1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 15:11:06.44 ID:nfVCKxWoo
城下町
勇者「……そこの幾億の星よりも美しく輝く彼女。今日という出会いを祝福しましょうか」
女性「はい?」
勇者「俺とお茶しませんか。いい店、知ってるんですよ」
女性「いえ、結構です」
勇者「いいんですか? こんなチャンス、滅多にないですよ?」
女性「ど、どういう意味ですか?」
勇者「俺、勇者なんですよ」
女性「はぁ?」
勇者「さ、行きましょう。損はさせませんから」グイッ
女性「ちょ……」
勇者「少し話せば俺が如何に凄い男かってことがよくわかーー」
男性「……よぉ、あんちゃん。オレの女になにかようか?」ポキポキ
女性「あ! た、たすけて! この人が無理やり……」
2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 15:17:18.11 ID:nfVCKxWoo
路地裏
勇者「う……っ……」
男性「けっ。他人様の女に手を出すとか、最低だな」
女性「行きましょう」
男性「そうだな。……あばよ」
勇者「おう……」
勇者「いてぇ……口切ったな……」
勇者「はぁ……勇者って女にモテるんじゃないのかよぉ……」
犬「クゥーン」
勇者「んだよ。どっかいけよ」
犬「クゥーン」ペロペロ
勇者「犬畜生に優しくなんてされたくねえっての」
兵士長「ーーよっ。なにしてんだ、こんなところで」
勇者「あ、先輩。うーっす。ちょっとここで息抜きしてたんっすよ」
兵士長「ハハっ。どーせ女のケツおっかけて、野良犬に慰めてもらってたんだろ。お前らしくていいな」 



3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 15:22:44.77 ID:nfVCKxWoo
犬「クゥーン」
勇者「あー、どっかいけ。しっしっ」
犬「……」
勇者「なんだよ、腹でも減ってんのか。ほら、これやるから、どっかいけ」
犬「ワンッ」パクッ
勇者「それ食ったら、飢え死にしろよー」
犬「……」タタタッ
勇者「お礼もいわねえのか。なんて犬だ」
兵士長「よかったなぁ。ありゃ、雌犬だぜ。いい彼女できたじゃねえか」
勇者「やめてくださいよ。で、なんです?」
兵士長「お前が勇者になって初めての仕事だ」
勇者「マジっすか」
兵士長「陛下が直々に仕事を言い渡してくれる。さっさと行くぞ」
勇者「うぃーっす」
兵士長「その前に服についてるゴミは落としていけよ」 



4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 15:32:09.42 ID:nfVCKxWoo
城内 謁見の間
王「来たか」
勇者「お待たせして申し訳ありません、陛下」
王「よい。早速だが勇者であるお前に頼みたいことがある」
勇者「はっ」
王「ここより東に小さな村がある。お前にはそこへ出向いてもらいたい」
勇者「分かりました」
衛兵「そこで奇怪な事件が起こっているらしい。ここからも近い場所で起こっていることゆえ、早急な調査が必要だと判断された」
勇者「事件ですか」
王「うむ。なんでも家畜が凶暴化し、村人を連日のように襲っているようだ。怪我人も多数でていると報告を受けている」
勇者「なるほど」
王「頼むぞ」
勇者「はっ。お任せください」
王「ああ、それと勇者よ。この者の情報が入ればすぐに知らせてくれ。どんなに些細なことでも構わん」ペラッ
勇者「(手配書か……。何度か見たことあるな……)」 



5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 15:40:21.83 ID:nfVCKxWoo
通路
兵士長「よぉ。今日から正式に勇者様だな」
勇者「先輩。いいんすか、こんなところでサボってて」
兵士長「勇者に任命された途端、ナンパに努めてたお前に言われたくないね」
勇者「東の村で起こってる事件について調査してこいっていわれたっすよ」
兵士長「そうか。ま、ガンバレよ。勇者さまぁ」
勇者「しっかし、誰か一人くらい旅の仲間とか用意してくれないんすかね? 俺、寂しいっすよ」
兵士長「アホか。なんでもできる男。それが勇者だろうが。甘えるな」
勇者「でもでもぉ。先輩だって、今の嫁さんは昔の仲間なんでしょ? 不公平極まりないっすよぉ」
兵士長「ありゃぁ、たまたま運が良かっただけだよ」
勇者「ちょー美人だし、毎晩よろしくなってんでしょぉ? マジ、たまんねえっすよ」
兵士長「オマエな。俺の妻で変な想像するんじゃねえよ」
勇者「いいじゃないっすかぁ!!! 変な想像ぐらいさせてくれてもぉ!!! 俺!! 先輩にモテるから勇者になれっていわれて……勇者になったのに……」
兵士長「お、おい」
勇者「いっぱいがんばったのにぃ……ぜんぜん、モテないっすもん……ぐすっ……モテてぇ……モテてぇっすよ……。先輩みたいに美人な彼女ほしぃっす……」 



6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 15:50:34.60 ID:nfVCKxWoo
兵士長「あー。わぁーったよぉ。それじゃあ……」
勇者「誰か紹介してくれるっすか!?」
兵士長「ウチの娘はどうだ? いいぞー、旅のお供にはもってこいの体をしてる」
勇者「……先輩の娘さんって、下手な男よりも男じゃないっすか」
兵士長「はぁ……。そうなんだよなぁ。並大抵の男じゃ歯がたたねえ……。いや、お前な俺の娘になんてこというんだ」
勇者「しかも顔は先輩にそっくりだし。ダメっすよ。デートしてても先輩の顔ばっかりが浮かんできそうで」
兵士長「まぁ、俺もお前みたいな軟派な野郎に愛娘を預けるわけにはいかねえな。お前が殺されるかもしれねえし」
勇者「なんか、こういないっすか!? 守ってあげたくなるような清楚で可憐な女の子!!」
兵士長「教会にいるシスターでも連れてけよ」
勇者「……それ、いいっすね。毎晩、毛布の中で体が穢れていくことに懺悔しちゃうわけっすね」
兵士長「冗談はさておきだ」ゴソゴソ
勇者「冗談っすか?」
兵士長「ここに言って来い。お前好みの女戦士がいるかはわからんがな」
勇者「傭兵所っすか……。筋肉ムキムキの屈強なマッチョガールしかいないんじゃ……」
兵士長「つべこべ言うな。仲間を見つけたらさっさと出発しろよ。あまりにモタモタしてると勇者の称号が剥奪されるからな」 



7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 15:58:04.92 ID:nfVCKxWoo
傭兵所
勇者「……すみません」
受付嬢「はい。いらっしゃいませ」
勇者「君をテイクアウトできますか?」
受付嬢「傭兵以外できません」
勇者「そんなこといわず」
受付嬢「どのような用件でしょうか? 冷やかしなら出て行ってくださいね」
勇者「……ええと、俺、一応勇者なんっすけど」
受付嬢「まぁ……。証明できるものは?」
勇者「えーと……。これっす」ペラッ
受付嬢「確かに……。国王陛下の勅命状……」
勇者「お……。ーーでは、君と永遠の愛を目指す旅に行きたいのですが」キリッ
受付嬢「勇者様であればどのような傭兵でも喜んでついていくと思いますよ。よかったですね」
勇者「では、君もそうなんですね? なるほど。これも運命ですよ。さぁ、俺と旅立ちましょう」
受付嬢「ええと……。ここでもっとも実績のある傭兵は……このかたですけど、会ってみますか?」 



8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 16:06:40.40 ID:nfVCKxWoo
勇者「おっさんじゃないっすか。……あの、女性はいないっすか? 美人でセクシーな女戦士所望」
受付嬢「女性ですか……。ええと……」ペラッ
勇者「やっぱり、旅になるなら女の子のほうがいいじゃないっすか」
「あたしでよければ、ご一緒させてくれない?」
受付嬢「え……」
勇者「む!? お姉様の気配ーー」バッ!!
戦士「あらぁ。素敵な坊やじゃない。ふふ、可愛い。あたし、これでも結構強いのよ。よろしくね」
勇者「……」
受付嬢「この方にしますか?」
勇者「い、いや、女性がいいんすけど」
受付嬢「でも、性別が女性である傭兵は登録されておりませんで……」
戦士「ちょうど仕事が終わったばかりで疲れてるけどぉ……うふふ……。坊やのためならなんでもして、あ、げ、るんっ」
勇者「……いえ。俺、勇者なんで一人で大丈夫です。それでは」
戦士「え!? ゆ、勇者様ぁ!?きゃぁー!! それなら是非とも力になりたいわぁん!! つれていってぇん!!」
勇者「申し訳ありません。間に合ってます。失礼しました」テテテッ 



9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 16:11:11.66 ID:nfVCKxWoo
城下町
勇者「……一人で行くか」
女性「……」
勇者「あ、そこの美しい人」
女性「はい?」
勇者「俺とちょっとスリリングな旅をしませんか。あー、貴女に傷ひとつつけません。絶対に守ってみせまーー」
男性「ごめん、待った?」
女性「ううん。今来たところ」
男性「よかった。それじゃ、いこっか」
女性「うん」ギュッ
勇者「……」
勇者「やっぱり一人で行くか……」
猫「にゃぁ……」
勇者「猫畜生の慰めはいらねえよ。しっしっ」
猫「なぁー……」 



10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 16:17:50.81 ID:nfVCKxWoo
墓地
勇者「母さん。俺、勇者になったのに全然モテないんだ。この世の女の目は節穴だな。そう思うだろ?」
勇者「親父からもなんとか言ってくれよ。勇者って王国一の兵士ってことなのにさぁ、モテないとかありえなくねぇ?」
勇者「……」
勇者「虚しい。なにやってんだ、俺」
勇者「さ、いこ」
シスター「うーんしょ……」ヨロヨロ
勇者「む。ヘイヘイ」
シスター「え?」
勇者「水を運んでるのか。これは重そうだね。俺が持ってあげるよ」
シスター「いえ。これは私の仕事ですので。見ず知らずの人にさせてしまうと神父様に怒られてしまいますので」
勇者「固いこといわずに。俺の優しさに甘えればいいじゃないか」
シスター「結構です!」
勇者「……そ、そう?」
シスター「はい」 



11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 16:26:20.13 ID:nfVCKxWoo
城下町
勇者「しけた町だぜぇ!!! ペッ!!」
門兵「おい。お前は勇者なんだからそういうことをいうな」
勇者「うるせぇ!!! 俺は勇者なんだぞぉ!!!」
門兵「……泣いてるのか? 相談ぐらいなら聞いてやれるが」
勇者「同情なんていらねーっす!!!! ばかぁー!!!」ダダダッ
門兵「……勇者って辛いのかなぁ」
勇者「(くそぉ!! こんな町なんざさっさと見切りをつけてやるぅ!!)」
勇者「……まてよ」
勇者「(そうだ。十数年間、手応えのかけらもなかったこんな町は捨て置いていいよなぁ)」
勇者「ふっふっふっふ。そうだ。世界は広い!!! こんなチンケな町で最愛の人を求めたのがいけなかったんだ!!!」
門兵「おい。聞こえてるぞ。この町を貶すな」
勇者「さぁ、大いなる一歩を今こそ踏み出そうじゃないか!!!」
勇者「まだ見ぬ、マイスウィートハニーを求めて!! うぇっへっへっへっへ」
門兵「……あいつ、モテないんだろうなぁ」 



13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 16:33:26.69 ID:nfVCKxWoo
東の村
勇者「……ここか。ここに俺の伴侶が」
農夫「だ、誰だ、あんた……」
勇者「国王陛下の勅命を受け、馳せ参じた者です」
農夫「おぉ……。つ、ついに国王様が……!! で、では、もしかして……あなたは……」
勇者「勇者です」
農夫「おぉぉ!! で、では、こちらに!!! 村長に是非あってください!!」
勇者「分かりました」
農夫「おぉーい!!! 勇者様だ!! 勇者様がきてくださったぞー!!!」
「ほんとかぁ?」
「おぉ、ありがたや、ありがたや」
勇者「……」
農夫「な、なにか?」
勇者「ご高齢のかたばかりですね」
農夫「はい。若い者は殆ど大きな町へ行ってしまって……。この有様です」 



14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 16:42:06.98 ID:nfVCKxWoo
村長の家
村長「おぉ……こんな辺鄙な村まで勇者様に来ていただけるとは……。国王様に感謝しなければ……」
農夫「全くです。もう足を向けて眠れねえ」
勇者「……」
勇者「(女の匂いがひとっつもしねぇ!!)」
村長「あの、よろしいでしょうか?」
勇者「あ、はい。なんでも家畜が凶暴化しているとか……」
村長「そうなんです……。数週間前、牛や馬が急に大暴れをしましてなぁ……。村の人間も大怪我をしてしまい、仕事もままならない状態で……」
勇者「今の状態は?」
村長「それが人間を見るととても興奮するようで……」
勇者「つまり、人間が近づかなければ大人しいと?」
村長「はい。そうなのです。ですが……」
勇者「家畜に近づけないのは農村として致命的ですね」
村長「獣医も匙を投げてしまっていまして。凶暴化した原因も分からぬままなのです……。勇者様、お願いします。力を貸してください」
勇者「獣医も匙を投げたのですか。それはまいった。その他の手を考えてなかったのに……」 



15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 16:48:51.52 ID:nfVCKxWoo
村長「えぇ……?」
勇者「てっきり病気の類だろうと高をくくっていたものですが」
農夫「勇者様。獣医も近づけないんですよ。なので病気かどうかも……」
勇者「なるほど。では、家畜を一匹捕まえて獣医に診せれば解決と」
村長「お、おそらくは……」
勇者「分かりました。俺に任せてください」
農夫「おぉ!! 流石勇者様!!」
村長「お願いできますか」
勇者「これでも城下町の種馬と呼ばれているんでね。馬や牛の扱いならお手のものです」
農夫「ほほぉ。勇者様ともなると女性も放ってはおかないでしょうねぇ」
村長「ああ。このような精悍な人だ。様々な女性に好意を寄せられているのだろう」
勇者「案内してもらえますか?」
農夫「ええ、ええ。勿論です。私が案内させてもらいます」
村長「お願いします。勇者様」
勇者「はい」 



16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 16:52:38.07 ID:nfVCKxWoo
馬小屋
農夫「これが小屋の鍵です」
勇者「はい」
農夫「気をつけてください。あの小屋には今現在9頭の馬が……」
勇者「問題ないですよ。勇者に任せてください」
農夫「は、はい!!」
勇者「馬なんぞ、勇者の敵ではない」
農夫「すばらしい……」
勇者「……」
勇者「(女の子がいないんじゃ、やる気おきねーなぁ……)」ガチャ
勇者「さて、どいつを生け捕りにしてやろうかーー」
馬「……」ザッザッザッ
勇者「……おや?」
馬「ーーヒヒーン!!!!!」ドドドドドッ!!!!!
勇者「なぁぁ!?」 



17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 16:59:21.39 ID:nfVCKxWoo
村長の家
勇者「ぐ……いてぇ……」
農夫「大丈夫ですか?」
勇者「大丈夫じゃねぇっすよ!!! みてわかんないっすかぁ!?」
農夫「す、すみません」
村長「勇者様でもダメか……」
勇者「あんなでかい馬なんて聞いてないっすよぉ!!! もっと、こう、ポニーみたいな可愛いやつかと!!!」
農夫「色々と運ぶものも多いですから、できるだけ大きい馬じゃないとダメなんでよ」
勇者「あぁー!! ちょーいてぇー!!! アバラ全部いっちゃったなぁー!!! コレぇ!!!」
村長「馬はどうなった?」
農夫「俺たちが離れたら自分から小屋の中へ戻りましたよ。隙を見て、鍵もかけておきました」
村長「そうかぁ……。あの、勇者様……」
勇者「なんすかぁ?」
村長「もう一度……お願いできますか……?」
勇者「あんなの無理っす!! もう自由にさせればいいんじゃないっすか!? 自然に帰りたがってるだけっすよ!! 人間のエゴが招いた悲劇っすね!! 間違いない!!!」 



18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 17:05:36.22 ID:nfVCKxWoo
村長「うむぅ……。幾ら勇者様でもあやつには勝てんか……」
農夫「あんなに大人しかったのに……どうしたんでしょうねぇ……」
勇者「家畜扱いされるのに嫌気がさしたんすよ」
村長「むぅ……」
村娘「おじいちゃん」
村長「おお。どうした?」
村娘「勇者様が怪我をしたってきいて……」
勇者「……!」
村長「あぁ、そうなんだ」
村娘「あの、勇者様、大丈夫ですか?」
勇者「ええ。この通り、ピンピンしてます」
村娘「よかったぁ……。厚かましいことは重々承知していますが、勇者様、もう一度……その……」
村長「これこれ。勇者様はもう……」
勇者「顔をあげてください。必ず、貴女のためにこの村を救ってみせますよ」キリッ
村娘「勇者様っ! あ、ありがとうございます!!」 



