355:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 00:37:07.43 ID:x60gR+VC0
「一週間まであと四日やなあ」 

「それは……」 

それはお姉さんが決めたことじゃないですか、と繋げたかったけど 
俺にそんなことを言う権利はなかった 

なにせこのあともずっとここにいたら 
それはとても嬉しいことだけど 

俺は沢山のことでお姉さんに迷惑をかけるだろうから 


「ま、また次があるやろ」 

なんのことだろうと首を傾げる 

「ん? いや、したくないならええねんけど」 

「え」 

「うちは君みたいな可愛い子好きやからな、別にええよ、うん」 

「は、はい」 


男ってのは現金な奴だ 
男、ってか 
息子、ってか 

次があると教えてもらってすぐにおっきくなりやがる 


「ほんま、若いなあ」 

にやにやとお姉さんが笑っている 
恥ずかしくなって俯くけれど 
それは同時に 
嬉しくなって微笑んでしまったことを悟られたくなかったから 



でも、お姉さんには好きな人がいる 





369:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 00:44:08.46 ID:x60gR+VC0
風呂から出て、お姉さんの部屋へ 
俺は家にパソコンがなかったからお姉さんがパソコンで遊んでいるのに興味深々だった 

「なに見てるんですか?」 

「これ? 2ch言うてな」 

因みに2chもお姉さんから知った 


お姉さんと馬鹿なスレを覗いて笑っていた 
お姉さんは話始めると話上手で 
スレのネタに関連した話題をこっちに振ってくる 

それに返すだけで話のやり取りが進む 

そういうのはBARの店長だけあって上手だった 


暫くして眠ることに 
流石に翌日は仕事に行かなければならない 

「僕も行きますよ」 

「気持ちだけでええよ。辛いやろ?」 

辛いとかそんなんじゃなくてお姉さんと一緒にいたいだけなのに 

と思った 


「君はほんま可愛いなあ」 

と思ったら口に出てた 


「ええよ、やけど仕事はさせんで。それやと化粧できんし、まだ腫れとるからな」 


二人で一つのベッドに寝転がる 
このまま時が止まればいいのに 



378:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 00:48:34.77 ID:x60gR+VC0
このまま日課にしてしまいたい行事 
お姉さんの頭を優しく撫でて 
お姉さんが眠るまで隣にいること 

うとうとするお姉さんの横で 
お姉さんが心地よさそうに震えるのを見てられること 

「気持ちいいですか?」 

「それさっきのお返し? 気持ちいいよ、もっとして」 

撫でていると心が安らかになる 
なんでか、お姉さんよりも優位に立った気がする 

「お姉さんも可愛いですよ」 

「君に言われたないわ」 

「ほんとに」 

「はいはい……ありがと」 

本当にたまらなく可愛いからいっそのこと撫で回して抱きしめ尽くしてむちゃくちゃにしたくなるけど 
お姉さんはそのまま寝入っていくから 

俺も暫くして眠った 



393:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 00:55:35.41 ID:x60gR+VC0
店はその日繁盛していた 
それもどうやら俺が原因らしい 

「大丈夫やったん? なんか大変やったんやろ?」 

そんな調子のお客様がたくさん来た 
聞いてる限りだと 
その時そこにいたお客様がmixiかなんかで呟いて 
そっから馴染みの客が全員来たらしい 

だから満員で 


「ほんまごめん、あとでお礼するから」 

「いりませんよ、そんなの」 

お姉さんは罰が悪そうにしてたけど 
手が足りないっていうんで俺も手伝うことになった 

俺の顔はまだ腫れてて 
それを見ると女性客は慰めてくれて 
男性客は褒めてくれた 

「あいつも吹っ切れたみたいでよかったなあ」 

気になる会話をしていたのはテーブル席の三人客だった 

「吹っ切れた、ですか?」 

お姉さんに渡されたカクテルを置く 

「だって君を選んだんだろ? あいつ」 

選んだ? 

「ん? 付き合っとんちゃん?」 

お姉さんが俺と? 

……男として見てくれてるかも怪しい。 

「吹っ切れた、が気になるんですけど」 

「ああ、それは……なんでもない」 

お客様が視線を落としてはぐらかす。 
肩を落として戻ろうとしたら、お姉さんが仁王立ちだった。 

「余計なこといいなや」 

とても怒っているようだった。 
お姉さんは俺の頭にぽんと手を乗せて 

「帰ったら話すわ」 

と言ってくれた 



401:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 01:02:21.77 ID:x60gR+VC0
そのあとも仕事は続いて 
でもどことなく仕事に身が入らない 
といっても、ミスをするような仕事内容でもないからいいけど 

お客さんが話しかけてきてもぼうっと返事を忘れてしまうくらい 


家に帰るまで気が気じゃなかった 
お姉さんの話っていうのは十中八九俺が知りたいことだろう 


お姉さんが好きな人のことだろうから 


家に帰って 
お風呂にも入らずお姉さんは飲み物を用意する 

もちろん俺はコーヒーを頼んだ 

「飲めんくせに」 

「飲めるようになります」 

「ええやん、飲めんでも」 

「嫌です」 

「子供やなあ」 

子供扱いされてついむくれてしまう 

「はい、どうぞ」 

差し出されたコーヒー 


うげえ 


「それで、話してくれるって言ってたことなんですけど」 

「話逸したな」 

ははっ、とお姉さんはいつものように快活に笑って 
口を開く 



407:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 01:08:42.05 ID:x60gR+VC0
「好きな人おるって言うたやん? その人のことやねんけどな」 

