵士「……」シャキン
戦士「魔女の言いなりなんて恥ずかしくないわけ?」
兵士長「……いいから、出せ」 

327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 22:19:30.00 ID:lKr1mxGno
戦士「嫌よ。強引な男はお、こ、と、わ、り」シャキン
兵士「きさまぁ……」
戦士「魔女との結婚に諸手を挙げて祝福したらしいけど、どういうつもりなのぉ? それともやっぱり貴方たちにとっては普通の妃なの?」
兵士長「奴は確かに魔女だ」
戦士「(あら……。薬で操られてるわけじゃないのかしら?)」
兵士長「勇者と姫を連れて帰らねばならないんだよ。なんとしてでもなぁ」
戦士「なんでよ」
兵士長「魔女が薬をばら撒いてたんだ。つまり全ての町の民を人質にしているんだよ。この任務に失敗すれば、町民同士に殺し合いをさせるといっている」
戦士「そうなの。それなら薬で操られているほうがよかったわね。あ、そうだ。薬持って帰る? ここにはそれなりにあるけど?」
兵士長「町民全員分の薬を今すぐ用意できるってか? あの町にどれだけの人が住んでいると思ってやがる」
戦士「まだ無理ね」
兵士長「だからよぉ……。今はこうするしかないんだ」
戦士「でもねぇ。今、村にいるのは勇者様の妹だけだしぃ」
兵士長「あいつの妹を連れていくだけでもいいかもしれねえな。それだけでも今日死人がでることはない」
戦士「悪いけど、こっちの準備が整うまでは多少の死人は出るわよ。だって、私の仕事は勇者様の妹を守ることなんだものっ。あんたたちの任務は失敗ね」 



328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 22:32:25.82 ID:lKr1mxGno
翌日 農村
狼少女「ついたー」
狼「ガウッ」
勇者「お前は仲間のところにいてくれ」
狼「……」
狼少女「仲間のとこいって!!」
狼「ガウッ」タタタタッ
勇者「あいつらを村の中につれてはこれないからなぁ。家畜たちが大騒ぎしちゃうし」
狼少女「あい」
勇者「行くか」
狼少女「はらへったな!」
勇者「そうだなぁー」
村娘「ゆ、勇者さまぁ!!」
勇者「うぃーっす。ただいまっすぅ」
村娘「どこに行っていってたんですか!? 昨日、大変なことが……!!!」 



329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 23:06:37.45 ID:lKr1mxGno
民家
戦士「……」
勇者「生きてるっすか?」
医者「ええ。ただ意識が戻らなくて」
勇者「そうっすか」
医者「どうやら貴方の妹さんを利用して、城まで来させようとしていたようです」
村娘「村にきたのは、あの馬車を用意してくれた隊長さんでした」
勇者「(先輩っすか)」
医者「彼らを責めてはいけません。城下町の人間全てが人質になっているようです」
勇者「薬はあげたっすか?」
医者「いえ、渡せませんでした。私たちは隠れているように言われていたので……」
勇者「なるほど……」
医者「それと気になるのが。この村にきた兵士たちは正気を保っていました。あの町の人たちのように突然凶暴化するというわけでもないようです」
勇者「でないと、脅しにはできないっすからね。都合のいいときに凶暴化させないと」
医者「凶暴化させるための合図か何かがありそうですね。やはり魔女の薬は着実に性能をあげていることに……」 



336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 18:05:20.34 ID:MT50MpWlo
村長の家
勇者「……すみませんでした。俺の所為で村の人たちに恐怖を与えてしまって」
村長「ゆ、勇者様。顔を上げてください」
勇者「今晩にもここを出ます。これ以上俺が留まるとこの村が、貴方たちがどうなるか分かりませんから」
村娘「で、でも、薬がまだ揃っていないのでは……」
勇者「魔女と国王を討てばいいだけの話です。それに最初から薬の数が揃うまで待つつもりはありませんでしたから」
村長「確かに。魔女によって操られている者を救いながらでは手遅れになるかもしれませんな」
勇者「各地の犠牲者も増える一方でしょうからね」
村娘「大丈夫、なのですか?」
勇者「心配はいりません。貴女の旦那さんには本当にお世話になりましたし、ここからは俺の仕事です」
村長「これより先、何もできない我々をお許しください」
勇者「十分すぎるほどの援助を受けました。感謝するのは俺のほうです。それと……」
村長「分かっております。もしものときは村を捨てる覚悟もあります。元より村人の減少も歯止めが利かない現状です。遅かれ早かれ村は滅びる運命ですから」
勇者「そう言っていただけると、ありがたい。それでは、失礼しました」
村娘「勇者様……お気をつけて……」 



337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 18:11:49.35 ID:MT50MpWlo
馬小屋
勇者「マジでいいっすか?」
医者「勿論です。勇者様に使って頂けるのなら、喜んでお貸しします。それに、こいつも貴方に協力できることを嬉しく思っているはず」
勇者「本当かぁ?」
馬「……」ペロペロ
勇者「頼むぜ」
医者「車と幌も準備は出来ています」
勇者「あざす。では、行ってくるっす」
医者「勇者様」
勇者「なんすか?」
医者「また、この村に……」
勇者「もちろんっすよ。結婚式、絶対に呼んでくださいよ」
医者「はい!!」
勇者「行くか」
馬「ヒヒーン!!!」 



338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 18:20:19.86 ID:MT50MpWlo
農村
勇者「……こんなもんだな」
シスター「兄さん」
勇者「よう」
戦士「あらぁ、勇者様。つれないのねぇ。あたしをデートに誘ってくれないわっけぇ?」
勇者「意識、もどったんすね。にしてもまだ寝てないとダメじゃないっすか?」
シスター「止めたんですけど、どうしてもって聞いてくれなくて」
戦士「なによぉ。勇者様のためにがんばったのよぉ。あたしの体なんだも、あたしの我侭ぐらい聞いてくれるわよ」
勇者「そっすか? 倒れないでくださいよ。まだ妹を守る仕事、続いてるんすから」
戦士「ごめんねぇ。本当ならあたしも……」
勇者「いいっすよ。貴方を傭兵として雇ったのは正解でした。また、お願いしてもいいっすか?」
戦士「もっちろんよぉん!! 勇者様の依頼なら二束三文、ううん、無料でうけちゃうぅ! あ、でも、体では払ってもらうかしら。うふふ」
勇者「ははははは。勘弁してくれ」
シスター「兄さん……。お願いします」
勇者「任せろ。最高の妹に恥じない程度には働いてくる」 



339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 18:26:48.63 ID:MT50MpWlo
勇者「いくぞぉ!!」
馬「ヒヒーン!!」
狼少女「えい! えい! あーい!!」
勇者「降りろ」
狼少女「いやだ。私もいっしょにーー」
勇者「足手まといだ。鬱陶しい」
狼少女「え……」
勇者「早く降りろ」
狼少女「な、なんでだ!? お前!! 一緒にこいって……!!」
勇者「お前になんかあったら困るって言っただろ? 今回ばかりはダメだ」
狼少女「そんなの私だって同じだ!! お前になんかあったら困る!! 困るぞ!! いいのか!?」
勇者「帰ってくる」
狼少女「……いやだ。一緒にいく。いかせてくれ」
勇者「言うことを聞けよ。今度ばかりはお前を守ってやれるかどうか微妙なんだよ」
狼少女「お前のこと、私が守る。それでいいだろ? ……ダメなのか?」 