19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 17:11:46.10 ID:nfVCKxWoo
農夫「いいんですか!?」
勇者「は? 良いも何も弱き者を救済してこその勇者。勇者の称号は伊達じゃないんですよ」
村娘「素敵ですぅ」
勇者「ところで」
村娘「は、はい」
勇者「この問題を無事に解決できたら、俺と一緒に食事でもどうですか?」
村娘「え? は、はい。よろこんで」
勇者「ふふふふ……はははは……フフハハハハハ!!!!」
村娘「な、なにか?」
勇者「村長さん、いえ、お爺様!!!」
村長「は、はい?」
勇者「1日だけ時間をください。必ずや、この村の危機を救います」
村長「勇者様……!!!」
村娘「よろしくおねがいします!!」
勇者「ふっ。君の美しさに乾杯」 



22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 17:16:28.61 ID:nfVCKxWoo
馬小屋
勇者「……」
勇者「(まさか、村長にあんなに可愛い孫がいるなんてなぁ……。これはやるっきゃねえ……)」
勇者「(田舎っ娘は惚れやすいって恋愛マニュアルに書いてたし、ここで俺がカッコイイところを見せれば……)」
勇者『ーーこれでこの村も救われた』
村娘『勇者様……』
勇者『結婚しよう』
村娘『だいてっ!』
勇者「……よしっ。いける! いけるぞ、これはぁ!!!」
勇者「ハーッハッハッハッハ!!! もらったぁ!!!! これはいける!!! いけるぞぉ!!!!」
勇者「でぇっへっへっへっへっへ……」
村長「どうやら妙案が浮かんだようだな」
農夫「頼もしいですなぁ……」
村娘「勇者様、がんばってください!」



25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 17:25:37.57 ID:nfVCKxWoo
勇者「うし。さっさとケリつけてハネムーンといこうじゃねえか」
勇者「いくぜぇ!!!」ガチャ
馬「……」ザッザッザッ
勇者「ふふん。馬畜生。さっきの俺とは思わないことだ」
馬「……」ザッザッザッ
勇者「今の俺には勝利の女神がついてんだからなぁ」
馬「……」ブルルッ
勇者「てめぇを生け捕りにしてお医者さんに診せる!!! んで、注射とかされて無様に嘶け!!!」
馬「……」
勇者「家畜風情が人間様に勝てると思うなよ!!!」
馬「ーーヒヒーン!!!!」ドドドドドドッ!!!!
勇者「ハッハー!!! 突進しかできねえのかよぉ!! 所詮は馬畜生だな!!!」
「ヒヒーン!!!!」
「ヒヒーン!!!!!」
勇者「おいおい!! 男ならタイマンだろ!? 全員とか卑怯じゃねぇ!?」 



26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 17:30:56.81 ID:nfVCKxWoo
村長「あ、危ない!!!」
村娘「勇者さまー!!!」
馬「ヒヒーン!!!!」ドドドドドドッ!!!!
勇者「あっぶねぇ!!!」バッ!!!
勇者「ーーにゃろぉ……!! いい加減に……!!!」
「ヒヒーン!!!!」ドガッ!!!
勇者「いってぇ!?」
勇者「いたいっす!!! 背骨が……!! 背骨蹴られた!!!」
農夫「ダメだ……」
村長「多勢に無勢か……」
村娘「そ、そんな……勇者さまぁ……」
馬「ヒヒーン!!!」ガブッ!!!
勇者「いってぇー!!! それはダメ!!! 噛み付くなら人参っす!!! 人参!!!」
馬「ヒヒーン!!!」ドガッ!!!! 



27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 17:38:10.44 ID:nfVCKxWoo
馬「……」ザッザッザッ
勇者「ぐっ……勇者に任命されて、初仕事がこれか……。全く、割りにあわねえっす……」
馬「……」ブルルッ
勇者「(ここで死ぬのか……。人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られろなんていうけど……馬が邪魔するんじゃなぁ……)」
村娘「勇者様!!! もういいです!!」タタタッ
勇者「え……?」
村長「行くな!! 危ないぞ!!」
村娘「勇者様!! お戻りになってーー」
馬「ヒヒーン!!!!!」ドドドドドドッ
村娘「うそ……」
村長「あぁぁぁ!!! にげろぉー!!!!」
農夫「あぶねえ!!!」
馬「ヒヒーン!!!!」ドドドドドッ!!!!!
村娘「うっ……」
勇者「ーーさせねぇっす!!!! その子に手をだすなぁぁぁ!!!!」バッ!!! 



28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 17:42:53.16 ID:nfVCKxWoo
馬「……!!」
勇者「あばれんじゃねぇっすぅ!!!!」グイッ!!!!
村娘「う、うそ……」
農夫「す、すげぇ……。飛び乗った……」
村長「い、今のうちだ!! こっちにこい!!」
村娘「う、うん!!」
馬「ヒヒーン!!!!」
勇者「おぉ!? この野郎!!! 大人しくしやがれぇ……!!!」グググッ
馬「……!!」
「ヒヒヒーン!!!!」ドドドドッ
勇者「なんだぁ!? やんのかぁ!?」
馬「ヒヒーン!!!!」ドドドドドッ!!!!!
勇者「おぉお!? とまれぇぇ……!!! とまってぇぇ……!!!」ギュゥゥゥ
農夫「手綱もなしに乗りこなすなんて……」
村娘「流石は勇者様……。でも、あのままだと村の外へ出て行ってしまう……」 



29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 17:51:33.18 ID:nfVCKxWoo
草原
馬「ヒヒーン!!!!」ドドドドドッ!!!!
勇者「どこまでいく気だぁ……もうおろしてぇ……」ギュゥゥ
馬「ヒヒーン!!!!」
勇者「この……もうかんべんして……!!!」
馬「ヒヒーン!!!!」
ガッ!
勇者「え……!?」
馬「ヒッ……」ズサァァ!!!
勇者「うわぁああ!!!!」ズサァァァ
勇者「なんすかぁ!!! 降ろせっていったけどこんな乱暴な……!!!」
馬「バヒ……」
勇者「ふん。まぁ、いいか。大人しくなったし。これで獣医に診せれば完璧だな」
馬「……」ヨロッ
勇者「……なんだ? どっか痛めたのか?」 



30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 17:56:28.65 ID:nfVCKxWoo
馬「……」ガクッ
勇者「……」
勇者「(足をやってるみたいだな……)」
馬「ヒヒーン……」
勇者「ハッハー!! 馬畜生め!! 天罰だ、バーカ!! バーカ!! ワハハハ」
馬「……」ヨロッ
勇者「さてと、獣医を呼んでくるか。いいか。ここで大人しく待ってろよ」
馬「……」ガクッ
勇者「いやー、俺の嫁も決まったも同然だなぁ。愉快愉快!」
馬「……」
勇者「婚前交渉ぐらいは別にいいよな……にゅふふふ……」
「グルルルル……」
勇者「……!」
狼「グルルルル……」
勇者「なんだよぉ……。馬の次は狼かぁ? もう獣はいいよ」 



31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 18:02:48.55 ID:nfVCKxWoo
村長の家
村長「……あれから随分と経つな」
農夫「な、なにかあったんでしょうか」
村娘「おじいちゃん。探しにいったほうがいいよ」
村長「……」
農夫「そうだ!! もしかしたら勇者様はあいつを捕らえてくれてるかもしれませんし」
村娘「怪我をして動けないのかも!! もしそうなら!!」
村長「うむ……。そうだな。我々だけが座視しているわけにもいかんか」
農夫「そうです!! 探しにいきましょう!!」
村長「……村の者をできるだけ集めてくれるか?」
村娘「う、うん!!」
「その必要はねえ!!」
農夫「お、お前たち……」
「みんなで勇者様を探しに行こう!!」
村長「くれぐれも気をつけろ。外には野生の狼もいるからな」 



32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 18:06:48.29 ID:nfVCKxWoo
草原
農夫「勇者さまー!!」
村娘「勇者さまぁー!!! どこですかー!!!」
「本当にこっちにきたのか?」
「それは間違いねえよ!! 俺、見てたし!!」
「でもよぉ……」
農夫「お、おい!! 向こうだ!! 向こうにいるぞ!!!」
村娘「え!? 勇者様!?」
馬「……」ペロペロ
勇者「やめろぉ……くせぇ舌で……なめんなぁ……」
村娘「ゆ、勇者様……!?」
農夫「な、なんですか……その怪我……!?」
勇者「あぁ……? ちょっと落馬して……」
村娘「落馬でそんな傷……」
勇者「とりあえず……運んでくれるっすか……もう死にそうなんで……マジで……」 



33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 18:12:29.75 ID:nfVCKxWoo
村娘「た、立てますか?」
勇者「はっはっはっは。いやぁー。ちょっと無理なんで、貴女の手を貸してもらえれば嬉しいです。はい」
村娘「では」
勇者「うぅーん……あたたかい……」ギュッ
村娘「え……と……」
勇者「これが女の子の温もりかぁ……でへへへへ……」スリスリ
村娘「勇者様……あの……」
農夫「勇者様は運ぶとして、こいつはどうする……?」
馬「……」
「足、怪我してるなぁ……」
「こいつは何かに乗せないと無理だな……」
農夫「……ここに置いておくか」
「それがいい。病気にかかってるやつだしなぁ……。このまま狼のエサにさせたほうが……」
勇者「ちょっと……。そりゃ、ないっすよ……」
農夫「しかし、勇者様。もうこいつは足をやられてますし……」 

34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 18:19:17.87 ID:nfVCKxWoo
勇者「折角、俺が命がけで生け捕りにしたのに……!! ここに放っていくなんて!!! あんまりっす!!!」
農夫「ですが、運ぶ方法がありません。村の家畜たちは凶暴化しているし……」
勇者「ダメ!! 絶対に連れてかえる!!!」
村娘「勇者様……」
勇者「(じゃないとまた暴れ馬を捕まえなきゃならねーじゃん!!! そんなことあってたまるかぁ!!!!)」
農夫「どうやって運ぶのですか?」
勇者「国王陛下に頼んで馬車かなんか用意してもらえばいいっすよ。俺が直筆の手紙書くんで」
農夫「それを届けるのはいいのですが……。その間、こいつは……」
馬「……」
勇者「ここに置いておくしかないんじゃないっすかね」
「狼に狙われちゃいますよ」
「そうですよぉ」
勇者「あぁぁあ!!! うっせぇなぁ!!! じゃあ、俺が残るっす!!! それでいいっすね!? ついでに獣医もつれてきて!!!」
農夫「ゆ、勇者様……」
勇者「この馬は俺が守る!! それで解決!!! さっさと国王陛下のところに行ってきてくださいっす!!!」  



35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 18:24:46.48 ID:nfVCKxWoo
勇者「うぅ……」ヨロッ
村娘「勇者様、そのような怪我では……!!」
勇者「ふっ。貴女に触れたことで血もとまりました。これも愛のなせることですよ」
村娘「はぁ……」
農夫「勇者様、いいのですか? それではあなたの治療も遅れてしまうことに……」
勇者「ちょっと待ってくださいっす。今、手紙かくんで……。あ、紙あります?」
「あぁ、えっと……えっと……白い布なら……」
勇者「それでいいっす」
「しかし、書くものが」
勇者「我が血で書く」キリッ
「か、かっこよすぎる……!!」
勇者「ふんふーん」カキカキ
勇者「……」チラッ
村娘「……」
勇者「(参ったなぁ……この子、完全にラブってんじゃん……うひょー!!!)」 



36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 18:29:14.86 ID:nfVCKxWoo
農夫「では、傷薬と包帯は置いていきます」
勇者「うぃーっす」
農夫「ほ、本当にいいんですね?」
勇者「しつこい」
農夫「わ、分かりました。では、待っていてください」
勇者「お願いします」
勇者「ふぃー……」
馬「……」
勇者「……なんだぁ、馬畜生め。てめぇのおかげでこっちは死にかけてんだぞぉ。わかってんのかぁ?」
馬「……」
勇者「ふんっ」
馬「……」ペロペロ
勇者「やめろって。口くせーんだよ。歯ぐらい磨け」ググッ
村娘「あ、あの……勇者様……。傷の手当てをさせてください」
勇者「(お。キタキタ。お約束だな……)」 



37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 18:36:58.34 ID:nfVCKxWoo
村娘「包帯、きつくないですか?」
勇者「この胸の苦しみに比べれば、どうってことないです」
村娘「胸にも傷が……!?」
勇者「いえ、心の病です」
村娘「そ、そうですか」
勇者「ありがとうございます。それより貴女も戻ったほうがいい。ここは狼が出ますから」
村娘「わかっています。勇者様、この子を助けてくれてありがとうございます」
勇者「え?」
村娘「実は……。私にとってこの子は、とても大事な馬なんです……。ううん、私にとっては家族も同然なんです」
馬「……」
勇者「そうでしたか」
村娘「本当は殺処分も検討されていました。このまま解決できないなら……全ての家畜は殺してしまおうって……」
勇者「普通はそうするでしょね」
村娘「そんなこと……私は許せなかったんです……。だから、最後のチャンスをおじいちゃんにお願いしたんです」
勇者「それで国王陛下へ陳情を……」 



38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 18:42:59.22 ID:nfVCKxWoo
村娘「勇者様。本当に、本当にありがとうございます」
勇者「お礼なんて必要ないですよ」
村娘「そ、そんな!! 寧ろこんな言葉だけでは……!!」
勇者「いいんですよ。貴女の大切なものを守ることができた。それだけで、俺は十分です」
村娘「ゆ、勇者様……」
勇者「俺からもお礼を言いたい」
村娘「え?」
勇者「貴女を守らせてくれて、ありがとう」
村娘「な……なにを……そんな……」モジモジ
勇者「……」
勇者「(決まった……。決まりすぎてヤバい……。というか、これ……)」
村娘「そ、そんなこと……私が感謝しなければいけないのに……私……私……」
勇者「(キスできるんじゃねえ……!? いや!! この雰囲気なら……!!!!)」
村娘「勇者、様……?」
勇者「……」 



39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 18:51:05.52 ID:nfVCKxWoo
勇者『ふっ。申し訳ない。貴女の美しさに少し立ちくらみが……』
村娘『も、もう……からかわないでください……』
勇者『からかってなんかいません。俺は、本心しか口にしない男なんで』
村娘『ゆ、勇者様……』
勇者『……いいかい?』
村娘『ダ、ダメ……。わ、私、初めてなんです……。なのに……こんな外でなんて……』
勇者『はははは。外だから開放的になれるんじゃないですか。バカだなぁ』
村娘『勇者様……わ、わかりました……でも……あの……』
勇者『なんだい?』
村娘『や、やさしく……してください……ね?』
勇者『そんなの……無理にきまってるだろぉ!!!! でひゃっひゃひゃひゃひゃ!!!!』ガバッ!!!!
村娘『あっ……そんな……いきなり……あんっ、やめて……』
勇者『そんなこといいながら、こっちは体は嫌がってませんがぁ? 全く、顔に似合わず……はしたないですなぁ……』
村娘『ち、ちがう……んです……わ、わたし……』
勇者『まぁ、俺はそんなスケベな貴女もだーいすきですけどねぇ。にゅふふふ。さぁ、大草原の真ん中で!! 生命の神秘を体験しようじゃないですかぁ!!!』 



41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 18:59:59.74 ID:nfVCKxWoo
勇者「ーーはっ!?」
医者「気がつきましたか?」
勇者「え? あれ……?」
医者「血を流しすぎたようですね。私が到着する直前に倒れられたみたいです」
勇者「あぁ、そっすか。で、あんたは?」
村娘「この方が獣医です。村の動物たちを診てくれているんです」
勇者「ふぅーん。そっすか」
馬「……」ペロペロ
医者「この子も捻挫しているだけで大した怪我ではようです。これならすぐに元気になるはずだ」
村娘「よかったぁ。それで、どうして凶暴化したのか、わかりそう?」
医者「血液を採取して検査してみないとな。だが、この子はとても落ちついているから治まっている可能性もあるな。足を痛めた所為かもしれないが……」
村娘「そう……。やっぱり貴方でもここでは無理なんだ」
医者「仕方ないよ。でも、こうして調べられるのは勇者様のおかげだ。これで全ての動物を助けられるかもしれないじゃないか」
村娘「うん。そうだね。勇者様に感謝しないと」
勇者「……」 



44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 19:07:20.98 ID:nfVCKxWoo
医者「それにしても勇者様が酷い怪我だ。応急処置を施したとはいえ、このままでは危ない」
村娘「でも、ここにいたら狼に襲われるかもしれないし……」
医者「そうだが……。この子と勇者様を置いていくわけにも……」
村娘「勇者様は大丈夫だっていってたけど」
医者「え? そうなのですか?」
勇者「え? あ、あぁ、そうですけど?」
村娘「ここは勇者様を信じよう」
医者「でも……」
村娘「貴方が怪我したら……どうするの……?」
医者「……」
村娘「貴方しか動物は救えないんだよ?」
勇者「あの」
村娘「はい、なんですか?」
勇者「そのお医者さんと貴女のご関係は?」
村娘「あ、その……お、幼馴染なんです……彼とは……」モジモジ 