「手っ取り早く言うけど、もう死んどんねん、そいつ」 

「なんつーか病んどったからなあ。死んでもた」 

「ここで一緒に暮らしとった。BARはそいつと一緒に初めてんよ」 

「親友やったし、同時に恋人やった」 

「たったそんだけのありきたりな話や」 

「なんで死んじゃったんですか?」 

「さあな。遺言はあったけど、ほんまかどうかわからんし」 

「まあ、そいつが言うには、恐かったんやて」 

「うちを幸せにできる気がせんって」 

「想像つくんかどうか知らんけど、うちもそいつもろくな家庭で育ってないねんよ」 

「うちは親から虐待受け取ったし、そいつは親に捨てられてたし」 

「十六ん時に会って、似たもの同士やからか気が合って」 

「二人で金貯めて家借りて、店も出した」 

「けっこう上手く行っとってん」 

「あいつはなにが恐かったんやろなあ……幸せにしてくれんでも、一緒におってくれるだけでよかったんに」 

「あいつの保険金でこの家は買い取った。なんか、あいつが帰ってきたらって考えるとな」 

「ありえへんのやけど」 

「……まだ好きなんですか?」 

「どやろな。うち残して勝手に死んだアホやから、まだ好きか言われたらそうでもないかもしれん」 

「やけど忘れられへんねん。あいつのこと」 


それは十五歳の俺には身に余る 
とても重たい過去だった 



413:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 01:15:55.54 ID:x60gR+VC0
「まあ、そういう話。たいしておもろないから話すのは好きちゃうんやけど」 

「……君、うちのこと好いとるやろ?」 

「あ……はい」 

「やから、君には話とかななって」 

「うちを狙ってもいいことないで、ってな」 


「……関係ないですよ、そんなこと」 

「俺はお姉さんのこと、好きですし」 

「お姉さんがこうしていてくれるなら、俺はそれだけで充分です」 

「無理やん、それも」 

「こうして大人になるとな、子供をそんな道に引っ張るんがアカン、ってことぐらい思うんよ」 

「君にはどんなんか知らんけど家族がいるし、なにより未来があるからなあ」 

「うちみたいな女にひっかかっとったらあかんねんって」 

「引っ掛けたんうちやけどさ」 


「お姉さんは俺のこと嫌いですか?」 

「嫌いなわけないやん」 

「じゃあ、いいじゃないですか」 

「来年、というか暫くしたら高校生です。高校卒業したらこっちに来ます。それからじゃダメですか?」 

「……」 


お姉さんが口ごもる 
なにを考えているんだろう 
お姉さんが考えていることなんて一つもわからない 

俺が子供だったからなのか 
お姉さんが特殊だったからなのか 


お姉さんはたっぷりの間を置いて 

ええよ、と答えた 

けれどどうしてだろう、不安が拭えない 
ええよ、と言ってくれるならどうしてお姉さんはそんなに 

寂しそうだったんですか? 



424:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 01:21:42.75 ID:x60gR+VC0
「今日が最期やな」 

「最期じゃありません。暫くしたら会いに来ます」 

「そやったな。ま、とにかく」 

「今日は遊ぼか!」 

「でもお店は?」 

「自営業はな、融通聞くねん」 

「どこに行きましょうね」 

「映画なんてどない?」 

「いいですね」 

「よし、じゃあ早速!」 

「化粧はしませんよ」 

「ええやん、あれ可愛いやん」 

「俺は男ですから」 

「今だけやで? 三年後はできんぐらい男らしゅーなっとるかもしれんで?」 

「それでいいです」 

「ったく、ケチやなあ」 


なんとか化粧をされずに出かけることとなる 
初めてのお姉さんとデート 


映画を見て、ご飯を食べて、ゲームセンター行って 
楽しくないわけがなかった 



432:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 01:26:23.76 ID:x60gR+VC0
夜はお姉さんが料理を作ってくれることになり 
帰りがけにスーパーで食材を買い込んだ 

「こう見えて料理には自信あんねん」 

「楽しみにしてます」 

「ほんまかいや。君どうも感情薄いからなあ。だいたい、いつまで敬語なん?」 

「癖なんで」 

「律儀な子がいたもんやわ」 

慣れた手つきで食材を調理していく 
野菜を切って、肉を切って 
したごしらえして、炒めて 

一時間ぐらいで料理が出された 

「どないよ」 

「おお……予想外」 

「は? なんやて?」 

「予想通りな出来栄え」 

「それはそれでええ気分せんわー」 

実際、料理は美味しかった 
というか料理の美味さよりなによりも 

お姉さんのエプロン姿が一番刺激的でご飯どころじゃなかった 


なんというか、お姉さんってほんと綺麗だなあ、と 



438:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 01:32:23.85 ID:x60gR+VC0
「ごちそうさまでした」 

「お粗末でしたー」 

洗い物を手伝いながらふと思う 
こんな風に生活できるのも、もう暫くはないんだと 

三年 
少なくとも三年は遠いところに居続けることになる 

たまに会えてもそれだけだろう 
なによりお姉さんは本当に俺を待っていてくれるんだろうか? 


不安が顔に出ていたのか、お姉さんが後ろから乗っかかってきた 

「な」 

「はい」 

「うち、好きな人できてん」 

「はあ」 

「気のない返事やな。告白されとんねんで?」 

「……嬉しいですよ」 

「こっち向きや」 

「はい」 

触れるかどうかの小さなキス 

「ほんまに、好きやで」 


お姉さんと初めて会った頃のように 
俺はまた動けなくなった 

この人はどれだけ俺の知らないことを知っているんだろう 



446:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 01:37:56.68 ID:x60gR+VC0
別々にお風呂に入ってゆったりとした時間を過ごす 
何度でも挑戦するがやっぱりコーヒー 

「さああ飲めるでしょうか!」 

お姉さんはノリノリだ 
因みにまだ飲めたことはない 


ごくり、と喉を通す 

あれ? 