340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 18:36:36.52 ID:MT50MpWlo
勇者「お前に守られるほど弱くねえよ」
狼少女「じゃあ、守らない! それならいいか!?」
勇者「無理だ。大体、俺はお前の親を殺しに行くんだぞ? 確かに最低な親だ。俺の親父が聖人に見えるぐらいのな。なのに、ついてきたいのか?」
狼少女「……」ギュッ
勇者「おい。遂には実力行使かぁ」
狼少女「もう……いやだ……」
勇者「え?」
狼少女「こわいの……いや、だ……」
勇者「……」
狼少女「お前、いなくなったら……わたし……こわい……。仲間、いても……お前がいなくなるの……こわい……だから……」
勇者「おい……」
狼少女「いっしょに、いっしょに……いたいんだぁ……!!」
勇者「……」
狼少女「どこにも……いくなぁ……傍にいろ……」ギュゥゥゥ
勇者「ーーダメだ。降りろ。お前は邪魔なだけなんだよ」 



341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 18:42:54.85 ID:MT50MpWlo
狼少女「あぇ……!?」
勇者「ほら」ヒョイ
狼少女「なんでだー!? 今までだって……!!!」
勇者「しゅっぱーつ!!」パシーン
馬「ヒヒーン!!!」ダダダダッ
狼少女「まてー!! おいてくなぁー!!!」タタタッ
勇者「戻ってくる!! お前を一人には絶対にさせない!!!」
狼少女「ほんとうか!? ぜったいかぁ!? わたしをみすてないかぁ!?」
勇者「みすてねーよ!! 余裕ができれば面倒ぐらいみてやるよー!!」
狼少女「ぜったいだぞー!! やくそくだぞー!!!」
勇者「おーう!」
狼少女「うそついたらー!! おこるからなぁー!!!」
狼少女「うぅ……がんばれよー!!! まけるなよー!!! いってらっしゃーい!!!」
勇者「いってきまーす!! 良い子にしてろよー!!」
狼少女「あーい!!」 



343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 18:51:37.93 ID:MT50MpWlo
城内 謁見の間
王「勇者と我が娘を取り戻せず、おめおめと逃げ帰ってきたのか?」
兵士長「申し訳ありません……」
王「使えぬ男め」
兵士長「……っ」
王「何だ、その目は?」
魔女「反抗的ね。いいのよ? 貴方の手で自分の妻と娘と殺したいっていうなら……」
兵士長「や、やめろ!! それだけは……!!」
王「ならば、行け。お前の責は民に償わせよう」
魔女「いい考えね、アナタ。素敵よ」ギュッ
王「フフフフ。だろう?」
兵士長「ぐっ……」
魔女「ふふ……」
魔女「(この国の兵隊は完全に傀儡と化したわね……。問題はあの坊やがどんな手で来るかだけど……)」
王「取り逃がした勇者が噛み付いてくるかもしれんな。手は打っておかなければ」 



344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 19:01:29.62 ID:MT50MpWlo
通路
兵士「ーー終わりました」
兵士長「そうか」
兵士「隊長。やはり我々で陛下と魔女を……」
兵士長「陛下はともかく魔女は無理だ。何人も返り討ちにあってるじゃねえか」
兵士「それは……」
兵士長「俺たちはもう毒に犯されてる。俺が今すぐお前を殺しても不思議じゃねえんだ」
兵士「しかし、このままでは」
兵士長「分かってる。俺たちの希望は最初から一つしかねえのさ」
兵士「勇者殿……」
兵士長「そういうこったな」
兵士「我々にできることはないでしょうか。勇者殿に頼りきりというのも」
兵士長「あの馬鹿がどうするかわからんが、それに合わせるーー」
衛兵「隊長!! 大変です!! 遠方より見たことのない隊が近づいてきます!!」
兵士長「……すぐに行く。各兵に通達。戦の準備をしろってな」 



345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 19:16:24.14 ID:MT50MpWlo
見張り台
兵士長「見せてくれ」
門兵「は、はい!!」
兵士長「んー……?」
兵士長「(どこの一個小隊だぁ……? あんな人数で戦争しようってか? 魔女とくっついた国王を殺しにきたにしては戦力不足だろうが。しっかりしやがれ)」
兵士「隊長!! 隊の後方より馬車が……!!」
兵士長「んぁ? ありゃぁ……」
兵士長「(あの村にいたバカでけぇ馬じゃねえか……。まさか……)」
兵士「誰が乗馬しているのかわかりませんね。布をかぶっていて顔が……」
兵士長「(あのでけえ荷台にゃなにが積んである……? 武器? いやぁ、あんなちいせえ村にんなもんはなかったし、他からかき集める時間なんざない)」
兵士長「(姫か? いやいや、あいつがそんなバカなことするわけねえし……)」
兵士長「(兵隊だって揃えられるわけねえし……だったら、あんなでけえ荷台はいらねえよなぁ……)」
兵士長「(あいつが考えそうなことといやぁ……。待てよ。そういやぁ、魔女から獣の臭いしなくなってるよなぁ……)」
兵士「隊長?」
兵士長「おい。火だ。火を用意しろ。今すぐだ」 



347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 19:48:36.14 ID:MT50MpWlo
草原
勇者「先輩、こっちの考えわかってくれてるっすよね……」
狼「ガウッ」
勇者「顔出すな」
狼「クゥーン……」
勇者「しっかり頼むぜ?」
馬「ヒヒーン!!」
隊長「勇者殿!!」
勇者「あんたもしっかり罪滅ぼしするっすよ」
隊長「はい。この穢れた手でも大切なものが守れるのなら……!!」
勇者「けっ!!!」
隊長「は? な、なにか気に触るようなことを……?」
勇者「うるせぇぇぇ!!! さっさと先行しろぉい!!! 駄馬にでものってんのかぁ!? はぁぁん!?」
隊長「も、申し訳ありません!! 行くぞぉ!! 俺たちの力、魔女に見せ付けてやるんだぁぁ!!!」
「「おぉぉぉぉ!!!!」」 



348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 20:03:10.30 ID:MT50MpWlo
城内 謁見の間
王「なに? どこの賊だ?」
兵士長「それはわかりません。しかし、あの統率の取れた動きは賊ではないでしょう」
王「……わかっているな?」
兵士長「……陛下の命は、我が身に代えても守ります」
魔女「私も守ってくれるわよね?」
兵士長「無論です」
王「いけっ!!」
兵士長「はっ!」
魔女「……信用して、大丈夫なの?」
王「お前の力があれば心配はないだろう?」
魔女「そうだけど……」
王「お前には傷一つつけさせやしない」ギュッ
魔女「ありがとう、信じてるわ」
魔女「(正面から来るつもりかしら……?)」 