45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 19:12:48.36 ID:nfVCKxWoo
勇者「なーんだ。そっすか。なーんだ。ふぅー。びっくりした。俺はてっきり恋人かなんかだと」
医者「違いますよ」
勇者「ですよねー」
医者「今度、結婚するんです」
勇者「……」
医者「な?」
村娘「……うんっ」
勇者「……あ、そっすか。へぇー。めでたいっすねー。うん。なら、あれだ。ここにいちゃだめだ。おおかみにおそわれたら、ほら、いちだいじじゃん」
医者「よ、よろしいのですか?」
勇者「うん。あなたはかのじょをまもってあげなさい。わたしはこのうまをまもるから」
医者「……ありがとうございます。感謝してもし足りません」
勇者「いいってことよ。おなじほしにうまれたもの、みなきょうだい」
村娘「行きましょう」
医者「そうだな。血液も採取したし、早速調べてみないと。勇者様!!! 本当に感謝しています!!」
村娘「その子のこと、もう少しだけよろしくお願いします!!」 



47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 19:20:11.08 ID:nfVCKxWoo
勇者「……」
馬「……」ペロペロ
勇者「……」
馬「ヒヒーン……」
勇者「フフフ……ハハハハ……アーッハッハッハッハッハ!!!!!」
馬「……!?」ビクッ
勇者「うわぁぁぁぁあああああああ!!!!!!」
馬「ヒーン……」ペロペロ
勇者「なんでじゃぁああああああ!!!!! 絶対惚れたじゃん!!! あの子、俺に惚れてたジャン!!!!」
勇者「なんで!! なんで!!! なんで!!!」ダンッ!!!ダンッ!!!!ダンッ!!!!
勇者「寝取られたぁぁぁああああ!!!!! うわぁぁぁあああ!!!!!!」
狼「グルルルル……」
「グルル……!!!」
勇者「……なんだぁ? 寄って来るのは獣だけかぁ!? こいやぁああ!!!!! 狼畜生なんぞ!!! てきじゃねええええ!!!!!」シャキン!!
馬「ヒヒーンっ♪」 



48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 19:26:57.20 ID:nfVCKxWoo
農夫「こ、こっちです!!」
兵士長「分かった」
兵士長「(まさか、初任務でこのような血文字による手紙をよこすとはな……。俺の目に狂いはなかったな。あいつこそ、真の勇者となる器だ……)」
兵士「あ、あれではないですか!?」
兵士長「いたか!?」
勇者「うわぁぁあ!!! うわぁああああ!!!!」ブンッブンッ
兵士長「な、なんだ……。随分、荒れてるなぁ……」
勇者「どうしたぁ!!! 狼どもぉ!!! その程度じゃ俺の怒りは収まらんぞぉ!!!!!」
狼「クゥーン……」
農夫「す、すごい!! 狼が完全に怯えている……!!」
兵士「勇者の称号はやはり伊達ではないのですね」
兵士長「その通りだ。どこの世界に馬一頭のためにあそこまでやれる男がいる?」
農夫「あの方こそ、真の勇者様……」
兵士長「(俺も鼻が高いぜ……。女のケツを追っかけてるだけじゃねえんだな)」
勇者「うおぉぉおおおおお!!!!!!! どうしたぁぁ!!!! かかってこないなら、こっちからいくぞぉぉぉ!!!!」 



49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 19:35:14.22 ID:nfVCKxWoo
翌日 村長の家
村長「この度のことは一生忘れません。村を救っていただき、ありがとうございます」
兵士長「何を仰いますか。まだ解決したわけではないでしょう? どうして家畜が凶暴化したのか判明していません」
村長「そのことなのですが……」
医者「先ほど、結果が出ました」
兵士長「是非、教えてほしい」
医者「まだ詳しいことはわかりませんが、何かを投与されたのは間違いなさそうです」
兵士長「投与? 薬の類ということですか」
医者「ええ。一種の興奮剤のようなものです。いや、成分的には幻覚剤に近いものが……」
兵士長「エサに混ざっていた可能性は?」
医者「確かに幻覚作用をもたらす植物はありますが、この辺りに自生はしていません」
兵士長「犯人がいる、ということですか」
医者「間違いなく」
兵士長「……他の家畜は助かりそうですか?」
医者「ええ。なんとかなりそうです。全てはあの勇者様のおかげですよ」 



50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 19:54:48.33 ID:nfVCKxWoo
村民の家
「勇者様、きいてください。他の動物たちも助かるって。エサに薬を混ぜれば大丈夫らしいんです」
勇者「へぇー。よかったっすね」
「これも勇者様のお力があってこそ!! ありがとうございます!!」
勇者「へぇー。よかったっすね」
「そんな謙遜なさらずに。これでもお食べください」
勇者「へぇー。よかったっすね」
村娘「勇者様」
勇者「……」
村娘「このご恩は一生忘れません。何か困ったことがあればいつでもーー」
勇者「ぐすっ……」
村娘「え!? ど、どうしたのですか!? ど、どこか痛むのですか!?」
勇者「いえ……今後、貴女に訪れるであろう幸せを考えると……こみ上げてくるものがあるんです……よ……」
村娘「あ、はいっ! そうだ! 勇者様、私の結婚式に是非きてください!」
勇者「おえっ……うぅ……うぅぅ……うんっ……いく……っす……」 



54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 20:06:51.89 ID:nfVCKxWoo
東の村
農夫「いいのですか。ろくなお礼もできていないのですが……」
兵士長「気にしないでください。我々は当然のことをしただけですので」
村長「助かりました。こんな辺鄙な村ではありますが、おもてなしをしますので。またお立ち寄りください」
兵士長「はい。そのときはお願いします」
兵士「隊長。勇者殿が見当たりません」
兵士長「なに? 全く……。折角馬車があるのに徒歩で帰るつもりか、あいつ」
村娘「あのぉ。勇者様なら馬小屋のほうへいくと行っていました」
兵士長「馬小屋?」
医者「あの子に別れの挨拶をしているのかもしれません。半日以上、あの子のそばにいたわけですからね」
村長「愛着がわいたのかもしれんなぁ」
村娘「勇者様って動物に好かれるタイプみたいだもんね」
村長「そうだなぁ。あんなに慈しみの心をもった若者は珍しい。勇者と呼ばれるのも頷ける」
兵士長「見てくるか……。お前たちはここで待っていろ」
兵士「はっ!」 



55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 20:12:07.64 ID:nfVCKxWoo
馬小屋
馬「ヒヒーン」ペロペロ
「ヒヒーン!!」ペロペロ
勇者「……」グイッ
勇者「こんなもんか……」
馬「バヒっ」スリスリ
勇者「母さん……親父……いま、そちらにいきます……」
「ヒヒーンっ♪」スリスリ
勇者「馬に囲まれながら死ぬのも悪くない……」
兵士長「なーにやってんだ?」
勇者「あ、先輩……」
兵士長「帰るぞ」
勇者「……っ」ウルウル
兵士長「帰りの馬車の中で聞いてやるよ。降りて来い」
勇者「せんぱぁぁい……!!! おれ……おれ……!! きっと前世でなにかわるいことしたんすよぉ……!!! じゃないと……納得できねえっすぅ……!!!」ポロポロ 



56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 20:20:49.78 ID:nfVCKxWoo
馬車内
兵士長「ーーなるほどな。確かにあの娘さんは美人だった。あんな村には珍しいぐらいの別嬪さんだ」
勇者「うぅぅぅ……うぅぅ……」
兵士長「お前が一目惚れするのもよくわかる。だが、仕方ねえだろ。あんなかわいこちゃんなんざ引く手数多だ。お前があの村の出身でもないと無理だよ」
勇者「うぅぅ……でも……途中まで惚れたんすよ……俺を見つめる視線がもうなんか、乙女の瞳だったのに……」
兵士長「気にすんなよ。女なんてこの世に掃いて捨てるほどいるんだ。あんな小娘なんざ、お前にはにあわねえよ」
勇者「あの子のことを悪くいわないでくださいっす!!!! いくら先輩でも……!!! ゆ、ゆるさん!!」
兵士長「わぁーった、悪かったよ」
勇者「はぁ……」
兵士長「そういえば、お前が命がけで守った馬。あれを貰えばよかったじゃねえか?」
勇者「は? なんでっすか?」
兵士長「メス馬だからだよ」
勇者「……うっ……うぅぅ……」
兵士長「あぁ……いや、冗談だ……冗談……。そ、そうだ、帰ったら飲もうぜ!! 勿論、俺の奢りだ! どうだぁ? 嬉しいだろう?」
勇者「オゴリ!? いくいく!! いくっす!!!」 



58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 20:30:18.60 ID:nfVCKxWoo
酒場
勇者「すんませーん!!!!」
バニー「はぁい、なんですかぁ?」
勇者「君のハートをください」キリッ
バニー「ビールでよろしいですかぁ?」
勇者「俺の心は既に貴女のもの。あとは会計を済ますだけです。そう、ベッドの上でね」
バニー「マスター。生追加でーす」
勇者「……」
兵士長「すっぱぁー。失恋のあとはやっぱ酒がすすむなぁ。ははははは」
勇者「笑い事じゃないっすよ!!!!」バンッ!!!
兵士長「な、なんだよ」
勇者「俺!! 先輩にモテにモテるって言われたから!!! 2年も血反吐を吐くような訓練をして勇者になったっていうのに……!!」
勇者「なんすかぁ、これぇ!? 俺!! 昨日初めて女の子に触れたんすよぉ!? あんなに柔らかいんっすね!!! たまらんっす!!!」
兵士長「よかったじゃねえかぁ。勇者になれなかったら、触れることすらできなかったかもしれねえんだぜ?」
勇者「あ。そっか。まぁ、それなら……。いや、騙されないっす!!! 先輩!!! 俺は別に女の子に触れるのが目的じゃねえんすよぉ! 美人の彼女、お嫁さんが欲しいんすよ!!」 



59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 20:40:06.40 ID:nfVCKxWoo
兵士長「そうは言ってもなぁ。そればっかりは運命ってやつだからよぉ。いい出会いがあれば明日にでもできるし、なけりゃあ……」
勇者「なければ?」
兵士長「ま、今回のことは忘れろ。これ、食ってみろ。うまいぞー」
勇者「あ、うっす。恐縮っす」
兵士長「話は変わるけどよ。あの村での事件、誰かの手によるものの可能性が高いってことは言ったよな?」
勇者「あぁ、はい。みたいっすね」
兵士長「他の町や村でも同じようなことが起こっていないか調べないといけなくなりそうだ」
勇者「へぇー。たいへんっすね」
兵士長「お前も調べるんだよ。バカ」
勇者「なんで? 俺、傷心休暇とるっすから」
兵士長「勇者に休暇なんざあるわけねえだろ」
勇者「はぁー!? いやだぁいやだぁ!! 暫く休まないとやってらんないっすぅ!!!」ジタバタ
バニー「はぁーい。おまたせしましたぁー」
勇者「ありがとう」キリッ
バニー「……ぷっ。駄々こねちゃって、可愛い」 



60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 20:47:19.36 ID:nfVCKxWoo
城下町
勇者「バニーちゃんにも笑われた……」
兵士長「ありゃあ、お前が悪い」
勇者「はぁ……」
兵士長「いい店、紹介してやろうか? 上玉ってほどじゃねえが、まぁそれなりのが揃ってる」
勇者「へぇ……?」
兵士長「金さえ払えば女は抱けるんだ。行ってこい」
勇者「……断固、拒否っす」
兵士長「あのなぁ」
勇者「俺はそんな邪まなことしないって心に誓ってるっす。初めては愛する人に捧げたいと」キリリッ
兵士長「それよぉ、気持ち悪いだけだからやめろって」
勇者「先輩にはわかんねーっすよぉ!!! あんなに美人の嫁さんがいて!!! 今晩もしっぽりしちゃうわけなんすよねぇ!?」
兵士長「あははは、てれるぜ」
勇者「こんな世界なんて滅べばいいんだぁ!!!!!」ダダダダッ!!!!
兵士長「おーい。明日、陛下に報告するんだから寝坊するなよぉー。……ま、ねりゃあ、元に戻るだろ。俺も帰ろう」 



63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 20:54:21.90 ID:nfVCKxWoo
墓地
勇者「うぅぅ……おやじぃ……おしえてくれぇ……。どうすりゃ、母さんみたいな美人を手にいれることができるんだぁ……」
勇者「おやじぃ……おしえてくれぇ……このままじゃおれぇ……どうにかなっちゃうよぉ……」スリスリ
勇者「うぅぅぅ……」
勇者「おぇぇ……」
シスター「誰ですか!?」
勇者「あぁ……?」
シスター「あ、貴方は……」
勇者「……なんかようっすかぁ?」
シスター「こんな夜更けにいったい何をなさっているのですか?」
勇者「みてわかんないっすかぁ? 墓参りっすよぉ!! 墓参りぃ!!!」
シスター「え……? でも……」
勇者「なんすかぁ?」
シスター「い、いえ。とにかく、もう夜ですから家に戻られたほうがいいですよ」
勇者「……そうなんすかぁ? かえるっす……おじゃましましたぁ……」 



65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 21:04:14.46 ID:nfVCKxWoo
翌日 城内 謁見の間
勇者「ーー報告は以上です、陛下」
王「うむ。ご苦労であったな。しかし、その犯人とやらが気になるな……」
勇者「はい。ですが、現状では足がかりすらありません」
王「そうだな……。それと、あの手配書の人物はどうだ?」
勇者「村の者にも一応聞いてみましたが、誰も見ていないと」
王「そうかぁ……」
勇者「(そういえばこの手配者の人物……美人だよなぁ……)」
王「勇者よ」
勇者「はっ」
王「次の任務を言い渡す」
勇者「はい」
衛兵「こちらに詳細は書いている。目を通しておくように」ペラッ
勇者「これは……」
衛兵「お前には連続殺人犯を追ってもらいたい」 



66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 21:10:24.40 ID:nfVCKxWoo
訓練場
兵士長「ふんっ!!!」ギィィィン!!!!
兵士「ぐわぁ!?」
兵士長「しっかり構えろ!! 敵はお前よりも常に強者であると思え!!!」
兵士「は、はい!!!」
勇者「せーんぱい、ちぃーっす」
兵士長「む。少し休憩にする」
兵士「はい!」
勇者「すんません、訓練指導中に」
兵士長「構わん。それよりどうした?」
勇者「俺、別の任務言い渡されたんすけど」ペラッ
兵士長「……ああ、東の町で問題になっている事件か」
勇者「これ、町の兵士がやることじゃないんすかぁ?」
兵士長「知らないのか? もう何人も兵士がやられてる。お手上げ状態なんだとよ」
勇者「……マジっすか? それ、俺がやるんすか? かんべんしてくださいよぉー」 



67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 21:18:22.07 ID:nfVCKxWoo
兵士長「お前だからやるんだよ。農村での一件で陛下はお前のことを褒めていた。お前になら、この案件を任せられると思ったんだろう」
勇者「がんばりすぎたわけっすね」
兵士長「がんばりすぎるぐらいが丁度いいんだよ。勇者はな」
勇者「女の子にはぜぇーんぜん、モテないのに……。これじゃあ、女の子とデートする前に死んじゃうかもしれねえっすね」
兵士長「俺も手伝ってやりたいがな……」
勇者「先輩は例の幻覚剤だかをばら撒いた犯人探しっすよね。俺もそっちがいいっすよ。危険度でいえばこっちやべぇっす。ぱないっす」
兵士長「今回は傭兵所で誰か連れて行け」
勇者「いやっすよ。あそこの戦士、ちょーこわいんすもん。俺が乙女になっちゃいそうっす」
兵士長「我侭言うなよ。死にたいのか?」
勇者「一人のほうがマシっすぅ」
兵士長「あのなぁ……」
勇者「俺のパートナーは可愛い女の子って決めてるんで!!」
兵士長「分かった分かった。好きにしろよ。死んでも後悔するなよ」
勇者「ハッハー! 死んだら後悔できねーっすよ!! 先輩、バカじゃねー!?」
兵士長「こっちこい。出発前に鍛え直してやろう」グイッ 



68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 21:23:29.84 ID:nfVCKxWoo
城下町
勇者「うー……いってぇ……。あんな本気にならなくてもいいのに……」
勇者「……」
女性「ふんふーん」
勇者「そこの美人さん。俺と危険な毎日を過ごしてみませんか?」
女性「失せろ」
勇者「……」
勇者「よしっ。行くか!」
勇者「……墓参りは……いっか……」
勇者「あーでも……なんかあるたびに報告するのは恒例みたいなもんだし……やらないと気持ち悪いし……でも、昨日の夜もしたし……」
勇者「うーん……いや、いけばあのシスターに会えるかもしれないなぁ……」
勇者「そして……たぶん……」
シスター『これは神のお導きかもしれませんね……』
勇者『きっとそうだよ』
シスター『だいてっ!』 



69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 21:29:27.48 ID:nfVCKxWoo
墓地
勇者「ぬふふふふ……」
勇者「いやぁー。そうなったら、任務どころじゃねーっすねぇ……にょほほほ……」
シスター「よいしょ……」ヨロヨロ
勇者「……」
勇者「(イター!!! これはもう運命の赤い糸だぜぇ!!!)」
シスター「ふぅ……」
勇者「やぁ。また会いましたね」キリリッ
シスター「あ……。なにか?」
勇者「水、運ぶの手伝いますよ」
シスター「……」
勇者「ほら、遠慮なんて君には似合わない。俺に身も心もゆだねてみなよ。さぁ、決して俺は怪しくなーい。勇気をだして、とびこんでみるんだ」
勇者「すると、どうだ。俺の雄大な心に触れた君は、きっと知ることになるだろう。本物の愛を」
シスター「邪魔です。どいてください」
勇者「あ、すんません」 