「これ、飲めます」 

「やったやん!」 

「というかこれ、いつもと苦味が違います」 

「うん、それについては謝らなかん」 

「?」 

「うちよう考えたら濃い目が好きでな。君が飲んどったんめっちゃ濃かってん。やから普通のお店レベルに薄めてみた」 

「……はあ」 

「ま、まあええやん、飲めたんやし。ほら、最初にきっついのん経験しとくとあとが楽やん? な? はは……怒った?」 

「別に怒りませんよ。ちょっと、肩透かしな気分です」 

「よかった」 

時間は過ぎる 
お姉さんといられる、短い夜 


「ほな」 

寝よか 


聞きたくない言葉は当たり前にやってきた 



450:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 01:42:00.80 ID:x60gR+VC0
お姉さんは奥 
俺は手前 

七日間続いたお伽話も今日で終わる 

明日、目が覚めたら 
お姉さんが仕事に行くついでに俺は帰る 


嫌だ 
帰りたくない 
ずっとここにいたい 

そう考えても意味がない 
言えない気持ち 

言ってもお姉さんが困るだけだ 


撫でる髪は今日も柔らかい 
お姉さんの綺麗な髪は今日もいい匂いがする 

ずっと撫でていたい 

ずっと傍にいたい 

どうして俺は十五歳なんだろうなんて 
どうしようもないことに苛立った 


お姉さん、お姉さん 


「なあ」 


答えられなかった 

今口にしたら、なにかを言葉にしたら 

一緒に涙まで出てしまう 


「この前の続き、しよか」 



455:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 01:47:09.00 ID:x60gR+VC0
「目、つぶってや」 

言われたままに目をつぶる 

布団が浮いて、冷たい空気が入り込んできた 

ぱさり、と 

絹擦れの音が聞こえた 


「ええよ、開けて」 


カーテンの隙間から通る傾いた月の光がお姉さんを照らしていた 

それはとても幻想的で 
物語の中だけでしか見られない存在に思えた 

肌が白く輝いて 
髪が淡く煌めいて 


「綺麗です」 

「ありがと」 


「うちな、この前みたいなんも好きやけど、今日は普通にしたいかな」 

「はい」 

「やから、今日は君が頑張ってな」 

「はい」 

「ははっ」 


「ええこやな」 


キス 



466:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 01:52:26.55 ID:x60gR+VC0
お姉さんが上でこそあれ 
重ねるだけの普通のキスをして 

お姉さんは横になった 

俺は興奮の中で混乱することなく 
きっとそれはお姉さんのお陰なんだけど 

自分からお姉さんにキスをする 

感情をいっぱい込めてキスをする 

好きという気持ちが伝わるように 
伝えるようにキスをする 


舌を入れて 
お姉さんがしてくれたみたいに舐めあげていく 

乱雑にすることなく 
ゆっくりと 
愛でるように 

全ては愛でるために 


たまに、お姉さんが息を漏らす 
たまに、お姉さんが体を震わす 


舌と舌がもつれあい 
唾液がお姉さんと行き交って 
一つに溶けていく 

「好きです」 

離れて囁くと 

意外にもお姉さんは呆気にとられて 
恥ずかしそうに顔を背けた 


「知っとるわ、アホ」 


本当に、俺は心からお姉さんが好きだ 



473:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 01:58:05.12 ID:x60gR+VC0
お姉さんの胸に手を伸ばす 
触れるのは二度目 
それでも喜びは尽きない 

男の喜びが詰まっているようだった 
でもなによりも 
お姉さんの胸だからこんなにも嬉しいんだろうと思った 

触れると、それが丁度性感帯に当たったのか 

「んっ」 

お姉さんが喘ぐ 

既に乳首は固くなっているように思えた 
その判断がつかない辺り童貞だけど 
そんな気のする固さだった 

口を近づけていって、舌先で舐める 

お姉さんがぴくりと跳ねた 

嫌がられることがないと知って、気が軽くなる 

突起を口に含んで小さく吸う 

お姉さんの体が小さく喜ぶ 

口の中で転がすように遊んだ 
どうしてそうしたくなるのかわからなかったけど、すぐにわかった 


「んぅ」 


お姉さんが喘ぐ 
それはきっと感じてくれているからだ 

俺はお姉さんが喜ぶことをしたい 
もっと、お姉さんを感じさせたい 



481:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 02:04:06.79 ID:x60gR+VC0
胸を触りながら、そこに意識する 
全く未経験の、そこ 

もっと下にある未知の領域 

触っていいのだろうかと考えて、振り払う 
ここまでしてくれていて、いけないはずがない 

それをお姉さんに聞くのはきっといいことじゃない 

右手をお姉さんの太ももにあてた 
それだけで感じ取ってくれたのか、少しだけ 

本当に少しだけど、お姉さんは足を開く 

緊張する 
この上なく緊張する 
色んな意味で爆発しそうだ 

けれど理性で必死に抑えつけた 
欲望のままに暴走したら、お姉さんを喜ばせられない気がした 

けど、お姉さんはそんな俺はお見通しだと言うように 

両手で俺の顔を引き寄せて、耳にキスをした後 

「さわってええよ」 

細く囁いた 


いっそのこと一気に結合してしまいたくなったが 
それを止めたのは理性というよりも 

多分、愛情だった 


太ももからなぞるように手を持っていき 
そこに触れる 

それだけでお姉さんが震えて 

既に溢れた液に導かれるまま 
俺はゆっくりと指を入れていく 


お姉さんの声が次第に膨らんでいく 
声を殺すのも、億劫なほどに 



494:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 02:09:35.41 ID:x60gR+VC0
指を埋めた肉厚のはずなのに 
指に埋もれた肉厚と考えてしまうのは 
それだけ女性器の中が神秘だからなのか 

どこをどうすればお姉さんが感じてくれるのかわからず 
ひとしきり指を動かしてみる 

たまに、だけど 

ちょうどいいところなのか 
一際お姉さんが喜び震える場所があった 

それを幾度も試して 
どこなのか突き止めて 
ようやく場所がわかって 

押し上げる 


お姉さんの腰が浮く 
明らかに違った声色が響く 
気持ちよさのあまり綺麗から遠ざかった声を漏らす 

だけど、俺にはやっぱり綺麗だった 

とてもとても綺麗だった 

綺麗という言葉しか思いつかないことが申し訳なるくらい 


もう一本指を入れて 
お姉さんが一番悦ぶところを押し上げる 
救い上げるように 
引っ張り出すように 

「だ、めっ」 

お姉さんが発した言葉は 
あの日俺が発した意味と同じなのだと知って 

ああ、そうだね、お姉さんと俺は納得した 


これはやめられない 



504:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 02:16:52.66 ID:x60gR+VC0
あの時のお姉さんの気持ちがわかる 
遅れて共感できたことが嬉しかった 