349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 20:09:16.90 ID:MT50MpWlo
城下町
兵士長「民間人の避難は済んだか?」
兵士「いえ! まだ完全ではありません!!」
兵士長「急げよ。どうなるかわかんねえぞ」
兵士「はっ!!」
兵士長「(さぁて……次は……)」
門兵「隊長!! 準備が整いました!! 点火しますか!?」
兵士長「俺が合図を出すまで待ってろ」
魔女「ーー火でどうするつもりなの?」
門兵「な……!?」
兵士長「貴女は城の中にいてください。危険です」
魔女「ねぇ、どうするつもりなの?」
兵士長「狼は煙に弱いそうですから。まぁ、獣の殆どは火を恐れますが」
魔女「……へぇ。そういうこと」
兵士長「さぁ、早く。城の中へ。町中を戦場にするつもりはありませんが、万が一ということもありますので」 



350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 20:28:39.68 ID:MT50MpWlo
城内 妃の部屋
魔女「ふふふ……」
魔女「(可愛い娘だけでは飽き足らず、ペットまで盗むなんてね……)」
魔女「(まぁ、あの狼たちに実験台以外の価値なんてなかったから、壊れるまで使ってくれても構わないけど)」
魔女「(でも狼を手懐けたってことは、私の薬を無効化させたってことよね。どうりで娘も帰ってこないわけだわ)」
魔女「……」
『入ってもいいか?』
魔女「どうぞ」
王「間もなく衝突する。危険はないだろうが、一応私の傍にいたほうがいい」
魔女「ごめんなさい。用意しておきたいことがあるから」
王「何をするつもりだ?」
魔女「飼い犬に手を噛まれたくないもの」
王「しかし、先日町で使用したばかりだ。あの濃霧は出せないんだろう?」
魔女「そっちは作るのに手間が掛かるもの。でも、これなら……」
王「おぉ。もしや改良を加えたのか?」 



351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 20:41:06.53 ID:MT50MpWlo
城下町 
隊長「敵は近いぞ!!! すすめぇぇぇ!!!」
「「おぉぉぉぉ!!!!」」
門兵「止まれぇぇ!!!」
兵士「貴様たち!! どこに属する兵だ!?」
隊長「我々はこの呪われた町を救うためにやってきた!! 道をあけてもらうぞ!!!」
兵士「できぬ相談だ!! 賊めが!!」
隊長「お前たちもわかっているはずだ!! 魔女が世界を混乱に陥れようとしていることは!!!」
兵士「……っ」
兵士長「負けんな。ここで退けば、俺の嫁と娘がどうなるかわかんねえだろ? んで、お前のカーチャンもな」
兵士「た、隊長……」
兵士長「どこのバカなのかはこの際、きかねえ。でもなぁ、俺たちにも守りたい家族がいることは知っておいてくれ」
隊長「私にも守りたい大事な人はいる!!」
兵士長「だったら、お互いに戦うしかねえだろ? ほら、かかってこい」
隊長「ーーかかれぇぇぇ!!!」 



352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 20:46:00.79 ID:MT50MpWlo
「「うぉぉぉぉ!!!!」」
「「おぉぉぉぉ!!!」」
隊長「はぁぁぁ!!!」
兵士「このぉぉ!!!」
兵士長「(始まったか……。あいつは……)」
勇者「ふんふーん」
兵士長「なーにしてやがる?」
勇者「どうも先輩。でも先輩の相手をしている暇はないっすよ」
兵士長「つれねえなぁ。ゆっくりしていけよ」
勇者「先輩はこいつらと戯れていてくださいよ」バッ!!!
狼「グルルルル……!!」
「「ガルルルル……!!!」」
門兵「お、狼……!?」
兵士長「てめぇ……!!」
狼「ガァァァァウ!!!!」 



353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 20:51:43.59 ID:MT50MpWlo
隊長「勇者殿!! お願いします!!」
勇者「うっす!!」
兵士「行かせはしません!!!」
勇者「なんでっすかぁ? 俺が折角ボランティアで町を救おうっていってるのに?」
兵士「魔女は民を人質にしているのです!! 我々が貴方を通してしまうと……!!」
勇者「はぁ? んなのしらねーっすよ」
兵士「な……!?」
勇者「あんた恋人は?」
兵士「な、なんですか、いきなり……」
勇者「いるのか、いないのか?」
兵士「……います」
勇者「はぁぁぁ!? じゃあ、お前の大切な人なんて死んでよし」
兵士「なぜですかぁ!?」
勇者「恋人がいるやつなんて助けるかぁぁぁ!!!!! ボケェェェ!!!! アホー!!! しんじまえぇぇー!!!!」ダダダダッ
兵士長「(病んでるなぁ、あいつ……)」 



354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 21:00:45.59 ID:MT50MpWlo
勇者「どこだぁぁぁ!!! 魔女ぉぉぉ!!! でてこいっすぅ!!!」
兵士「勇者殿を取り押さえろ!!」
勇者「俺を誰だと思ってるっすかぁ!!」
兵士「このぉ!!」
勇者「誰よりも強い兵士、それが俺だぁぁ!!!」ザンッ!!!
兵士「ぐぁ!?」
勇者「憎い……恋人がいる全ての男が憎い……!!」
勇者「今の俺を突き動かすのは憎悪だけなんだよぉ!!! あと妹の願いもちょっとだけ」
「とめろぉ!! 城の中にはいれるなぁ!!」
勇者「邪魔だ!! 邪魔だ!!! うわぁあああああ!!!!」
兵士長「勇者は俺が引き受ける!! それよりも火だ!!! 点火ぁ!!!」
門兵「了解!!」
狼「ガァァァァウ!!!!」
兵士長「狼を町にいれるなよぉ!!!」
門兵「はい!!」 



355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 21:04:57.76 ID:MT50MpWlo
城内
衛兵「止まってください!!」
勇者「とまるかぁ!!」ザンッ
衛兵「ぎゃぁ!?」
勇者「魔女はどこだ!!」グイッ
衛兵「ぐっ……む、むこうに……」
勇者「よしっ」
衛兵「……お願いします」
勇者「うすっ」
勇者「……ん? なんだ、この匂い……?」
勇者「(この香り、どこかで……)」
衛兵「ガ……イ……ゆ、ウシャ……!!」
勇者「ちっ!?」
衛兵「ウアァアアアアア!!!!!」
勇者「眠ってろぉ!!!」 



356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 21:22:18.11 ID:MT50MpWlo
王の部屋
王「いつ嗅いでも素晴らしい香りだ。幾億の花を揃えようがこの芳香には敵わんだろう」
魔女「あまり褒めないで。照れるじゃない」
王「さて、そろそろ城内にいる者はこの香りに誘われ、狂気しているはず」
魔女「町のほうへももうすぐ流れていくわね」
王「そうか……」
魔女「よかったの? 下手をしたら町民が全滅する場合もあるけど」
王「構うことはない。お前さえ居れば兵力も町民もいくらでも増やせる」
魔女「ふふ。そうね」
王「理想の世界を創ろうではないか」
魔女「私のこと、本当に愛してくれているのね」
王「前の妻に子どもができなかった。そして奴は私のことも愛しておらず、欲していたのは王族の椅子だけだった」
魔女「そうだったの」
王「妻に見限られた私は、私のことを愛してくれているお前に私は恋をした。それだけのことだよ」
魔女「嬉しい……」 