70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 21:35:00.33 ID:nfVCKxWoo
シスター「……」バシャ
勇者「一人でお墓の手入れしてるの? 大変だろう。重労働にもほどがある。どれ、俺が神父に言ってきてやろう。仕事量を減らせと」
シスター「……なにか、私に用ですか?」
勇者「用というか、そうですねぇ……」
シスター「はぁ……。それでは失礼します」
勇者「待ってくれ!! 俺を見て、何か思い出せないか!?」
シスター「え……?」
勇者「ん?」
シスター「……」
勇者「そう。俺は勇者なんだ。顔ぐらいみたことあるだろ?」
シスター「そういえば、今朝の新聞に貴方の顔が……」
勇者「ははははは。いやぁー、バレてはしかたない。どうです、勇者の俺とお茶でも」
シスター「帰ってください!」
勇者「あ、はい」
シスター「ふんっ」 

71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 21:40:35.17 ID:nfVCKxWoo
城下町
勇者「カーッペ!!! なんでぇ!! この町はぁ!!! おわってんなぁぁ!!!! ボケー!!! アホー!!!!」
門兵「おい」
勇者「この町の女はクズしかいねー!!!!」
門兵「……」
勇者「頭の悪い女しかいねー!!! 男は即刻別の町に引っ越すべきだー!!!」
勇者「この世界には神様なんかいないんだー!!! 運命の赤い糸なんてのも嘘っぱちだぁー!!!」
勇者「恋人がいるやつー!!! 結婚してるやつー!!! 両想いのやつー!!!」
勇者「みんなくだばっちまえー!!!!」
門兵「……おい」
勇者「……なんすか?」
門兵「これで涙拭けよ」スッ
勇者「……あざす」
門兵「がんばれよ。俺、応援してるからさ」
勇者「はい。ありがとうございます。行って来ます。あなたもがんばってください」 



73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 21:46:45.66 ID:nfVCKxWoo
東の町
勇者「ここか……」
兵士「あの。失礼ですが……」
勇者「俺はこういうものです」ペラッ
兵士「国王陛下の勅命状……!? ゆ、勇者殿でありますか!!!」
勇者「まぁ、そうなってます」
兵士「あの……」
勇者「連続殺人の件で来ました。詳しい事情を聞きたいんですけど」
兵士「こちらにどうぞ。案内します」
勇者「……静かですね。この町」
兵士「連続殺人犯が捕まっていないのです。誰も外に出ようとはしませんよ」
勇者「兵士も何人かやられているとか」
兵士「……何人ではないです」
勇者「え?」
兵士「何十人とやられています……」 



74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 21:57:21.08 ID:nfVCKxWoo
詰め所
隊長「勇者殿、ここまで足を運んでもらったことはありがたいのですが……。その、お一人だけ、ですか?」
勇者「今、奇妙な事件が起こっていて、そちらのほうの調査もありますから」
隊長「あぁ、例の家畜が凶暴化したとかいう……」
勇者「そこで陛下は俺をここへ遣わせたわけですが。俺では力量が足りていないでしょうか?」
隊長「ま、まさか。寧ろ役不足であると思われます」
勇者「……そうですか?」
隊長「既に同志が30人も惨殺されています……。町民を合わせると被害者は50人を超える次第で……」
勇者「異常事態じゃないですか。何故、今まで応援要請を出さなかったんですか」
隊長「我々にも面子というものが……」
勇者「面子を守るために市民を犠牲にしたのか」
隊長「……」
勇者「そりゃ、ゴーストタウンみたいにもなりますね」
隊長「……面目ない」
勇者「俺に謝られても困ります」 



75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 22:05:36.32 ID:nfVCKxWoo
隊長「最初の犠牲者は今から10日前です」
勇者「10日前……?」
隊長「その日だけで、7人もの犠牲者が出てしまって……」
勇者「……」
隊長「その日から毎日数人、ときには10人を超える犠牲者も……」
勇者「調査中の兵士も殺された……」
隊長「ええ……」
勇者「犯人の手がかりは一切ないんですか」
隊長「……」コクッ
勇者「……」
勇者「(洒落になんねーっすよぉ……。まじっすかぁ……。町でたら死ぬじゃないっすかぁ……)」
隊長「勇者殿……あの、この事件は我々だけでも……」
勇者「……とにかく、事件現場を教えてもらえますか?」
隊長「わかりました。私がご案内しましょう」
勇者「(あー。こりゃ、ダメだ。俺、死んだっすわぁー)」



77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 22:12:01.52 ID:nfVCKxWoo
路地裏
隊長「ここが第一の事件現場です」
勇者「血がまだ残ってますね」
隊長「3人、ここで……。あとの4人は、向こうの路地です」
勇者「目撃者もいないらしいですね」
隊長「深夜の犯行だったので」
勇者「(まぁ、ありえなくはないか……)」
隊長「事件後は町民も出歩かなくなったためにさらに目撃情報は期待できなくなりまして……」
勇者「そうですか」
隊長「……次へ行きますか」
勇者「あ、はい」
勇者「……」
勇者「(目撃者を全員殺してる……? そんなことできるか……?)」
勇者「(誰にも見られず10日連続で人を殺し続けるなんて……)」
勇者「うーん……かえりてぇ……こえぇっすよぉ……」 



78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 22:17:14.05 ID:nfVCKxWoo
広場
隊長「昨日はここで殺人がありました」
勇者「こんな町のど真ん中で!?」
隊長「はい。白昼の犯行でした」
勇者「なら誰か何か聞いてるんじゃないっすか? 悲鳴とかそういうの」
隊長「いえ……」
勇者「マジっすか」
隊長「はい」
勇者「……」
隊長「何か?」
勇者「いや。別に」
隊長「これからどうされますか?」
勇者「あ、えーと……一応、自分なりに調査してみたいんで……」
隊長「護衛、つけましょうか?」
勇者「いいのですか? じゃあ、女の子の兵士所望」 



79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 22:21:10.33 ID:nfVCKxWoo
兵士「勇者殿、私が護衛につきます!!」
勇者「あ、どうも。よろしく」
兵士「はい!!」
勇者「女の子の兵士ぐらいさぁ、雇うべきだと俺は思うんだけど」
兵士「はぁ、私もそう思いますが。中々女性で兵士になってくれることはないですからねぇ」
勇者「はぁーあ。やってらんねぇ」
兵士「勇者殿。あの、私はこれで中性的な顔であると自負していますが」
勇者「はぁー!?」
兵士「……!?」ビクッ
勇者「でも、男っすよね?」
兵士「え、ええ」
勇者「俺は女の子がいいんすよ!! 顔も胸も下半身も!!!」
兵士「申し訳ありません」
勇者「聞き込み、いくっすよ」
兵士「ま、待ってください!! 私からはなるべく離れないようにしてください!!」 



80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 22:26:14.18 ID:nfVCKxWoo
酒場
勇者「いいですか」
店主「……どうぞ」
勇者「昨日、表の広場で殺人事件があったのは知ってますよね?」
店主「あんた誰だ」
兵士「無礼者!! この方は勇者殿であるぞ!!!」
店主「なに……」
勇者「これこれ。勇者とかいうな。自慢してるみたいになっちゃーー」
店主「……」グイッ
勇者「ぐぇ!? な、んすかぁ……!?」
兵士「きさまぁ!!! 何をしている!!! 離せ!!!」
店主「……っ」
勇者「大事な人、殺されたんですか?」
店主「おねがいだ……ゆうしゃさま……かたきを……かたきをとってくれ……うぅ……」
勇者「……」 



81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 22:31:29.48 ID:nfVCKxWoo
店主「ーーすまない。つい……」
勇者「いえいえ」
店主「三日前です。息子が殺されちゃってねぇ……」
勇者「そうでしたか」
店主「この町の兵士たちは何もしないし……この怒りをどうすりゃいいのか……」
兵士「……」
店主「お願いだ!! 勇者様!! 息子の無念を……!!!」
勇者「分かってますよ。落ち着いてください」
店主「はぁ……」
勇者「(ここまで言われたら、やるしかないか……)」
店主「……」
勇者「なんすか?」
店主「勇者様、結構男前じゃねえか」
勇者「そっすか? まぁ、勇者ですからね」キリリッ
店主「……ちょっと待っててくれねえかい?」 



82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 22:37:03.90 ID:nfVCKxWoo
兵士「なんでしょうね?」
勇者「さぁ?」
店主「勇者様。待たせちゃったねぇ」
勇者「どうかしま……!?」
町娘「……」
店主「自慢の娘でさぁ」
勇者「こんにちは。勇者です」キリッ
町娘「はい……。父から……ききました……」
店主「どうだ、悪い話じゃないだろ?」
町娘「で、でも、急に言われても……」
店主「なにいってんだ。お前もいい年だ。そろそろだなぁ」
町娘「だからって……勇者様の都合もあるじゃない……」
兵士「あの、なんの話でしょうか?」
店主「勇者様。殺人犯が捕まった暁には、うちの娘と結婚してやってーー」
勇者「よろこんでぇ!!!!」ガタタッ!!! 



83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 22:47:37.80 ID:nfVCKxWoo
町娘「えぇ……!? そ、そんな簡単に……!?」
勇者「憎き殺人犯、いえ、ご家族の仇は、俺が討ちます。だから、遠慮なく結婚しまひょっ。うひょっ」
町娘「でも……」
兵士「何故?」
店主「実はね、この事件が起こる前から見合いを何度も奨めたんだが、縁がなくてね」
兵士「はぁ」
店主「別の町でお見合いする予定だったんだが、この事件が起きちまってそれもパァ。んで、息子も……」
兵士「……」
店主「平和になったら、こいつにぐらいは幸せ掴んでほしいんだよ。だから、今のうちに勇者様と約束を取り付けておくのも悪くないとおもってよ」
町娘「父さん。私はあんなことがあったばっかりなのに、そんなこと考えられないわ」
店主「分かってる。でもよ、お前にはあいつの分まで幸せになってほしいんだ。分かってくれよ」
町娘「だけど……」
店主「勇者様……根暗なやつだけど、いい子なんだ……。結婚してくれとはいわねえ、ただ……こいつにさ、人並みの幸せってやつを……みせてくれねえかい?」
勇者「任せてください。必ず幸せにしてみせます」
町娘「ほ、本気ですか?」 



84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 22:55:10.32 ID:nfVCKxWoo
勇者「俺は本能で動く人間です。一挙手一投足が全て本気だと捉えてくれても構いません」
町娘「……」
勇者「無論、ご家族に不幸があったばかりです。そんな気分には到底ならないでしょう。ですが……」
町娘「はい」
勇者「貴女に微笑みを与える約束ぐらいはさせてくれませんか?」
町娘「……あの」
勇者「なんですか?」
町娘「弟の仇をとっても弟は戻ってきません。きっと私は自分の不幸を口実に貴方に酷いことをいうかもしれません」
勇者「……」
町娘「心から笑えるときなんてこないかもしれません。それでも……勇者様は……」
勇者「貴女の不幸、俺に分けてください。貴女の苦悩を俺にください」
町娘「勇者様……」
勇者「貴女が笑ってくれるのなら、俺は悪魔にでも魂を売ります」
町娘「……あなたを信じても、いいんですか?」
勇者「俺を信じないで、どうするんですか?」 



85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 22:59:46.90 ID:nfVCKxWoo
兵士「勇者殿……」
店主「決まりだな」
勇者「行くぞ」
兵士「ど、どこへですか!?」
勇者「馬鹿野郎。ーー犯人を捕まえにだ」キリリッ
兵士「は、はい!!!」
町娘「ゆ、勇者様!」
勇者「……」
町娘「……お気をつけて」
勇者「心配しなくていいですよ。俺は、勇者。死にはしません」
勇者「貴女の笑顔を見るまではね」
町娘「はい」
店主「ちょっと気障だけど、いい人そうだなぁ」
町娘「うん……」
町娘「がんばってください……勇者様……」 



86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 23:04:02.11 ID:nfVCKxWoo
広場
兵士「ここで待つ!?」
勇者「ここで待っていればいずれ犯人から現れるはずだ」
兵士「しかし!! 危険すぎます!!!」
勇者「腰抜けがぁ!!!」
兵士「……!!」
勇者「俺は刺し違えても犯人を捕まえるつもりだ」
兵士「な、なんですって……」
勇者「それでこの町に平和が戻るなら安いものだろう」
兵士「勇者殿、そこまでの覚悟が……」
勇者「君はーー」
兵士「分かりました。では、もう何もいいません。勇者殿」
勇者「え? あの、近くで見張りをーー」
兵士「ご武運を!!!」
勇者「……ああ。まぁ、みてろ」キリリッ 



87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 23:08:25.33 ID:nfVCKxWoo
夜 広場
勇者「……」
勇者「(かっこつけすぎちゃった……)」
勇者「(い、いや、犯人が捕まれば俺は……あの子と……夢の生活が……)」
町娘『勇者様……』
勇者『……終わったよ。全部ね』
町娘『バカ! どれだけ心配したと思ってるの!?』
勇者『すまない。でも、これで君が未亡人になることはないだろ?』
町娘『……愛してるわ、あなた』
勇者『俺も。一目見たときから君の虜さ』
町娘『……してっ』
勇者「あ、いかん。ちょっと俺の伝説の剣が暴れだしてーー」
「グルルルル……」
勇者「……ん? この唸り声……」 



88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 23:13:06.75 ID:nfVCKxWoo
「グルルルル……!!!」
勇者「まさか、犯人は……」
狼「グルルル……!!」
勇者「こいつ……!?」
「見つけた……仲間を傷つけたやつ……!!!」
勇者「なに?」
狼少女「ガルルルル……!!!」
勇者「お前が犯人なのか!?」
狼少女「ガァァァウ!!!!!」
勇者「ちっ!! やるしかないか……!!」シャキン
狼少女「アァァアァアオ!!!!!」
勇者「ふん!!」ドガァ!!!
狼少女「ガッ……!?」
勇者「……次は、お前か?」
狼「グルルル……!!」



90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 23:17:34.99 ID:nfVCKxWoo
「キャアアアアアア!!!!!!」
勇者「なに!?」
狼「……!!」タタタタッ
勇者「あ、待て!!」
勇者「何がどうなってるっすかぁ!?」
狼少女「ウゥゥ……にが……さ……な……」ギュゥゥゥ
勇者「ええい!! はなせぇ!!!」
狼少女「ガルルル……」
勇者「あぁぁ!!! 面倒だ!!!」ヒョイッ
狼少女「ウアァ!?」
勇者「行くぞ!!!」ダダダッ
狼少女「はなせ!! おろせ!!!」ドガッ!!!
勇者「いっってぇぇ!!! 寝てろ!!」
狼少女「ガァァァウ!!!」ガブッ!!!
勇者「かむなぁぁ!!!」 



92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 23:22:57.89 ID:nfVCKxWoo
酒場
勇者「どうしたっすかぁ!?」
狼少女「アァァァウ!!!」ガブッ!!
町娘「あ……あぁ……父さん……父さん……!!」
勇者「何があったっすかぁ!? しっかりすーー」
狼少女「血の臭い……嫌い……」
勇者「……」
町娘「あぁぁ……いやぁぁ……」
勇者「落ち着いて。犯人の顔は見てないんすか?」
町娘「あぁ……あぁ……ちがうの……ちがう……」
勇者「違う!? どういうことっすか!?」
町娘「あ……う……」
勇者「(ダメだ。錯乱してるっす。無理もないけど……)」
隊長「悲鳴が聞こえましたがいったいなにが……あ……」
狼少女「血の臭い……いっぱいする……」 

93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 23:28:36.85 ID:nfVCKxWoo
隊長「……勇者殿、その肩に担いでいる少女は?」
勇者「こいつは関係ないっす」
隊長「それを信用しろと」
勇者「俺が証人っす。悲鳴がしたとき、こいつは俺と一緒にいたんで。別件っすよ」
隊長「……とにかく、その少女は渡してもらいましょうか」
勇者「関係ないっていってるっす」
隊長「勇者殿!!」
狼少女「ウゥゥゥ……!!!」
勇者「唸るな!!」
狼少女「ガァァァウ!!!」ガブッ
勇者「いってぇ!!」
隊長「勇者殿……渡して……モラい……マスよ……」
勇者「だーかーらー」
狼少女「アアァ……!! ウゥゥゥゥ!!! 変……こいつ……変……!!」
隊長「ゆ、ウシャ……どノ……わた……して……コ、ろす……!!」シャキン