お姉さんはこんな気持ちで俺を攻めていたのだろう 
どこか嗜虐的な、歪んだ気持ちで 

だけど 
だけどきっと 

今の俺と同じような気持ちだったと信じたい 

もっと、もっと、喜んでほしいと願う心があったのだろうと 


掻き回す指に連鎖してお姉さんが声を出す 
偽りのない性的な声に興奮も高まっていく 
気づけば汗でぐっしょりと湿っていた 
指を動かす度に淫らな音が響き渡る 

自分の行いで快楽に身悶えるお姉さんが愛らしい 
もっと、もっと愛でていたい 
好きという気持ちに際限がないように 
ずっとこのままでいたいと思う 

強く、抱きしめて 

「もうっ」 

荒く、かき乱して 

優しく、囁いて 

「好きです」 


「んんっ――」 

糸切れた人形のようにお姉さんが固まる 
腰を中に浮かせたまま、電気信号のように身体が跳ねた 

くて、と横たわったお姉さんは顔を腕で隠して息を荒くしていた 

「ははっ」 

荒げた息の間でお姉さんは 

「イカされてもたわ」 

少女のように、照れていた 



507:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 02:23:08.33 ID:x60gR+VC0
「お姉さん」 

「ん?」 

「入れていいですか?」 

「え、う、今? 今なあ……」 

当時の俺にはお姉さんがなんで躊躇うのかわからなかった 
それも、今、という限定で 
今ならわかるけど 

「よし、ええよ、入れて」 

なにかしらの覚悟を決めたお姉さんに了承を得て 
俺はパンツを下ろしてそれを出す 

「ゴムだけはちゃんとしよな」 

「もちろんです」 

「つけれる?」 

「授業で習いました」 

冷静に答えてみるものの 
渡されたゴムを上手くつけられない 

「ははっ、こういうとこはやっぱ初物やな」 

「初物って」 

「ええよ、つけたる」 

「すみません」 

膝立てをして性器を晒す 
恥ずかしさが二乗して襲ってきた 

お姉さんは俺からゴムを取ると 

「これも男のこの夢やったっけ?」 

と聞いてきた 

なんのことだろうと思っていたら 

お姉さんはゴムをはめるより前に俺の興奮したそれを口に含んだ 



515:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 02:29:22.60 ID:x60gR+VC0
わざとだろうか 
激しく音を立てて、寧ろそれが目的のように吸い尽くす 
このまま続けられたまたイってしまう 

「お姉さん、やめ、て」 

「わかっとるよ」 

今回は素直に引いてくれたので安心する 
お姉さんはゴムを取り出してなにかをしている 

するとまた俺のを口に含んだ 

気持ちよさに震えるがそれ以上に違和感があった 

どうやっているのは不思議だけどお姉さんは器用に口でゴムをつけた 


「ふう、上手くいった」 

「どうやるんですか、それ」 

「君は知る必要ないやろ、男やねんから」 

「そりゃそうなんですが」 

「まああれやな。男もアホなこと覚えとるように、女もアホなこと覚えんねん」 

「そういうもんですか」 


ちょっと雰囲気が外れてしまったかに思えるが 
俺は童貞で、なんだかんだでしたくてたまらない猿だ 

お姉さんを押し倒す 

「もう我慢できないです」 

「そやな、ええよ」 

自分のを持ってお姉さんの穴にあてがった 
ここか? 

「もうちょい下やな」 

ずらすと確かにそれらしき窪みがある 

「うん、そこ」 

色んな感情が渦巻く中 
俺はゆっくりと腰を落としていった 



522:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 02:35:48.12 ID:x60gR+VC0
どんどんと沈み込んでいく中 
入れる具合に反応してお姉さんの息が吐き出される 

ゆっくり、ゆっくり 
中はうねっていて奇妙だった 
こんな快楽がこの世にあったんだと素直に感動した 

暖かくて心地よい神秘の世界 
お姉さんの全てが詰まった、一つの秘境 

さっと血の気が引いた 
やばい 

やばい 

やばい 




「うあっ」 


冗談だったらやめてほしいけど 
なによりも俺が一番冗談じゃないと知っている 


きょとんとしたお姉さん 
恥ずかしくて速攻目を逸した 

お姉さんはそんな俺を見て笑うでもなく 

「しゃーないしゃーない、初めてやねんから」 

と言ってくれた 

「したりんやろ? もっかいしよか」 

その言葉だけで再び性欲の熱が沸点を目指す 

「あ……そのゴムラストや」 


地獄に突き落とされる言葉ってこういう言葉かもしれない。 


「ま、えっか。安全日やし。中に出したらあかんけど」 

思考が固まった 



528:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 02:42:47.43 ID:x60gR+VC0
「はい、抜いて」 

言われるがままに抜くと、お姉さんが体を起こしてゴムを外す 

「……生は恐い?」 

「いや、あの、子供……」 

「まあできんやろうけど、そやなあ。君って今なんのためにエッチしとるん?」 

「それは」 

単純に気持ちいいから 
だけど多分、それ以上に 
お姉さんとなにかを残したいから 

「子作りのためちゃうやろ? やから、子供は気にせんでええよ」 

「それに、まあ、できんやろうし」 

お姉さんはそれをとても悲しそうに呟いた 
ガキとはいえ、なぜそんなに悲しそうなのかと聞く気にはなれなかった 

嫌な想像しか浮かばないけど 

「うちは君と、ちゃんと繋がりたい。やから、しよ?」 

「はい」 

お姉さんは再び横になって 

二度目ということもあり、スムーズにその場所へと持っていき 

先ほどとは打って変わって 

一気に突いた 


根元まで挿入されると様々な感情が浮かび上がる 
喜び、悦び、期待 

そして、不安 


最期の感情を振り払うように 
一心不乱で腰を動かした 



536:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 02:51:18.45 ID:x60gR+VC0
突くたびにお姉さんは喘ぐ 
見られまいと顔を背けて 