357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 21:48:33.79 ID:MT50MpWlo
通路
兵士「ガァアアアア!!!!」
勇者「ふーん!!!」ドガァ!!!
兵士「ギィ!?」
勇者「(魔女がつけていた香水か何かが凶暴化の引き金になってたのか……)」
勇者「狼たちが言うことを聞いていたのも同じ理由か」
衛兵「オォォォオオオ!!!!」
勇者「うるせぇ!!!」ドガァ!!!
勇者「さっさと魔女を倒しにいかないと……。この臭いが町のほうまで流れたら……」
勇者「あぁ……もう……面倒だなぁ……」
兵士「オォォオオオ!!!」ガキィィン
衛兵「ォォアアアア!!!!」ガキィィン
勇者「おーおー。ああいう風に同士討ちしてくれてたら楽ーー」
兵士「ガァアアアア!!!」
勇者「こっちに来るなよ!?」 



358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 22:13:32.12 ID:MT50MpWlo
城下町
兵士「こっちでいいのか!?」
門兵「指示ではそうだ!!」
兵士「しかし、これでは風の影響で……!!」
狼「ガッ……ウゥゥ……!!」タタタッ
「ガァァァ……!!」タタタッ
隊長「狼たちが町のほうへ……」
兵士「ほら見ろ!!」
門兵「だが!! 命令どおりに火は配置したんだぞ!!」
兵士「狼を町に入れないようにとも言っていただろう!!」
門兵「俺がしるかぁ!!」
隊長「(向こうの兵が混乱している……!! 今のうちに……!!)」
隊長「お前たち!! 急げ!!! 攻め入るぞぉ!!!」
「「おぉぉぉぉ!!!!」」
隊長「(勇者殿、こちらは任せてください!!)」 



359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 22:37:08.58 ID:MT50MpWlo
王の部屋
王「ふふ……」
魔女「もうこんなときに……だめ……」
王「いいではないか……」
勇者「ここかぁ!!!」バンッ!!!
魔女「あら。いらっしゃい」
王「痴れ者が。場を弁えろ」
勇者「兵士たちがあんたらのために血を流してるのに、ちちくりあってんっすかぁ?」
王「勇者よ。お前は死罪が確定している。その前に答えてもらおうか。娘の居場所を」
勇者「てめえらみたいな超絶ハッピーどもに教えるものはなにもないっす!!!」
王「……そうか。まぁ、想像はついているがな」
魔女「どうせ、あの農村でしょう?」
勇者「それはどうっすかねぇ?」
魔女「バカな男ね。勇者は皆、死に急ぐ」
勇者「ああ、死に急いでるかもなぁ。俺はもうこの世界に絶望してるっすからぁ!!」 



360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 22:56:41.54 ID:MT50MpWlo
王「頼むぞ」
勇者「あぁ!?」
兵士長「……」ブゥン!!
勇者「おぉぉう!?」ギィィン!!!
王「さぁ、行くぞ」
魔女「ええ」
勇者「なんだ!? 今からベッドインっすかぁ!?」
魔女「気をつけてね。凶暴化しているから」
勇者「くっそ……!! せんぱぁい!!!」
兵士長「ウァァアアオオオ!!!!!!」ドガァ!!
勇者「ごぉっ……!?」
兵士長「ユ……う、シャ……!!」
勇者「先輩、恨まないでくださいよ」
兵士長「オォ……ガ……!!」
勇者「俺、先輩には手加減できねえっすからね。何故なら……先輩のことずっと前から羨ましいって思ってたんだぁぁ!!! 幸せそうな家庭築いちゃってぇぇぇ!!!!」 



361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 23:02:02.27 ID:MT50MpWlo
王「勇者といえど、あの男には敵うまい。狂人化させれば無敵だ」
魔女「可愛い娘を迎えに行く準備もしないといけないわね」
王「すぐに会えるよ」
魔女「ええ」
狼「ガルルルル……!!!」
王「何……!?」
魔女「どうして……狼たちへの対処は……」
魔女「(煙が風に流れて城のほうへ……。あの男……!!)」
王「下がっていろ」
魔女「あなた……」
王「獣一匹、私の敵ではーー」
「グルルルル……!!」
「ガルルルル……!!」
王「くっ……!! 何匹入り込んだ……!!」
魔女「……」 



362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 23:14:01.90 ID:MT50MpWlo
勇者「ずっ……!?」
兵士長「フゥー……フゥー……!!」
勇者「つえぇ……。流石、先輩……」
兵士長「グァアアアア!!!!」
勇者「でも、俺だって負けられねぇぇぇ!!!!」ガキィィン!!!
兵士長「ギギ……!!」
勇者「女の子にモテるために、勇者になったのに。結果、妹や拾った野生児のためにこんなことしている……」
勇者「こんなはずじゃなかったんだ……こんなはずじゃ……」
兵士長「オォォォオオオ!!!」
勇者「おぉぉぉぉ!!! 先輩の大嘘つき野郎ぉぉぉぉ!!!!!」ザンッ!!!!
兵士長「ガァ……!?」
勇者「はぁ……はぁ……。ちょっと、休んでてくださいよ」
兵士長「グ……ゥ……」
勇者「魔女、どこいった……」
勇者「もし魔王と子作りしてるなら、容赦なく後ろから差し込んでやる。剣を」 



363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 23:19:22.55 ID:MT50MpWlo
通路
兵士「オォォォオ!!!」
勇者「どけぇ!!」ドガァ!!!
勇者「(先輩のことだから、上手いこと狼たちをこっちに嗾けてくれてるはずなんすけど……)」
「ガァァアアアア!!!」
勇者「おっ! いたいたーー」
王「……」ザンッ
狼「グゥゥ……」
勇者「な……!」
王「……」
魔女「ウフフ。狼のエサに私たちを選んだのはいいセンスね。私以上に美味な肉もないでしょうし」
勇者「なんで……」
魔女「何を驚いているの? 狼ごときに私の夫がやられるわけないでしょう?」
勇者「陛下に何をしたんだ?」
魔女「貴方も見たでしょう? この薬を使ったの」 



365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 23:29:22.15 ID:MT50MpWlo
勇者「それは……」
魔女「私の愛娘が協力してくれて完成した究極の薬。どんな人間でも限界以上の力が引き出せる魔法の薬」
勇者「それは結構危ない薬品っすよね? 成長がとまるほどの」
魔女「子どもに使えばね。でも、大人に使用する分には平気よ。まぁ、使い続ければ死んじゃうだろうけど」
勇者「ずっとそんな頭のイカれた研究ばっかやってたんすか?」
魔女「そうよ。この馬鹿で糞な国王に捨てられてから、ずっとね」
勇者「……」
魔女「お腹を痛めて産んだ子を寄越せといってきた。国のためには必要だからと。国のために……。国のためなんかに差し出すのなんて馬鹿らしいでしょう?」
勇者「それはそうっすね」
魔女「だから殺したのよ。こいつの妻をね。そして娘をつれて逃げたの。いつか復讐してやると神に誓ってね」
勇者「復讐ってあんたは妃を殺した。それで十分じゃないっすか」
魔女「何を言っているの? そんなことで私の気持ちが治まるとでも? 坊やには一生分からないわ。私の気持ちなんてね」
魔女「愛した男に裏切られ、その間に生まれた子どもまで奪われそうになった私の気持ちなんて……!!」
勇者「そんなに大事にしてるなら、一緒に隠れて住めばよかったんじゃないっすか?」
魔女「大事? 確かに大事にしていたわ。愛していたわ。実験台として狼と同じように愛情こめて使ってやったわ」 