95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 23:33:14.94 ID:nfVCKxWoo
勇者「な……!? なんの真似っすか……!?」
隊長「アァ……!!! コ、ろス……!!!」
勇者「殺すって言われてもまだ死にたくないんすけど……」
狼少女「アァァァウ!!! ガァァァウ!!!」
勇者「なんだよ、うっせえなぁ!」
町娘「コ、ろサナキャ……」
勇者「……マジすか」
狼少女「ヘン!! ここ、嫌い!!」
勇者「俺も嫌いだよ」
町娘「オォォォ!!!!」
勇者「待って!! 結婚の約束は……!!」
隊長「オォォォォ!!!!」
勇者「なんで……なんで……!!」
狼少女「にげる……!! にげるぅ……!!」ジタバタ
勇者「俺は呪われてるのかよぉ!!!!」ダダダッ 



96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 23:37:29.67 ID:nfVCKxWoo
路地裏
勇者「はぁ……はぁ……」
狼少女「はなせぇ……!!!」ググッ
勇者「お前、何かしたのか?」
狼少女「お前、仲間傷つけた!!」
勇者「……はぁ」
狼少女「あやまれぇ!!! あやまれぇ!!!」
勇者「ごめん」
狼少女「う……ぁ……?」
勇者「(犯人が捕まらないわけだ……)」
兵士「そうです。犯人はこの町に住んでいる人全てですから」
勇者「……!?」バッ
狼少女「ガルルル……」
兵士「勇者殿……」
勇者「貴方はなんともないんですか?」 



97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 23:44:35.65 ID:nfVCKxWoo
兵士「……私も数人、殺めています」
勇者「……」
兵士「分からないんです。何故か、突発的に人を……」
勇者「……!」
兵士「この町は呪われたんです……」
勇者「町を出れば……。いや、そういう問題でもないっすね」
兵士「隊長はいち早く事実を突き止め、解決の道を模索していました」
勇者「俺には言ってくれてもよかったんじゃないっすかね?」
兵士「そんなことをすれば、貴方は国王陛下にこう伝えるでしょう。あの町を滅ぼしましょうと」
勇者「(家畜を殺処分するように……)」
兵士「だから、外に情報を漏れないようにしていました……」
勇者「(隊長さんが一人かと聞いたのは、軍を引き連れてきたのかどうか知りたかったからか)」
兵士「隊長や他の者も原因を必死に探っています。だから、勇者殿。ここで見た事は、どうか……」
勇者「……少し、待っていてもらえますか? 貴方たちを救えるかもしれません」
兵士「な……!? ほ、本当ですか!?」 



98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 23:48:59.43 ID:nfVCKxWoo
勇者「この町で起こっていることは解決できます。滅ぼそうなんて提案するわけないです」
兵士「勇者殿……」
勇者「とにかく待っていてください。1日……いや、半日もあれば……」
兵士「お、お願いします!! 勇者さまぁ!! わ、わたしたちを……町の人たちをすくってください……!!」
勇者「分かりました」
兵士「うぅ……」
勇者「とはいえ……」
狼少女「ウァ?」
勇者「お前は後回しだ」
狼少女「ナニが?」
兵士「ウゥ……」
勇者「今すぐいってーー」
狼少女「こいつ、ちがう!!」
勇者「……!」
兵士「アァァァ!!! ユ、うしゃ……!!!!」シャキン 



99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 23:54:06.94 ID:nfVCKxWoo
街道
勇者「ーーここまでこれば大丈夫か」
狼少女「おーろーせー!!!」バンバンッ
勇者「……ほら」
狼少女「ふぎゅ!?」
勇者「行け。君に構ってる暇はなくなった」
狼少女「ガルルル……!!」
勇者「じゃあな」
狼少女「……」
勇者「(くそ……くそ……!! 例え正気を戻せたとしても……もうあの子は……!!!)」
勇者「うわぁぁぁあああああ!!!!!! ちくしょぉぉぉぉ!!!!!」
勇者「誰がこんなことしやがったんだぁぁぁ!!!」
勇者「俺の幸せを……かえしやがれぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
勇者「わぁああああああああ!!!!!!」
狼少女「わぁー」タタタタッ 



100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 23:59:07.02 ID:nfVCKxWoo
翌朝 農村
「はぁー。今日もいい天気だなぁー」
「いいことありそうだなぁ」
村娘「ふぅー」
医者「……よし。異常はなさそうだ」
馬「ヒヒーン」
医者「次は……」
勇者「ごめんくださいっす!!!!」
村娘「勇者様!?」
「おぉ!! どうしたんですか!!」
勇者「ちょっと来てくださいっす!!」
医者「な、なにか?」
勇者「実は……」
狼少女「……」
村娘「(あれ。あの子、勇者様の……彼女ではないよね……)」 



101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 00:05:02.87 ID:WNVHldV5o
医者「……先の異変と酷似しているともいえますね」
勇者「確か薬あるんすよね。それ分けてください。今すぐに、ありったけ」
医者「しかし、効果があるかどうかは分かりませんよ。動物たちのとは別のもの、或いは改良されたものかもしれませんし」
勇者「んなこと言ってる場合じゃないっすよ!!」
医者「逆効果になってしまったら、どうするんですか」
勇者「うっ……。くそぉ、嫁さんがいる人はいちいち正論を……!! むかつくっす!!!」
医者「ともかく、その町の人を診てみないことには」
勇者「なら、みにいきましょう。今すぐ」
医者「私は獣医ですよ」
勇者「採血ぐらいできるんじゃないんすかぁ!?」
医者「……無茶苦茶な」
勇者「ガルルル!!」
狼少女「ガルルル……」
医者「守ってくださいますか?」
勇者「あんたが死んだら、悲しむ人がいるから、仕方なく守ってやる。ほら、いくっすよ!!」 



102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 00:09:02.02 ID:WNVHldV5o
村娘「大丈夫?」
医者「勇者様がいるから心配ないよ」
村娘「気をつけてね」
医者「すぐに戻ってくるよ」
村娘「うん……」ギュッ
医者「……」ギュッ
勇者「……」
狼少女「おぉー」
勇者「で、なんでお前ついてきてんだ?」
狼少女「お前、仲間傷つけた。許さない」
勇者「謝っただろ」
狼少女「ゆるさない!」
勇者「……好きにしろ」
狼少女「するっ!!」
勇者「(この差はなんだ……。俺、なんかしたんすかね……神様……)」 



103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 00:14:30.80 ID:WNVHldV5o
東の町 詰め所
隊長「……勇者様」
勇者「今から血を採るんで、じっとしててください」
医者「……どうも」
隊長「助かるのですか?」
医者「それはまだなんとも。ですが、調べれば分かることもあるはずです」
隊長「そうですね。お願いします」
医者「はい」
勇者「貴方、解決策を模索していたそうですけど、どうするつもりだったんすか?」
隊長「……」
勇者「こうしてお医者さんに診てもらおうとか思わなかったんすか?」
隊長「……医者はもういない」
勇者「もしかして」
隊長「私が殺した……。診てもらおうとしたら……私が……」
勇者「(都合が良すぎる……。誰かが操ってるのか……)」 



104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 00:20:24.89 ID:WNVHldV5o
医者「ーー結果が出ました」
隊長「……」
医者「若干、違いはありますが、私の調合した薬で症状は治まるはずです」
隊長「ほ、んとうですか……?」
医者「はい。今から配ります」
隊長「おぉ……おぉぉ……!!!」
勇者「問題はこの幻覚剤がどの程度使われているかですけど」
隊長「うぅ……くっ……。ーー恐らくは全ての町民に使われているはず」
勇者「それは聞きましたけど、確証でもあるんすか?」
隊長「今から14日前でしょうか……。不思議な霧が発生したんです」
勇者「霧……?」
隊長「濃霧でした……。きっとあれが原因なんです」
勇者「(誰が得するんすかねぇ……)」
医者「では、これを全ての町民に配ってください」
兵士「は、はい!!!」 



105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 00:23:09.12 ID:WNVHldV5o
酒場
町娘「……」
勇者「これで心配ないですから」
町娘「はい……」
勇者「それでは」
町娘「……」
勇者「すみません」
町娘「え……?」
勇者「約束、守れませんでした」
町娘「……」
勇者「勇者、失格っすね」
町娘「いえ……そんなこと……」
勇者「……さようなら」
町娘「ありがとう……ございました……」
勇者「(誰がなんのために……こんなこと……!!!)」ギリッ 



106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 00:27:59.97 ID:WNVHldV5o
農村
勇者「助かりました」
医者「勇者様。このことは……」
勇者「貴方は何もみなかったし、しなかったことにしときます」
医者「……」
勇者「そのほうが気苦労もなくていいでしょう」
医者「助かります」
勇者「では、これで」
医者「勇者様、お気をつけて」
勇者「うっす。ありがとうっす。あなたも幸せになってください」
医者「はい。勿論です」
勇者「……むかつくっす」
狼少女「どこいく?」
勇者「……帰る」
狼少女「わかった」 



107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 00:33:33.14 ID:WNVHldV5o
城下町 墓地
勇者「……親父。俺はやっぱり、誰とも結ばれない運命なのかもしれないぜ」
狼少女「うぁー?」ドガッ
シスター「ちょ、ちょっと!! 何をしているのですか!?」
狼少女「ガルルルル……!!」
勇者「あ、どうも」
シスター「墓を叩くなんて……!!!」
狼少女「なんだ、こいつ。食っていいのか?」
勇者「……すんません。ほら、行くぞ。お前のことも色々聞きたいし」
狼少女「あい」
シスター「何かありましたか?」
勇者「……自分の人生に絶望してます」
シスター「よければ教会のほうでお話を……」
勇者「いいんすか? なら、今夜にでも」
シスター「分かりました。待ってますね」 



108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 00:41:52.49 ID:WNVHldV5o
城内
兵士長「……陛下には話したのか?」
勇者「まだっす」
兵士長「ふむ……。誰が何のためにしているのかわからんが、忌々しき事態だな」
勇者「ここも危ないかもしれないっすね」
兵士長「実はな、それに関連しているかは分からんが農村での事件と似たようなことが頻発しているようだ」
勇者「マジすか?」
兵士長「ああ。見知らぬ相手が急に殴りかかってきたり、刺してきたり。殆ど通り魔ってことで片付けてたようだが」
勇者「……犯人は?」
兵士長「わかんねえよ。だが、陛下は犯人はこいつしかいねえって言ってる」ペラッ
勇者「手配書の女……っすか。美人っすよね」
兵士長「美人だが魔女だ」
勇者「魔女……」
兵士長「陛下がいうには、コイツが国の乗っ取りを企てているんだとよ。そのうち、討伐命令が下るだろうなぁ」
勇者「魔女っすか……魔女ね……」 



115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 17:33:15.86 ID:WNVHldV5o
兵士長「それにしても東の町で女を置いてきたって、その辺はお前のクソ親父とは違うな」
勇者「どう違うんすか?」
兵士長「お前のクソ親父なら精神的に弱ってる女を見かければ、確実に持って帰ってきてたぜ? 一夜限りの相手としてでもなぁ」
勇者「ふぅーん」
兵士長「まぁ、がめつさが無い分お前のほうがまだ人間はできてるなぁ。誇っていいぜ」
勇者「……俺に足りないのはあと少しの強引さなわけっすか」
兵士長「参考にするなよ。でさぁ、そろそろツッコんでいいか?」
勇者「なんすか」
兵士長「そいつ、誰?」
狼少女「……」
勇者「なんか知らないけどついてきたっす」
兵士長「別によぉ、他人の趣味にとやかく口出すつもりはねえけどさ、お前は勇者だ。流石に犯罪じゃねえか?」
勇者「失敬な。こんなワイルドをそのまま着込んだようなやつは断固拒否っすよ。俺の理想は守ってあげたくなるような……」
兵士長「はいはい。わぁーってるよ。清楚で可憐な美人さんだろ」
狼少女「あぅ?」 



117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 17:44:03.79 ID:WNVHldV5o
勇者「狼と一緒に襲ってきたんすよ。ゆるさなーい!!とか言いながら。そのあとはこうして俺の後ろにぴったりついて回る次第で」
兵士長「狼と……? そりゃ本当か、お嬢ちゃん?」
狼少女「……」プイッ
兵士長「あら……。嫌われてるな」
勇者「本当だよな?」
狼少女「あい」
兵士長「じゃあ、あの話は本当だったのか」
勇者「話って、先輩はこいつのことしってんすか?」
兵士長「人伝でな。あの農村の近くに狼が住んでいる森があるんだがよ、その森に狼に育てられた女の子がいるとかなんとか」
勇者「なんすて!?」
狼少女「おぉー」
兵士長「狼が捨てられた赤子を食わずに育ててるなんて荒唐無稽すぎて単なるホラ話だと思ってたけどよぉ……」
勇者「お前、狼に育てられたのか。ははーん、どうりで獣臭がするわけだ」
狼少女「そう?」クンクン
兵士長「(いや……でも……もし本当なら、こいつちょっとおかしくねえかぁ……?)」 



118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 17:52:21.77 ID:WNVHldV5o
勇者「その辺のことはじっくりと尋問してやるっすよ。じっくりとなぁ」
狼少女「ガルルル……!!! 変なことしたら食うぞ!!」
勇者「するかぁ!!! 俺にも相手を選ぶ権利ぐらいあるわい!!」
狼少女「ガルルルル……!! ガァァァウ!!!!」ガブッ!!!
勇者「いてぇー!! ゆるしてぇー!!!」
兵士長「……そいつのことどうするつもりだよ」
勇者「事情を聞いたあとで森に帰すか保健所にもっていくか決めるっす」
狼少女「お前ゆるさない!! 仲間傷つけた!!!」
兵士長「随分恨まれてるなぁ」
勇者「そうなんすよ。俺のこと殺そう思ってるのかもしれないっす。まぁ、こんなガキにやられるほど落ちぶれちゃいないっすけどね。はっはっはっは」
狼少女「うー!!!」ドガッ
勇者「いてぇ!? いい加減にしろこらぁ!!!」
狼少女「バカにするなぁー!!」
勇者「生意気なぁ!!」
兵士長「……」 



119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 17:57:07.32 ID:WNVHldV5o
兵士「隊長、勇者殿。国王陛下がお呼びです」
兵士長「俺もか。了解だ」
勇者「うーっす。あとでいくっす」
兵士長「今から行くんだよ」
勇者「えぇー?」
兵士長「おい」
兵士「はっ」
兵士長「この子のこと少し見ておいてくれ」
兵士「え?」
狼少女「あぅ」
兵士「こ、この子どもは……」
兵士長「いいから」
兵士「了解」
勇者「じゃ、行ってくるから。ここで大人しくし待ってろ」
狼少女「あい」 



120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 18:06:55.80 ID:WNVHldV5o
謁見の間
王「ーーご苦労であったな」
兵士長「いえ」
王「連続殺人犯は自害か……」
勇者「力及ばず申し訳ありません、陛下。ただ、その町でも他で起こっている奇怪な出来事が同じく発生しておりました」
兵士長「被害は広範囲に及んでいます。北の町、南の港でも多発しているようです」
王「こんなことができるのはあの魔女だけだ。ーーこれより魔女狩りを行う!!! 全兵に通達しろ!!!」
衛兵「はっ!!!」
勇者「(魔女狩りっすかぁー)」
王「草の根を燃やしつくしても構わん。必ず魔女を捕らえ、ここへつれて来い」
兵士長「生け捕りにするのですか」
王「当然だ。今回の罪を償わせる」
兵士長「はっ」
勇者「仰せのままに」
王「期待しておるぞ」



122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 18:14:33.81 ID:WNVHldV5o
通路
勇者「ふぃー。陛下も結構乱暴なことするんすね」
兵士長「妃に先立たれてから良くも悪くも仕事熱心になってしまったからな。以前の陛下であればもう少し慎重だったはずだが」
勇者「魔女狩りか……」ペラッ
兵士長「どう思う?」
勇者「そうっすね。なんで陛下が魔女が犯人だと決め付けてるのかわかんねーってぐらいっすかね」
兵士長「そもそも陛下はこの事件が発生する前から手配書を出してまで魔女を探していたわけだからな」
勇者「この事件の犯人にしちゃってますけど、どうなんすかね」
兵士長「あー、やだやだ。こういうきな臭いことは。もっと分かりやすく危険だったらいいのになぁ」
狼少女「わぁぁー」タタタッ
勇者「よぉ」
狼少女「あう」
兵士「こらぁー!! 待てというのに!!!」
狼少女「ガルルルル……!!! こいつでてきた! おまえ、いらない!!」
兵士「そ、そうかもしれないが……」 



123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 18:24:23.70 ID:WNVHldV5o
勇者「どうも。もういいですよ」
兵士「は、はぁ」
勇者「大人しくしてたか?」
狼少女「あい」
兵士「問題なく大人しかったですよ。黙って座ってましたし。ただ勇者殿が出てきた瞬間、走り出して……」
勇者「大人しくしてねえじゃん。嘘ついたのかよ。謝れ」
狼少女「すまん」
兵士長「それより明日から大仕事だ。その子のことどうするか今日中に決めろよ」
勇者「わかってるっすよぉ」
兵士「それでは自分も持ち場に戻ります」
勇者「あざしたぁ。先輩、今度は一緒に仕事できそうっすね」
兵士長「頼りにしてるぜ、勇者様」
勇者「頼ってくださいっすよ。それじゃ。また明日。お前も挨拶ぐらいしろ」
狼少女「ばいばい」
兵士長「おーう。しっかり休めよぉ」 