かなぐり捨てて動き続ける 
お姉さんに全てを受け取って欲しくて 

好きだから、ずっと一緒にいたい 
けれど、お姉さんとずっと一緒にいられない 

お姉さんはいつかまたと言ってくれたけど 
お姉さんは本当にそう思ってくれたのだろうか 

だとしても、お姉さんは綺麗だから 
かっこいい男が現れたりするだろう 


そんなの嫌だ 
俺はお姉さんとこうしていたい 

仕事して、遊んで、髪を撫でて 


突く力が強まるのは、不安を吹き飛ばそうとする度合いだ 
突くだけでなく、沢山キスをした 

これが夢じゃないかと疑いたくない 
これは本当のことだったと、なによりも自分に覚えててほしい 



537:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 02:54:44.04 ID:x60gR+VC0
なんの壁もなく一つになっている 

お姉さんと一つになっている 

なっていたい 

お姉さん 


性器に溜まる欲望が急速に炙る 
限界が近い 

「イキ、そうです」 

「うん、イキな」 

「お姉さん」 

「ん?」 

「好きです」 

お姉さんは突かれながらも 

「うちもやで」 

と微笑んだ 


どくどくと溢れる熱量が 
お姉さんのお腹にぶちまけられて冷えていく 

疲れ果てた俺は倒れこむように横になった 


「気持ちよかった?」 

「はい……お姉さんは?」 

「気持ちよかったにきまっとるやんか」 

「よかった」 


安心する 
俺のしたことは喜んでもらえた 



539:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 02:57:32.13 ID:x60gR+VC0
お姉さんに頼まれたのでティッシュを取る 
ああ、そうか、こういうとこにも気を付けないと 

お姉さんがティッシュで俺の精液を拭き取った 

「こうせんと布団が汚れてまうからな」 

「もう今日はこのまんま寝よ」 

お姉さんが裸のまま抱きしめてきて 
足も絡めてくる 

それはつまりお姉さんの胸があたり 
太ももにお姉さんの性器があたり 
俺の性器も擦れるということで 

「おお、もう復活したん」 

「いえ、大丈夫です」 

「……ええよ、いっぱいしよか」 


結局、寝るまでに後三回した 

合計すると五回も数時間で出したってことになるわけだから 
若いって凄いな、と思う 



545:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 03:04:06.55 ID:x60gR+VC0
翌日 


昼過ぎに起きた俺はお姉さんに黙って部屋の掃除を始めた 
トイレ、お風呂、玄関、物置、キッチン、リビング 

最期にお姉さんの部屋 

「……なにしとん?」 

「掃除。お世話になったので」 

「生真面目やな、ほんま。こっちおいで」 

「はい」 


寝転がっているお姉さんの横に行くと、頭を撫でられた 

ええこやな、といつも口調で 

嬉しかったからお姉さんの頭を撫で返す 

ええこやな、とお姉さんを真似て 


「……関西弁へったくそやな」 

「そうですか?」 

「なんかイントネーションがちゃうわ」 

「難しいですね」 

「今のまんまでええよ」 

「君は君のまんまでええよ」 

「はい」 


お姉さんが仕事の支度を始めたら帰るのはもうすぐだ 

家に帰ったら両親は怒るのだろうけど、どうでもいい 

それだけ価値のある人に出会えた 


「行こか」 

それには答えられずただ 
引かれた手に連れられて外に出る 



549:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 03:10:57.84 ID:x60gR+VC0
家を出て近くの駅へ 
そこから都会の駅まで僅か十分 

お姉さんはずっと手を繋いでてくれた 
お姉さんの手はとても暖かった 

白状するけど俺は既に泣いていた 

声を殺して 
俯いて 
泣いていることを悟られずに泣いていた 

きっとお姉さんはお見通しだったろうけど 


都会の駅に着く 

俺の家はここから本当に遠い 


「暫くのお別れやな」 

「ありがとうございました」 

「今度はいつ来る?」 

「夏にでも来ます。速攻バイトして、お金貯めて」 

「そっか。ほんじゃ、待っとくわ」 

「あの、これ」 

「ん?」 

「携帯番号です。電話、くださいね」 

「うん、電話するわ」 


嫌な予感しかしなかった 
今ここでお姉さんの手を離したら 
二度と会えなくなるような気がした 

「お姉さん」 

「ん?」 

「ごめんなさい」 

「なに謝っと……」 


俺よりも身長の高いお姉さんの 
肩を掴んで引き下げて 
無理矢理キスをした 

そこはまだ駅のホームで人目がつく 

長い時間のように思えて 
それは一瞬のことだった 



550:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 03:15:03.18 ID:x60gR+VC0
「強引やな」 

「ごめんなさい」 

「嫌いちゃうけど」 

「すみません」 

「お返しっ」 

今度はお姉さんの方からキスをしてきた 
その時間は本当に長かった 

二分、三分? 

お姉さんは白昼堂々と舌を入れてきて 
人目も気にせずに没頭した 

俺もなんだかだんだんどうでもよくなってきて 
人目よりもなによりも 
お姉さんの気持ちに応えたくて 


だってお姉さんは俺よりもずっと大人で 
お姉さんはとても綺麗な人で 
BARの店長とか格好良い職業で 

モテないわけがない 

こんな一瞬、奇跡に違いない 
夢でないことがいい証拠だ 


だからきっとお姉さんは俺を忘れる 

俺はいつまでもお姉さんを忘れられないだろうけど 


「大好きです」 

「うちもやで」 

「また来ますから」 

「うん」 

「絶対に来ますから」 

涙が止まらない 

この約束が嘘になると思ってしまって 
ずっと涙が止まらない 



553:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 03:19:28.65 ID:x60gR+VC0
電車が来る 

お姉さんが微笑む 
俺の頭を撫でる 

俺は泣きじゃくったただのガキで 
駄々をこねるただのガキだ 

電車が扉を開ける 

中に入る 

泣くなや、男の子やろ? 