367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 23:36:44.10 ID:MT50MpWlo
勇者「なんすかそれ」
魔女「あの娘をただの一度も人間として見たことなんてないわ。だって、この男の血が流れてるのよ?」
王「……」
魔女「人間じゃない。悪魔よ」
勇者「(ダメだ。目がいっちゃってるっすね……)」
魔女「だから、使ってやったの。壊れないように気を遣ったのよ? 手軽に使える実験台は中々手に入らないからね」
勇者「そっすか」
魔女「あの子はまだまだ使えるの。子どもをどこまで兵器として使えるのか。試してみたいのよ。だから、あの子が私には必要なの」
勇者「……」
魔女「ズタボロになるまで使ってやるのよ。簡単には死なせないわ。この男もあの娘も!!!」
勇者「あんた、俺と似てるっすね。俺も色んな女性に裏切られてきたっすよ」
魔女「ふんっ。そうなの。なら、少しぐらいは分かるかしら、私の気持ちが」
勇者「いーや。わかんねえっすね」
魔女「なんですって?」
勇者「女性に裏切られて怒りはしては、恨んだことなんて一度もねえっすから」 



370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 23:48:16.98 ID:MT50MpWlo
魔女「真性の馬鹿なのね」
勇者「馬鹿で結構。あんたは何もわかってないっすねぇ」
魔女「……」
勇者「一度でも惚れた相手っすよ? 振られても嫌いになんてならないでしょう、普通」
勇者「まぁ、あのときああしていればとか思うときはあるっすよ? 例えば、馬を助けなかったらもしかしてーとか、ずっと傍にいればよかったなぁーとか」
勇者「でも、そのあとに幸せそうにしていたり、元気そうにしていたりするなら、それでいいじゃないっすか」
魔女「坊やはそれで満足できるの? 他人の幸せを祝福できるの?」
勇者「できねーっすよ。死ね!って思ってます」
魔女「だったら……」
勇者「だからって、相手の幸せを壊す権利はない。奥歯かみ締めて拍手してやるんすよ。結婚おめでとー!! お幸せにぃー!!って」
魔女「他人の幸せのために自分が泣けばいい。そういうことね」
勇者「あんたちょー美人なんだし、子連れでも男はよってきたはずっすよ。俺とか俺とか。なのに子どもの幸せを考えずにこんなことして、これじゃあ……」
勇者「あんたをナンパする気もなんねーっすよ」
魔女「言わせて……おけば……!!」
勇者「お前、ブスっす。俺がこの世で一番嫌いなブスっす。あんたなんか金もらったって抱きたくねえっすわぁ。あーやだやだ。ブスは死んでいいっす」 



371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 23:53:34.77 ID:MT50MpWlo
魔女「……言いたいことは言ったかしら?」
勇者「うっす。ブサイク魔女。かかってこいよ」
魔女「ーー行け!!」
王「ゴォォオオオオ!!!!」
勇者「……」シャキン
魔女「フフフ。人間の限界を超えた力の前に絶望すればいいわ!!」
王「オオォォォオオオオ!!!!!」
勇者「はぁぁ!!!」ザンッ!!!
王「ギィ……!?」
魔女「え……」
勇者「……何、驚いてるっすか?」
魔女「ど、どうして……」
勇者「どうして? あんたの目の前にいるのは勇者っすよ?」
魔女「……っ」
勇者「伊達や酔狂で勇者やってねえっすから」 



373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 23:57:54.82 ID:MT50MpWlo
魔女「そんな……!! 前の勇者は試作品の薬で十分だったのに……!!」
勇者「観念しろっす。逃げ場なんてねえっすよ」
魔女「まだよ!!」
勇者「なに……」
魔女「こいつを使えば……!!」グイッ
狼「グルル……」
勇者「やめろ!!」
魔女「もう遅いわ!!」
狼「ガルルル……ガ、ガ、ゥゥウウ……!!!」
勇者「往生際わるいっすねぇ」
狼「ガァァアアアアア!!!!」
勇者「おぉい!! ちょっと待て!!」
魔女「フフフ!! 狼と戯れていなさい!!」タタタッ
勇者「まてこらぁ!!!」
狼「ガァァァウ!!!」 



374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/27(日) 00:07:54.63 ID:bA453CjWo
城下町
魔女「はぁ……はぁ……!!」
魔女「(何よ……何よ……!! 忌々しい!! まぁ、今回はあの男を始末できただけでも良しとするしかないわね……!!)」
魔女「(また一から初めてやるわ……。どこかの野生の獣を捕まえて……私の兵隊にして……!!)」
魔女「私は諦めないわ……!! あの男が治めていたこの国を壊してやるのよ!!! そして、あの悪魔の娘も!!!」
魔女「アハハハハハハ!!! 見てなさい……!! 必ずやり遂げてみせるわ……!!!」
勇者「待てぇ!!!」
魔女「しつこい男ね……。でも……」
勇者「このーー」
女性「ウゥゥオオオ……」
男性「アァァァオオオ……」
勇者「ちぃ……!! どこまでも腐ってるっすねぇ!!!」
魔女「さようなら!! 勇者様!!! アハハハハハ!!! 優しい勇者様には一般人を傷つけることなんてーー」
勇者「一般人がなんだぁ!!!」ドゴォッ!!!!
男性「グェ……!?」 



376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/27(日) 00:15:23.32 ID:bA453CjWo
魔女「あなた……!!」
勇者「……」シャキン
魔女「く、狂ってるわ……」
勇者「言ったはずっすよ? 俺は国のためや王のために勇者になったんじゃない。力なき人たちのためでもない」
魔女「……」
勇者「女の子にモテるためになった。だから国が滅びようが、善良な民が殺しあおうが関係ねえっすよ。寧ろ、ありがたいっす。俺に優しくない世界なんて滅べばいいんすよ」
魔女「だったら、どうしてこんなことを……?」
勇者「可愛い妹と……」
魔女「(こいつに薬を……)」スッ
勇者「姫様のーー」
魔女「くらえぇ!!!」
勇者「ためだぁぁ!!!!」ザンッ
魔女「ぎ……ぁ……」
勇者「ふぅ……」
勇者「ハラヘッタっすね。早く帰りたいっす」 



377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/27(日) 00:22:36.36 ID:bA453CjWo
隊長「勇者殿!!!」
勇者「うぃーっす。怪我人は?」
隊長「多数出ています。陽動のためとはいえ、すこし暴れすぎてしまいました」
勇者「あんたたちのお陰ですんなり国王と魔女のところまでいけたんすよ。あざした」
隊長「お役に立てたのなら光栄です」
勇者「狼たちは?」
隊長「重傷ですが生きています。すぐに治療を施せば助かるでしょう」
勇者「お願いできるっすか?」
隊長「勿論です!! 彼らがいたからこそ敵の隊も混乱したわけですし!! 既に同志といってもいいほどです!!」
勇者「そうっすね」
勇者「(先輩の気遣いも多分に含まれてるっすけど)」
隊長「勇者殿も治療を……」
勇者「こんなの唾つけてればなおるっす。他の人を優先してくださいっす」
隊長「はっ!!」
勇者「……はぁ。先輩とこいくか」 