124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 18:31:43.90 ID:WNVHldV5o
宿舎 勇者の部屋
勇者「で、狼に育てられたのは本当なのか?」
狼少女「あい」
勇者「どんなこと教えてもらった?」
狼少女「狩りのやりかた。獲物の息の根の止め方」
勇者「へぇー。どんな感じ?」
狼少女「ガァァァウ!!!!」ガバッ
勇者「くっ……!?」ググッ!!!
狼少女「ガルルルル……!!!!」
勇者「分かったからすわれ!!」
狼少女「……」
勇者「なんで俺についてきたんだ?」
狼少女「お前、仲間傷つけた。ゆるさない。殺すまでつきまとうつもり」
勇者「……なぁ、ナンパできなくなるからやめてくれないか? ほら、親代わりの狼も森でお前の帰りを待ってるだろうしさ。ここは素直に……」
狼少女「やだ」 



125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 18:40:42.35 ID:WNVHldV5o
勇者「勘弁してくれよ……」
狼少女「はらへった」
勇者「しらねーよ」
狼少女「はらへったぁ」ガブッ
勇者「いてぇよ。自分で何か狩ってこいよ。狼に育てられたんだろ?」
狼少女「わかった」
勇者「待て待て。冗談だよ。んなこと町でされたら俺が困る」
狼少女「あぁー? はらへった」
勇者「ちょっと待ってろ……。えーと……。あぁ、あった。ほら、パンでもかじってろ」ポイッ
狼少女「あう」モグモグ
勇者「(最悪だ……。どうにかして森に……。そうだ。どうせ魔女狩りに出るんだから、森へ行って……)」
勇者「よし。そうするか」
狼少女「くった」
勇者「おう。そうか」
狼少女「うまかった。もっとないのか」 



127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 18:48:33.17 ID:WNVHldV5o
城内 中庭
兵士長「(魔女……。どんな奴だろうね。陛下の読み通り、一連の事件の犯人だとするなら、幻覚に気をつけねぇと同士討ちで自滅も……)」
勇者「ほーら」ポーイッ
狼少女「がうー!!」タタタッ
勇者「狼っつーより、犬だな」
兵士長「よう、旦那。球遊びとは楽しそうだなぁ」
勇者「先輩。うぃーっす。楽しそうにみえるっすか?」
兵士長「見えるぞ。変態にも見えるがな」
勇者「あいつが退屈で死にそうとか喚きだしたんでしかたなくっすよ。部屋の食料殆どの食べるし、マジ疫病神っすよ」
兵士長「ハハッ。昔から獣とガキにはモテるから、どストライクだな」
勇者「先輩、俺はーー」
狼少女「あうあうっ」
勇者「おかえり。もう一回行ってこい」ポーイッ
狼少女「がうー!!」タタタッ
兵士長「なんだ。飼うのか?」 



128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 18:58:38.24 ID:WNVHldV5o
勇者「飼わないっすよ。明日、町を出て森に帰してくるつもりっすから」
兵士長「そうなのか。もったいねえ。折角お前のことを好いてくれてるお嬢さんなのによ」
勇者「殺したいほど好かれたくはねえっす」
兵士長「そうかい? おっ。てことは今日は一緒に寝るのか? ヒュー。やるじゃん。ド変態野郎っ。このこの」
勇者「なわけないでしょうが!!!」
兵士長「風呂にもいれてやらないといけねえし、下の世話もあるし、大変だな」
勇者「あとで教会に行くんで、そこで今晩だけ預かってもらうつもりっす」
兵士長「教会に用事でもあんのか?」
勇者「ふっ。可憐なシスターが俺のことを待ってくれているんすよ」
兵士長「ほーぅ?」
勇者「実をいうとわかってたんすよね。俺の伴侶は彼女しかいないって」
狼少女「あうあうっ」
兵士長「この子のことか」
勇者「お前じゃねーよ!!! おらぁ!!!」ポーイッ
狼少女「がうー!!!」タタタッ 



129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 19:05:16.12 ID:WNVHldV5o
夜 教会
勇者「ほら。ここでは一言も喋るなよ。静かにしてないといけないなんだから」
狼少女「あい」
シスター「あ……」
勇者「約束通り、来ました。君へ懺悔するために」
神父「ほう。この方が……」
シスター「ええ……」
勇者「どうも、初めまして。ところでこの子のことこき使いすぎですよ。毎日毎日水汲みさせて。倒れたらどうするつもりですか?」
神父「はぁ……。シスターとしての仕事ですから」
勇者「それにしたって……!!」
シスター「あの、お話のほうを……」
勇者「聞いてくれますか?」キリリッ
シスター「是非、聞かせてください。どうぞ、こちらへ」
勇者「はぁーいっ! お前はここでお座りしとけ」
狼少女「あい」 



130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 19:17:08.04 ID:WNVHldV5o
懺悔室
勇者「俺、この世に生を受けてから女性とお付き合いをしたことがないんです」
シスター「そうなのですか」
勇者「あなたは?」
シスター「私は修道女です。そういうことは……」
勇者「おっと。失礼しました。そうですよね。しかし、こんなにもお美しいのだから恋をしたほうがいい。より貴方は綺麗になれる。ご趣味は?」
シスター「続けてください」
勇者「ああ。申し訳ない。脱線しましたね。幾ら町で声をかけても相手にしてもらえません」
勇者「何がダメなのかと悩む日々でした。安定した収入さえあればモテると恋愛マニュアルにも書いていたのでがんばって兵士になったのに結果は変わらず」
勇者「勇者になればモテると言われ、血の滲む努力をしても女の子の柔らかさを知るだけに留まっている始末……」
シスター「……」
勇者「あ、でも結婚を約束した女性もいるんですよ。ちょっと辛いことがあったので俺はそっとしておこうと思ったんで、諦めたんです」
シスター「その女性、本当は期待していたのかもしれませんよ。貴方に手を引いてもらえることを」
勇者「……マジっすか?」
シスター「どれほど辛いことがあったのかは分かりませんが、女からすればそういうときほど心の支えになってくれる殿方を求めていますから」 



131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 19:26:47.64 ID:WNVHldV5o
勇者「マジかー!!! あぁー!!! 強引に連れてかえっていればよかったぁー!!! うわぁぁー!!!!」
シスター「まだ待っているかもしれません。機会があれば顔を見に行ってみてはどうでしょう」
勇者「ぐぐ……!! い、いや!! もう過去の女!! 俺は忘れたんです!!」
シスター「付き合ってはないのでしょう?」
勇者「今はもう、君だけしか見えないんだ!!」
シスター「え……」
勇者「神の前で愛を語らないか?」
シスター「でも……私は……」
勇者「ああ、失礼。急に言われても困るだけですよね。はははは。俺としたことが。君を困らせるようなことをしてしまった」
シスター「いえ……。でも、あの……勇者様は私のことを……?」
勇者「(きたっ!! 食いついた!!! いける!! 恋愛マニュアルにもシスターは恋に奥手だから攻めあるのみって書いてたしなぁ!!!)」
勇者「ええ。恥ずかしいことですが……」
シスター「どうしてですか?」
勇者「どうして? 決まっているじゃないですか。貴女がこんなにも可憐だからですよ」
シスター「あ、ありがとうございます……」 



132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 19:35:14.89 ID:WNVHldV5o
勇者「……」
シスター「……」モジモジ
勇者「(あぁー。神よ。俺にこんな可愛く清楚な女の子を紹介したくて、今まで試練を与えていたのですね。アーメン)」
シスター「あ、あの……」
勇者「な、なんですかぁ!?」
シスター「……明日の予定は?」
勇者「明日ぁ!? 明日は……その……仕事で……。いつ戻ってこれるかわからないんですよ」
シスター「そうですか……」
勇者「で、でも!! 絶対に帰ってきます!!! だから、そのとき改めて……!!! はい!!!」
シスター「はい。待っています」
勇者「(はぁー。祝福の鐘がなってるよぉー。これはもう……たまんねー!!! うっひょー!!!)」
勇者「この町で一番のホテルをとっておきます。無論、スウィートルームです。帰ってきたらそこで話しましょう。ゆっくりと。今後のことを」
シスター「そうですね。私も……その……ゆっくりとお話……したいですから……」
勇者「今日は貴女のような天使と話せてよかった。ありがとうございます」
シスター「私もです」 



133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 19:51:05.83 ID:WNVHldV5o
教会
神父「……」
狼少女「……あう?」
神父「あなたのことどこかで見たことが……」
狼少女「私は知らない」
勇者「約束ですからね。あともう一度確認しときますけど、好きな人がいるとか婚約しているとかないですよね?」
シスター「ありませんよ」
勇者「ふぅー。なら、いいんだ」
狼少女「わぁぁー」タタタッ
勇者「元気か?」
狼少女「あい」
シスター「ところで、この子は……?」
勇者「一時的に保護しているだけです。勘違いしないでください。安心してください。もう俺は貴女のことしか考えてませんから」
シスター「保護ですか」
勇者「ああ、そうだ。この子のこと今晩だけ預かってもらえないでしょうか?」 



134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 20:02:00.42 ID:WNVHldV5o
神父「それは構わないですが……」
勇者「よかった。見ての通り野生児なんで風呂はともかく、トイレには気をつけてください」
神父「分かりました。お任せください。責任をもって預かりましょう」
勇者「助かります」
神父「勇者様、この子はどこで?」
勇者「任務中に襲ってきたんですよ。狼と一緒に」
神父「……そうですか」
勇者「なんか知ってるんですか?」
神父「もしかしたら、という程度なのですが」
シスター「まさか、この町に……?」
神父「いたかもしれません。ただそのときは赤子だったので確信はないのですがね」
勇者「ここに捨てられてたってことですか?」
神父「いえ、母親と一緒でした」
勇者「母親が……」
狼少女「あう?」 



136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 20:30:51.74 ID:WNVHldV5o
神父「ここで子どもを手放すと神に告げていたのかもしれませんね」
シスター「なんてこと……」
勇者「そのことは俺が預かります。他言はしないでください」
神父「承知しております」
勇者「……」
狼少女「なんだ?」
勇者「(調べなきゃいけないか……?)」
狼少女「こっちみんな」
勇者「それじゃ。明日の朝、来ますので」
神父「はい。お待ちしております。おやすみなさい」
シスター「おやすみなさい」
勇者「よし。帰ろう」
狼少女「あい」
勇者「お前はこなくていい。ここにいろ」
狼少女「あぇ? やだ」 



138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 20:43:58.50 ID:WNVHldV5o
勇者「やだじゃないんだよ」
狼少女「やー」
勇者「あのなぁ」
狼少女「お前、逃げる気だ!! そんなことさせない!!!」
勇者「迎えにくるっていってんだろ」
狼少女「信じてやるもんか。お前、仲間傷つけたし」
勇者「今日はここにいろ!」
狼少女「い、や、だ!」
勇者「ええい!! 今まで普通に待ってたじゃないか!!」
狼少女「見えるところはいい。見えないところにいくな」
勇者「何様だこんにゃろぉ」
シスター「あのぉ」
勇者「なんでしょうか?」キリリッ
シスター「勇者様も教会に泊まられてはどうすですか?」
勇者「そうしたいのは山々ですが、明日の準備もあるので……」 



140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 20:53:14.40 ID:WNVHldV5o
狼少女「ガルルルー!!」ガブッ
勇者「いってぇんだよ!!」
神父「困りましたね。勇者様から片時も離れたくないということですか」
シスター「どうしましょうか」
勇者「こら。お姉さんが困ってるだろ。いいから、お前はここにいろ」
狼少女「いやだ」
勇者「おい」
狼少女「う……なんだ……?」
勇者「必ずに迎えにくるから」
狼少女「……」
勇者「俺は逃げない」
狼少女「……ぜったい?」
勇者「おう。これでも約束は守るほうだ。だから、ここにいろ」
狼少女「……ぁぃ」
勇者「納得してないような返事だな。まぁ、いいや。一晩だけなんだからお姉さんに迷惑だけはかけるなよ」 



141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 20:59:27.43 ID:WNVHldV5o
神父「では、改めまして。おやすみなさい、勇者様」
勇者「よろしくお願いします」
シスター「は、はい」
勇者「じゃあな」
狼少女「……」
シスター「おやすみなさいって言ってあげて」
狼少女「ふんっ」
勇者「なんでぇ、その態度。むかつくなぁ」
神父「拗ねているのではないですか?」
勇者「かわいくねえやつぅ」
シスター「そんなことないですよ」
勇者「そうですね。これも愛嬌というやつですかね。それでは、おやすみなさい」
シスター「はい。おやすみなさい」
狼少女「うぅ……。む、むかえにこいよー!!! こなかったら探しにいくからなぁー!!!」
勇者「うるせえなぁ。わかってるっつーの」 



143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 21:10:10.03 ID:WNVHldV5o
城内 通路
勇者「(出生名簿ってどこで見れるんだろう……。ああ、いや、捨てたってことはそういう記録も残ってないかもな……)」
兵士長「お。戻ってきたか。待ってたぜ」
勇者「先輩。どうかしたんすか?」
兵士長「明日からの魔女狩りだがな、お前は遊撃扱いだとよ」
勇者「自由にしていいってことっすね。なら、先輩の部隊にいれてくださいよ」
兵士長「そのつもりだ。だが、お前はその前にあの女の子を家まで送るんだろ? 隊との合流はそのあとだな」
勇者「そうなっちゃうっすか」
兵士長「俺たちの行動予定表渡しとく。ま、がんばって追いつけ」
勇者「うぃーっす」
兵士長「あの子、やっぱりなんかあるか?」
勇者「あるでしょうね。狼に育てられたってのはきっとデマっすよ。あんなにちゃんと喋ってるんすから」
兵士長「人間の教育係がいるか」
勇者「ちゃんとした母親がいるのかもしれないっす」
兵士長「あっちもこっちも面倒だな。勇者様は大変だぁねぇ。お疲れさん」 



144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 21:21:35.80 ID:WNVHldV5o
翌朝 宿舎 勇者の部屋
勇者「すぅ……すぅ……」
勇者「あぁ……そんなぁ……きょうかいで……そんな……のぞむところよぉ……ぬふふ……」
『勇者殿!! 勇者殿!!』ドンドン
勇者「ん……なんすかぁ……いい夢みてたのにぃ……。まぁ、正夢になるだろうけど……にゅふふふ……」
『勇者殿!! 起きてください!!』
勇者「もー! なんすかぁー!?」
兵士「おはようございます!!」
勇者「うっす。で、なんすか? 俺、もう少しゆっくり寝てられるんすけど」
兵士「城門のところにあの子どもがいるんですよ」
勇者「子ども……?」
兵士「ほら、昨日勇者殿が連れていた女の子です」
勇者「……なんかしたっすか?」
兵士「あいつを探しにきたと叫びながら無理やり中に入ろうとしたところを衛兵に取り押さえられたみたいで」
勇者「すぐいくっす」 



145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 21:27:42.92 ID:WNVHldV5o
城下町 城入り口
門兵「こら、暴れるな!!」
狼少女「はなせぇ!!! ガルルルル!!! ここにいるのはわかってるんだー!!!」
勇者「なにしてんだ?」
狼少女「あー!! ……こないから探しにきた」
勇者「あのなぁ」
狼少女「朝になったのにこないから探しに来た。お前、やっぱりうそつきだ」
勇者「もうちょっと寝かせてくれよ」
狼少女「まぁ、いたからいい。ゆるしてやる。逃げなかったんだな。ほめてやる」
勇者「すんません」
門兵「いや、いいんだが。それよりもこの子は?」
勇者「任務中に色々あって保護してるだけです」
門兵「そうか。俺はてっきりモテないあまりに……」
勇者「どういう意味っすか?」
門兵「ま、まぁ、がんばってくれ。俺は応援してるぞ」 



146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 21:35:05.80 ID:WNVHldV5o
食堂
狼少女「はむっ……はむっ……」モグモグ
勇者「朝からよく食うな」
兵士長「いよぉ。きいたぜぇ。姫様が迎えにきたらしいじゃねえか」
勇者「何が姫様っすか。こっちはいい迷惑っすよ。神父さんにも謝らなきゃいけなくなったし」
兵士長「この様子じゃ帰れねえんだな」
勇者「でしょうね」
狼少女「んぅ? やらないから」
勇者「いらねぇよ」
兵士長「どうして狼とつるんでいるのかはわからねえが、能力は人間と同じか。離れた場所に連れて来られたら帰り道が分からない」
勇者「……」
兵士長「お前しか頼るやつがいないんだな」
勇者「こいつつれてちゃ日課のナンパにいけねぇっすよぉ」
兵士長「いいじゃねえか。教会のシスターと懇ろなんだろ?」
勇者「でへへへ。じつはぁ、そーなんすよぉ。任務が終われば一緒にホテルで……でぇっへっへっへ……あぁー。まちきれないっすぅー」 