扉を締める合図が響く 


お姉さんが僕を抱きしめる 

ほんまに 

ぎゅうっと強く、抱きしめる 

ほんまに 

車掌の警告が響く 

大好きやで 

けたたましいサイレンが鳴る 

ありがとう 

お姉さんが離れる 

ドアが締まりかけた頃合で 

お姉さんは快活に微笑んだ 

目尻に込めた涙を無視して 


「バイバイ」 


と 

別れの言葉を口にした 



556:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 03:22:16.12 ID:x60gR+VC0
家に帰ると鬼の形相をした両親に迎えられた 
がーがー怒っていたけど、なぜだろう 
俺はそれがとても嫌だったのに、ふと思った 

二人も子供なんだろうな、って 

お姉さんがお姉さんだったように 
お姉さんだけどお姉さんじゃなかったように 

大人だって子供なんだな、って 


「俺さ、二人が喧嘩するのが嫌で家出したんだよ」 

そういうと二人は黙ってしまった 


喧嘩の原因ってなんだろう 
考えてみれもどうでもいい 

頭の中でお姉さんが離れない 
お姉さんがいつまでもそこにいる 

お姉さんは、そこにいるけど 


俺の携帯はいつまでも鳴らなかった 



558:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 03:25:32.17 ID:x60gR+VC0
高校に無事入学して、夏 

バイトをしてお金を貯めて、お姉さんに会いに行く夏 


だけど、相変わらずお姉さんから着信は来なかった 


学校の友達もできた 
好きな人はできなかったけど 

というか 
お姉さんを知って他に好きになれるとか、無理だろう 


結局、俺はお姉さんに会いに行かなかった 

臆病だったから? 
不安だったから? 

答えはまあ、三年後 



559:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 03:26:40.60 ID:x60gR+VC0
ってなわけで書き終えたぞ 

釣りかどうかとかよく話題に上がってたけど 
それってそんなに大事なのかな 

釣り成分は30%だ 



で、続きあるけど知りたい? 



560:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 03:27:22.52 ID:azj5PAlM0
知りたい 


568:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 03:28:49.53 ID:b8BatodPi
はよ三年後教えてくれよ 



591:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 03:39:00.41 ID:x60gR+VC0
三年後 

高校を卒業してそのまま働くと伝えたら両親は落胆していた 
因みに俺の家出が切欠か、あれ以来二人は不仲が解消したようだ 
少なくとも家で喧嘩はしていない 

しかも勤め先を遠くに選んだから余計だ 
理由を問われたけどその街が好きだからとしか言えなかった 

就職はまあ、なんとかなった 
高卒なためいいところとは言えんが選ばなけりゃなんとでもなる 

家も決めて、一人暮らしの段取りをしつつ 

三月に入って俺は学校に行くのをやめた 
あとは卒業式以外どうでもいいわけだし 

それよりもなによりも俺にはやることがある 


家を探す時や就活の時に訪れているわけだが 
改めて来てみると不思議な感覚に襲われた 

あの都会の駅の前にある広場はどうにも健在らしい 


そこのベンチでぼうっと座っていると、お姉さんが 



なんてことは流石にない 

暫く佇んで、お姉さんを探すべく歩き出す 

といっても行く先なんて決まっている 
あのBARとマンションしか知らないんだから 



597:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 03:44:16.72 ID:x60gR+VC0
夜の八時過ぎ 
あのBARが開いている時間帯だ 

こうして見ると怪しい雰囲気だな、と思った 

お姉さんに連れられた三年前は気づかなかったが、これは一人で入れんと思った 

ドアを開けるとベルが鳴る 

店の看板とかなにもないから不安だったけど、BARはまだやっているらしい 


中に入るとお客さんは一人もいなかった 

でも、一人だけ、その人はいた 


赤く長い髪の 
綺麗なお姉さん 


「こんにちわ」 

「らっしゃーい」 

どうやらお姉さんは俺の存在に気がついていないようで 
これはこれで面白いと俺は自分を明かさなかった 


まあ、なんだかんだで 
今ではお姉さんより身長も高いしなあ 



606:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 03:49:47.32 ID:x60gR+VC0
三年経ってもお姉さんはお姉さんだった 
綺麗ですっとしていてモデルみたいで 

大人の色気が増したと言えばいいのか 
しかし十八の俺に大人の色気はよくわからん 


「お客さん、初めてだよね?」 

「ですね」 

「なんでこんな見つけづらいとこに」 

「友達に聞いたんですよ。真っ赤な髪のマスターがいるBARがあるって」 

「ああ、これ。ははっ、もういい年なんやけどねー」 

「でもとってもお似合いですよ」 

「あざーす。いや、なんか照れるわー」 

「どうして赤髪なんですか?」 

「これ? これな、むっかあああああしの知り合いに褒められてなー」 

死んでしまった人のことだろうか 

「大切な想い出なんですね」 

「いやそんなんどうでもええねんけどな、今となっては」 

「?」 

「ぷっ」 

「どうしました?」 

「いや、そんでなー」 

「この赤い髪を綺麗ですね、って褒めてくれたガキンチョがおんねん」 

「ガキンチョ」 

「そうそう。そいつな、うちに惚れとるとかいいよったくせにな、くせにやで? 携帯番号ちゃうの教えて帰ってん」 


……うそん 



609:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 03:51:14.46 ID:aqUOsiXv0
>>606 
変な声出たw 



610:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 03:51:23.82 ID:h/t4SHwn0
まじかww 

予想外の展開w 



629:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 03:56:36.46 ID:x60gR+VC0
「連絡ください言うた割に連絡通じへんやん? どないせーってのな」 

「そ、それはそれは」 

冷や汗が沸き立つ 
まじで? それで連絡こなかったの? 