378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/27(日) 00:27:25.96 ID:bA453CjWo
城内
「包帯を持ってきてくれー!!」
「わかりましたー!!」
勇者「うわぁー。皆派手に怪我しちゃってぇ」
兵士長「いよぉ」
勇者「先輩。生きてたっすね」
兵士長「魔女は……?」
勇者「倒したっすよ」
兵士長「殺したか?」
勇者「生きてんじゃないっすか? 致命傷にはなってないとおもうっすけど」
兵士長「そうか……。残念だったな」
勇者「はい?」
兵士長「あの魔女がお前の糞親父を殺したんだ。仇、取り損ねたな」
勇者「あんな親父の仇なんて取るまでもねぇーっすよ。どーせ、魔女の色香にやられて自滅したんすから。自業自得っす」
兵士長「ハハッ。ああ、あいつならありえそうだぁ……」 



379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/27(日) 00:33:30.83 ID:bA453CjWo
勇者「それにしても、これからが大変っすね」
兵士長「陛下はもう王座に座ることはできねえからな」
勇者「残る王族は……」
兵士長「姫だけだな。なってもらうか、女王に」
勇者「ダメダメダメ! あんなの! 国が三日でおわるっすよ」
兵士長「優秀な夫がいれば問題ないんじゃないか?」
勇者「狼の王っすか? 斬新っすねぇ」
兵士長「馬鹿野郎。お前だよ」
勇者「俺? いやっすよ。あんなガキの旦那になるなんて」
兵士長「おまえなぁ」
勇者「それより先輩。俺、この国どころか世界を救った英雄なんすけど、もう世界中の美人が黙ってないっすよね、これ。ヤバくないっすか? マジヤバくないっすか?」
兵士長「世界の危機だったなんて誰が信じるんだ? 魔女は世界進出していたわけじゃねえんだぜ? 精々、この町の女が騒ぐぐらいだろ」
勇者「マジっすか。……この町には見切りをつけたけど、騒いでくれるなら……グフフフ……フフフハハハハハハ!!! よぉーし!!!」
兵士長「まてまて。俺の話をきけ」
勇者「もー!! なんすかぁー!! 女の子が俺のことまってんすよぉー!!」 



381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/27(日) 00:41:42.38 ID:bA453CjWo
兵士長「悪いことはいわねえ。姫とくっつけよ」
勇者「だーかーらー、俺にそんな趣味はないんすよ」
兵士長「よーく考えろよ。姫は誰が産んだ? ええ?」
勇者「魔女っすけど?」
兵士長「その魔女。容姿はどうだったよ」
勇者「すげー美人……はっ……!?」
兵士長「やっと気が付いたか」
勇者「あ、あの野生児が……あんな絶世の美女に……!!?」
兵士長「しかも、グラマラスなエロボディになること請け合いだ。流石の俺も嫉妬しちまうぜ」
勇者「しかも姫、いや女王となるなら、俺は国王に……!! それって……!!!」
勇者「側室とかもオッケーってことっすよねぇ!?」
兵士長「あ、ああ……まぁ、なぁ……」
勇者「うっひょーい!!!! やべぇー!!! テンションあがってきたぁー!!! それってもう合法ハーレムじゃないっすかぁ!!! 今が人生のピークっすぅぅぅ!!!!」
勇者「こうしちゃいられねぇ!!! 未来の側室たちを今から選出してこないと!!! まっててねぇーん!!! 俺のハニーたちぃー!!!」ダダダッ
兵士長「……ダメだな、あいつ。ま、姫が女王になるのにも色々問題は多いからな。簡単にはいかないぜ?」 



382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/27(日) 00:48:52.30 ID:bA453CjWo
農村
村長「なんと勇者様が……!? そうですか……。わかりました」
兵士「はい。ですので、勇者殿の妹君と保護している女の子を連れてくるように言われて」
シスター「兄さんが……」
狼少女「あいつ、魔女……倒したのか……」
戦士「複雑よねぇ。仮にも自分の産みの親なんだし」
シスター「どうする?」
狼少女「……いくっ!」
シスター「よかった」
狼少女「あいつには私がいないとダメなんだ! 私もあいつがいないとダメなんだ!!」
戦士「生意気なこといっちゃってぇ」
医者「治療に専念するためにも都会にいったほうがいいでしょう。私も賛成です」
村娘「少し寂しくなるけど、仕方ないですね。また、勇者様と一緒に遊びにきてください」
シスター「はい。必ず」
狼少女「おい!! 早く行くぞ!! あいつ、待ってるからな!!!」 



383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/27(日) 00:56:18.54 ID:bA453CjWo
街道 馬車内
狼少女「まだかー? なぁなぁ?」
戦士「もうちょっとよ」
狼少女「うぅー……」
シスター「兄さんのこと、本当に好きなのね」
狼少女「あいっ」
戦士「どこに惚れたの? やっぱり顔? 勇者様、可愛いもんねぇ」
狼少女「ちがうっ。顔は気持ち悪いだろ。あいつ、いつも一人でニヤニヤしてるしな」
シスター「まぁ……そうね……」
狼少女「……あいつ、私のこと必死に守ってくれたんだ。へんな人間が私を奪おうとしても、あいつは嫌だっていってくれた」
戦士「それだけで惚れちゃったのぉ?」
狼少女「あんなに優しくされたのは初めてだったんだ……。私、いつも……」
シスター「そっか……。うん。兄さんは優しいから、きっと貴方のこと大切にしてくれるはず」
狼少女「そうか!? えへへ。実はな、あいつ私のこと面倒みてくれるっていってくれたんだ!! それってつまり……」
戦士「つまりぃ……?」



384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/27(日) 01:01:05.90 ID:bA453CjWo
城下町
「キャー!! 勇者様ぁー!!」
勇者「やぁやぁ。みなさん。お元気ですか?」
「勇者さまー!! サインしてください!!」
勇者「いいですよぉー。アッハッハッハッハ」
「勇者様、私にもサインお願いします!!」
勇者「はぁーい。いいですよぉー」
勇者「(ブワァーッハッハッハッハッハ!!! これが恋愛マニュアルにも書いてあったモテ期ってやつかぁ!!!)」
勇者「(いやぁー。愉快愉快。時代が俺に追いついた瞬間を垣間見たな)」
勇者「(そして、子猫ちゃんと戯れつつ……大本命のあいつを……)」
狼少女「おぉぉーい!!!! わぁぁぁー!!!」テテテッ
勇者「おぉー!! やっと来たかぁ!! まってたぜぇ!!」
狼少女「あう……? こいつら、誰だ?」
勇者「俺のファンだ。さぁ、ご挨拶して」
狼少女「ガルルル……」 



385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/27(日) 01:05:57.39 ID:bA453CjWo
シスター「兄さーん!」
戦士「勇者さまぁーん!!」
勇者「おー!」
シスター「よかった……。無事だったんですね」
戦士「うふふ。この分だと、今夜は大フィーバーねぇ」
勇者「約束、あとで果たすからな」
シスター「うんっ。本当に無事でよかったぁ……」ギュッ
勇者「妹を置いて兄が死ぬわけないだろぉ?」
シスター「もう……」
狼少女「ガルルル……!! くっつきすぎぃ!!」
勇者「そうだ。なぁ、聞いてくれ」
狼少女「なんだ?」
勇者「お前、俺のこと好きだよな?」
狼少女「あいっ!」
勇者「実は、俺もお前のこと好きなんだ」 