147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 21:41:43.48 ID:WNVHldV5o
兵士長「んじゃ、合流するの楽しみにしてるぜ」
勇者「うぃーっす」
狼少女「うぃーっす」
勇者「真似すんなよ」
狼少女「すまん」
兵士長「ハハッ。仲良いいなぁ」
勇者「うっさいっす!!」
狼少女「はむっ……はむっ……」
勇者「大人しく待ってろっていっただろ。何逃げ出してきてんだよ」
狼少女「ふんっ」
勇者「お前のおかげでこっちは迷惑してるんだよ。わかってんのかぁ?」
狼少女「しらん」
勇者「知らんってなんだ!?」
狼少女「はむっ……」
勇者「食ったら教会に行くぞ。彼女に好感度、確実に落ちてるなぁ……」 



148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 21:48:20.36 ID:WNVHldV5o
教会
シスター「よかったです。朝起きたら、もう姿がなかったので心配していたんです」
勇者「心配をおかけして本当に申し訳ありません。ほら、お前も謝れ」
狼少女「……」
勇者「おい」
シスター「いいですよ。無事で何よりです」
勇者「そう言っていただけるとありがたい。ーーこれ、貴女のために花を買ってきました」
シスター「わぁ……。綺麗……。いいのですか?」
勇者「勿論っ」
シスター「ふふっ」
勇者「うぇっへっへっへ……」
狼少女「ガウッ!」ガブッ
勇者「なんだよ。邪魔すんな」
シスター「では、ミサの途中ですので。勇者様、お気をつけて」
勇者「あ……。は、はい。必ず、帰ってきますから。そのときはよろしくしましょう。いえ! よろしくお願いします!!」 



149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 21:54:35.15 ID:WNVHldV5o
城下町
勇者「さぁー。いくぞぉ」
狼少女「おー」
門兵「……」
勇者「ええと……。問題の森は……農村の近くだから……この辺りか」
狼少女「おー?」
勇者「お前、地図読めるのか?」
狼少女「よめない」
勇者「なら、覗きこむな。邪魔だよ」
狼少女「あぅ」
勇者「農村を経由してもいいけど……あの幸せの二人をみると憎悪がわいてくるからやめておいて、直接行くかなぁ……」
狼少女「みーせーろー」ガブッ
勇者「噛み付くなよ」
狼少女「ガルルルー」
門兵「(うーん……。羨ましいやつ……。くそ……くそ……)」 



150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 22:01:13.79 ID:WNVHldV5o
勇者「あー。早くかえりてぇー」
狼少女「なんで?」
勇者「フィアンセが待ってるんだよ」
狼少女「結婚、するのか」
勇者「……」
狼少女「誰とする?」
勇者「お前には関係ないだろ」
狼少女「そうだけど」
勇者「(フィアンセって言葉も結婚の意味も知ってるってことか……。普通に生活できそうだな……)」
勇者「なぁ」
狼少女「んぁ?」
勇者「お前の母親って誰なんだ」
狼少女「母親はいない。父親はいる」
勇者「誰だ?」
狼少女「お前、一度見てるだろ。私と一緒にお前と戦った」 



151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 22:06:45.42 ID:WNVHldV5o
勇者「あぁ、あの狼がそうなのか」
狼少女「もう少しでお前を倒せたのに……」
勇者「お前置いて逃げちゃったもんな」
狼少女「逃げてない。あれはせんりゃくてきてったい」
勇者「難しい言葉知ってるんだな」
狼少女「教えてもらった」
勇者「父親にか?」
狼少女「父だけじゃない。お兄ちゃんにもお姉ちゃんにも教えてもらったことあるぞ」
勇者「ふぅーん」
狼少女「みんな物知りなんだ」
勇者「お前はさぁ……その……。人間なのか? 狼なのか?」
狼少女「狼人間だ」
勇者「なるほど。そうきたか」
狼少女「私は人間と狼の間にできた、最強の狼なんだ。こわいだろー?」
勇者「いや、全然」 



152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 22:12:16.78 ID:WNVHldV5o
狼の森
勇者「ここだな。ーーおい、ついたぞ」
狼少女「……」プイッ
勇者「まだ怒ってるのか? わかったよ。お前は怖いよ。恐怖の対象だ。これでいいだろ?」
狼少女「ガルルル……!!」
勇者「(ダメだ。完全に拗ねちゃってるもんなぁー。これだからガキは嫌いなんだ)」
狼少女「お前、きらいだ」
勇者「ほら、もうここまで来たら帰ることができるだろ?」
狼少女「……」
勇者「元気でな」
狼少女「どこいく?」
勇者「大事な仕事があるんだよ。お前は父親のところに戻れよ」
狼少女「……あい」タタタッ
勇者「……」
勇者「行きますか」 



154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 22:27:21.83 ID:WNVHldV5o
農村
医者「ーー狼に人の子を育てるだけの能力があるかどうかは微妙でしょうね」
勇者「やっぱ、そうっすか」
医者「可能性としてなくはない。ただ、仮に狼が人の子を育てたとしても、その子が言葉を覚えることはできませんし、遠吠え等の狼に似た行動をとるはずです」
勇者「二足歩行もできませんよね?」
医者「無論です。加えて短命でしょうね。口にするものは人間のそれと全く異なりますから」
勇者「……」
医者「どう考えても勇者様のいうその子どもには、人間の親、或いは親代わりがいるはずです」
勇者「問題はその親がどうして狼と娘を一緒にさせていているのか。娘に狼の真似事をさせているのか」
医者「本当の娘ではないかもしれませんね。どこからか連れてきた子どもを使って実験ということも」
勇者「実験?」
医者「聞かない話ではありません。犬が猫を育てたり、豚が犬を育てたりするという事例はあります」
勇者「狼が人間の子どもの面倒をみてくれるかってことっすか? でも、あの子は自分の父親が狼だって信じてるんすよ?」
医者「そこです。面倒をみるかどうかの実験ならば、そのような思い込みをしていることが不自然です。狼が世話を始めれば実験終了ですからね」
勇者「逆かもしれないっすね。狼が人間の面倒を見るかどうかじゃなく、人間が狼を親だと思い込むかどうかの実験……とか」 



155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 22:36:59.81 ID:WNVHldV5o
医者「……どちらにしても非人道的です」
勇者「そうっすよねぇー」
村娘「どうぞ。コーヒーしかすぐに出せるものがなくて……」
勇者「ああ、お構いなく」
医者「各地で起こっている事件と関係があるのでしょうか」
勇者「そうかもしんねーっすね」
医者「だとしたら、私の薬も役に立つかもしれませんね」
勇者「俺も貰うつもりで来ましたから」
医者「好きなだけ持って行って下さい」
勇者「すんません。何度も手助けしてもらっちゃって」
医者「何を言っているんですか。貴方は村の恩人。そして、命の恩人でもあるのですから」
村娘「そうですよ。みんなが元気でいられるのは勇者様のおかげですもの。私、本当に幸せです。もし、あの子が処分されていたらきっと結婚なんてできなかったかもしれない……」
勇者「マジっすか。殺しとけばよかった」
医者「あはははは。勇者様、またまた。心にもないこと」
勇者「マジでいってんすけど」 



156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 22:45:54.95 ID:WNVHldV5o
医者「こちらが薬です。飲んですぐに効果が現れるかはわかりません。もし、何かあればすぐに私のところへ来てください」
勇者「飲ませる前に診せたいっすけど、まぁ、状況に応じてっすね」
医者「ええ。まぁ、私は獣医ですので、できればちゃんとした病院にいってもらったほうが」
勇者「……くやしいっすけど、あんたが誰よりも頼りになる医者なんすよ」
医者「……」
勇者「また来ると思います。そのときはお願いします」
医者「はい! 勇者様のご期待に応えられるよう、がんばります!!」
勇者「あざす」
医者「こうなってくると薬は流通させたほうがいいですね。手は打っておきます」
勇者「何から何まであざす」
医者「いえ。貴方のお役に立てるなら光栄ですよ」
勇者「嫌味にしかきこえーっす」
医者「いつでも頼ってくださいね」
村娘「勇者様ー!! お気をつけてー!!」
勇者「うーっす!!」 



157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 22:54:58.69 ID:WNVHldV5o
狼の森
勇者「(あいつが人体実験の被害者っつーなら、その親がなんか知ってる可能性があるなぁ……)」
勇者「さてさて……。泳がしたんだから、出てきてこいよー、母親か教育係さん」
「グルルル……」
勇者「……ん?」
勇者「……」
勇者「(俺を狙ってるわけじゃないか……。この唸り声はどこから……)」
狼「グルルルル……!!」
狼少女「ガルルルル……」
「まさか逃げるとはね。ダメじゃない」
勇者「(あれは……)」ペラッ
「ふふ、でも、こうして戻ってきてくれたんだから許してあげる。もう逃げちゃダメよ?」ナデナデ
狼少女「あい」
勇者「(魔女……!)」
魔女「さぁて、ご飯の時間にしようか。みんな、いらっしゃい」



159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 23:06:14.97 ID:WNVHldV5o
狼「オォォン!!」
魔女「ほーら。いっぱいあるから、慌てないでいいわよぉ」
狼少女「はむっ……はむっ……!!」
勇者「なんてこった……」
勇者「(魔女、ちょー美人じゃん。年上のお姉様じゃん。踏まれたいじゃん)」
勇者「(あの数だ。ここで出て行っても狼のエサになるだけだな……。いや、でも、エサくってるし、俺が食べられることはないか)」
勇者「……よしっ」
魔女「ほら、もっと綺麗に食べなさい。口元が汚れているわよ」フキフキ
狼少女「うぅ……」
勇者「ーーいいペットをお持ちですね、お姉様」
魔女「……」
狼「ガルルル……!!!」
勇者「よぉ。狼畜生。また、返り討ちにしちまうぜ?」
狼「クゥーン……」
狼少女「あ……ぅ……」 



160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 23:12:29.07 ID:WNVHldV5o
「グルルル……!!!」
「ガルルル……!!!!」
勇者「(ざっと20匹か……。まともにやったら死ぬな)」
魔女「珍しいわね。この森に人間が迷い込むなんて。狼の縄張りだって知らないのかしら?」
勇者「貴女の色香に誘われてしまってね。のこのことやってきてしまいましたよ」キリッ
魔女「そう。篭絡されにきたということかしら?」
勇者「してくれるんですか? 是非ともお願いしたい」
魔女「うふっ。いいわよ」
勇者「ただし……」
魔女「なにかしら?」
勇者「俺の家まで来てもらいますけどね」シャキン
魔女「……国王の差し金ね。一人しかいないということは、勇者様かしら」
勇者「よくご存知で」
魔女「勇者って本当にバカしかいないのね。いつも一人でやってきては気障な台詞はいて、死んでいくだけなのに」
勇者「貴女のような美しい人を前にしたら男はみんな腑抜けにもなりますよ」 



162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 23:20:34.19 ID:WNVHldV5o
魔女「似たような台詞、ずっと前にも聞いたわ。さてと……」
「グルルル……」
「ガルルル……」
勇者「……」
狼少女「うぁ……ぅ……」
魔女「ーーやれ」パチンッ
狼「ガァァァァァ!!!!」ダダダダッ
狼少女「やめて!!」
狼「……!」
魔女「なんの真似?」
狼少女「あ、あいつは……あの……敵じゃない……」
魔女「何を言ってるの?」
狼少女「仲間、傷つけたけど……わ、わるい人間じゃない……」
魔女「……もう少し強いお薬が必要のようね」
狼少女「うぁ……!?」ビクッ 



163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 23:27:24.48 ID:WNVHldV5o
勇者「ーーそこまでにしてもらおうか。貴女を斬りたくはない」
魔女「……意外とすばやいのね」
勇者「伊達に勇者って呼ばれてませんからね」
狼少女「あ……ぁ……」
勇者「一つ聞きましょうか。農村で家畜が凶暴化したのは貴女の仕業ですか?」
魔女「農村……。ああ、あれね。ええ。試作品を使ってみたの。人間を見ると暴走してくれるかどうかをね」
勇者「何のために?」
魔女「貴方にいう必要があるの?」
勇者「なんて馥郁たる香り……。香水な何をお使いになっているのですか?」クンクン
魔女「変なやつ」
「ガァァァア!!!!」
勇者「おっと!! その牙で噛まれたくはないな!!」バッ
魔女「食い殺せ」
狼「オオォォォォォオ!!!!」
勇者「やべぇ。逃げろぉ」 



164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 23:33:48.50 ID:WNVHldV5o
魔女「逃がすな!!」
「ガァァァァ!!!」
勇者「ひえぇー!!!」
狼少女「あ……」
勇者「一緒にこい!!」
狼少女「え……」
勇者「どうした!? こい!!」
狼少女「ーーあいっ!!」ギュッ
魔女「な……!! どこに行くの!!!」
狼少女「ご、ごめんなさい……」
魔女「そんなの許さないわよ……!! 許さない……!!!」
勇者「(すげー怒ってるな……)」
勇者「お姉様、この子は預からせてもらいますよ。母親が泣いているかもしれないので」
魔女「な、なんですって……!?」
勇者「また会える日を楽しみにしてますよ。お姉様。今度会うときにはもう嫁がいるだろうけど、愛人にはしてあげますから心配いりませんよ。ではでは」ダダダッ 



165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 23:39:12.96 ID:WNVHldV5o
「ガァァアアウ!!!!」
勇者「あぶねぇ!?」
狼少女「なんで、斬らない?」
勇者「仲間傷つけたら、お前怒るだろ。だから」
狼少女「……」
「ガァァアアア!!!!」
勇者「やめてぇ!!!」バッ!!!
狼少女「がんばれ! がんばれ!」ペシペシ
勇者「おめえを抱いてるから動きが鈍くなるんだよ!!」
狼少女「すまん」
「ガァアアアアウ!!!!」
勇者「ひぇぇ!!」
狼少女「おぉー」
勇者「くそぉぉぉ!! 早く帰って結婚してぇぇぇぇ!!!」
狼少女「あい」ギュッ 



166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 23:48:20.22 ID:WNVHldV5o
狼「クゥーン……」
魔女「逃がしたのね?」
狼「……」
魔女「何をしているの!!!」ゲシッ!!!
狼「クゥーン……」
魔女「早く探して来なさい!!! はやく!!!」
狼「……」タタタッ
魔女「……っ」
魔女「もっと投与量を多くしておくべきだったわね」
魔女「数日の間外界に行っただけであんな男に誑かされて……」
魔女「許せないわ」
魔女「しっかりとお仕置きしてあげないとね」
魔女「そしてあの勇者も……」
「グルルルル……」
魔女「そうね。勇者を追うより、待ち伏せしたほうがいいわね。ふふふふ……」 



167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 23:54:24.08 ID:WNVHldV5o
農村
医者「では、採血を……」キラッ
狼少女「わぁぁー!!」ギュッ
勇者「なんだよ?」
狼少女「ちゅうしゃぁ……やだぁ……」
勇者「やれよ」
狼少女「ガルルル……!!!」
勇者「おねがいします」
医者「はい」
狼少女「たすけろー!!! あ……あぃー!!!!」
勇者「ハッハッハッハ。ざまーみろ」
村娘「しかし、勇者様。よく狼の群れから逃げてこれましたね」
勇者「こいつが狼のことをよく知ってたんで、なんとかなりました」
村娘「それでも普通の人では助かったとしても大怪我していますよ。勇者様、流石ですね」
勇者「今からでも遅くありません。惚れてくれてもいいんですよ?」キリリッ 



168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 00:02:34.28 ID:36thv87Do
狼少女「ぐすっ……」
勇者「なんだ、元気ないな。別に痛くなかっただろ?」
狼少女「……私、仲間裏切った。悪いのは私。きっとみんな恨んでる」
勇者「じゃあ、俺についてくることなかったのに」
狼少女「お前がついてこいっていったから!!!」
勇者「俺の所為か!?」
狼少女「ガルルルー!!」ガブッ
勇者「いてぇよ!!」
医者「……結果が出ました」
勇者「どうでした?」
医者「やはり同種の薬を投与されているようですね」
勇者「つまり……」
医者「動物の凶暴化、町で起こった連続殺人、そして狼に育てられた女の子。これらは勇者様が見た魔女の仕業で間違いないかと」
勇者「あぁ……。残念っすね。こんな事件を起こしてさえいなければ俺の正妻になれるチャンスもあったのに」
医者「これからどうされるおつもりですか?」 



169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 00:09:51.20 ID:36thv87Do
勇者「とりあえず、こいつを正気に戻すとして……。まぁ、陛下に報告しておわりっすね」
医者「そうですか。薬のほうは任せてください」
勇者「お願いするっす。ほら、これ飲め」
狼少女「なにこれ?」
勇者「薬だ。これでお前は元の女の子に戻れる」
狼少女「元の……?」
勇者「おう。それでできれば思い出して欲しいんだよ。お前の母親のことをさ」
狼少女「薬、きらいだ」
勇者「飲めって」
狼少女「いーっ」
勇者「……」グイッ
狼少女「ふぁふぇふぉー!!!」
医者「そ、そんな乱暴にしなくても……」
勇者「ほーら、のめ!!」
狼少女「ふぁにゃー!!!」 