「会ったらほんまどつきまわしたらなあかんなあ」 

迂闊に名乗れなくなった 

「そ、それと赤髪がどういう?」 

「ん? やからさ、あのアホンダラが戻ってきた時、うちのトレードマークがなかったら気づかんかもしれんやん?」 

「そんなこと……」 

ありえて嫌だ 
お姉さんの赤髪とピアスは凄い印象強いから 

「ところでお客さん、なに飲む?」 

「おすすめのカクテルを」 

「いや無理やわー」 

とお姉さんはドン、っと机が揺れるぐらいの勢いでコップを置いた 

「自分みたいなガキンチョにはこれで充分やろ?」 

それはいつか出されたジュースだった 

「……はは」 

「ははっとちゃうわドアホ! いつまで待たせんねんおばはんにする気かおどれぁ!」 

「あ……バレてました?」 

「バレバレや言うねん! 君身長高くなっただけで顔つきほとんど変わってないやんけ可愛いわボケぇ!」

「可愛いなんて、もうそんな年じゃないですよ」 

「そこだけに反応すんなアホ! 首傾げる仕草もなんも変わってないいうねん……」 


唐突にお姉さんは体を背けて顔を隠す 
ああ、お姉さんも変わってないな 



631:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 03:58:16.39 ID:ny0+/Gqv0
お姉さんやっぱ気付いてたかwww 



642:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:02:58.75 ID:x60gR+VC0
「どんだけうちが待っとったおもてんねん……」 

ふるふると震える肩 
いつもそうだった 
お姉さんは弱味を俺に見せたがらない 

恥ずかしい時も 
哀しい時も 
苦しい時も 

顔を背けてそれを隠す 

椅子を降りてカウンターの中に入っていく 
土台が同じ高さになったため、俺はお姉さんよりも大きくなった 


「ほんま、背高くなったなあ」 

「牛乳飲んでますから」 

「……君ええボケ言うようになったやん」 

「そりゃお姉さんと一緒になるの、夢見てたんで」 

「タバコは?」 

「身長伸びませんから」 

「迷信やろ」 

「プライバシー効果ですよ」 

「プラシーボ効果やろ」 



645:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:03:37.47 ID:ny0+/Gqv0
( ;∀;) イイハナシダナー 



651:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:07:04.09 ID:x60gR+VC0
自分より小さくなったお姉さんをそっと抱きしめる 
自分の腕の中に収まるお姉さんは、とても可愛らしくて愛くるしい人だった 

「大好きですよ」 

「あっそ」 

「つれないですね」 

「知るか、三年もほっとったアホ」 

「どうしたら許してくれます?」 

「そやな」 

「とりあえず、うちより身長低くなりや」 

「はい」 

「うん、ええ位置やな」 


引き寄せて、お姉さんはキスをする 
三年ぶりのキスは相も変わらず、優しくて、この上ない喜びが詰まっていた 


「なあ」 

「はい?」 

「うち、ええ歳やねんけど」 

「結婚とか興味あるんですか?」 

「君とする結婚だけ興味あるな」 

「そうですか。じゃあ、暫くしたらしますか」 

「なんでしばらくやねん」 

「まだ新入社員ですよ、俺。いやまだなってもないのか」 

「就職したん? ここがあんのに」 

「それも悪くないんですけど、やりたいこともありまして」 

「へえ、なんなん?」 

「秘密です」 



662:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:13:28.84 ID:x60gR+VC0
改めて席についてジュースを飲んだ 

「一つ気になってたんやけど」 

「はい」 

「なんで夏にこんかったん?」 

「……そうですね」 

「連絡が来なくてムカついてたんで」 

「君のせいやろそれは!」 

「ですね。でもあの時の俺は本当にそうだったんですよ。恋人ができたのかな、って。だから三年溜めて、まずは社会人になって、もしダメだったら」 

「ダメだったら?」 

「ストーカーにでもなろうと思ってましたよ」 

「どこまで本気やねん」 

「半分。ストーカーは冗談ですけど、仮に彼氏さんがいるなら奪おうとは思ってましたよ」 

「本気やな」 

「そりゃまあ、お姉さんは僕の人生を変えた人ですから」 

「言いすぎ……でもないんかな」 

「うちの人生を変えたんは、君やしな」 

「それは意外ですね」 

「君はあの一週間をどう覚えとる?」 

「妄想のような一週間ですかね」 

「妄想て。雰囲気でんわ。でもうちにしたって、ありえん一週間やった。だってそやろ、家出少年かくまって、いろいろあって、恋して」 

「でもそういうの慣れてると思ってました」 

「よく言われるけどなあ、そういうの。うちかてただの女やしな」 

「……そうですね」 

「そこは同意なんやな」 

「もう十八ですからね。お姉さんが普通にお姉さんに見えますよ」 

「なんやそれ。ってか君、いつまでお姉さん呼ぶん?」 



670:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:19:07.62 ID:x60gR+VC0
「お姉さんって呼ばれるの、好きなんだと思ってましたよ」 

「嫌いちゃうけど、今の君に呼ばれるんは違和感しかないわ」 

「でも」 

「なんやねん」 

「名前で呼ぼうにも名前知りませんし」 

「……ほんまやな、うちも君の名前知らんわ」 

「名前も知らない人を泊めてたんですか、いけませんよ」 

「名前も知らんお姉さんに付いてったらあかんやろ、殺されんで」 

「ほな」 

「はい」 

「○○ ○○です、よろしゅー」 

「○○ ○○○です、よろしくお願いします」 


「ははっ、なんやねんこの茶番」 

「っていうかお姉さん、意外に普通の名前なんですね」 

「君は古風な名前やな。しっくりくるわ」 


そのあともお姉さん、基、○○との会話は続いた 
お客さんが何組か来て、ついいらっしゃいませと言ってしまったりもしたけど 


俺はお姉さんの家に泊まることになった 



679:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:26:06.29 ID:x60gR+VC0
「コーヒーお願いします」 

「飲めるん? ってそや、薄くせなな」 

「そのままでいいですよ。あれ以来濃い目のしか飲んでませんし」 

「なんで修行しとんねん」 

「○○と同じ味を覚えたかったから」 

「……君、照れずにようそんなこと言えるな」 

「鍛えましたから」 

「それ絶対間違っとるわ」 


差し出されたコーヒーに口をつける 
強めの苦味が口の中でふんわりと滲んで、これはこれで嫌いじゃない 

「ほんまや、飲めとる」 

「三年も経てば飲めますよ」 

「敬語はいつやめるん?」 

「唐突ですね。やめませんよ」 

「変な感じやな」 

「そうですか? これで慣れてしまってて」 

「だってもううちら恋人やろ?」 

「ああ、はあ、そう、ですね」 

「なに照れとんねん、やっぱ子供やなあ」 

「いやあの、今のは突然だったので」 


三年前と違って会話はすらすらとできた 
三年も会っていなかったからか、話したいことが山のようにあった 

暫くして、変わらないあの言葉 


ほな、寝よか 



690:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:31:54.32 ID:x60gR+VC0
俺の腕に小さな頭を乗せて 
縮こまるお姉さんは可愛らしい 