386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/27(日) 01:10:20.08 ID:bA453CjWo
狼少女「おぉぉ!! 本当か!?」
勇者「ああ。両思いってやつだ」
狼少女「お、おぉ……!! ま、まぁ、知ってたけどな!!」
勇者「(これでよし……。ククク……ガキは単純でいいぜぇ……)」
「あのぉ、勇者様、こちらの方たちは?」
勇者「ああ、紹介しておきましょうか。どうせあとで有名になっちゃうんだし」
勇者「こちらの屈強な男性は、傭兵です。中々つよいんすよ」
戦士「うっふん。女はお断りよ。可愛い男にしか興味ないのぉ。ごめんねぇ」
「は、はぁ……」
勇者「で、こっちが妹です。可愛いでしょう?」
シスター「ど、どうも」
「確かに……。綺麗な人ですね……」
勇者「で、こいつがーー」
狼少女「娘だ」
勇者「そう娘……娘?」 



387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/27(日) 01:14:26.74 ID:bA453CjWo
「む、娘って……勇者様の……?」
勇者「いやいや、何をいってるんだ? ちがうだろー?」
狼少女「パパだろ?」
勇者「いや……」
狼少女「パパー」ギュッ
勇者「……」
「勇者様って子持ちだったんですね……」
「なーんだ……がっかりぃ……」
「奥さんいたんだー」
勇者「ちがう!! 娘なんかじゃ……!!!」
狼少女「パパぁ。あいしてるぅ」スリスリ
勇者「ほぉぉぉぉ……!!!!!」
狼少女「もう離さないからなぁー」スリスリ
シスター「(す、好きって……)」
戦士「(ラブじゃなくて、ライクのほうなのねぇ……)」 



388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/27(日) 01:23:19.68 ID:bA453CjWo
酒場
兵士長「ハーッハッハッハッハッハ!!!! そいつはとんだ大誤算だなぁ!! ハーッハッハッハッハッハ!!!!」
勇者「わらいごとじゃねえんすよぉ!!! せんぱぁい!!!これじゃあ俺……!!!」
兵士長「結婚は無理。つまり、国王にはなれねえなぁ」
勇者「ガァァアア……!!!」
兵士長「すっ……ぱぁー……。まぁ、まだわかんねえだろ。今はパパ扱いでも、一人の男としてみてくれるはずだ。そのうちな。諦めるなよ」
勇者「お、おれのモテ期が……瓦解していく……!!」
兵士長「おっかしいなぁ。てっきり、姫はお前に惚れてるとおもってたんだがなぁ」
狼少女「はむっ……はむっ……!!」
シスター「あの、ところでこの子が姫……女王になるという話は本当ですか?」
兵士長「王座が空席だと色々と面倒だからな。まぁ、姫にその気があればの話だが」
戦士「こんな獣っぽい子が女王様になれるわけぇ?」
兵士長「それは教育次第でどうにでもなるだろう。んで、薬のほうは大丈夫か?」
シスター「中和剤のほうは間もなく用意できるとのことです。それさえ飲めば、この町の人たちも凶暴化することはまずありません」
兵士長「あぁ。体の中の毒がぬけねえと、安心して嫁も抱けねえからなぁ。よかったぜ……」 



389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/27(日) 01:29:55.73 ID:bA453CjWo
勇者「……おい、お前」
狼少女「なんだ、パパ?」
勇者「どうする、これから?」
狼少女「お前、面倒みてくれるんだろ? 私はそれでいいぞ」
勇者「この国の姫になることになってもか?」
狼少女「姫にならないとお前が困るっていうなら、姫になる!」
勇者「本気か?」
狼少女「あい。そのかわり、お前が一緒にいるのが条件だ! これは譲らないからな!!!」
兵士長「パパ、だもんな」
狼少女「そうだ!! パパだ!!」
勇者「ぐっ……ぅぅう……!!!」
狼少女「パパ、どうした?」
勇者「うわぁぁぁぁぁぁあああ!!!! 俺はこんなガキからもモテねええのかよぉぉぉぉぉ!!!! うわぁぁぁあああ!!!!」
兵士長「ある意味、モテてるぞ。よかったな」
勇者「ぢぐじょぉぉぉぉ!!!! 女なんて……!!! 女なんてぇぇぇ……!!!! あぎゃぁあああああ!!!!!」



390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/27(日) 01:38:35.73 ID:bA453CjWo
数日後 傭兵所
受付嬢「今日の記事はっと……」ペラッ
受付嬢「魔女の裁判が近いうちに始まるみたいですねー」
戦士「そうなのぉー」
受付嬢「どうしたんですか? 元気ないですね。折角、大きな仕事がはいったっていうのに」
戦士「だってぇねぇ……」
受付嬢「怪我が完治するまでの間もお金払ってくれるっていうんですから、景気のいいはなしですよね」
戦士「それは嬉しいわよぉ? お城で働ける傭兵なんてあまりいないものぉ」
受付嬢「だったら……」
戦士「でもでもぉ。勇者様と一緒になれる時間がないなんて、やだやだぁ」
受付嬢「仕方ないじゃないですか。勇者様は今現在姫様の教育係なんですし」
戦士「つまんないわぁー。あたしもお姫様の教育係になりたぁーい」
受付嬢「姫様がおかしな道へ行ってしまいそうですね」
戦士「勇者様も勇者様よ。こんなに素敵な女がいるのに、会いにもこないんですもの。ぷんぷんっ!」
受付嬢「ここにいる傭兵は男性しかいないんですが……」 



391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/27(日) 01:49:58.17 ID:bA453CjWo
墓地
シスター「兄さんから聞きました。貴方は滅多に家には帰ってこず、半ばお嫁さんも子どもも放置していたと」
シスター「やはり、貴方は最低の父親です。私は貴方のことが大嫌いです」
シスター「でも、たまに帰ってきたときには貴方が息子に付きっ切りであったというのは驚きました」
シスター「息子が好きだったのか、それとも本当に愛したお嫁さんの子どもだから好きだったのか。それは分かりません」
シスター「それでも貴方が最後までここを、この町を、兄さんの待つ家を帰る場所にしていた。それが答えかもしれませんね」
シスター「そんな兄さんに私は妬いています。羨ましいと思っています。それもこれも全ては貴方の所為です」
シスター「兄さんのこと大好きなのに……。こんな気持ちにさせて……バカヤロー!!!!」ドガッ!!!
兵士長「過激だねぇ、墓を叩く修道女なんて聞いたことねえよ」
シスター「あ! こ、これは恥ずかしいところを……」
兵士長「ま、蹴りたくなるのも分かる。こいつはそれだけクズだったからな」
シスター「貴方も父になにか……?」
兵士長「こいつ、俺の嫁さん寝取ろうとしたんだぜ? 親友の妻をよく狙えるなって言ったら、親友の嫁だから抱けるんだよってぬかしてやがった。あぁー。腹立ってきた。俺も蹴っていい?」
シスター「ダメです! 叩いていいのは家族だけです!」
兵士長「ハハッ。それもそうだな。んじゃ、花だけ置いていくか」 