170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 00:20:56.47 ID:36thv87Do
狼少女「うぇぇ……まずい……」
勇者「……どうだ?」
狼少女「まずいっ!!」ドガッ!!!
勇者「いって!! なにすんだこらぁ!!!」
狼少女「うまいものくわせろー!!!」
勇者「母親は!?」
狼少女「いない!!」
勇者「父親は!?」
狼少女「それは……あー……うーん……いない?」
勇者「……」
狼少女「うぅー……?」
医者「どうやらかなりの量を投与されていたのでしょう。中和できるまで時間がかかりそうです」
勇者「んだよぉ。役にたたねえなぁ。お前の母親さがせねえだろぉ」
狼少女「バカにするなぁー!!!」ガブッ
勇者「ふん。噛まれるのにはもう慣れたわ! バカめ!」 



171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 00:27:53.19 ID:36thv87Do
馬小屋
馬「ヒヒーン!!」
狼少女「おぉー! 馬だ!!」
勇者「馬だな」
狼少女「食っていいか!?」
勇者「ダメに決まってんだろ」
狼少女「いじわるか!?」
勇者「違う。そいつは食べたら腹壊すぞ。毒もってるからな」
狼少女「そうなのか!? 馬にも毒もってるやついるんだなぁ。しらなかった」
勇者「……野生的な思考は薬の所為じゃないのか?」
村娘「うふふ」
勇者「どうしたっすか?」
村娘「いえ。勇者様って、本当にお優しいんですね。みんなが懐いてるのも納得です」
勇者「懐かれるのはいいんすけどね。舐めるのはやめてほしいっすわ。臭くなるんで」
「ヒヒーン」ペロペロ 



172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 00:38:42.98 ID:36thv87Do
馬「ヒヒーン」ペロペロ
狼少女「やめろー!!」
村娘「勇者様、動物には好かれるほうですよね?」
勇者「ええ、まぁ。昔から獣にはモテるんすよ。慰めてくれるのはいつも野良犬と野良猫ばっかりで……」
村娘「心が澄んでいる証拠ですね」
勇者「心が澄んでいても女の子にはモテねーっすよねぇ……」
村娘「そんなことないですよ。勇者様ならいつかきっと素敵な女性と結ばれますよ」
勇者「……」
シスター『あなた。お疲れ様。ごはんにします? お風呂にします? それとも……わ、た、し?』
勇者『君とお風呂に入ってから君をおかずにする』
シスター『やだぁ! エッチ!! でも、そんなあなたがだーいすきっ』
勇者「のほほほほぉ」
狼少女「なんだ、お前。気色悪いな」
勇者「あぁ? しっしっ。あっちいけよ。美しい考えごとしてるんだから邪魔すんな」 



173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 00:45:47.08 ID:36thv87Do
医者「勇者様。間に合わせですが、できました。お持ちください」
勇者「どもっす。とりあえずこれで様子を見ましょうか」
医者「1日1回ですからね。それ以上は体に毒です」
勇者「わかってるっすよ。おーい。いくぞー」
狼少女「あーい。またな!」
馬「ヒヒーン!!」
勇者「お世話になりました。これで最後になればいいんすけどね」
医者「何を仰いますか。どんなに些細なことでもお助けしますよ」
村娘「はいっ。遠慮なんてしないでください」
勇者「(あんたらを見てると死にたくなる自分がいるんすよね……)」
狼少女「なにしてんだ。はやく」
勇者「お前が仕切るなよ。どこに行くかもわかってねえくせに」
狼少女「どこいく?」
勇者「先輩と合流する。本当ならお前はここに残していきたいんだけどな……」
狼少女「お前、ついてこいっていった!! だから、ついていくからな!!」 



174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 00:54:20.73 ID:36thv87Do
南の港町 酒場
狼少女「はむっ……はむっ……」
兵士長「んで、子持ちになっちゃったわけか」
勇者「子持ちって言わないでくださいよ。母親が見つかるまでっす」
兵士長「嫁にしてやったらどうだ? こんなに懐かれたら悪い気はしねえだろ」
勇者「じょーだん。俺の理想はぁ!!」
兵士長「美人で清楚で可憐な女性だろ。耳にタコができちまうぜ」
勇者「だから、こんなガサツでしかもガキは論外っす。眼中にはいらないっす!!」
兵士長「10年後は分からんぞ? 今のうちに唾をつけとくのもアリだと思うがねぇ」
勇者「どーせ、ゴリマッチョウーマンになるだけっすよ。こんなやつ」
兵士長「んー……」
狼少女「はむっ……はむっ……ん? ガルルル……!!」
兵士長「とらねえよ。ゆっくり食べな」
狼少女「はむっ……はむっ……」
兵士長「(こいつ、絶対に美人になるなぁ。あー、もったいねぇ)」 



175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 01:05:44.58 ID:36thv87Do
勇者「そんなことより、先輩」
兵士長「魔女と会った感想は?」
勇者「誤解を恐れず言うと、俺の理想通りの人でした!」
兵士長「誤解しかうまねぇ意見、サンキュー。他には?」
勇者「狼を従えていたんで、ちょっと獣臭いとか思ったでしょう? ところがどっこい、すんげーいい香り漂わせてたっすぅ。ありゃ、魔女と呼ばれてもしかたないっすわぁ」
兵士長「ああ、そうかい。割り勘にするぞ」
勇者「ああ、すんません。魔女っつっても普通の人間でしたね。殺すだけなら簡単っすよ」
兵士長「問題は取り巻きの狼か」
狼少女「……」ピクッ
勇者「先輩」
兵士長「あ、ああ。悪いな。お嬢ちゃん」
勇者「育てられたってのは嘘でも、あいつにとっては仲間なんすよ。家族っていってもいいかもしれないっすけど」
兵士長「獣が家族ね」
勇者「先輩はペットとか飼ったことないからわかんないだけっす。動物を大切にしてる人にとってはそうなんっすよ。マジで」
兵士長「そうか。お前の惚れた相手がそんな感じだったのか?」 



177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 01:15:16.28 ID:36thv87Do
勇者「昔の女の話はやめましょうよ」
兵士長「てめぇの女じゃねえだろがよ。すっ……ぱぁー……」
狼少女「げほっ……げほっ……! ガルルル!!」
勇者「タバコはやめてくださいっす」
兵士長「かたいこというなよ」
勇者「殴られるっすよ」
兵士長「マジで? すっ……ぱぁー……」
狼少女「げほ……! ガルルル……!! ガァァウ!!!」ドガッ!!!
勇者「いってぇ!? ほら!!」
兵士長「狼はこの臭いダメか?」
狼少女「狼じゃなくても嫌だ」
兵士長「はいよ。おかわりしていいから、好きなの食べな」
狼少女「いいのか!?」
兵士長「俺のオゴリだ」
狼少女「あ……うー……どれに……あ、これ! これ!! ハンバーグ!!」 



178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 01:29:08.43 ID:36thv87Do
港町 宿
兵士長「何はともあれ長旅ご苦労さん。今日はしっかり休めよ」
勇者「うぃーっす」
狼少女「うぃーっす」
兵士長「魔女の行方については明日検討するから、早起きしろよ」
勇者「了解っす」
兵士長「といっても、一度戻らないといけなくなったな」
勇者「そっすね。調べてみる価値はあると思うっす」
兵士長「母親探しが魔女に繋がる……か」
勇者「だといいんすけどね」
兵士長「一つの手がかりとしてはアリだがな。この狼姫が親の顔を覚えてくれてたら楽だったんだがなぁ」
狼少女「すまん」
兵士長「ハハッ。良いって事よ。面倒ごとには慣れてる」
勇者「お疲れっす、先輩。ほら、行くぞ」
狼少女「あい」 



179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 01:35:48.35 ID:36thv87Do
廊下
勇者「お前はこの部屋な」
狼少女「お前はどの部屋だ」
勇者「隣だよ。何かあったら呼べ」
狼少女「わかった」
勇者「んじゃ、おやすみ」
狼少女「あいっ」
勇者「寝坊したら置いていくからな」
狼少女「うぇ?」
勇者「なんだよ?」
狼少女「おいて、いくのか?」
勇者「当たり前だ。人間社会ってのは厳しいもんなんだよ」
狼少女「そうか……」
勇者「すぐに寝れば寝坊しねえよ。じゃあな」ガチャ
狼少女「あ……まっ……」 



180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 01:38:47.88 ID:36thv87Do
寝室
勇者「ーーふぃー。さっぱりしたぁ。この宿は中々いいっすねぇ。シャワーの水圧が申し分ないわぁ」
勇者「はぁー。この分だと二日後には帰れるなぁ。そうなれば……クフフフ……ブフフフ……」
勇者「風呂からあがれば女の子がベッドで待っているという夢のような生活が待っているんだぁぁ!!! うらよっしゃぁぁぁ!!!!」
勇者「まぁー、今日は誰もいないベッドで我慢ーー」
狼少女「すぅ……すぅ……」
勇者「……おい」
狼少女「うぅ……なんだ?」
勇者「隣の部屋だって言っただろ」
狼少女「考えた」
勇者「何を」
狼少女「一緒に寝れば起きるときも一緒だ。寝坊するときも一緒だ。おいていかれることはない。な?」
勇者「……」
狼少女「ダメか!?」
勇者「もういいよ。寝てろ」 



181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 01:49:04.55 ID:36thv87Do
狼少女「すぅ……すぅ……」
勇者「はぁーあ。酒でも飲むか」
勇者「んぐっ……んぐっ……。ぷはぁ……」
狼少女「うぅん……」
勇者「……」
勇者「(一人になるのが、怖いのか……?)」
狼少女「すかぁー……すかぁー……」
勇者「やっぱり、捨てられたんだろうか、こいつ」
勇者「(両親がいないって、寂しいもんなぁ……)」
勇者「(嫌いじゃなかったけど親父は滅多に帰ってこなかったし、母さんは俺が小さいときに死んじまったから、一人でなんでもしてきたけど)」
勇者「(親父が任務中に死んだって聞いたときは、喪失感がすごかったもんなぁ……)」
勇者「(今でもふとしたときに寂しくなるし……。だから、早く家で待っていてくれるような可愛いお嫁さんが欲しいのに……)」
狼少女「がおー……がおー……」
勇者「……」
勇者「(さっさとこいつの親を探しださねえと。こんなやつが一緒だと幾ら広い心の修道女でも嫌がるだろうしなぁ。がんばるぞ!! 俺の幸せのために!!)」 



189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 19:25:27.30 ID:36thv87Do
翌朝
勇者「う……ん……」
勇者「朝か……」
狼少女「がぉー……がぉー……」
勇者「起きろ。朝だぞ」
狼少女「がぅー……?」
勇者「早くしろ。置いていくぞ」
狼少女「うぁーい……ふわぁぁ……」
勇者「何か思い出したことはあるか?」
狼少女「ぁえ?」
勇者「魔女のこととか母親のこととか父親のこととか」
狼少女「魔女はしらない。母親はいない。父親はよくわからない」
勇者「……お前の父親は狼じゃないな?」
狼少女「うーん……。きっと、多分違う」
勇者「そっか。よし、顔洗ってこい。先輩のとこに行くから」 



190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 19:32:51.68 ID:36thv87Do
食堂
兵士長「そうか。やはり姫にとって魔女はよく喋る狼なわけだ」
勇者「そうだと思うっす」
兵士長「姫から魔女を追うのは今のところ難しいか」
勇者「うっす。で、姫ってなんすか?」
兵士長「勇者様が抱くのは姫様って相場が決まってるだろ?」
勇者「はぁー? あいつが姫って」
狼少女「はらへったーはらへったー」
兵士「好きなのとって食べていいぞ」
狼少女「いいのか!? あざす!」
勇者「アーッハッハッハ!! にあわねー」
兵士長「とりあえずは姫の親探しからだな」
兵士「しかし、隊長。名前もよくわからないのでは探しようが……」
兵士長「可能性を一つ一つ潰していきゃあなんとかなるだろ。なぁ?」
勇者「時間かかるっすね、それ。まぁ、俺としては時間をかけてくれたほうが……にゅふふふ……」 



191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 19:39:09.50 ID:36thv87Do
城下町
兵士長「ーー俺は陛下に報告してくるが、お前はどうする?」
勇者「ホテルの予約にいってくるっす」
兵士長「例のシスター絡みか」
勇者「うっす!! 今回は成功率200パーセントっすね」
兵士長「まぁ、がんばれや。あとで顔出せよ」
勇者「うぃーっす。明日には俺の可愛い嫁を紹介できるっすから、期待しててください」
兵士長「おう」
勇者「さぁて、行くかぁ」ポキポキ
狼少女「あい」
勇者「……お前はこなくていい。俺の部屋にでも行ってろ。場所は覚えてるだろ?」
狼少女「お前、どこいく?」
勇者「ガキには関係ねえさ。ほら、早くいけ。俺には時間がないんだ」
狼少女「……かえってこいよ」
勇者「帰るよ。まだ俺の住まいはあの宿舎だからなぁ」 



192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 19:46:57.61 ID:36thv87Do
墓地
勇者「(スウィートルームも予約できたし……あとは……誘うだけ……。くぅー!!! ついに!! ついに!! 俺も一皮剥けるときがきたわけだぁ!!!)」
勇者「(恋愛マニュアル通りなら、女はホテルの雰囲気に呑まれて……自ら脱ぐ!! そうなっちゃえば、もうやることは一つよ!!!)」
勇者「たはー!! もうドキドキしてきちゃったよぉ!!」
勇者「さーてと、この時間ならここに……」
シスター「……」
勇者「いたいた……。ーーただいま、戻りました」
シスター「あ……。おかりなさい」
勇者「約束通り、今晩は貴女を夢の一時へ誘います」
シスター「あの、お父様に報告はされなくていいのですか?」
勇者「え?」
シスター「いつもそうしているようでしたので」
勇者「ふっ。よく見てますね。そうですね。報告しておきましょう」
勇者「父さん。俺、ついにやったよ。今晩、男になれるよ。……で、来てくれますよね?」
シスター「え? は、はい。約束ですので」 



193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 19:53:20.41 ID:36thv87Do
勇者「20時ですよ。忘れないでくださいね」
シスター「え、ええ。ところで、あの子は?」
勇者「俺の部屋でお留守番させておきます。俺たちの時間には介入してきませんよ。大丈夫です」
シスター「そ、そうですか……。そうですね。そのほうがいいかもしれません」
勇者「でしょう? ふふふ。まぁ、あんな子どもには見せられないですけど。教育上、よくないといいますか」
シスター「……あの」
勇者「はぁい?」
シスター「お父様と話したことはありますか?」
勇者「勿論です。まぁ、仕事熱心な父でしてね。あまり家には帰ってきませんでしたが」
シスター「そう……ですか……。よかった」
勇者「なにがですか?」
シスター「いえ。今晩、ゆっくりと話しましょうね」
勇者「今晩といわず、朝まで語り合ってもいいですよ」
シスター「確かに時間はいくらあっても足りないかもしれないですね……」
勇者「(この子、意外とスケベじゃん? サイコーだね)」 



196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 20:09:47.09 ID:36thv87Do
宿舎 勇者の部屋
狼少女「ほぅほぅ……」ペラッ
勇者「あー!!! ひゃっはー!!!」バーンッ
狼少女「わぁぁー」タタタッ
勇者「あははははは!! いやぁー!! 俺は今日と言う日のために生まれてきたんだな!! きっと!!!」
狼少女「なんかあったのか?」
勇者「なにかあったどころじゃないんだよ!!! 念願のワイフを見つけたんだぜぇい!!! フフハハハハ!!!!! オヒョヒョヒョ!!!」
狼少女「嫁か!!」
勇者「そうだ!! 嫁だぁ!!」
狼少女「おぉー。がんばるっ」
勇者「ああ!! ほぼ確定事項とはいえ、最後の詰めを誤らないようにしなくてはな。勝って兜の緒をしめよっていうしなぁ!!!!」
狼少女「あい」ペラッ
勇者「ん? お前、何読んでるんだ?」
狼少女「落ちてた」
勇者「おいおい。それ俺のバイブルじゃねえかよ。お前が読むには10年早いっつの」 



197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/23(水) 20:17:03.80 ID:36thv87Do
勇者「ーー蝶ネクタイ、曲がってないか?」キリリッ
狼少女「またどっかいくのか?」
勇者「メシはそこにあるからテキトーに食ってろ。間違っても宿舎の中を彷徨ったり、城のほうへ散歩にいったりすんなよ」
狼少女「わかった」
勇者「どうだ、カッコイイだろ、今日の俺」
狼少女「よくわからん」
勇者「だろうなぁ。まぁ、次に会うときはもっとかっこよくなってるけどな。何せ、今夜、俺は、真の意味で大人になるんだ」
狼少女「なんかするのか?」
勇者「する。お前では到底理解できない生命の伊吹を感じてくる」
狼少女「交尾でもするのか?」
勇者「……さ、行ってくる。明日の朝には帰ってくるから。大人しくしてろよ」
狼少女「私も一緒じゃダメか?」
勇者「ダメに決まってるだろ」
狼少女「むぅ……わかった」
勇者「んじゃ、いってきまぁーす!! 待っててくれー!! 俺のスウィートハニー!!!」