優しく撫でると香るあの匂いに 
急速に三年前を思い出す 

「ずっと会いたかってんで」 

「ごめんなさい」 

「もうどこにもいかんよな?」 

「卒業式には帰らなくちゃならないのと、家を借りてるのでそれを解約するのとありますね」 

「うん、ここにいたらええよ」 

「家賃は払いますから」 

「いらんよ、借家ちゃうし」 

「結婚資金にでもしておいてください」 

「お、おう」 

こうして思えばお姉さんは照れ屋だったのだろう 
三年前の俺はそんなこと全くわからなかったけど 


その内にお姉さんはすやすやと寝息を立て始める 
俺の腕の中で安らかに眠る 

こんな日々がこれから一生続くのだろうと考えたら 
俺はなんとも言えない喜びに包まれて 

幸福の中で眠りについた 


それは春が訪れる 
桜が咲く前のこと 



692:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:32:58.43 ID:x60gR+VC0
ってなわけで悪いがエロなしで終わり 

俺九時間も書いてたのか 
そりゃどうりで頭が痛いわけだ 

読んでくれてありがとう、お前らお疲れな 



700:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:34:26.38 ID:jj29KRDR0
乙!感動した! 

この春から一緒に暮らすの? 



723:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:38:16.51 ID:x60gR+VC0
少しレス返するな 

>>700 
うん、春からってから正確には再来月ぐらいになりそうかな 

就職したばっかでばたばたするし、家の解約とかやることけっこうあるし 
住民票とか、親の説得とかな 



727:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:42:01.51 ID:pRp8LYfI0
>>723 
なるほど、全てはまだこれからってヤツな 

1乙! 
これでやっと寝れるわ! 
死ねっ! 



701:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:34:34.95 ID:pRp8LYfI0
そいやまだ過去の男と子供の伏線が回収されてないからその話もあるわけか? 



723:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:38:16.51 ID:x60gR+VC0
>>701 
過去の男? それは寧ろ片付いたと俺が思いたいぞwww 
子供のあれはな  まだ聞いてない 
でも聞きたくもないし聞けない 
聞くのはデリカシーがなさすぎ 今後聞く必要はあるだろうけど 



702:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:34:39.76 ID:7p1B98oG0
今どこにいるの? 



725:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:40:45.19 ID:x60gR+VC0
>>702 
いえないってwww 
設定にフェイクは入れてるからなwww 



705:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:34:52.20 ID:vriT2wHi0
これで現在まで追いついたかんじ? 



725:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:40:45.19 ID:x60gR+VC0
>>705 
そやね。追いついた感じ 



707:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:35:25.22 ID:pxBUV6qaO
上手く言えないが、その後は幸せなのか? 



725:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:40:45.19 ID:x60gR+VC0
>>707 
もちろん! 
こんないいお姉さん捕まえて幸せじゃないなんて奴、いないだろ? 



708:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:35:28.79 ID:x60gR+VC0
もうお姉さんと再開できた時点で畳む話で 
そっから先は蛇足だからな 

悪いが終わりだ 



709:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:35:36.56 ID:DG3GhvA30
>>1乙 
楽しませてもらったよ 
趣味で字書きでもしてるんか 
まぁなんだ良かった。 
んじゃ寝ますわ 



711:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:36:18.35 ID:prajFozD0
乙 

質問いい? 

お姉さんに秘密でやりたいことってなに?? 



725:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:40:45.19 ID:x60gR+VC0
>>711 
このスレ見ててわかったかもしんないけど 
俺は物書きになりたいんよね 
まあ、まだまだだけどさ 
ほら、お姉さん自営業だし夜だし 
物書きだったらそれなりに時間合わせられるし場所選ばないし 



724:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:39:41.01 ID:NC4u4Q0WP
1おつっ! 
ついこないだの事なのかな。かな。。? 
あぁ、せつなくて幸せな時間をありがとうね。 



732:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:45:19.42 ID:x60gR+VC0
改めてありがと 
こんなスレ伸びるとは思わんかったけどさ 

あ、最期にみんなに伝えておくことがあるんだわ 



736:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:46:22.33 ID:NC4u4Q0WP
ゴクリ。。。 



737:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:46:26.43 ID:pRp8LYfI0
え? 



742:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:48:18.45 ID:pRp8LYfI0
どんだけ寝不足にすれば気がすむんだ 
はよしろ 



744:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:49:10.13 ID:GyfKIZp10
早く寝かせてくれー! 



746:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:49:39.19 ID:x60gR+VC0






釣られたみなさま、本当にお疲れ様でした 

















と書こうと思ったけどやめた 
まあいっか、お前らいいやつだし 


んじゃ、おやすみ 



748:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:50:27.88 ID:GyfKIZp10
>>746 
釣りでも楽しかった! 

文才すごい、もっと読みたい 

おつかれ! 



756:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:52:23.01 ID:4Qhc7Fb20
>>746 
くそぉぉぉぉぉおおおおおおお 
悔しいから死に物狂いでお前を特定して本出版させてやる!!!!! 



750:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:50:42.21 ID:45dXjZOU0
釣りだとしても完成度高杉だから良しとします! 



755: 忍法帖【Lv=11,xxxPT】(1+0:8) :2013/03/20(水) 04:52:20.64 ID:JGSvs57f0
釣られてない 
きっと釣ったことにして有耶無耶にしようという 
>>1の考えなんだ! 
みんなだまされるなよ! 



759:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 04:55:52.95 ID:0dqWvIpFO
>>755 
俺もそう思いたい 

でも釣りでもいい釣りでも良いよ 
1乙ですノシ 



802:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 10:03:53.46 ID:F+l4fvD90
すんばらしいお話でした 

>>1乙!!! 



762:名も無き被検体774号+:2013/03/20(水) 05:06:46.43 ID:PGKl3KVW0
ちょっと家出してくる。 



 
家出のすすめ (角川文庫)
寺山 修司
角川書店
2005-01