392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/27(日) 01:55:31.98 ID:bA453CjWo
宿舎
勇者「すかぁー……すかぁー……」
『勇者殿!! 勇者殿!!』
勇者「なんすかぁ……」
『姫様が中庭で待っています!! お急ぎください!!』
勇者「まだ6時じゃないっすかぁ……」
『お願いします!!!』
勇者「起きなかったっていってくださいっすぅ」
『おきろー!! がおー!!!』ガンガンッ
『姫様!! そういう行為はお控えください!! お体にも障りますから!!』
『おーきーろ! おーきーろ!!』
勇者「あぁあああ!!! 起きたよ!!!! 今すぐ行くからまってろぉぉぉ!!!」
『あいっ』
『勇者殿……』
勇者「勇者なんだぞぉ……はぁぁぁ……この国を救った英雄なんだぞぉ……なのになんでまだ彼女ができねえんだぁ……? おかしくねえ……」 



393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/27(日) 02:00:09.14 ID:bA453CjWo
中庭
姫「遅いぞ。姫を待たせるとは何事だ」
勇者「見栄えだけよくなっても、やっぱりダメだな」
姫「まずは形からだろ? 恋愛マニュアルにも載ってたぞ!」
勇者「それとこれとを一緒にするなよ」
姫「さぁ、早く投げろ! 朝の運動だ!!」
勇者「勉強もしろよ」
姫「あいっ!」
勇者「ちがうだろ」
姫「あぅ……。はい! わかりましたわ!」
勇者「そうそう。ほーら」ポーイッ
姫「がうー!!」タタタタッ
勇者「全く……。まぁ、まだ数日だしなぁ……」
狼「ガァァァウ!!」タタタタッ
姫「おぉう!? 邪魔するなー!! これは私のだぞー!! あー!! くわえるなぁー!!」 



395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/27(日) 02:05:59.85 ID:bA453CjWo
狼「ガルルル……!!」
姫「ガルルル……!!」
勇者「大丈夫か……この先……」
兵士長「今日も姫様は元気いっぱいだなぁ」
勇者「あれじゃあ、治療も長引きそうっすね」
兵士長「心配ないんだろ? そのうち、初潮もあるだろ」
勇者「……」
兵士長「姫に振られたの、まだ気にしてるのか?」
勇者「そうっすねぇ……」
狼「ガァァウ!!」
姫「まてー!!」
勇者「今、幸せそうにしてるから、いいっす」
兵士長「そうか。……魔女と陛下のことは俺に任せろ。姫には関係ねえことだ。もう姫の親はお前だしな」
勇者「それ、言わないでくださいよ……」
兵士長「まぁまぁ。姫も成長すりゃあお前に惚れるって。だから、見張っておけよ。他の男にとられないようにな。勇者様っ」 



396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/27(日) 02:11:51.91 ID:bA453CjWo
姫「とってきたー!!」
勇者「よし、姫。そろそろ朝食の時間だ」
姫「ナイフとフォーク使うのか?」
勇者「いつまでもスプーンだけじゃダメだろ?」
姫「むぅー……がんばればスプーンだけで食べられるぞ!」
勇者「そういう問題じゃないんだよ」
姫「……わかったぁ」
勇者「違うだろぉ?」
姫「わかりましたわ!」
勇者「それでいい」
狼「クゥーン……」
勇者「お前も、他のやつらみたいに森へ帰ったらどうだ? 中々一緒に遊べないし、寂しいだろ?」
狼「ガウッ!!」
姫「あいつは私とお前の傍にいたいんだ!」
勇者「ふぅん。ま、番犬にはなるからいいけどな」 



397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/27(日) 02:16:13.98 ID:bA453CjWo
シスター「兄さん。おはよう」
勇者「うぃーっす」
姫「おはようございます」
シスター「おはようございます、姫様」
勇者「今日はどうしたんだ?」
シスター「どうって、兄さんの部屋の片付けをしようとおもって。まだ片付いてないんでしょう?」
勇者「めちゃくちゃにされたからなぁ。もうどうでもよくなってて」
シスター「不衛生、不潔よ。私が掃除してあげる」
勇者「……」
シスター「見られて困るものでもあるの?」
勇者「……多分、ない」
シスター「よかった。それじゃ、またあとでね」
勇者「はいよぉ」
姫「ガルルル……!!」
勇者「何唸ってやがりますか、姫様?」 



398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/27(日) 02:24:58.92 ID:bA453CjWo
姫「私もお前の身の回りの世話したほうがいいか?」
勇者「俺が姫様の身の回りの世話をするんだが」
姫「そうか! 流石はゆーしゃだな! かんしんだ!!」
勇者「俺はこんなことするために勇者になったんじゃ……」
姫「何度も聞いた!! モテるためだろ? なら、もういいはずだ!!」
勇者「なんで?」
姫「私にモテてるからな!」
勇者「いや、俺はお前みたいな……」
姫「清楚で可憐で守ってあげたくなるような美人になってやるから!!」ギュッ
勇者「(でも、嫁にはなってくれるかわかんねえんだもんなぁ……)」
姫「えへへー」スリスリ
勇者「(こいつ教育係なんてしているかぎり、ナンパもいけねえよぉ……!!!)」
勇者「このままじゃ俺!!! 一生童貞じゃねええかぁぁぁ!!!! うわぁぁぁあ!!!!」
姫「うわぁぁー」
勇者「真似すんなぁ!!! 責任とれ!!! 責任!!! 可愛い嫁さんでも紹介してくれよぉぉぉぉ!!!」 



400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/27(日) 02:39:23.16 ID:bA453CjWo
宿舎 勇者の部屋
シスター「ふぅ……。やっと綺麗になった」
シスター「あら、この本……恋愛マニュアル……? 兄さんがいつも見てるっていう……」ペラッ
シスター「へぇー……。あ、男性を落とすテクニックまで……。私もこういうの読んだほうがいいのかなぁ……」
シスター「ん? このページ、端が少し折れてる。何か書いてるのかな……?」
シスター「ええと、年上の男性を落とす方法……。 パパと呼んであげることで……年上の男性は胸をうたれ……」
シスター「……」
勇者「おーい」
シスター「あ、兄さん。お疲れ様」
勇者「ホント、お疲れだよ。随分、片付いたなぁ。ありがとう」
シスター「ううん。いいの。姫様は?」
勇者「今はお昼寝中だ。ほーんと、気楽なもんだよなぁ。こっちはナンパを我慢してるっていうのに。これじゃあ、結婚どころか彼女もできねーよ!! 俺、勇者なのに!!!」
シスター「ふふ……。兄さんは、とってもモテてると思うけどなー」
勇者「はぁー? 誰に? もしかして酒場のバニーちゃん!? なんか言ってた!?」
シスター「秘密。でも、もう少し勇者様でいれば、きっと理想のお姫様が兄さんの前に現れると思うよ?」
勇者「絶対だな!? おーし!! なら、もう少し勇者でいるかぁ!! 女の子にモテるなら!! 早くこーい!!! 俺の嫁ぇぇぇ!!!!」
END